IPO(株式上場)に必要な費用相場を市場別に解説

専門家監修記事
株式上場(IPO)には、どれくらい費用がかかるのでしょうか?この記事では、新規上場で発生する費用の相場を市場別に紹介するほか、IPO (株式上場)の準備にかかる項目ごとの費用相場もご紹介します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
IPO

IPO、すなわち株式上場を目指すにあたり、まず気になるのが「どれくらい費用がかかるのか」という点ではないでしょうか。上場審査には当然お金がかかりますし、上場後も新株の発行などに継続的な費用を要します。準備に必要な費用もあります。
 

この記事では、新規上場で発生する費用の相場を市場別に紹介するほか、IPO (株式上場)の準備にかかる項目ごとの費用も紹介します。ご自身の会社が上場するためには、一体どのくらいの費用がかかるのか、ご参考にしてください。
 

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市場別|新規上場で発生する費用の相場

新規上場にかかる費用

新規上場にかかる費用には、上場審査料や新規上場料、登録免許税があります。
 

上場審査料・新規上場料

上場審査料や新規上場料の金額は東証1部、2部、マザーズ、JASDAQなど、市場の種類によって異なります

 

東証第1部

東証第2部

マザーズ

JASDAQ

上場審査料

400万円

400万円

200万円

400万円

新規上場料

1,500万円

1,200万円

100万円

600万円

【参考】2018 新規上場ガイドブック│JPX

 

登録免許税

登録免許税は、不動産や会社などの登記・登録の際に課税される税金です。会社設立の際の登録免許税では、税率は0.7%となっており、資本組入額にかけ合わせることで税額を算出します。

資本組入れとは、会社の損失に備えて準備する資本準備金(会社法445条)の一部を資本金に組み入れることをいいます。これにより、会社は株券を追加発行することなく増資を図ることができます。

登録免許税は以下の式によって算出されます。

登録免許税=資本組入額×7/1,000

上場後に会社が支払う費用

上場後に必要となる費用として、年間上場料、株券の発行などにかかる料金、新株の上場にかかる料金などが挙げられます。以下、それぞれについて解説します。

 

年間上場料

上場後は、維持費用を支払わなくてはなりません。維持費用は「年間上場料」と呼ばれており、この価格も市場によって異なります。また、上場時の時価総額によっても価格が変動します。

上場時の時価総額

東証一部

東証二部

マザーズ(※1)

JASDAQ

50億円以下

96万円

72万円

48万円

100万円

250億円以下

168万円

144万円

120万円

100万円

500億円以下

240万円

216万円

192万円

100万円

2,500億円以下

312万円

288万円

264万円

(※2)

5,000億円以下

384万円

360万円

336万円

120万円

5,000億円超

456万円

432万円

408万円

120万円

※1 マザーズでは、上場後3年間は上記の金額の半額となります。

※2 JASRAQでは、年間上場料は時価総額1,000億円以下の場合で100万円、1,000億円超の場合で120万円となっています。

【参考】2018 新規上場ガイドブック│JPX

 

株券の発行などにかかる料金(東証1・2部)

①新株発行の場合

料金=(発行された新株の価格×発行された株式数×9/10,000)+(自己株式が処分された価格×処分された株式数×1/10,000)+(株式が売り出された価格×売り出された株式数×1/10,000)

なお、この場合の料金の支払期日は、新株発行の翌月末日となっています。

 

②株式が他の種類の株式に転換され、その結果として上場株式が新たに発行された場合

料金=転換価格×転換による新株発行数×9/10,000

この場合の料金支払期日は、上半期の新規発行なら8月末日、下半期の新規発行なら2月末日となっています。

 

③新株予約権を行使した結果として上場株式が新たに発行された場合
料金=新株予約権の行使価格×行使により発行された新株数×9/10,000

この場合の支払期日は、②の場合と同様です。

 

新株の上場にかかる料金

新株上場にかかる料金は、以下の計算式から算出できます。

新株上場料金=1株当たりの発行価格×新たに発行する株券などの数×8/10,000

なお、その支払い期限は新株上場日の翌月末日となっています。

 

合併にかかる料金

上場会社の合併の際には、以下の料金が発生します。

合併の場合の料金=(合併に際しての発行株式数+交付する自己株式の株式数)×合併の効力発生日の売買立会における株式の最終価格×2/10,000

その他

TDnetサービス料

上記の費用の他に、TDnetのサービス料として月額3万6,000円がかかります。このサービスによって、決算単信系情報のほか、業績予想の修正、配当予想、株式・新株予約権の発行、自己株式の取得、PR情報といった各種情報の提供が受けられるようになります。
 

IPO (株式上場)の準備にかかる項目と費用

上場にかかる費用や上場後にかかる費用のほか、忘れてはならないのは上場の準備にかかる費用です。

コンサルティング会社への報酬

IPOコンサルティングは、証券会社系コンサル会社・会計士系コンサル会社の2種類に大別されます。

証券会社系コンサル会社は証券取引所の審査実務に精通し、審査に対応するための方法を的確に助言できるという強みがあります。一方、会計士系コンサル会社は、内部統制や決算開示体制の整備に強いという特徴があります。

 

料金の相場は、年間600〜 1,500万円程度となっています。

弁護士への顧問料

株式上場の準備にあたっては、法律面での精査が大切になります。弁護士は会社法や独占禁止法、金融商品取引法などの知識も豊富で、安心して相談することのできる相手と言えるでしょう。

顧問弁護士を雇う場合、月額3~5万円程度が顧問料の相場となっています。これにより軽微な法律相談はすべて依頼可能となりますが、着手金などについては別途必要になります。

顧問税理士への報酬

顧問税理士を雇って業務を依頼する場合も、弁護士の場合と同じように顧問料とそのほか別途での委託費がかかります

顧問料は会社の年商などによっても異なりますが、月額3~15万円程度が相場となっています。そのほかの報酬額としては、例えばIPO顧問料として月額15万円、IPO全面支援として月額80万円というように、依頼する仕事の内容によって決まります。

内部統制の構築|J-SOXコンサル

J-SOXコンサルとは、日本版SOX法による要請にこたえるために、内部統制を構築し、財務報告の信頼を保つコンサルティングです。

J-SOXコンサルは、全社統制や業務処理統制、決算統制、IT統制といった角度から、会社の統制システムを見直します。それぞれの観点から、調査・計画・整備構築・教育運用・評価・是正という過程を踏んで改善を図っていきます。

内部統制にかかる費用は、年間で平均1億6,000万円程度です。

証券会社・監査法人に支払う費用

上場の際には、株式会社・監査法人に対して年間で5,000万円程度の費用を支払うことになります。その内訳は、監査費用800~2,000万円、株式事務代行手数料400万円程度、主幹事証券会社成功報酬500万円程度、コンサルティング費用400~800万円程度となっています。

これらの内訳や合計額は、各々の会社の状況によっても多少は変動します。

証券代行機関に対する手数料

会社の株券の名義書換事務を代行するのが、証券代行機関です。上場した場合は、この証券代行機関に対しても手数料を支払わなくてはなりません。

こちらも会社の状況などによって金額は変わってきますが、費用相場は1,000~8,000万円となっています。

 

まとめ

上場を考える場合には、上場時と上場後に生じる費用について、ともに理解しておくことが必要になります。

 

上場時に発生する費用として、市場に対して支払う上場審査料や新規上場料などがあります。この金額は上場する市場によっても異なります。このほか、登録免許税が課税されます。上場後に継続的に生じる費用として、年間上場料があります。この金額は市場や上場時の時価総額によって決まります。

 

上場の前段階では勿論、コンサルティングや顧問弁護士・税理士費用などの費用も必要となります。上場にはトータルで最低でも5,000万円ほど見積もっておくとよいでしょう。上場を考えている企業は、資金面でも計画的に準備を進めていくことが必要です

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