事業再生にかかる費用とは?私的・法的それぞれ解説!

専門家監修記事
事業再生とは、事業を清算終了とするのではなく、債務免除や弁済期間の繰り延べなどにより財務状況を改善して事業を再構築することを指します。この記事では、まず事業再生の手法をご紹介し、それに伴う弁護士費用を詳しく解説していきます。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

事業再生とは、事業を清算終了とするのではなく、債務免除や弁済期間の繰り延べなどにより財務状況を改善して事業を再構築することを指します。 この記事では、まず事業再生の手法をご紹介し、それに伴う弁護士費用を詳しく解説していきます。

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事業再生の手法は大きく分けて2つ!

事業再生の手法は、大きく分けて2つあります。1つは、裁判所を通して行う「法的再生」、もう1つが裁判所外で行う「私的再生」です。

法的再生と私的再生の、それぞれの違いについて見ていきましょう。

法的再生

法的再生とは、裁判所の関与や監督を受けて債務整理をし、事業再建を目指す手法です。

法的再生の手続きには、「民事再生手続き」や「会社更生手続き」を活用する【再建型】があります。

再建型手続きとは

再建型手続きとは、「民事再生手続き」や「会社更生手続き」を活用し、借入金の返済期間を延長したり、債務カットにより会社の再建を行ったりする手続きのことです。一般的には「法的再生」と言うと、再建型手続きを指す場合が多いです。

再建型手続きを行うためには、下記の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 早期の黒字化が可能である
  2. 手続き費用などの運転資金を用意できる
  3. 債務カットの対象外である税金・社会保険などの滞納額が少ない

再建型手続きには、民事再生手続きや会社更生手続きがありますが、これらの再建型手続きを行っても、債務がすべてなくなるというわけではありません。

つまり、債務カットをしても、今後発生する債務の支払いや、残された債務については支払いを継続しなければなりません。その後の債務支払い能力がなければ、再建型手続きを行うことはできないのです。

また、再建型手続きを行う際は損益状況などの確認のため、弁護士だけでなく公認会計士の協力も必要になります。

清算型手続とは

なお、裁判所の法的手続きには再建型手続きとは別に清算型手続きがあります。これは負債を圧縮してもキャッシュフローが黒字化できないなど事業再生が困難な場合に、事業を清算して終了する手続きのことです。

清算型手続きを行う際の基準は以下の通りです。

①過去の負債を圧縮しても、そもそもキャッシュフローが黒字化できない

②負債が多額であり再建の見通しが立たない

③再建手続きを取っても債権者への配当が清算配当を下回る

このような場合には、再建型の手続きを取るのではなく、清算型手続きを選択せざるを得ないでしょう。

清算型手続には、「破産手続き」と「特別清算手続き」があります。

▶破産手続き

破産手続きは、文字通り債務超過によって債務の支払いが不可能となった場合に、全財産を売却処分し、債権者に分配する手続きのことです。

会社の資産である土地や建物をはじめ、設備、有価証券など換金できるものはすべて換価対象とされます。

▶特別清算手続き

特別清算手続きとは、清算手続きに移行した会社が、裁判所監督下で債権者の多数決によって会社清算をする手法のことです。

同じ清算型手続きである「破産手続き」との違いは、破産手続きが債務者の全財産を債権者に平等に分配するのに対し、特別清算手続きは債権者の多数決で分配額を決定する点です。

特別清算手続きのほうが、破産手続きよりも柔軟な対応ができますが、全債権額の3分の2以上にあたる債権者からの賛成が必要です。

私的再生

裁判所の関与によって行う法的再生とは違い、私的再生は裁判所の関与なしに行います。私的整理を行い、個別に債権者と債務者が話し合いをして和解をし、事業再生を図ります。

 

法的再生のように、「倒産」というマイナスイメージを避けられるというメリットがあるほか、債権者との合意を形成できれば、返済方法などが柔軟な債務弁済計画を作成することが可能です。

 

私的再生を行う場合の条件としては、法的再生の条件に加えて、私的整理において債権を放棄し、事業継続を図るほうがより多くの回収が見込める場合、ということが挙げられます。

 

また、私的再生は法的再生のように裁判所の関与がないため、予納金などの手続き費用がかからず、費用を削減する意味でも有利です。

 

債権者が少ない場合や、債権者が多い場合でも合意を形成できれば、法的再生よりもスムーズに再建へと進むことが可能です。

 

法的再生の費用について

ここからは、法的再生に伴う費用をご紹介します。法的再生における事業再生では、再建型である「民事再生手続き」、「会社更生手続き」が一般的です。

ここでは、これら2つの事業再生における費用について解説します。

民事再生手続き費用

法的再生における再建型の「民事再生手続き」を行う場合の費用は、大きく分けると以下の3つです。

  1. 裁判所への予納金
  2. 弁護士費用
  3. 運転資金やリストラなどにかかる費用

これら3つの費用を用意できなければ、民事再生の申し立てを行うことができません。負債額によっても異なりますが、負債額が膨めば膨らむほど、予納金を含めた多額の資金が必要となります。

各費用についてどのくらいかかるのか、内訳を見ていきましょう。

裁判所への予納金について

以下は、東京地方裁判所で申し立てをする場合の予納金の目安です。

負債総額

予納金目安

5,000万円未満

200万円

5,000万円〜1億円未満

300万円

1〜5億円未満

400万円

5〜10億円未満

500万円

10〜50億円未満

600万円

50〜100億円未満

700万円

100〜250億円未満

900万円

250〜500億円未満

1,000万円

500〜1,000億円未満

1,200万円

1,000億円以上

1,300万円

負債総額に応じた予納金を納めない場合、申し立ては棄却となります。また、予納金は原則、手続き開始決定までに全額支払う必要がありますのでご注意ください(ただし、裁判所によっては分納も可能です)。

そのほか、予納金に加えて1万円分の収入印紙、3,880円分の切手の納付も必要です。

弁護士費用について

裁判所へ民事再生手続きを申し立てる際は、弁護士へ依頼するのが通常で、その着手金が必要となります。基本的にこの着手金は、予納金に応じて変動するとお考えください。

例えば、負債額が小さく予納金についても少額に留まっているのであれば、弁護士への着手金も少額となります。一方で、負債額が大きく予納金も高額なケースでは、着手金も大きくなります。

以下が着手金の目安となりますので、参考にしてみてください(個人の民事再生手続の場合はまた別です)。

負債総額

着手金目安

5,000万円未満

240万円

5,000万円〜1億円未満

360万円

1〜5億円未満

480万円

5〜10億円未満

600万円

10〜50億円未満

720万円

50〜100億円未満

840万円

100〜250億円未満

1,080万円

250〜500億円未満

1,200万円

500〜1,000億円未満

1,440万円

1,000億円以上

1,560万円

また、弁護士費用には、成果の度合いに応じて支払う報酬金(成功報酬)もあります。あくまで目安ですが、民事再生手続きの場合の報酬金は、着手金の2倍程度になるでしょう。

運転資金やリストラなどの費用について

民事再生手続きによって経営再建をする場合、民事再生申し立て後に、現金取引をしなければなりません。つまり、社員への給与、オフィスの賃料、設備代、光熱費、仕入れ代金などを、すべて現金で用意する必要があるのです。

したがって、当面3ヶ月分の仕入れ資金や運転資金を用意する必要があります。これに加えて、先ほど説明した裁判所への予納金、弁護士への着手金、報酬金も必要です。

つまり会社に手持ち資金がある段階でないと、経営再建を図るのは難しいということです。

なおかつ、再生計画によっては、リストラを余儀なくされる場合もあります。社員を解雇する際は、退職金なども用意しなければならない場合があるため、膨大な費用が発生します。

このように、民事再生手続きには多額のお金がかかります。会社に資金的余裕がある段階で専門家へ相談することが望ましいでしょう。

会社更生手続き費用

会社更生は、民事再生と同様に事業継続をしながら、再生を図る再建型の倒産手続きといえます。

 

会社更生手続きの対象は、株式会社に限られており、民事再生手続きのように個人が申し立てを行うことはできません。

 

また、民事再生と比較した場合の最大の特徴は、債権者の担保権行使が禁止されている点と、100%減資が行われ、持ち株の価値がゼロとなることです。

 

会社更生の場合の費用は、手続きが複雑なこと、そして規模の大きい会社を対象としていることから、高額になります。

 

収入印紙および切手代として6万円程度かかります。予納金については裁判所によっても異なりますが、3,000〜5,000万円と認識してください。

 

これに加えて、弁護士費用として着手金が200万円以上かかり、報酬金も加算されます。

 

このように、会社更生は民事再生手続きよりも費用が膨大になります。

 

民事再生を適用するか、会社更生を適用するかは、極めて専門的な判断が必要です。早い段階で、専門家に相談しましょう。

 

私的再生の費用について

私的再生は、倒産した会社を裁判所の関与なしに再建する手法です。

例えば、業績が悪化している会社であっても、採算の取れる部門と採算が悪化している部門が混在しているケースでは、採算が悪化している部門を放出すれば、事業再生の可能性が導き出せます。

このような場合は、法的再生手続きではなく、私的再生手続きのほうが適している可能性があるわけです。説得力のある経営計画を示し、債権者に合意してもらうためにも、事業再生問題が得意な弁護士に依頼しましょう。

私的再生は、法的再生手続きのように、会社が「倒産した」と社会に認識されるのを避けられるほか、裁判所の関与がないため、裁判所に納める費用である収入印紙、切手代、予納金が必要ありません。

私的再生における費用について詳しく見ていきましょう。

弁護士着手金について

私的再生における弁護士着手金は、負債額に応じて決定される場合が多いです。以下が、弁護士着手金の一例です。あくまで一例ですので、詳しくは弁護士事務所にお問い合わせください。

負債総額

着手金目安

5,000万円未満

240万円

5,000万円〜1億円未満

360万円

1〜5億円未満

480万円

5〜10億円未満

600万円

10〜50億円未満

720万円

50〜100億円未満

840万円

100〜250億円未満

1,080万円

250〜500億円未満

1,200万円

500〜1,000億円未満

1,440万円

1,000億円以上

1,560万円

裁判外でのやりとりになるため、予納金の負担がなく、費用を抑えることが可能です。

また着手金のほかに、私的再生が終了するまでの執務対価とし、月額の弁護士費用がかかる場合があります。

成功報酬について

私的再生が終了した際は、弁護士に対する報酬金が発生します。この報酬金は、着手金を基準として設定されている場合が多く、目安としては着手金の倍額と考えておくとよいでしょう。

これもあくまで目安ですので、詳しくは弁護士事務所へご確認ください。

まとめ

事業再生の費用は、法的再生なのか、私的再生なのかで大きく異なってきます。また、法的再生の場合、「民事再生手続き」と「会社更生手続き」でも費用が変わってきます。

いずれにしても、事業再生を決断した際は早めに弁護士に相談し、どのような手続きを取ることが自社に合っているのかを見極めましょう。

事業再生を検討した場合、弁護士のサポートは必要不可欠です。弁護士に相談することで、どのようなメリットがあるのか、どのような弁護士を探せばよいのか紹介します。

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