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【ひな形あり】内部統制報告書とは?記載事項や作成の流れを解説

2019.3.15
J-SOXの対象となる上場企業は、内部統制の評価結果などを記載した内部統制報告書の作成が必要です。内部統制報告書の提出は義務であり、未提出や虚偽記載などには罰則が科せられます。本記事では、内部統制報告書の作成方法や記載例などを解説します。
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しおかぜ法律事務所
弁護士 山口 海
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内部統制報告書とは、財務報告にかかる内部統制の機能状態に関する評価結果などを記載した書類で、内部統制報告制度である「J-SOX」の対応時に必要となります。

J-SOXは金融商品取引所に上場している全ての企業が対象となるため、上場企業は内部統制報告書を作成・提出しなければなりません。

内部統制報告書が未提出の場合や、重要事項について虚偽記載がある場合などはペナルティの対象となるため、企業は適正な手順に則って作成する必要があります。

本記事では、内部統制報告書の記載事項や記載例、作成の流れや提出期限など、作成時のポイントについて解説します。

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内部統制報告書とは

まずは、内部統制報告書の役割や提出が必要なケース、内部統制報告制度の改訂による変更点などについて解説します。

内部統制報告書の役割・作成理由

内部統制報告書とは、企業の内部統制が適切に機能しているかどうか評価し、その評価結果をまとめた書類のことです。

2000年代に大手上場企業による会計トラブルが多く発生したことを背景に、2008年の金融商品取引法の改正にともなって内部統制報告制度が導入されました。

内部統制報告書を提出して内部統制の状況を公開することで、企業としての透明性を高めることができ、投資家や金融機関などの外部からの信頼性の確保にもつながります。

また、内部統制を整備・運用することで会計不正などの不祥事を未然に防止できるほか、組織全体の意識向上や業務効率の向上なども望めます。

このように、内部統制報告書は健全な資本市場を維持していくために必要不可欠なものであり、提出義務がない中小企業に関しても導入するメリットは大いにあります。

内部統制報告書の提出が義務付けられている企業

内部統制報告書は、全ての上場企業が提出しなければいけません

なお、新規上場企業に関しては特例が適用され、上場してから3年間は監査法人による監査の免除が可能です。

ただし、監査が免除されても内部統制報告書の提出に関しては免除されないため、ほかの上場企業と同様に提出する必要があります。

もし期限内に提出できなかった場合には、罰金などの罰則が科されるおそれがあります。

【2024年4月~】内部統制報告制度の改訂による変更点

内部統制報告制度に関しては改訂がおこなわれ、2024年4月1日から適用が開始されています。

具体的には、内部統制の基本的枠組み・財務報告に係る内部統制の評価および報告・財務報告に係る内部統制の監査の3点に関して、主に以下のような点が変更されました。

項目

主な変更点

①内部統制の基本的枠組み

・内部統制の目的である「財務報告の信頼性」について、「非財務情報も含めた報告の信頼性」に変更

・「リスクの評価と対応」「情報と伝達」「ITへの対応」について、重要事項が追加

・「経営者による内部統制の無効化」に関する適切な内部統制例の明示

・「内部統制に関係を有する者の役割と責任」に関する情報追加

・「内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理」に関する3線モデルの例示

②財務報告に係る内部統制の評価および報告

・「経営者による内部統制の評価範囲の決定」に関する注意点の明確化

・「ITを利用した内部統制の評価」に関する注意点の追加

・内部統制報告書に関する記載事項の追加

③財務報告に係る内部統制の監査

・内部統制監査に関する対応内容の追加、監査人の独立性の明確化

【参考元】「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について|金融庁

内部統制報告書のひな形【ダウンロード可】

ここでは、内部統制報告書のひな形や、実際に企業が公開している内部統制報告書などを紹介します。

内部統制報告書の書式

金融庁ホームページで公開されている、内部統制報告書の書式は以下のとおりです。

内部統制報告書の書式​​​​​​​

引用元:内部統制報告書 第一号様式|金融庁

内部統制報告書の書式

引用元:内部統制報告書 第一号様式|金融庁

なお、内国会社と外国会社で書式が異なり、それぞれ以下のリンクからダウンロードできます。

内部統制報告書のサンプル・記載例

ここでは、実際に企業が公開している内部統制報告書を3つ紹介します。

花王株式会社

花王株式会社が公開している内部統制報告書は以下のとおりです。

花王:内部統制報告書

引用元:花王:内部統制報告書-第119期(2024/01/01-2024/12/31)|日本経済新聞

花王:内部統制報告書

引用元:花王:内部統制報告書-第119期(2024/01/01-2024/12/31)|日本経済新聞

富士ソフト株式会社

富士ソフト株式会社が公開している内部統制報告書は以下のとおりです。

富士ソフト:内部統制報告書

引用元:富士ソフト:内部統制報告書-第55期(2024/01/01-2024/12/31)|日本経済新聞

富士ソフト:内部統制報告書

引用元:富士ソフト:内部統制報告書-第55期(2024/01/01-2024/12/31)|日本経済新聞

株式会社TBSホールディングス

株式会社TBSホールディングスが公開している内部統制報告書は以下のとおりです。

TBS:内部統制報告書

引用元:内部統制報告書-第97期|TBS HOLDINGS

TBS:内部統制報告書

引用元:内部統制報告書-第97期|TBS HOLDINGS

内部統制報告書の記載事項

内部統制報告書には、以下のような事項を記載します。

  1. 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項
  2. 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項
  3. 評価結果に関する事項
  4. 付記事項
  5. 特記事項

なお、重要事項について虚偽記載があった場合は罰則の対象となり、個人には「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金刑または併科(金融商品取引法第197条の2)」、法人には「5億円以下の罰金刑」が科されるおそれがあります(金融商品取引法第207条1項2号)。

ここでは、各記載事項について解説します。

1.財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項

「財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項」では、以下のような内容を記載します。

  • 財務報告や財務報告にかかる内部統制における責任者氏名
  • 財務報告にかかる内部統制について整備・運用する際に用いた基準
  • 代表者・責任者が財務報告にかかる内部統制の整備・運用について責任を有している旨

2.評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項

「評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項」では、以下のような内容を記載します。

  • 財務報告にかかる内部統制における評価手続の概要
  • 財務報告にかかる内部統制における評価を実施した時点
  • 財務報告にかかる内部統制における評価範囲や評価範囲の決定方法・根拠
  • 財務報告にかかる内部統制における評価を実施する際、一般において公正妥当と認められる、内部統制における評価基準に則った旨

3.評価結果に関する事項

「評価結果に関する事項」に関しては、評価結果によって記載内容が異なり、以下のうちいずれかを記載します。

  1. 「財務報告にかかる内部統制は有効である」と評価した場合:その旨を記載
  2. 「一部の評価手続は実施できていないが、財務報告にかかる内部統制は有効である」と評価した場合:その旨・実施できていない評価手続・実施できていない理由を記載
  3. 「重要な欠陥があるため、財務報告にかかる内部統制は有効でない」という場合:その旨・重要な結果の内容・是正されない理由を記載
  4. 「重要な評価手続きが実施できていないため、財務報告にかかる内部統制について評価結果が表明できない」という場合:その旨・実施できていない評価手続・実施できていない理由を記載

4.付記事項

「付記事項」では、以下のような内容を記載します。

  • 財務報告にかかる内部統制の有効性を評価する際、重要な影響を及ぼすもの
  • 期末日以降に実施した、重要な欠陥への是正措置

なお、記載することがない場合は「該当事項なし」と記載します。

5.特記事項

何か特別に記載しておくべき事項がある場合は、「特記事項」として記載します。

記載することがない場合は「該当事項なし」と記載します。

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内部統制報告書の作成方法

ここでは、内部統制報告書の作成の流れや、作成時の必要書類などを解説します。

内部統制報告書の作成の流れ

内部統制報告書は、J-SOXの対応時に必要となる書類です。

J-SOXについては以下のような流れで対応するのが一般的で、内部統制報告書を作成するためには①~⑤の手続きを経る必要があります。

  1. 内部統制に関する整備状況の把握
  2. 把握された不備の対応・整備状況の評価
  3. 内部統制に関する運用状況の把握
  4. 把握された不備の対応・運用状況の評価
  5. 最終的な不備の集計・「開示すべき不備」に該当するかの判断
  6. 内部統制報告書の作成
  7. 監査法人などによる監査・書類提出

内部統制報告書の作成に必要な書類

内部統制報告書を不備なく適正に作成するためには、内部統制に関する検証・評価の内容や過程などについて、目に見える形で文書化しておく必要があります。

内部統制報告書の作成にあたっては「業務記述書」「フローチャート」「リスク・コントロール・マトリックス(RCM)」などの書類を用いるのが一般的で、これらの書類は総称して3点セットと呼ばれています。

以下では、3点セットの概要や作成例などについて解説します。

1.業務記述書

業務記述書とは、財務報告にかかる業務概要や業務の流れなどについて、文章で明確化した書類を指します。

一般的には以下のような形式で作成します。

業務記述書

引用元:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準|金融庁

2.フローチャート

フローチャートとは、部門ごとが担当する業務フローについて、図で明確化した書類を指します。

一般的には以下のような形式で作成します。

フローチャート

引用元:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準|金融庁

3.リスク・コントロール・マトリックス(RCM)

リスク・コントロール・マトリックスとは、「業務ごとにかかるリスク」や「リスクに関する対応」などについて、比較して一覧化した書類を指します。

一般的には以下のような形式で作成します。

リスク・コントロール・マトリックス

引用元:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準|金融庁

内部統制報告書の提出先・提出期限

内部統制報告書の作成後は、EDINETを通じて提出します。

EDINETとは、金融庁が運営する電子開示システムのことで、以下の各リンクから開示書類の提出や閲覧が可能です。

なお、内部統制報告書の提出期限は「事業年度経過後3ヵ月以内」です。

もし期限内に提出しなかった場合、個人には「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金刑または併科(金融商品取引法第197条の2)」、法人には「5億円以下の罰金刑」が科されるおそれがあります(金融商品取引法第207条1項2号)。

さいごに|内部統制報告書を作成するなら、まずは弁護士に相談を

全ての上場企業は、内部統制報告書を作成・提出する義務があります。

作成時は3点セットと呼ばれる書類を準備したうえで、「財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項」や「評価結果に関する事項」などについて漏れなく記載する必要があります。

内部統制報告書は自力でも作成可能ですが、十分な知識・経験がないと不備が生じてしまい、罰則が科されたり企業としての社会的信用に悪影響が生じたりするおそれがあります。

作成手続きについて少しでも不安がある場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

企業法務に注力している弁護士であれば、作成方法のアドバイスや記載内容のチェックなどのサポートを受けることができ、不備なくスムーズな作成が望めます。

当サイト「企業法務弁護士ナビ」では、企業法務に注力している全国の弁護士を掲載しており、初回相談無料・電話相談可能などの事務所も多く掲載しているので、気軽にご相談ください。

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監修者
経営者が抱える多角的な課題に対して法務・財務の両面からアプローチし、経営全体を見据えたサポートをおこなっている。
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編集部

本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。

※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。

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