【弁護士監修】事業再生の流れと手順を解説

専門家監修記事
債務超過や業績不振など、経営に悩んでいる企業については、倒産手続き以外にも、再建を目標に事業再生を行うという選択肢も考えられます。 「経営は厳しいが、倒産せずに事業を続けていきたい」と考えている企業経営者は、事業再生を選択肢に入れてもよいでしょう。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

債務超過や業績不振など、経営に悩んでいる企業については、事業継続を諦めて倒産手続きを行う以外にも、再建を目標に事業再生を行うという選択肢も考えられます。

 

「経営は厳しいが、倒産せずに事業を続けていきたい」と考えている企業経営者は、事業再生を選択肢に入れてもよいでしょう。

 

似た言葉で企業再生という言葉もありますが、それほど意識して区別する必要はありません。要は債務超過や債務超過となりそうな会社の経営を立て直すことです。

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事業再生の基本概要

この項目では、事業再生とはなにかについて解説します。

事業再生とは

事業再生について、内閣府では以下のように解説しています。

事業再生とは、過剰債務に陥っている企業がコアとなる事業に関して十分な競争力がある場合、これを過剰債務の原因となっている不採算部門から切り離すことなどにより、競争力を回復することです。
引用元:産業再生機構(仮称)に関するQ&A|内閣府

また、事業再生は、広義の事業再生狭義の事業再生に呼び分けられることもあります。

 

広義の事業再生は、現在の事業構造を根っこから改変して、収益が見込めるよう新たに形作ることを指します。

 

例として、事業内容の変更や従業員の再構築などが挙げられます。

 

一方、狭義の事業再生は、今後、債務弁済が困難になると予想される場合、事業の分離を行うなどして、企業としての存続を図ることを指します。

 

例として、不採算部門を切り離し、その分を採算部門へ注力するなどが挙げられます。

 

一般的に『事業再生』は、後者の意味で用いられることが多いようなので、この記事でも、狭義の事業再生に焦点を当てて解説します。

メリット・デメリット

事業再生には、メリットだけでなくデメリットもあります。この項目では、破産などの倒産手続きと比較した場合のメリットとデメリットについて解説します。

 

メリットは、もし事業再生がうまくいった場合、破産手続きをした場合よりも、債権者へ多くの債務返済が可能になるという点。

 

また、これまで築き上げてきた取引関係や社会的信用などについて、大きく評価を落とすことなく事業が存続できる、などの点も挙げられます。

 

デメリットは、債権者から理解・協力を得る必要があるため、交渉のために思わぬ時間が取られてしまうことがあるという点。

 

また、結果的に赤字事業の延命に終わってしまったような場合は、より大きな迷惑を取引先にかけることになる、などの点が挙げられます。

事業再生の種類

事業再生については、法的再生私的再生に分類されます。

法的再生

法的再生とは、裁判所を介して行われる再生手続きを指します。

 

法的再生では、元々定められているスケジュールに沿って手続きが進められるため、債権者それぞれに対して透明性や公平性を確保した上で進めることができます。

 

一方、私的再生と比べると、手続きについて柔軟に対応することが難しく、手続き費用として予納金(最低でも数百万円)を支払う必要もあります。

 

法的再生は、債権者が複数おり、それぞれに対して自主的に対応することが難しい場合などに、用いられることが多いようです。

私的再生

私的再生とは、裁判所を介さずに行われる再生手続きを指します。

 

私的再生では、債権者と債務者で直接交渉をし、双方の合意のもとに手続きが行われます。

 

私的再生では、法的再生のようなスケジュールによらずに手続きを進めることができるため、双方が同意さえしていれば、スピーディーに進めることも可能です。

 

一方、特に債権者が多い場合には、債権者ごとに透明性や公平性を確保することが困難になるケースも考えられます。

 

私的再生は、債権者と債務者の間で信頼関係が築かれており、第三者を介さなくても透明かつ公平な手続きが望める場合などに、用いられることが多いようです。

事業再生を行うための条件

事業再生は、企業規模によらず行うことができます。

 

ただし、事業再生を成功させるためには、事実上、以下の3つの条件を満たしている必要があるでしょう。

 

  • 負債が軽減または解消された場合、資金繰りが好転する見込みがあること
  • 収益力のある再生可能な事業があること
  • 不採算部門の切り離しが可能であること

 

現在抱えている負債が減少しても、すべての事業が赤字のままでは、事業再生が成功したとはいえません。

 

不採算部門を切り離して再生可能な事業へ注力することで、資金繰りは好転するのかなど、自社の現状と今後の予想について、冷静に分析・判断する必要があるでしょう。

事業再生の手順

この項目では、事業再生の手順について解説します。

財務状況や資金状況などの把握

まずは、財務・資金・借入金・担保などについて、現在の自社における実態を把握します。

 

これらの情報は、事業再生方針の策定のための材料となるだけでなく、現状に至るまでの過程や原因を探ったり、今後の防止策を立てたりする際の材料にもなります。

事業再生方針の策定

上記の情報をもとに、『どのような方法で再生するのか』に関する方針を立てます。

 

リスケジュール(返済期間・返済金額の約定変更)だけで資金繰りの好転が望めるケースや、債務免除(※)を受けなければ資金繰りの好転が望めないケースなど、方針の中身は状況によって異なります。

※債務免除
債権者が、債務者に対する債務を無償で免除すること

再生後の事業計画の作成

不採算部門の切り離しや遊休資産の売却など、現状として考えられる改善策を実行することにより、具体的に今後どれほどの売上と利益が望めるか、などを記した計画書を作成します。

 

およそ3年分の予想推移をまとめるのが一般的です。

 

この計画書は、債務免除やスポンサー獲得の際に必要な材料となります。

必要資金の確保

債務免除を受けずに資金繰りの好転が望める場合は、金融機関と交渉するなどして、資金を調達します。

 

また、金融機関からの融資が困難な場合や、債務免除を受けなければ資金繰りの好転が望めない場合は、リスケジュールでの資金確保や、取引先への支払い期間の延長交渉などによって、資金繰りの改善に取り組みます。

スポンサー候補の獲得

事業再生のためには、資金だけでなく社会的信用も必要材料の1つといえます。

 

そこで、スポンサーとなる企業を確保することで、資金提供が受けられるだけでなく、今後の社会的信用を構築するための足がかりにもなります。

再生手続きの準備

債務免除を受ける場合は、中小企業再生支援協議会私的整理ガイドラインなどを介し、それぞれ評議会や主要債権者などから、『再生できる可能性はあるか』について認可を受ける必要があります。

 

その上で、再生計画案の作成に取り掛かります。

 

また、法的再生を行う場合は、手続き申立のための資料や予納金の用意なども必要となります。

再生手続きの開始~終了

法的再生であれば、再生手続きの開始申立を行ったのち、事業再生に至るまでの背景や今後の流れについて、債権者・従業員・取引先に説明します。

 

そして、事業計画や弁済計画についてまとめた再生計画書を作成して、債権者から承認をもらいます。

 

私的再生であれば、事業再生に至るまでの背景や今後の流れについて、債権者に説明したのち、承認をもらいます。 最後に、計画通りに再生手続きを行い、債権者へ弁済を完了したら終了となります。

事業再生を弁護士に相談するメリットと費用

事業再生を行う上では、客観的な視点から冷静に判断を下すことがポイントとなります。

 

その際、知識や経験のある弁護士のサポートを得ることで、事業再生の成功率は上がると考えられます。

 

弁護士に相談することで、「法的再生にするべきか、私的再生にするべきか」「再生方針や事業計画は現実的か」「そもそも事業再生は可能か」などの迷いに対しても、状況に応じたサポートが受けられます。

 

弁護士に相談する際は、事業再生に関する実績が豊富であることや、会社法を取り扱っている事務所を選ぶとよいでしょう。

 

また、事業再生については、税務や会計などの視点からのサポートが必要になる場合も考えられます。税理士や会計士とも関わりのある事務所に相談することで、さらに幅広いサポートが期待できます。

 

費用としては、相談料1万円/1時間業務報酬10万円/1ヶ月というところもあるようですが、これはあくまで一例です。

 

1時間未満であれば相談料無料という事務所や、報酬金は協議した上で決定するという事務所などもあるため、実際に確認を取ることをおすすめします。

まとめ

事業再生については、会社が現在置かれている状況によって、取るべき対応がそれぞれ異なります。

 

したがって、『自社はどう動くのが適切なのか』ということを、客観的かつ冷静に判断する力が必要となります。

 

会社の存続は、経営者だけでなく、従業員にとっても大きな問題です。「倒産は避けたいが、事業再生手続きが十分に進められるか不安」という場合は、弁護士に相談するなどして、サポートを得ることをおすすめします。

事業再生を検討した場合、費用がいくらかかるか、まず確認しましょう。この記事では、法的再生・私的再生・弁護士費用についてご紹介します。

 

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