弁護士は高度な専門性をもつ職業なので、その市場価値は極めて高く、転職先の選択肢は豊富にあります。しかし自分に合った転職先を見つけるのは容易ではなく、転職で失敗してしまうケースも少なくありません。
本記事では、弁護士の転職先の選択肢を紹介したうえで、失敗を避けるためのポイントを解説します。転職先を選ぶ方法や転職先選びのサポートを受けられるサービスの紹介もおこないます。
弁護士におすすめな転職先6選
まずは、弁護士の代表的な転職先を紹介します。
別の法律事務所
法律事務所は、弁護士の転職先としてもっとも一般的な選択肢です。法律事務所では弁護士としての専門性や経験を活かしてさまざまな案件に対応することができます。
しかし法律事務所とひとくちに言っても、大手や中小、専門特化型など規模や特色が異なります。自分の得意分野や志向に合った法律事務所を探すことが重要です。
一般事業会社(企業内弁護士)
コンプライアンスやガバナンスに対する社会的な要請から、近年企業からのニーズが高まっているのが企業内弁護士(インハウスローヤー)です。
弁護士が事業会社へ転職する場合は法務部門に所属し、契約書の作成やチェック、紛争対応やコンプライアンス管理などをおこないます。事業会社は自社のビジネスに内部の人間として貢献できることや、ワークライフバランスが取りやすいことなどから弁護士から人気が高い転職先のひとつです。
金融機関
銀行や証券会社などの金融機関では、金融商品やサービスに関する法律知識や経験を活かして、法務部門や営業部門などで業務をおこないます。
金融法務は専門性が高い分野なので、転職するには金融業界に特化した知識やスキルが必要です。しかしその分、弁護士としての価値を高め、ほかの弁護士との差別化を図ることができます。
コンサルティングファーム
弁護士は資格試験や業務を通じて論理的思考力が自然と備わっているため、コンサルタントとして活躍できる可能性も高いです。
弁護士がコンサルティングファームに転職した場合、クライアント企業の課題に対して法律的な観点からアドバイスや支援を提供することができます。たとえばM&Aや人事、コンプライアンスなどのプロジェクトに参加することが可能です。
自治体
近年、都庁や県庁、市役所などの自治体で自治体職員として働く弁護士が増えています。
自治体が抱える法的課題が年々高度化、複雑化していることもあり、弁護士のニーズが高まっているためです。自治体で働くことで公益性の高い仕事ができるだけでなく、行政事件や行政法務に関する専門性が身につくため、今後のキャリアに活かすことができます。
特許事務所・会計事務所等の士業事務所
法律事務所以外の士業事務所で働くという選択肢もあります。士業事務所では、税理士や司法書士、社会保険労務士といったほかの士業と連携して業務を行うことができます。
ほかの士業と協力することでクライアントに幅広いサービスを提供でき、他士業からの学びで専門性をさらに高めることが可能です。
弁護士の転職先としてニーズが高い業界・領域
転職を成功させるためには、弁護士のニーズがとくに高い業界や領域を選ぶことも効果的な方法です。
IT
IT業界は、技術革新やビジネスモデルの変化が激しい業界です。
そのため、法律問題に直面することも多く、弁護士のニーズが高まっています。特に、個人情報保護や知的財産権、契約書作成や交渉などの分野において弁護士の専門知識や経験が求められます。
金融
金融業界は金融商品・サービスの開発や提供に関する規制が厳しいため、金融機関や金融関連企業は法律遵守やリスク管理に力を入れています。
そのため金融法務やコンプライアンスなどの分野に詳しい弁護士が能力を発揮できるでしょう。また、金融業界は国際的な取引が多いため、英語力や国際法務の知識も活かすことも可能です。
不動産
不動産業界は不動産取引や開発に関する法律や契約が複雑で、多岐にわたる業界です。
そのため不動産会社やデベロッパーはこれらの法律問題に対応できる弁護士を必要としています。弁護士は不動産法務や契約書作成、取引時の交渉といった場面で、弁護士としてのスキルや経験を活かすことができます。
国際法務
国際法務は国際的な取引や紛争に関する法律問題を扱う分野です。
ビジネスのグローバル化が進む中で国際法務のニーズは高まっており、転職のチャンスが広がっています。国際法務では国際法や取引先がある外国の法律などの専門知識、英語などの言語能力が必要とされます。そのため転職難易度は高いですが、転職できれば弁護士としての価値を大きく高めることが可能です。
また、国際法務は文化や習慣の違いにも配慮する必要があるため、コミュニケーション力や交渉力も磨かれます。
弁護士が転職先選びで失敗しないためのポイント
弁護士の転職先は豊富にありますが、選んだ先が必ずしも自分に合っているとは限らず転職が失敗するケースもあります。失敗を避けるためには、以下のポイントに注意しましょう。
転職する目的を明確にする
まずは、転職で何を達成したいのか、転職の目的を明確にすることが大切です。たとえば仕事内容や環境に不満がある場合、それはどのような不満なのか具体的に分析してみましょう。
また、自分が求める仕事の条件や理想像も明確にしておくことが重要です。自分の目的や希望を明確にすることで、転職先の選択肢を絞り込むことができます。
自身の強みを活かせる職場を選ぶ
次に、自分の強みや得意分野を活かせる職場を選ぶことがポイントです。
弁護士としての経験や専門性は一般的には大きく評価されるものですが、弁護士の転職活動における競合は基本的に弁護士なので、弁護士資格があるだけではほかの弁護士との差別化を図ることができません。
そのため経験や業務の棚卸しをおこない、自分の強みや得意分野を明確にしたうえで、それを活かせる職場を選ぶことが大切です。そうすることで自分の価値を効果的にアピールでき、転職後も仕事のやりがいや成果を高めることができます。
年収やポジションは納得できる基準を決めておく
年収やポジションに関してはこだわりがある方も多いことでしょうが、キャリアの可能性を狭めないためにもこだわりすぎないようにしましょう。
ポイントは、納得できる基準を決めておくことです。弁護士は一般的には高収入や高い地位を得られる職業ですが、転職先でそれが保証されるとは限りません。転職先によっては現在よりも年収やポジションが下がる可能性もあるため、自分がどれだけの年収やポジションを求めているのか、最低限のラインや妥協点を決めておくことが大切です。
これにより、応募先が限定されてしまうことを避け、転職先との交渉や決断にも役立ちます。
応募先の情報収集を徹底する
転職後のミスマッチを回避するためには、応募先の情報収集を徹底することが欠かせません。
インターネットや求人サイトなどで応募先の基本情報や評判を調べることはもちろんですが、できるだけ応募先の仕事内容や雰囲気、社風や人間関係などを直接確認することが望ましいです。
たとえば面接や見学などの機会を利用して応募先の弁護士やスタッフと話すことで、より深い情報を得ることができます。情報収集が難しい場合には転職エージェントの活用も有効な方法です。
応募先の情報収集を徹底することで、転職先が自分に合っているかどうかを判断することができます。
弁護士の転職先はどうやって探す?
弁護士は専門性が高い職業なので一般的な転職活動と比べて求人の数が限られています。そのため転職先を探す際には、以下の方法を活用しましょう。
ひまわり求人求職ナビで探す
ひまわり求人求職ナビは、弁護士専門の求人サイトです。
ここでは、法律事務所や企業・団体の法務部などさまざまな弁護士の求人が掲載されているので、気になる求人があれば掲載内容に従って自分で応募することができます。
日弁連が運用する求人サイトなので信頼性が高いのが特徴ですが、求人数が少ないのでこれだけで転職先を探すのは難しい面もあります。
また転職活動のサポートは受けられないため、応募先との日程調整をはじめ、応募書類の添削や面接対策などすべて自力でおこなうことになります。
スカウトサイトに登録してオファーを待つ
スカウトサイトとは、自分のプロフィールを登録しておくと、求人先からオファーが届くサイトのことです。弁護士は専門性が高い職種なので、ハイクラス人材向けのスカウトサイトの利用をおすすめします。
スカウトサイトに登録したらオファーを待ち、気になる求人があれば返信するだけなので、自分で企業や法律事務所を探す必要がありません。忙しくて時間がない弁護士でも効率的に転職先を見つけられるのがメリットです。
また、オファーの数や内容を確認することで、転職市場における自身の価値を判断するのにも役立ちます。
人脈を活用する
弁護士の転職では、人脈が大きな役割を果たします。
たとえば以前に取引のあったクライアントや、修習生時代の知人、弁護士仲間などから転職先を紹介してもらえることがあります。人脈を活用して転職先を探す場合は、自分の強みや志向性などを理解したうえで紹介してもらうことができ、紹介者を通じて応募先の情報を得ることも可能です。
そのため転職後のミスマッチを回避しやすいのがメリットです。ただし、そもそも人脈がなければ使えない方法ですし、紹介された先が必ずしも自分に合うとは限りません。
弁護士転職に強い転職エージェントに相談する
弁護士業界や弁護士の転職事情に詳しい転職エージェントに相談し、求人を紹介してもらうことも有効な方法です。
転職エージェントではキャリア面談を通じて経験やスキル、志向性などを伝えたうえで求人を紹介してくれるので、自分に合った転職先に出会える可能性が高まります。
また、転職エージェントを利用すると一般には公開されない非公開求人に応募できるため、自分で探すよりも質の高い求人にアクセスできるのも魅力です。
弁護士の転職先選びの相談におすすめな転職エージェント5社
最後に、弁護士が転職先を選ぶ際に活用したい転職エージェントを紹介します。
NO-LIMIT
NO-LIMITは、弁護士と法務人材の転職に強い業界特化型の転職エージェントです。
アドバイザーは弁護士業界に精通しているため、経験やスキルを最大限に発揮できる転職先を提案してくれます。専門性の高さを活かした情報収集力が強みで、法律事務所や企業の内情、展望など他社にはない情報をもっているのが魅力です。
企業内弁護士(インハウスローヤー)の転職支援実績もあるので、初めての転職活動も安心して取り組めるでしょう。
公式サイト:https://no-limit.careers/
弁護士ドットコムキャリア
弁護士ドットコムキャリアは、弁護士・法務人材のためのキャリア支援サービスです。
日本最大級の法律ポータルサイト「弁護士ドットコム」のネットワークを活かし、法律事務所や企業など多数の求人を保有しています。求人企業・事務所の内情に詳しいためミスマッチの少ない転職が実現可能です。
MS Agent
MS Agentは弁護士や会計士などの士業と、法務や経理などの管理部門に特化した転職エージェントです。
上場企業の70%以上にあたる企業との取引があるため、事業会社の企業内弁護士(インハウスローヤー)を希望する弁護士にもおすすめです。IPO準備中企業やベンチャー企業など将来性豊かな企業の求人もあります。
パソナキャリア
パソナキャリアは、ハイクラス人材の転職支援に強い転職エージェントです。
弁護士特化型ではありませんが、多くの求人を保有しているため、弁護士が活躍できる求人にもアクセスできます。年収800万円以上の求人が多く年収アップ率も高いため、年収にこだわりがある弁護士におすすめです。
JACリクルートメント
JACリクルートメントは、ハイクラス・ミドルクラスの転職支援で実績がある転職エージェントです。
コンサルタントの質が高いと定評があるエージェントなので、弁護士のキャリアで悩んだら相談してみましょう。外資系企業やグローバル企業にも強みがあるため、グローバル展開する事業会社や国際法務などの分野に興味がある弁護士にも向いています。
まとめ
弁護士の転職先は法律事務所のほかにも事業会社やコンサルティングファーム、金融機関や自治体など多様な選択肢があります。
転職を失敗しないためには、転職の目的を明確にしたうえで、自分の強みや得意分野を活かせる職場を選ぶことが大切です。転職先選びのサポートには、転職エージェントの活用をおすすめします。