法人破産とは|実施の判断基準や手続きの流れと新型コロナによる影響も

専門家監修記事
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて「法人破産」を考える経営者に向けて、破産の種類や破産手続きの流れ、必要になる費用について紹介。破産をすることによるメリットやデメリットについても解説します。
弁護士法人東京スタートアップ法律事務所
中川浩秀
監修記事
事業再生・破産・清算

経営状態が悪化した会社の選択肢の一つとして法人破産が考えられます。しかし、法人破産が適切でない場合もあるため、まずは判断基準と照らし合わせましょう。その上で法人破産を考える場合は、手順・影響などを理解する必要があります。

 

また、新型コロナウイルス感染症の影響により、営業自粛などを余儀なくされてしまい、経営が厳しい企業も少なくないと思います。どうにか持ち堪えたくても、収束の兆しも見えない中で資金繰りが苦しくなり「破産」という言葉が頭を過ぎることもあるかもしれません。

 

しかし、法人破産では、会社だけでなく会社の代表者にも返済義務が発生し、代表者個人も自己破産をしなければならない事態ともなるため、中身について十分に理解しておくことが必要です。
 

今回の記事では法人が破産するための手続きの流れや法人破産のメリット・デメリットについて紹介します。

 

 

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法人破産とは|破産の種類と倒産との違い

法人破産とは、経営状況の悪化などの理由で、債権者への返済が一般的かつ継続的に不可能になった会社について、裁判所に破産の申立てをすることで、法律に則って会社の財産等を適切かつ公平に清算し、債権者や利害関係人等との権利関係等の調整する図る手続です。

 

個人の自己破産の場合は、破産手続をとることで破産者の経済生活の再生の機会を図ることが重要な目的となり、法人破産にはない免責手続という債務の支払い義務を免除するための手続がとられます。

 

個人の破産手続では、債権者のためというよりも破産者の生活再建を目的とすることに特別の意義を認める手続といえます。

 

他方、法人破産の場合には、破産手続により最終的には会社は消滅することになるため、破産する会社のためというよりも債権者のための手続であるという点に法人破産と個人破産の大きな違いがあります。

法人破産の定義

倒産とは、資金繰りが悪化して事業が継続できない状況のことです。法律上では、中小企業倒産防止共済法や雇用保険法という法律の中で「倒産」についての定義や意義が定められた条項があります。

 

例えば、中小企業倒産防止法における「倒産」とは、

 

  1. 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てがされること
  2. 手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること
  3. 過大な債務を負っていることにより事業の継続が困難となっているため債務の減免又は期限の猶予を受けることを目的とするもの

 

と認められる手続であって、その開始日を特定することができるものとして経済産業省令で定めるものがされること(具体的には、弁護士等により債務整理の受任通知がなされたこと等)の3つが挙げられています(中小企業倒産防止共済法第2条2項)。

倒産の種類

一口に倒産と言っても、法的な手続きを指すこともあれば、事業継続が困難となっている状態を指すこともあります。倒産とは、必ずしも破産のことを意味するわけではなく、法的な手続の意味合いで用いる場合でも、破産手続の他に民事再生手続、会社更生手続といったものも含まれます。

 

倒産にも実はいろんな種類の手続に分かれており、将来的に事業を続けたい場合には、民事再生手続や会社更生手続といった会社の再建を目指す手続もあります(これらは再建型の倒産手続と呼ばれます。)。

特別清算手続

一方、事業の継続を断念する場合には破産手続や特別清算手続といった手続を選択することになります(これらは、清算型の倒産手続と呼ばれます。)。支払期限の到来した債務について一部支払いができないとか、一時的に資金繰りが悪くなって支払いができないということではなく、一般的かつ継続的に支払いができる見込みがない場合には(この状態を「支払不能」といいます。)、破産手続を選択せざるをえないでしょう。

支払不法の判断基準

この支払不能の状態に至っているかの判断については、法人の資産、負債の状況、収入や収益だけでなく、法人に金融機関等からの新たな借入れや債権者からの弁済猶予を得ることができるよう信用があるのかどうかも重要な要素となります。

会社にそうした信用があるのであれば、支払不能の状態とまでは言えず、破産以外の選択肢を検討するべきでしょう。

 

反対に、返済見込みのないような借入れをしたり、資産を売却して表面上弁済を維持しているような状況でも、いわゆる自転車操業に陥っていれば支払不能といえ、破産を検討すべき状況に至っていると考えるべきでしょう。

 

また、法人の場合には、債務超過の状態、つまり、債務総額が資産総額を超過している状態に至った場合にも破産手続を検討すべき状況にあるといえます。

 

2019年度までの倒産傾向

東京商工リサーチの調査によると、2019年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)は件数が8,383件(前年比1.7%増)、負債総額は1兆4,232億3,800万円(同4.1%減)てした。

 

リーマンショックが起きた2008年以降初めて前年度の倒産件数を上回りましたが、1990年以降の30年間で1990年(6,468件)、2018年(8,235件)に次ぎ3番目に少ない水準です。この調査から見ても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けるまでは景気は非常に安定していたことが分かります。

参考:東京商工リサーチ|全国企業倒産状況

 

新型コロナウイルス感染症の影響により倒産した企業について

帝国データバンクによると、「新型コロナウイルス関連倒産」は、全国で150件発生しているとのことです(5月15日正午現在)。内訳としては倒産が100件、事業停止は50件となっています。

 

緊急事態宣言が出され日本全国で飲食店やレジャー施設に自粛要請が促されました。政府としては給付金や緊急融資などの用意もしていますが、緊急事態宣言が解除されても経済活動は段階的に再開されることになっており、すぐに元通りに営業活動ができるわけではありません

 

消費者の自粛ムードはまだまだ続くことが予想されます。また、第二波、第三波が来る可能性は十分あり、新型コロナウイルスの影響が長引けば資金も枯渇していくでしょう。家賃などの固定費の支払いが厳しくなれば、倒産を余儀なくされる企業がより一層増えると考えられます。

参考:帝国データバンク|新型コロナウイルス関連倒産 2020/5/15

 

法人破産の判断基準

法人破産は経営に苦しむ会社にとって選択肢の1つではあるものの、中には支払不能とまではいえず、『ほかの選択肢の方が適切』と判断できるケースも考えられます。

例えば、

 

  • 赤字状態があくまで一時的と判断される場合
  • 採算部門への注力によって、資金繰りの好転が期待できる場合

 

このような場合などについては、法人破産ではなく再建型の倒産手続を選択した方が適切と考えられます。また、法人破産を行うと会社は消滅するため、これまで築き上げてきた資産や価値が全て失われてしまいます。


『経営状況は悪化しているが、これまでの資産や価値は失いたくない』という場合などは、破産以外の倒産手続を検討し、法人破産は最後の受け皿として考えておくのがよいでしょう。

 

法人破産を行った場合の影響

法人破産を行った場合の影響としては、『法人破産の判断基準』で述べたように、会社の消滅にともなう資産や価値の喪失が挙げられますが、もう1つ考えなければいけない大きな影響が、代表者個人も破産をしなければならないのかどうかです。

原則として、会社は法人という会社の代表者とが別の人格ですので、会社が債務を返済できなくなったからと言って、当然に代表者個人が法人の債務の返済義務を負うわけではありません。しかし、代表者が法人の債務の連帯保証人となっている場合については、代表者個人に返済義務が発生します。

特に、中小企業では、代表者が連帯保証人になっているケースは珍しくありません。自宅を担保に入れている場合は、自宅を失うことにもなります。

また、個人事業主については、法人という別人格があるわけではありませんので、代表者が事業によって生じた債務について当然に返済義務を負うことになります。
 

法人破産の3つのメリット

破産を選択するのは、従業員の生活や取引先のことを考えると非常に勇気が必要なことかもしれません。

 

しかし、先ほど述べたとおり、法人の破産手続は破産する法人のためではなく、債権者や利害関係人のための手続きですので、債権者や従業員に少しでも迷惑を掛けたくないと思うのであれば早期に破産手続に向けた行動を起こすべきでしょう。

 

早期の行動が債権者や従業員のためになることを覚えておいてください。また、そうすることで、会社の代表者自身が負う責任や苦悩も軽減されることにもなります。

債権者からの取立に悩まなくても良くなる

資金繰りの悪化により融資の返済ができなかったり、買掛金の決済ができなかったりすれば、債権者からの取立行為がなされます。経営が上手く行かずに、債務の支払いをするお金を用意することができないと、経営者によっては精神的にも大きな負担となります。

 

しかし、破産手続をとることを決意し、弁護士等に破産申立ての依頼をして債権者へ受任通知が送られると、その時点から債権者の取立行為は会社やその代表者に直接することができなくなります。

 

また、連帯保証債務を負った代表者が破産手続により免責を得ればその借金がどんなに大きかったとしても支払義務がなくなります。

 

そのため、売上が大幅に上がるなどの目処が立たず、返済に充てる現金を工面するのが厳しい状況に陥ってしまった場合は、破産手続をとることを決断することで、債権者からの取立行為による精神的負担は軽減されることになるでしょう。

経営者の新しいスタートのきっかけとなる

経営者が法人の債務の連帯保証人の場合又は個人事業主の場合には、破産することにより、それまでに債務の返済に使っていたお金を、返済に回さなくてよくなります。

 

経営者は破産後5〜7年間は信用情報に事故情報が残り(ブラックリスト)金融機関から新たな借り入れ等をするのは難しくなりますが、その期間を過ぎると事故情報は抹消され、経営者は新しいスタートを切ることができます。

親族や従業員を無理な経営に巻き込まなくても良くなる

資金繰りが苦しい状態で経営を続けていくと、特に零細企業等では親族から借り入れをして会社の運営に回したり、親族が保証人になっている場合は親族にも取立が及ぶなんてこともあるでしょう。従業員に対する給料やボーナスを減らしたり、未払いになってしまうこともあるかもしれません。

 

このように会社が苦しい状態だと親族や従業員に対しても迷惑をかけることになってしまいます。そのため、無理な経営を続けて親族や従業員の生活を脅かす期間が長引いてしまうのであれば、破産手続で債務処理をしてしまったほうが良いでしょう。

 

法人破産のデメリット3つ

では、破産をするデメリットとはどんなことがあるのでしょうか。

法人が所有している財産を手放すことになる

破産をする場合は、法人が所有している財産を換価する必要があるので法人名義のものは全て手放すことになります。事務所などの不動産だけではなく、車や絵画などの思い入れのある財産であったとしても例外なく手放す必要があるので、その点は覚悟が必要です。

経営者の連帯債務の場合は個人も自己破産になる可能性が高い

オーナー企業の場合、「会社=経営者の信用」とみなされるので、金融機関からの融資では多くの場合、会社名義の債務に経営者個人が連帯保証をすることになります。連帯保証では、債務者が返済しない場合に同じ責任を負うことになります。

 

連帯保証人は、債務全額について返済する義務が発生することになりますので、その責任は非常に重いといえます。

 

会社が債務を返済できなくなってしまった場合、連帯保証人である経営者個人にその責任が回ってきてしまうため、結局経営者も返済ができないということになれば法人だけでなく、経営者個人も自己破産をしなくてはいけなくなるでしょう。そうなると個人で所有する財産も換価の対象とされ、自宅なども失うことになってしまいます。

クレカが持てない・裁判所の許可が必要な行為がある

法人破産と同時に経営者も破産する場合、経営者個人も様々な影響を受けることになります。

 

特に、日常生活において、これまで使用していたクレジットカードが使えなくなりますし、クレジットカードとよく一緒に発行されるETCカードも利用できなくなりますので、買い物や高速道路の利用に不便が生じます。

 

携帯電話の機種変更の際に分割払いが利用できなかったり、自宅を失って新たに部屋を借りようとしても審査が通らないということもあります。信用情報に事故情報が載ることで、新たにクレジットカードを作ることも難しくなり、ローンを組むことができなくなるなど、生活上の不便さは意外と多いものです。

 

破産手続上は、所有している資産は換価の対象とされ、自宅や車等を失う可能性があります。転居や長期の旅行は裁判所の許可が必要になりますし、郵便物は、破産手続を主導し、破産手続における債権調査、財産換価や債権者への配当等において中核的な役割を担う機関である破産管財人のもとへ転送されます。

 

法人破産手続きの流れ

法人破産の場合、破産手続が開始すると破産管財人が選任され、財産等の調査・換価・配当等を目的とした事件処理がなされていくことになります。

 

これを管財手続といいます。

 

破産手続では、債務者の財産が手続費用を支弁するのに不足する場合には、例外的に、破産管財人が選任されず、破産手続の開始決定と同時に手続を終了させる同時廃止という手続きもありますが、法人破産の場合には、管財事件とし手続を進めることになります。

弁護士へ依頼する

資金繰りの悪化により支払が困難となるなど、事業が行き詰まりそうになった場合には、まず弁護士に相談をしましょう。

 

現在の状況が破産手続を進めるべき状態であるのかどうか法律の専門家の意見を聴取するべきですし、破産により債務処理をするとの方針を決定した後は、債権者や従業員等、多くの利害関係者がからむため、そうした利害調整のための規律が破産法に詳細に定められていますし、契約関係の処理、破産申立における申立書類の作成や財産の保全・処分・換金などの手続きを進める上では、深い法律知識が必要となります。

 

また、状況によっては、破産申立てすることを直前まで秘匿して進めるべきときもありますので、どのように申立てまでを進めればいいのかなども専門家に依頼することで、混乱を少なくできます。

 

そのため、弁護士に破産申立ての手続を依頼するのが一般的です。なぜ経営に行き詰まってしまったのか、その原因や債権者の金額・数などを伝えて、処理を決めていきます。

受任通知の発送

破産手続で処理する方針が決まると、受任した弁護士等は、債権者に対して、「受任通知」により、依頼者たる会社が(経営者も同時に破産申立てする場合には代表者個人も)破産申立て予定であること、会社への取立行為の禁止、債権調査への協力などを伝えます。

 

この受任通知を発送することにより、自己破産する会社の窓口は弁護士へと一本化されます。今後の手続の流れに関する問い合わせや債権者からの請求については、全て依頼を受けた弁護士任せることができますし、債権の取り立てをストップさせる効果もあります。

 

受任通知を発送し返済を止めることで、返済に当てていたお金を会社内に残しておくことができるようになりますので、これを弁護士費用や裁判所に納める予納金など手続に必要な費用に充てることができます。

財産保全

破産手続の依頼を受けると、会社が保有する財産が散逸しないよう、弁護士による財産保全などが行われます。財産保全をするには会社財産をできるだけ正確に把握しなければいけないため、以下のような資料の準備が必要になります。

 

  • 決算書
  • 商業登記簿
  • 預金通帳
  • 代表者印・銀行印
  • 有価証券の写し
  • 税務関係資料
  • 自動車登録証
  • 不動産登記の全部事項証明書
  • その他(会社の財産に関係するもの)

財産の調査

会社財産の中で換価可能なもの(不動産など)については、破産手続開始後に破産管財人が換価することになります。そのため、保有している財産を把握しておく必要があります。保有現金、金庫、預金、事業で用いていた設備・機器、在庫商品、売掛先・貸付先のリスト、不動産、保有車両、有価証券、保険等の資産に関わる資料はできる限り準備する必要があります。

債権者の調査

破産申立てする段階で債権者の情報についても裁判所へ知らせる必要があります。債権者の住所・債権額・債権の種類、担保や保証の有無、リース品の返還の有無、などの情報をまとめておく必要があります。

従業員を解雇する

会社を破産させるにあたり、従業員を雇っている場合は解雇する必要があります。解雇されることによる将来の不安を少しでも払拭するためには、誠意を持って説明・対応する必要があります。

 

破産手続においては、特に、経理関係の仕事に携わっていた従業員の協力が必要になる場合があり、そうした場合には、その従業員に協力を求めなければなりません。また、従業員をどのタイミングで解雇するかも重要になります。

 

破産手続において、従業員への未払分は一般的な債権(=破産債権)よりも優先的な取り扱いを受ける債権になりますが、破産手続において配当によらず随時弁済を受けることができる最優先の債権である財団債権となるのは、破産手続開始前3か月間の未払給与請求権というように時間的な制限があります

 

そのため、従業員を解雇後、破産手続が開始するまでに3か月以上経ってしまうと未払給与は財団債権として扱うことができなくなってしまい、従業員への生活への影響が大きくなってしまいます。

裁判所へ破産の申立て

破産前の準備ができたら、必要書類を揃えて破産の申立てを裁判所に行います。裁判所に提出する書類は会社の状況や裁判所によっても異なりますが、以下のような書類を用意することになります。

必要書類

  • 破産手続開始申立書
  • 報告書
  • 陳述書
  • 財産目録
  • 債権者一覧表
  • 税務申告書及び決算報告書
  • 委任状
  • 法人の商業登記簿
  • 取締役会議事録又は取締役全員の同意書
  • 負債・資産などの疎明資料
  • 預貯金通帳
  • 決算書(直近数期分)
  • 総勘定元帳・売掛台帳・現金出納帳など
  • 法人所有不動産の不動産登記簿謄本・固定資産税評価証明書
  • 法人事務所の賃貸借契約書
  • 有価証券の写し
  • 訴訟継続中の場合、訴訟関係資料
  • 法人名義の生命保険証書・解約返戻金計算書
  • 法人所有車両の車検証・価格査定書
  • 社員の雇用契約書・賃金台帳

参考元:破産申立てに必要な費用と書類など|裁判所

 

破産の申立てをし、破産手続開始原因(支払不能又は債務超過)があると判断すると裁判所は「破産手続開始決定」を行い、破産手続が始まります。

破産管財人を選任

「破産手続開始決定」と同時に、「破産管財人」が選任されます。破産管財人は、破産手続において債務者の財産を適正に評価・換価して債権者への配当を行い、また、経営者個人の破産が申立てをされていれば免責判断の調査などの業務を遂行する役割を担います。

 

破産管財人が選任された後は、財産の管理処分権は完全に破産管財人へ移り、債務者は財産を管理・処分できなくなります。

財産の清算

破産管財人は、法人の財産を売却・換価して、債権者に配当するだけの原資を用意できれば、配当を実施することになります。

債権者集会

法人の破産手続は債権者のための手続であることは先に説明しました。破産手続における利益主体である債権者に対しては、手続きの進行具合といった情報の開示や、債権者の意向を手続に反映させることが必要となるため、それを行う場として債権者集会というのが開かれます。 

 

債権者集会では、破産に至った経緯の説明や財産の換価の状況が主な報告内容となります。第1回債権者集会(財務状況報告集会)、破産管財人の任務終了による債権者集会、手続を廃止する際意見聴取の債権者集会はいずれも開催は従来必要的とされていたものの、現行、開催は任意とされています。ただし、債権者から積極的に開催を求められた場合には、債権者集会が開催されることになることもあります。

配当

破産管財人が会社の財産(資産)をすべて換価した後に、債権者に対して換価した金額を分配する手続を「配当」といいます。配当は債権の種類に応じて優先関係があり、同種の債権では債権額に応じた公平な分配が行われることになります。 

 

法人破産にかかる費用は?

破産手続きをする場合に必要となる費用について説明します。

弁護士費用の相場

依頼する弁護士事務所や破産申立てをする法人の営業所の数・従業員の有無と人数・債権者数・債権額、その他の処理すべき契約関係等の内容によって異なりますが、裁判所への用納金も含め50万円以上は必要になるでしょう。法人の規模によっては何百万円もの費用が必要になることもあります。

実費

破産をすると官報で破産手続が開始したことを公告する必要があり、この官報広告費が実費として必要となります。他にも印紙代や郵便切手代などを合わせると2万円~3万円ほどがかかります。

裁判所へ支払う予納金

破産をする場合には、裁判所に対して「予納金」を支払わなくてはいけません。裁判所によって金額は異なりますし、事業の規模や債権者の数によっても変わってきますが、最低でも20万円はかかることになります。

法人破産にはどれくらいの期間を要する?

財産を債権者へ配当する管財事件の場合は、破産手続が開始してから、債権者集会の開催や、その間の破産管財人による財産の換価業務等があり、債権者に配当できるだけの換価ができれば配手続へと進むことになるため、破産手続の準備期間を含めると、破産手続が終了するまで1年以上かかる場合が多いでしょう。

 

法人破産を弁護士に相談する必要性とメリット

法人破産については、破産法に基づいたさまざま契約関係の処理等が必要になり、また禁止される行為が厳格に定められているなど、深い法律知識が必要になります。また、弁護士が代理人に就いていない場合には、代理人が就いている場合よりもより多くの予納金の納付を求められることがほとんどですので、よほどの事情がなければ弁護士に依頼することをおすすめします。

法人破産の法的なサポートが望める

弁護士に依頼することで、各手続きについて法的視点からのサポートが望めます。さらに、代表者が連帯保証人となっている場合は、どれほどの返済義務が発生し、どのような対応が適切と考えられるか、などのアドバイスも期待できます。

無料相談をやっていれば弁護士の見解が即聞ける

費用については、法人であるのか個人事業主であるのか、そして従業員数・営業所数・債権者数などによっても相談内容の幅は大きく異なります。そのため、相場を算出することは難しいでしょう。

 

ただ、相談のみであれば無料で行っているところもあります。費用が気になるという方は、『まずは相談してみる』というのも1つの手段といえます。実際に弁護士に相談する際は、手ぶらで臨んでも具体的な回答を得られない場合もありますので、 会社の財産状況についての資料(メモでも可)をあらかじめ用意しておくことをおすすめします。

 

  • 預貯金通帳
  • 確定申告書や決算書(損益計算書・貸借対照表・勘定科目内訳表)
  • 財産(不動産・賃貸物件・賃借物件・自動車・売掛金など)に関する一覧表
  • 負債に関する一覧表
  • 事業に関する帳簿・従業員名簿・賃金台帳

 

まとめ

破産はとても勇気がいる選択に感じるかもしれませんが、経営がどうにもうまくいかず返済の目処が立たない中で、決断が遅くなれば、破産による周りへの影響はさらに拡大することになります。債権者や従業員のためにも破産するのであればなるべく早期に手続きを進めるべきです。

 

もし破産をしようか迷っている場合は、破産案件を専門にする弁護士もいるので一人で悩まず相談してみてください。

 

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