日々クライアントと向き合い、その利益のため奮闘する弁護士の仕事は、身体的・精神的に非常にハードです。そのため弁護士を辞めたいと感じることもあるかもしれません。弁護士として培った知識やスキル、経験は大きな財産であり、ほかの仕事への応用も可能です。そのため弁護士を辞めるという選択肢は、必ずしも間違いとはいえないでしょう。
ただ、信念をもって弁護士になった方が後悔することのないよう、辞める前にいくつかやっておきたいことがあります。
本記事では、弁護士を辞めるメリット・デメリットを紹介するとともに、辞めたあとのキャリアの選択肢や辞める前に相談するべき相手などについて解説します。
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弁護士を辞めたい・法律事務所を退職したい代表的な6つの理由
まずは、弁護士を辞める理由を紹介します。
長時間労働で身体がきつい
弁護士の仕事は、長時間労働による身体的な負担が大きいという現実があります。とくに締め切り前や重要な案件を抱えている時期には、夜遅くまでの勤務や休日出勤が常態化してしまうことも少なくありません。
このような過酷な労働環境は、身体的な疲労だけでなく精神的なストレスも蓄積させ、弁護士自身の健康を害する原因となり得ます。その結果、キャリアを再考し、弁護士を辞めるという選択をする人もいます。
ボス等の対人ストレスで精神的につらい
対人関係に起因するストレスは弁護士が辞める大きな要因のひとつです。クライアントとの関係、上司であるボス弁との対立、または同僚や同期との競争は精神的な負担となり得ます。
クライアントからの過度な期待やボス弁からの厳しい指導、同僚や同期などとの人間関係の複雑さは、日々の業務において弁護士の心理的な安全性を損なうことがあります。
これらのストレスは、専門家としてのパフォーマンスにも影響を及ぼし、最終的にはキャリアの転換を考える原因となります。
収入が仕事量に見合わず不安定
法律の専門家として高度な知識と技能を要求される一方で、報酬がその労力や責任の重さを反映していないと感じる弁護士は少なくありません。
新規のクライアントを獲得することの難しさや案件による収入の波、そして長時間労働が常態化していることも収入の不安定さを助長します。とくに、小規模の事務所で働く場合や個人で開業する場合の経済的リスクは大きく、弁護士がほかのキャリアパスを模索する動機となっています。
ほかの仕事に興味が出た
弁護士も自分の職業に疑問を抱き、ほかの仕事に興味をもつことがあります。
たとえば法律の世界で培った論理的思考や交渉スキルは、ビジネスや教育などの分野でも非常に価値が高いものです。また、法律家としての経験は社会的な問題に対する深い理解をもたらし、公共政策やNPOなどでの活動にも役立ちます。
このように、多様な分野への貢献が可能な弁護士が、自身の関心が高い分野へキャリアチェンジすることがあります。
キャリアの先細りを感じる
最も多い例として、債務整理案件のみを対応しているため、他の知識・経験が身に付かず、キャリアの先細りを感じるというものがあります。特定分野に秀でる専門性を高めることはキャリアステップとしては悪くないのですが、いざ転職という選択肢を考えた時、債務整理一本の経験しかない弁護士のキャリア選択肢はかなり狭まります。
所属している弁護士事務所と相性が悪い
所属している弁護士事務所との相性の悪さも、弁護士を辞める要因のひとつです。この問題は、職場環境や価値観の不一致、業務の方向性の違いといった多くの面で現れることがあります。
たとえば事務所の文化が弁護士個人の倫理観や専門性と合わない場合、ストレスや満足度の低下を招き、最終的には職を辞する決断に至ることがあります。チームワークやコミュニケーションの問題も、相性の悪さを感じる大きな要因です。
弁護士を辞めることによるメリット
弁護士を辞める前に、辞めるメリットとデメリットを整理しておくことが大切です。まずはメリットを確認しましょう。
長時間労働と対人ストレスから解放される
長時間労働や対人関係におけるストレスから離れることは、精神的、肉体的な健康を取り戻すための第一歩となります。
長時間労働から解放されることで、個人の趣味や家族との時間を充実させることができ、ワークライフバランスの改善につながります。対人ストレスからの解放は人間関係の質を高め、新たなキャリアパスを探求する余裕をもたらします。
安定した収入や生活を手に入れられる
弁護士を辞めることで、よりバランスの取れた生活と安定した収入を実現する道が開けます。
たとえば企業の法務部門やコンプライアンス関連の職に就くことで、定時での勤務が可能になり、プライベートの時間も大切にできるようになるでしょう。弁護士を辞めることで自身のライフスタイルに合った働き方を見つけるための一歩となるかもしれません。
業務範囲を広げられる
弁護士として培ったスキルセットは法律業界外でも非常に有用です。
たとえばコンサルティングや教育、国際関係など、新しいキャリアパスを探す際に弁護士としての経験が強みとなります。また、弁護士としての厳格な職務から離れることで心身が解放され、創造性や個人的な情熱を追求する余地が生まれることもあります。
このように弁護士を辞めることで業務範囲を広げることができ、新たな可能性へつながります。
弁護士を辞めることによるデメリット
弁護士を辞めることには、いくつかのデメリットもあります。
弁護士としては社会貢献ができなくなる
弁護士は訴訟代理や法律相談など、ほかの職業では許されていない特定の法律サービスを提供できる職業です。
これらのサービスは個人や団体・法人に対して大きな影響を与えられるため、弁護士は社会貢献を果たす重要な役割を担っています。しかし弁護士を辞めるとこれらの独占業務をおこなえなくなると同時に、法律業界特有のネットワークや地位も失うことになり、法律の専門家として社会に奉仕する能力が低下します。
現年収より下がる可能性がある
弁護士を辞めたあとの経済的な影響も無視できない要素です。弁護士は法律の分野において高度な専門性をもつ希少性の高い職業なので、キャリアチェンジした際に同等の収入を得ることは容易ではありません。
そのため弁護士としての職を離れると、現在の年収から大幅に減少する可能性があります。
関連記事:【2024年最新】企業内弁護士の年収は高い?平均・中央値・年齢別・所属別で徹底比較
仕事に対するやりがいを失う可能性がある
弁護士は日々、法律を通じて人々の生活や社会に影響を与えることで大きな達成感を得ています。このようなやりがいはほかの職業では味わえないかもしれません。
どんな目標をもって弁護士になったのか、どのようなモチベーションで弁護士を続けてきたのかによっては、仕事に対するやりがいを失う可能性があります。
弁護士を辞めたあとにおすすめの転職先7選
弁護士を辞めたあとには、どんなキャリアを展開できるのでしょうか?弁護士の知見を生かせる代表的な転職先を紹介します。
事業会社の法務・コンプライアンス部
弁護士から事業会社の法務・コンプライアンス部への転職は、専門知識を活かし新たなキャリアを築くための有効な方法のひとつです。
法務部門では契約書の作成やレビュー、知的財産の管理、訴訟対応など企業の法的リスクを管理する重要な役割を担います。コンプライアンス部門では、自社の法令遵守を確保し、企業倫理を維持するための方針策定や社内教育などをおこないます。
企業内で働くことでビジネスの最前線で法律を応用する機会も増え、キャリアの幅を広げることができます。
関連記事:インハウスローヤーへの転職|インハウスローヤーに求められること、転職のメリット・デメリット、キャリアパスなど徹底解説
ベンチャー企業のCLO
CLO(最高法務責任者)になるキャリアもあります。CLOは企業の法務戦略を主導し、リスク管理や知的財産の保護、契約交渉やコンプライアンスの確保など幅広い業務に携わります。
とくにベンチャー企業では、事業の成長とともに法務部門の重要性が高まるため、CLOは経営幹部の一員として、企業の方向性を形作るうえで中心的な役割を果たすことになります。
コンサルティング業界
コンサルティングファームではM&Aや企業再編、知的財産管理など法的知識が活かせるプロジェクトが多く、弁護士のスキルセットは高く評価される傾向にあります。
コンサルタントとして、弁護士経験を通じて得た交渉術や分析力、論理的思考力を活かすことが可能です。また、法律事務所で培ったクライアントとのコミュニケーション能力も、コンサルティング業界における顧客との関係構築において大きな強みとなります。
不動産業界
不動産取引は複雑であり、民法や宅地建物取引業法、借地借家法など多岐にわたる法的知識が求められます。弁護士はこのような知識や法的思考力があり、不動産業界でおおいに活用可能です。
主な業務としては、建物の明渡訴訟や債権回収業務、契約書作成、不動産ファイナンスの法務などがあり、弁護士として培ったスキルが役立ちます。
金融業界
金融機関や金融に関するサービスを提供するフィンテック企業など、金融業界への転職も可能です。
金融業界では法的な視点から新しい商品やサービスの開発に寄与することや、企業のガバナンスやポリシーの策定に関わることで、ビジネスの成長とイノベーションを支える重要な役割を担うことができます。
IT業界
IT業界でも弁護士としての知見が役に立ちます。とくに法律業務に関するサービス・ツールを提供するリーガルテック企業では、弁護士の経験が大きな強みとなります。
たとえば契約管理システムや文書作成・管理ツールの開発において、法的な観点からのアドバイスや監督が求められることが多く、こうした役割は弁護士のスキルセットに非常にマッチしています。
弁護士以外の士業
弁護士以外の士業に従事することも選択肢のひとつに挙げられます。
弁護士資格があると、税理士や弁理士、社労士など一部の士業資格に登録が可能です。これらの士業へのシフトは、これまでに得た法律の専門知識を活かしつつ、新たな専門分野での深い知識と経験を積むことができます。
自分が興味をもつ分野において、より専門的なサービスを提供することで、新たなキャリアの構築につながります。
弁護士を辞めたことを後悔しないためにすること
後悔しないキャリアを実現するために、弁護士を辞めたいと感じたらやっておきたいことがあります。
自己分析を徹底する
自己分析をすることで、自分の価値観や興味関心、キャリアにおける目標を深く理解できます。
この過程で、弁護士としての経験がどのように今後の道に役立つか、また新たな職業においてどのスキルが活かせるかを考えることができます。
自己分析は新しいキャリアパスを選択する際の不安を軽減し、自信を持って前進するための基盤を築く手助けとなるはずです。
信頼できる人に話を聞いてもらう
家族や友人、司法修習時代の仲間などに相談するのは効果的な方法のひとつです。信頼できる人に話を聞いてもらうことで、自分の感情を整理し、不安や疑問を解消することができます。
また、他者からの助言は、今後の計画を立てるうえでの新たな視点を提供してくれるでしょう。
転職エージェントに相談する
弁護士を辞めたあとのキャリアに関する不安や疑問を解消するためには、転職エージェントとの面談が有効です。エージェントは弁護士の市場価値を理解しており、弁護士のスキルセットを活かせるさまざまな業界や職種を提案することで、新しいキャリアの可能性を広げる手助けをしてくれます。
スカウトサイトに登録してみる
スカウトサイトに登録すると、経歴を見た企業や団体からオファーが届くため、多様なキャリアの可能性を知ることができます。自身がもつ能力や経験を再評価するとともに、法律の専門知識を活かせる異業種への転職も視野に入れることが可能です。
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弁護士転職.jpは弁護士を専門に転職支援サービスを提供しています。業界・業種、勤務地などさまざまな条件で求人検索ができるほか、法曹業界に精通した専任エージェントのサポートを受けることも可能です。
まとめ
弁護士を辞めることで心身のストレスから解放され安定した生活を手に入れられるとともに、新たなキャリアに挑戦する余裕が生まれます。一方で年収の低下ややりがいの喪失も考えられるため、弁護士を辞めるべきか慎重に検討しましょう。キャリアに関する不安や疑問の解消には転職エージェントへの相談が有効です。