M&Aのメリット6つと7つのデメリット|買い手と売り手それぞれ視点で徹底解説

専門家監修記事
M&Aには、資本の移動を伴う買収や合併のほかに、資本の移動を伴わない業務提携なども含まれます。今回の記事では、M&Aの中でも『買収』に焦点を当て、買い手と売り手それぞれの視点から見たメリットとデメリットについて解説します。
阪神総合法律事務所
曾波 重之
監修記事
M&A・事業承継

M&AMergers and Acquisitionsの略で、直訳すると『合併と買収』です。 M&Aについては、『効果的な成長戦略の1つ』という声もあります。企業経営者であれば、M&Aを行うことで得られるメリットについて知っておきたいところです。

 

またM&Aは、買い手だけでなく、売り手にもメリットがあります。一方でデメリットもあるため、実際にM&Aを考えている企業は、しっかり理解しておく必要があるでしょう。 なおM&Aには、資本の移動を伴う買収や合併のほかに、資本の移動を伴わない業務提携なども含まれます。

 

今回の記事では、M&Aの中でも『買収』に焦点を当て、買い手と売り手それぞれの視点から見たメリットとデメリットについて解説します。

 

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M&Aを買い手視点で見た場合のメリット3つ

この項目では、買い手と売り手それぞれの視点から、M&Aのメリットについて説明します。まずは、買い手の視点からM&Aのメリットを解説します。

事業規模の拡大・多角化

買収先企業が持っている、不動産などの有形資産に加え、技術や流通網などの無形資産も獲得できるため、事業規模の拡大シナジー効果が見込めるという点はメリットといえます。

 

また、自社が取り扱っていない技術やノウハウを買収先企業が持っていた場合は、それを活用した事業の多角化も望めます。

 

M&Aを行うことによって、自社のみで着手するよりもスピーディーな事業規模の拡大が期待できることから、M&Aを『時間をお金で買う行為』と呼ぶこともあります。

新規事業への参入コストの削減

下地のない状態から新規事業に参入する場合は、組織構築や技術開発などを1から行う必要があるため、時間的コストや経済的コストなどがかかります。

 

その点、自社未参入の事業について実績のある企業を買収した場合などは、それを下地に新規事業へ参入することができるケースもあります。下地なしの状態で参入するよりも、ある程度のコストが削減できるという点はメリットといえます。

技術力の補強・強化

買収先企業が優れた技術を持っていた場合は、それを取り込むことによって、強みである分野の技術力強化や、弱みである分野の技術力補強なども期待できます。

 

売り手側視点で判断したM&Aのメリット3つ

次に、売り手視点からのM&Aのメリットを解説します。

後継者不足問題の解決

特に中小企業の間では、経営者の高齢化が進んでいます。以下、経済産業省のグラフによると、2015年時点で経営者の年齢分布は最大値が66歳で、『後継者不足による廃業』を計画しているところもあるようです。

 

引用元:中小企業の事業承継に関する集中実施期間について|経済産業省

 

『後進に事業を継承してもらいたいと考えているが、引き継ぎ先が見つからない』という企業については、M&Aを行って売却先企業に引き継いでもらうことで、後継者不足問題の解決が望めます。

 

ただし、事業継承などの資産の引き継ぎについては、当事者のみで行うとトラブルが起こる可能性もゼロではありません。実際に事業継承を行う際は、弁護士などの第三者によるチェックを受けた上で進めることをおすすめします。

 

事業継承を弁護士に依頼するメリットや費用など、詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:事業承継を弁護士に依頼するメリットと依頼時の費用

廃業コストの回避

事業撤退を決めて廃業する際は、設備・在庫の処分や、従業員への補償にも対応する必要があります。それに加えて、役所などで廃業手続きを行う必要もあり、手間や費用がかかります。 M&Aを行うことで、これらの廃業コストを回避できるという点はメリットといえます。

創業者利潤の獲得

M&Aを行う際、自社は事業と引き換えに、売却先企業から対価を受け取ります。売却形式によってかかる税金は異なりますが、利潤の獲得が望めるという点はメリットといえます。

 

買い手側から見たM&Aのデメリット4つ

この項目では、買い手と売り手それぞれの視点から、M&Aのデメリットについて説明します。この項目では、買い手視点からのM&Aのデメリットについて解説します。

売り手企業との融合が上手くいかない可能性がある

自社と買収先企業とで、企業文化や社内の雰囲気などが大きく異なることもあります。なかには、それらを納得のいく形にまとめるために、想定外の時間が必要となるケースも考えられるでしょう。

シナジー効果が発生しない可能性がある

事業規模の拡大を狙ってM&Aを行ったとしても、期待していたようなシナジー効果が発生しない、ということもあるかもしれません。

潜在債務を引き受ける可能性がある

貸借対照表に記載されていない簿外債務や、未払いの残業代や顧客からの損害賠償請求など、買収時に顕在化していない債務に気づかないまま契約をしてしまうこともあります。

買収資金が必要

当然、M&Aを行うには買収資金が必要です。自己資金だけで賄えない場合は、融資によって賄うという手段もあります。

 

ただし、必死の思いで買収したにもかかわらず、想定以下の利益しか発生していない、という可能性もゼロではないため、『買収先企業の選定は適切か』『買収金額は適切か』など、買収前には十分に調査する必要があります。

 

売り手側から判断するM&Aのデメリット3つ

次に、売り手の視点からM&Aのデメリットについて解説します。

買い手企業との融合が上手くいかない可能性がある

売り手側にとっても、M&Aによって予期せぬトラブルが発生することは十分に考えられます。また、システムの統合や諸手続きなども必要になるため、実務的な負担が大きくなる、という点も挙げられます。

買い手による経営方針・労働条件の変更

M&Aを行う際は、双方の企業で、今後の経営方針なども含めた打ち合わせが行われます。しかし、『M&A成立後、想定外の方向へ経営方針をシフトすることになった』というのも、十分にあり得る話です。

 

そのような場合、環境の変化や、待遇に不満を抱く従業員などが、外部に流出してしまう恐れもあります。

既存客との契約打ち切り

M&Aにともなって、事業担当者の変更などの体制変更があった場合、これまで取引関係を構築してきた顧客から反発を受け、契約が切られる可能性もゼロではありません。

 

【関連サイト】M&Aの会社とサービスを一覧比較できる「M&Aルート」

 

M&Aを専門家に相談する際に弁護士を選ぶ4つのメリット

M&Aについては、相手企業の選定や取引金額の設定など、慎重に交渉を進めていく必要があります。

 

相談先としては、弁護士・M&A専門業者・税理士・会計士などがあります。ただし、どこに相談するかについては、相談内容事務所の注力分野などによっても異なります。

 

一般的には、M&Aの税金関係に不安のある方は税理士買収先企業の選定に不安のある方は会計士が適切といえるでしょう。

 

そのためには、外部にサポートを依頼したほうがよいでしょう。

M&Aの法的トラブルに対応してくれる

弁護士やM&A専門業者は、契約書の作成手続きやM&A成立後の統合手続きなど、M&Aの手続きに関するトータルサポートが期待できる、という点で共通しています。

 

しかし、『法的トラブルに対応可能か』という点で異なります。M&Aは契約関係が複雑で多数の利害関係人が関与します。法的トラブルが起きれば処理は困難になりますから、未然に防げるものは確実に防ぎたいところです。

交渉段階における契約書等の作成依頼

M&Aの交渉の各段階で契約書等の作成がありますが、契約書の作成には法的知識が不可欠です。

 

例えば、契約に違反した時の損害賠償の範囲について、金額が定めてあったとしても、実際に裁判になった場合、定めた金額どおり支払われるかは判断が異なります。

 

弁護士であれば裁判の結果の見通しも踏まえて正確に契約書の内容を説明してくれるでしょう。

 

つまり、リスクを正確に認識できるようになり、誤った判断をしなくてすみます。

買収先企業との取引内容に不利な点がないかの調査

また、買収先企業とその取引先との契約に不利な点がないかの調査にも法的知識がなければ判断できません。

 

もし、それらに気づかずに買収してしまうと、買収先企業の事業から想定通りのリターンが得られないことになってしまいます。

 

つまり、不当に高い金額で買収をしてしまったことになります。弁護士へ相談をしていれば、そのような事態を防ぐことができ、金額面の再交渉も可能となります。

潜在債務への的確な指摘

さらに、買収先企業が認識していない潜在債務についても、弁護士であれば的確に指摘してくれるでしょう。

 

例えば、未払いの残業代があった場合、それが今後、顕在化し、請求される可能性が高いのか、訴訟を起こされる可能性があるのか、もし裁判になった場合はどの程度の解決金が必要かについて、日ごろから裁判実務を行っている弁護士でなければ正確なアドバイスは不可能です。

 

また弁護士のアドバイスをもとに、潜在債務が存在するから金額を下げるようにと説得力のある交渉することも可能となります。

 

このように、法的トラブルに対応可能であるということは、結局のところ、M&Aによるリターンやリスクを正確に把握して、想定外のトラブルを回避することにつながります。

 

また、適切な買収金額を決定することにも影響を与えるもので非常に重要なことといえます。

あああ

どのような弁護士・法律事務所を選ぶべきか

弁護士に相談する際は、M&Aに注力している事務所や、M&A相談の解決実績のある事務所などが選択肢として考えられます。

 

費用としては、相談料として5,000~1万円/1時間日当として3~5万円という設定のところが多いようですが、中には『初回相談は無料』というところもあります。 実際に相談する場合は、事務所へ事前確認を取ることをおすすめします。

【関連記事】M&Aが得意な弁護士の選び方とメリットや依頼の必要性を徹底解説

まとめ

M&Aを行うことによって、買い手にとってはスピーディーな事業成長売り手にとっては後継者不足問題の解決などのメリットがあります。

 

しかし、統合作業が上手くいかない可能性がある、などのデメリットにも注意しなければいけません。特に、M&Aについては『交渉時に打ち合わせを入念に行っていたにもかかわらず、想定外のトラブルに見舞われてしまった』というケースも考えられます。

 

したがって、「M&Aを考えているが、少しでもトラブルを回避したい」という方は、外部に相談するとよいでしょう。

 

その際、いくつか選択肢はありますが、トータルサポートを受けた上で、特に法的トラブルが起こらないか不安という方は、弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

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