自社の法務部門を強化するためには、法務職ではなく企業内弁護士(インハウスローヤー)を採用するという選択肢があります。
弁護士なら、法律に関する豊富な知見をもとに自社のビジネスを支えてくれる期待があるでしょう。
ただし、弁護士といっても経験やスキル、人柄などはさまざまです。また法律家としての職務規律や弁護士登録の必要性など、一般の従業員の採用とは異なる部分もあります。
そのため、弁護士を採用するとはどういうことなのかを知っておくことが大切です。
この記事では、企業内弁護士を採用するメリットや採用する際の手続き、注意点などを解説します。
| サービス名 | 特徴 |
|---|---|
| No-Limit弁護士 | 弁護士に特化。さまざまな分野に特化した、経験弁護士の採用に強みがある。 |
| BEET-AGENT | 企業の管理部門人材採用を支援。企業内弁護士の採用支援実績が豊富。 |
企業内弁護士の採用動向
日本組織内弁護士協会によると、企業内弁護士の人数は2001年には66人でしたが、年々増加し2023年には3,184人となっています。
この20年あまりで、企業内弁護士は大幅に増加しています。
また直近の5年間で見ても2019年2,418人→2020年2,629人→2021年2,820人→2022年2,965人→2023年3,184人と、毎年150人~200人ほど増加しています。
このことから、近年における企業内弁護士の採用ニーズは高いことがうかがえます。
企業が弁護士を採用するメリット
企業内弁護士を採用するべきか迷っている場合、弁護士を採用することで得られるメリットを整理するとよいでしょう。
企業が弁護士を採用する主なメリットは、以下の通りです。コストを削減できる
企業で法律問題が発生した場合、顧問弁護士や単発で外部弁護士に相談するのが一般的です。
特に従業員数が多い企業や新しいビジネスを展開している企業などは法律問題が発生しやすく、顧問弁護士を含む弁護士費用が多額になります。
一方、企業内弁護士は自社の従業員なので、顧問料の範囲などを気にすることなく法律問題への対応を内製化でき、コスト削減につながります。訴訟業務が可能になる
企業内弁護士がいることで、訴訟業務が可能になります。訴訟内容を自社の従業員である弁護士が把握するため、スピーディーな対応ができることはメリットです。
ただし、訴訟業務は契約書の作成などとは違うスキルが求められ、準備に時間もかかります。
また、いくら弁護士であっても訴訟経験の少ない弁護士を訴訟業務に従事させることのリスクは、外部の新人弁護士に訴訟業務を依頼することと変わりません。
そのため、訴訟の発生が想定される場合にはあらかじめ実績がある弁護士を採用するか、訴訟代理人は経験豊富な顧問弁護士に任せると安心です。法的リスクコントロールの精度が上がる
企業内弁護士は、自社の事業や経営に関する知識をもっており、社内の情報にもアクセスできます。そのため自社で発生しそうな法的なリスクを事前に把握し、予防策を立てることが可能です。
また、法的なトラブルや紛争を防ぐだけでなく、解決する際にも有利な立場を確保することができます。社内外に対する信頼性が上がる
他社との交渉を行う際、特に海外企業では企業内弁護士がいるケースが多いため、交渉の場面に弁護士がいない場合は信頼性が下がる可能性があります。
企業内弁護士がいればビジネスの交渉に立ち会うことができ、社外からの信頼性を高めることができます。
また、社内に対する信頼性も上がります。
たとえば、従業員との労働トラブルなどが発生しそうな場合でも、法務職ではなく弁護士から働きかけることで交渉が円滑に進む場合があります。
企業内弁護士がいることで従業員からの相談が増えれば、事前に法的リスクを回避することも可能です。外部弁護士との連携がスムーズになる
複雑な法律問題や訴訟対応など、外部弁護士との連携が必要となる場合があります。
その際、コミュニケーションや情報共有がスムーズになり、外部弁護士からのフィードバックを的確かつ迅速に理解し、社内に蓄積させることも可能です。【採用担当者必見】弁護士が企業で働く理由
弁護士というと法律事務所で働くケースが一般的ですが、中には企業で働きたいと考える弁護士もいます。
採用担当者はこの理由を知っておきましょう。それにより、採用のミスマッチを防ぐことができます。ビジネスに直接関与できるから
弁護士は法律の専門家ですが、それだけではなく、ビジネス場にも直接関わりたいと考えて企業内弁護士になるケースは多いです。
弁護士は企業で働くことで契約や紛争、コンプライアンスなどさまざまなビジネスシーンにおける法的な課題に直面し、解決することができます。
また、企業の経営や戦略にも積極的に関与することができ、自分の知識やスキルを活かして企業の成長に貢献することができます。
顧問弁護士など企業法務系の勤務弁護士でもビジネスに関わることはできますが、当事者意識をもってビジネスに関与したいと考える弁護士が増えています。
ワークライフバランスを確保できるから
事務所で働く弁護士は、裁量労働制であることから長時間労働になりがちです。
一方、企業ではテレワークやフレックスタイム制など柔軟な勤務体系が導入されていることも多く、自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。また、有給休暇も比較的取りやすく、プライベートを充実させやすいです。
このため、ワークライフバランスの改善・維持を目的として企業内弁護士になりたいと考える方は少なくありません。
安定した収入を得られる
安定した報酬も、企業内弁護士になりたい理由のひとつです。
弁護士の年収は一般的に高いというイメージがありますが、実際には個人差が非常に大きく、高収入でもハードワークが避けられません。
また案件の数や規模によって、月々の報酬が大きく変動します。ボーナスや退職金などは、支払われないことが多いです。
一方、企業内弁護士の場合は事務所で働く場合より平均年収は下がりますが、他職種の年収よりも高い水準で毎月安定しています。また、ボーナスや退職金などの福利厚生も充実しており、安定した収入を得られます。
こうした安定性を魅力に感じ、企業内弁護士を希望する人もいます。業界や企業に魅力がある
法律事務所で働く場合はクライアントによって対応分野が変化しますが、企業内弁護士になる場合は自分の興味や志向に合わせた業界や企業で働くことができます。
たとえば、ITやエネルギー、医療などの先端技術や社会課題に関わる業界や企業で働くことで自分の専門性を高めることが可能です。また、グローバルな視野を持つことが求められる時代において、海外展開している業界や企業で働くことで国際的な経験やネットワークを築けるきっかけとなるでしょう。
そのため、特定の業界や企業に魅力を感じて企業内弁護士を選ぶというケースもあります。企業内弁護士を採用する際の注意事項
企業内弁護士の採用を検討中の場合、弁護士を採用する意義と、弁護士の職務規律について知っておく必要があります。
あえて企業内弁護士を採用する意義を明確にする
なぜあえて企業内弁護士を採用するのか、その意味を考えておかないとミスマッチが生じる可能性があります。
弁護士が必要な場合、社員として採用するのではなく、外部弁護士や顧問弁護士、社外取締役に置くなど複数の選択肢をとることが可能です。法律問題や毎月の法律相談がほとんどなく、法務職がいればよい場合もあるでしょう。
企業内弁護士を採用することで得られるメリットとデメリットを十分に検討し、弁護士の役割や期待値を明確に定めることが必要です。
弁護士の職務規律
弁護士は、法律家としての職務規律に従わなければなりません。
たとえば、秘密保持義務や独立性の確保などの義務を負っており、これらの義務は企業内弁護士にも適用されます。
しかし、企業内弁護士は、自社の従業員や経営者と密接な関係にあります。そのため、自社の利益や指示に影響されて、職務規律に反する行為をしてしまう可能性も避けられません。
自社の不正行為を隠蔽したり、他社の秘密情報を不正に入手したりすることもできてしまいます。
これらの行為は弁護士としての信用や資格を失うだけでなく、刑事責任や民事責任も問われる可能性があるでしょう。
したがって、企業は弁護士の職務規律について理解し、それを尊重することが重要です。企業内弁護士の採用におけるチェック項目
企業内弁護士の選考にあたっては、以下のポイントをチェックしましょう。
ビジネスや業界に関する知識や経験があるか
企業内弁護士といえども自社の従業員になるわけなので、自社のビジネスや業界に関する知識や経験を持っていることが望ましいです。
そのような人材は自社の事業内容や市場環境を理解し、法的な問題に対して適切なアドバイスや対策を提供してくれるでしょう。
自社の文化や方針に合致するか
自社の文化や方針に合致する人材かどうかも、重要なポイントです。自社のビジョンやミッションに共感し、自社の価値観やルールを尊重できる人材であることで、自社へ高い貢献をしてくれるでしょう。
また文化や風土に合うことで、経営陣や他部署の従業員との信頼関係も築きやすくなります。
コミュニケーション能力や協調性が高いか
企業内弁護士は自社の法務部門だけでなく、他部署や外部の関係者とも積極的に連携し、法的な問題を解決するために情報や意見を交換する必要があります。
そのため、コミュニケーション能力や協調性が高いことも重要なポイントです。
ビジネス的な視点を持っているか
法律の専門家を必要とする場合は顧問弁護士や外部弁護士を活用すれば済む話ですが、企業内弁護士は自社の従業員としてビジネスに貢献してもらう必要があります。そのため法的な問題だけでなく、ビジネス的な視点も持っているかをチェックしましょう。
ビジネス的な視点も持っていることで、自社の競争力や成長性を高めるために必要な契約交渉などにも積極的に関与してもらえます。
弁護士にすべてを求めないことも大切
特に、初めて弁護士を採用するときに、弁護士に期待をしすぎてしまい自社のあらゆる問題を解決できる万能人材のように扱ってしまうことがあります。
しかし弁護士といっても経験値や保有スキルはさまざまですし、得意領域も異なります。企業内弁護士にすべてを求めることは適切ではありません。
すべてを求めることで業務のミスマッチが生じるほか、弁護士に過度なプレッシャーやストレスがかかり、定着しない恐れもあります。
一般の人材を採用するときに、「その人は何ができる人なのか」を考慮するはずです。それと同じように、企業内弁護士の採用も得意分野や領域、経験やスキルなどをよく確認しましょう。
企業内弁護士の採用に必要な手続き
企業内弁護士を採用することになった場合、どのような手続きが必要になるのかを知っておくことが必要です。
企業内弁護士を採用する場合も、基本的には一般の従業員と同じ手続きを行いますが、弁護士ならではの手続きもあります。
一般の従業員と同じ手続き
企業内弁護士を雇用する際には、一般的な従業員の雇用と同様の手続きで問題ないです。
弁護士名簿への登録
企業内弁護士を名乗るためには、日弁連の弁護士名簿に登録する必要があります。弁護士名簿へ登録しない場合、試験合格者であっても弁護士を名乗ることはできません。
弁護士としての登録がない場合、企業は弁護士を雇用することの直接的なメリット(訴訟業務対応や信頼性)は享受できないため、弁護士登録してもらうかどうかはよく考える必要があります。
また弁護士登録の有無によって、後述の弁護士会費の負担有無や個人受任の可否を決定する必要性が変わってきます。
弁護士会費の負担
弁護士登録すると、日弁連および弁護士会の会員となるため、入会金や会費を払う必要があります。
これらの費用負担が弁護士本人になるのか企業になるのかは、企業内弁護士にとって最も気になる条件のひとつです。
そのため、企業は自社で負担するかどうかをあらかじめ決めておきましょう。
企業内弁護士を採用する場合、企業負担とする企業が圧倒的に多いため、個人負担とした場合には入社してくれない可能性もあることを押さえておく必要があります。個人事件の受任可否
弁護士は自己の名で個人的に事件を受けることができますが、企業で働く場合は組織の就業規則や雇用契約によることとなります。
企業としては、副業を一切禁止とするか、受任する場合は上司の許可をその都度得るなど許容範囲を定める対応が必要です。
もっとも、企業内弁護士は自社の従業員でありフルタイムで働くことが一般的なので、時間的な観点から個人受任を認めることが難しいというケースも多いでしょう。
一方、弁護士としての経験を積んでもらいたいという観点から、新人弁護士に限って受任を認める企業もあるようです。企業内弁護士を採用する方法
企業内弁護士の採用方法は、主に5つあります。
企業の採用HPや求人サイトで募集する
自社の採用HPに掲載した求人を見て、弁護士が直接応募してくることがあります。
この場合、応募者が自発的に企業に興味を持っているため、モチベーションや適性が高い可能性がある点がメリットです。また、転職媒体を使わずとも候補者を選考できるため、採用コストも低く抑えられます。
ただし、採用HPだけで十分な人数の候補者を確保できるとは限りません。採用HPがあってもまったく応募がないというケースも多々あるため、ほかの方法と併用するのが一般的です。
ひまわり求人求職ナビで募集する
ひまわり求人求職ナビは、日弁連が運営する、法律関係の求人情報を集めた専門サイトです。
求職者だけでなく採用側も利用料がかからないため、コストをかけずに募集できます。
ただし掲載されている求人企業の数は非常に少ないため、弁護士が転職活動でメイン媒体として使うことは稀です。そのため、求人を掲載しても弁護士の目にとまらず応募がない場合もあります。
求人・転職サイトに求人を掲載する
転職・就職活動の手段として一般的になった求人・転職サイトで、弁護士を募集するケースもあります。
求人掲載にコストがかかりますが、弁護士の登録数が多い特化型の求人・転職サイトであれば、比較的コストパフォーマンス高く採用を進めることができるでしょう。
ただし求人を掲載して待つ受動的な募集スタイルのため、応募者が求める人物像違ってしまうケースが多くなります。応募者を厳選したい・採用を効率化したい場合は、ダイレクトリクルーティングやエージェントの利用がおすすめです。
企業のコネクションを使って紹介を受ける
取引先や顧問弁護士など、企業のコネクションを使って弁護士を紹介してもらう方法です。
コネクションを使う場合、自社の事業内容や文化をある程度理解している人からの紹介なので、適切な人材を紹介してもらえる可能性があります。また紹介された人材も、自社に対して好印象を持っている可能性が高いです。
ただし、紹介された人材が必ず自社にマッチするとは限らないため、通常の採用活動と同じように丁寧な選考は必要です。
ダイレクトリクルーティングでオファーをかける
企業が候補者を探し、直接アプローチする方法です。ダイレクトリクルーティング専用の媒体を使えば、その媒体のデータベースにいる人材にアプローチできます。
SNSやブログなどで活躍しているインハウスローヤーにメッセージを送ったり、セミナーやイベントなどで名刺を交換したりといった活動でもアプローチ可能です。
この方法のメリットは、能動的に優秀な人材を獲得できることです。
ただし、自社で探して選考するため採用工数がかかり、採用担当者の負担は大きくなります。また、ダイレクトリクルーティングのノウハウが蓄積されていない企業では強引なアプローチをしたり的外れな人材に声をかけたりするなど、うまくいかないことも多々あります。
転職エージェントから紹介を受ける
転職エージェントに相談し、適切な人材を紹介してもらう方法です。
特に、弁護士の採用に強みがあるエージェントなら、自社にマッチする専門性の高い人材を紹介してもらえます。
エージェントに対して年収の○%といった紹介料や手数料を支払う必要があるため、コストはかかります。
しかし、基本的に成功報酬型のサービスであり、人材探しや候補者とのやり取りをすべて代行してもらえるため費用対効果が高い方法です。
企業内弁護士のおすすめ採用支援サービス
企業内弁護士の採用は、自社について詳しいだけでなく、弁護士の特性や志向を理解していなければいけません。
はじめて弁護士を採用する場合や、特定の分野に特化した弁護士を採用したい場合は、採用支援サービスを利用することでミスマッチの少ない採用を実現できるでしょう。
No-Limit弁護士

No-Limit弁護士は、弁護士・法務経験者に特化した採用支援サービスです。
経験者の人材紹介に特化しているため、上場企業の企業内弁護士経験者や法務立ち上げ経験者、訴訟の実績が豊富な弁護士など、多様な弁護士人材を紹介してもらえます。
企業内弁護士を採用するなら、まずはNO-LIMITに相談してみましょう。内定者が入社するまで費用が発生しないため、気軽に相談できます。
公式サイト:https://no-limit.careers/recruitment/
BEET-AGENT

BEET-AGENTは、企業内弁護士・法務職など、管理部門人材の採用支援に特化した人材紹介サービスです。
企業で弁護士を採用する場合に必要な準備や有利な採用条件に詳しいため、人材紹介に限らず、採用に関わるフロー全体をサポートしてもらえます。
採用の相談や募集など、入社するまでは完全無料のため、一度担当者にオンラインで相談してみることをおすすめします。
公式サイト:https://beet-agent.com/recruiting/
まとめ
企業内弁護士の採用を検討する場合、弁護士を採用する意義やメリット・デメリットをよく整理することが大切です。
候補者の確保に困ったら、企業内弁護士の採用に強みがある転職エージェントに相談してみるとよいでしょう。
