顧問弁護士とは|3つの役割と依頼するメリット

専門家監修記事
よく聞く「顧問弁護士」という言葉ですが、実際にどのようなことをしてくれるのでしょうか。この記事では、顧問弁護士の役割からメリット、費用相場、最適な顧問弁護士を選ぶポイントなど、ご検討中の方の知りたい解説します。
ベンチャーラボ法律事務所
淵邊 善彦
監修記事
顧問・セカンド顧問

顧問弁護士」と契約を結ぶことで、あなたの会社と社員を守ることができます。しかし、顧問弁護士が具体的にどのような事をして、どのようなリスクから守ってくれるのかは、よくわからないのではないでしょうか。

 

この記事では、顧問弁護士の大きな3つの役割や費用、契約するタイミング、選び方などについてご紹介します。

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顧問弁護士とは|普通の弁護士との大きな違い

顧問弁護士は、法的な立場からあなたの会社にリスクが発生していないか事業内容に問題がないか、どうすれば法的に強いビジネスになるか等をチェックするとともに、万が一トラブルが発生した場合には、損害を最小限に抑えるため、様々なアドバイスや手続きを行う専属の弁護士です。

 

継続的にあなたの会社を見てくれますので、問題発生時に即時に対応してもらえますし、あなたの会社に最も合ったアドバイスを受けることができます。問題発生時にその都度弁護士を探して、会社の実情を説明していたのでは、適切な対応を取るタイミングを逃してしまうことになりかねません

顧問弁護士の大きな3つの役割

顧問弁護士の役割は幅広く、また対応範囲は弁護士によって異なります。ここでは、顧問弁護士が担う大きな3つの役割についてご紹介します。

役割1:会社の体制・ビジネスの整備・調査

顧問弁護士の大きな役割の1つとして、依頼に応じ会社の体制を整備し、リスクを調査することです。会社の体制とは、会社の組織、「就業規則」等の社内規則、知的財産の管理体制、コンプライアンス体制などのことを言います。これらを会社のする事を指します。

 

顧問弁護士は、会社のビジネスについてもよく理解し、法的な問題点がないか、より法的に強いビジネスにするためにはどうしたらいいかなど、許認可、知的財産権、契約関係などから様々なアドバイスをします。

 

すでに就業規則等が確立されていても、数年前に作成した場合、現在の法律と齟齬が生じている可能性があります。株主総会や取締役会の運営や議事録の作成等についても相談する場面が出てきます。年々、追加・変更されていく法律に対応し会社に発生する可能性のあるリスクを失くすのが、顧問弁護士の大きな役割の1つです。

役割2:トラブル発生時の法的な対応・相談

会社を運営しているとクレームや社内の不祥事、ネット上への悪質な書き込み、取引先や従業員からの訴訟など、さまざまなトラブルの発生が考えられるでしょう。顧問弁護士がいれば問題発生前や、少しでも不安を感じた時にすぐ相談することが可能です。

 

また、これらのトラブルが実際に発生した場合でも、迅速に問題解決への対応を依頼できます。また、今後の対応方針、マスコミへの発表時期・説明の仕方などを相談することが可能です。

 

顧問弁護士が対応できる具体的なトラブル内容の例

  1. 各種訴訟・仲裁等への対応
  2. 売掛金の回収
  3. 従業員からの残業代請求、セクハラ・パワハラ、解雇等の労働問題
  4. 従業員が逮捕されたなどの刑事事件
  5. 悪質なクレーマーや反社会的勢力への対応
  6. 会社の再生や経営立て直しの相談
  7. 秘密情報や個人情報の漏洩への対応
  8. 不祥事への対応
  9. 事業再生

役割3:その他、契約書作成・コンプライアンス研修のサポート・相談等

この他にも、多岐にわたり会社を支えてくれます。

  • 契約書等の書類関係の作成・チェック

  • 内部監査の書類や方法などの相談・作成

  • コンプライアンス研修のサポート

  • 解雇や退職勧奨の方法の相談

  • 労働災害の対応に関する相談

  • 事業承継やM&A・アライアンス等の相談

  • 会社設立、資本政策、資金調達に関する法律相談

  • 株式公開(IPO)に関する相談

  • 海外企業との取引、海外進出に関する相談

  • 知的財産権の取得や侵害に関する相談

  • 下請法、景品表示法違反など不当な取引に関する相談

顧問弁護士がいることで、企業内の負担や不安を減らすことができます。特に法務部を設けるだけの人的余裕のない会社は、法務機能のアウトソースとして顧問弁護士と契約するという発想もあり得ます。

顧問弁護士の費用相場

顧問弁護士の費用相場についてご紹介します。

顧問弁護士の費用相場と

顧問弁護士と契約すると、相談や事件処理の有無にかかわらず、月々、固定の顧問料が発生します

(参考:日本弁護士連合会)

日本弁護士連合会が弁護士に対して行ったアンケートによると、月額3~5万円で顧問弁護士を依頼している会社がほとんどです。

 

このように、相談や事件処理の有無にかかわらず、毎月必ず、3~5万円の顧問料を支払うのは高いと感じられるかもしれません。かといって、安すぎる顧問料に安易に飛びついてしまうのも、クオリティが伴わないこともあり得るので危険です。

 

顧問料そのものは安くても、あまりたくさんの仕事を依頼し続けると、意外に高いお金をとられてしまう、ということにもなり得えます。顧問契約を結ぶ際には、判断を焦らず、きちんと内容を精査するのが重要です。

弁護士費用の内訳

弁護士費用は、弁護士報酬と実費により成り立っています。

弁護士報酬とは

弁護士報酬とは、着手金や相談料、顧問料などが含まれます。事務所によってどのような費用が弁護士報酬に含まれているのか異なりますので、ご注意ください。

実費とは

実費は用紙や収入印紙、通信費等その時々に実際発生したお金が含まれます。

依頼する前に月額顧問料での対応範囲を確認する

月額の顧問料でどの範囲までの仕事をしてくれるのでしょうか。

対応内容

割合(%)

月3時間程度の相談

59.9

調査なし、すぐに回答できる相談

34.5

その他

5.6

(参考:日本弁護士連合会)
相談方法にかかわらず、月3時間程度の時間を要する相談(調査時間等を含む)を月額顧問料の範囲内とする、という回答が60%近くになっており、他方で、主として電話、FAX、メール等による相談ですぐに回答できる内容のものであれば、時間にかかわらず顧問料の範囲内とする回答が35%程度となっています。

 

月額顧問料は、範囲とする業務の内容によってその意味が違ってきます。あらかじめ弁護士から月額顧問料の範囲内の業務についてよく説明を受けた上で、顧問契約を締結しましょう。

 

また、月額顧問料の範囲を超える場合の扱いについては、顧問契約書を作成し確認することが重要です。  月額顧問料の範囲を超える場合は、案件によってタイムチャージや着手金・成功報酬の形で請求されるのが一般的です。その場合でも、顧問になっている場合は、通常のクライアントよりも数10%安く対応する事務所もあります

顧問弁護士と契約する5つのタイミング

中小企業の方や、起業を検討もしくはしたばかりの方はいつ顧問弁護士と契約すべきか悩むことも多いでしょう。しかし、顧問弁護士の役割を見ていただければ、企業の規模や業種に関係無いことが分かるかと思います。

 

月3~5万円を節約したばかりに、後日想定外の大きな損害が発生する、得られるべき大きな利益が得られないなどという取り返しのつかない事態が生じることになりかねません。

 

顧問弁護士に少しでも興味があるのであれば、契約するタイミングといえます。また、以下のような場合は、特に顧問弁護士と契約するベストタイミングです。

  1. 会社に関するトラブルが発生した時
  2. 大型の契約をする・重要な取引先や顧客と契約を開始する時
  3. 会社を起業する・事業を起こす時
  4. 従業員を雇用・採用する時
  5. 上場を検討している・上場する時

これらは特に法律が関わりますので、リーガルチェックなどが必要です。また、トラブルが発生した際、トラブル対処だけではなく、今後そのようなことが起きないよう継続的にリスクチェックをしてもらう意味でも、雇用契約のタイミングではないでしょうか。

会社に合う顧問弁護士を探す3つのポイント

ネット等で「顧問弁護士を引き受けます」と書いてあるからと言って、あなたの会社に合うとは限りません。より会社に合う顧問弁護士を探す場合は3つのポイントを踏まえ、探すことをおすすめします。

自社と同じ業界で実績がある・対応できる

企業法務を得意とする弁護士でも、さらに注力している業界を絞っている方も少なくありません。例えば、ネットサービスを中心とする会社が「建築業は得意だけど、IT業界はあまり詳しくない」弁護士と顧問契約するのは、お互いによい結果が得ることが難しいことが分かります。

 

また、自分が依頼したい内容、例えば「国際取引」を依頼したい場合、その弁護士が対応できるか、経験があるのかを確認することが重要です。直接でも間接でもよいので、必ず注力している業界や対応できる内容を確認しましょう。

継続して依頼しても費用に無理がない

継続して顧問弁護士を依頼する際に、費用に無理があってはいけません。継続して依頼する場合、費用はいくらか、その他訴訟や書類チェック・作成をした場合いくらになるのかもあらかじめ確認しましょう。

長く付き合えそうな人柄

顧問弁護士とは、1回の契約である程度長期間において密に付き合うことになります。そのため、自社の雰囲気に合い、気軽に相談しやすい人を選ばなくてはなりません。お互いの信頼関係ができることが重要です。そのためにも、必ず対面での相談をおすすめします。

まとめ|顧問弁護士は複数いてもよい

顧問弁護士は会社を守り、法的な観点からサポートしてくれるよき相談相手です。顧問弁護士がいたからこそ、回避できたリスクは数多く存在するでしょう。

 

顧問弁護士は1社に1人という決まりはありません。「多くの弁護士から意見が聞きたい」「離れている支店にも顧問弁護士を雇いたい」などの場合は、複数人の顧問弁護士と契約することをおすすめします。また、紛争に強い弁護士、国際取引に強い弁護士というように分野ごとに依頼することもあり得ます

 

なお、顧問弁護士との契約内容によっては、会社との間で利益相反のない範囲で、従業員が個人的に法律相談できることも可能です。従業員に法的な不安を抱かせないよう、相談窓口の一つとして弁護士に依頼するのも検討してみてはいかがでしょうか。

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