コーポレートガバナンス・コードとは|目的・内容などを弁護士が解説

専門家監修記事
企業統治に関する東証のガイドラインである「コーポレートガバナンス・コード」とは何か、わかりやすく徹底解説!コーポレートガバナンスの目的やなぜ必要なのか、弁護士が解説します。
富士パートナーズ法律事務所
福本直哉
監修記事
IPO

企業には、株主・債権者・従業員など、さまざまな立場の人が関わっています。

 

そのため、企業はこれらのさまざまな人々の利害を踏まえた上で、公正・迅速な意思決定をすることが求められます。東京証券取引所(東証)では、金融庁と共同して、企業統治に関するガイドラインである「コーポレートガバナンス・コード」を定めています。

 

コーポレートガバナンス・コードの目的や位置づけ、内容などについては、あまり馴染みがない方もいるかもしれません。そこでこの記事では、コーポレートガバナンス・コードに関する全般的な内容について、弁護士が専門的な観点から解説します。

 

 

コーポレートガバナンス強化の為、社外取締役に弁護士の起用を考えている企業様へ

IPO経験者、上場企業の役員経験がある弁護士をご紹介します。

URL:https://outside.no-limit.careers/

この記事に記載の情報は2021年04月06日時点のものです

そもそも「コーポレートガバナンス」とは?

コーポレートガバナンス・コードについて解説する前に、そもそも「コーポレートガバナンス(corporate governance)」とはどういう意味なのかについて押さえておきましょう。

 

コーポレートガバナンスは、日本語では「企業統治」と訳されるのが通常です。しかし、これだけ聞いても何のことだかわからないという方が多いと思います。そこで、コーポレートガバナンス・コードにおける「コーポレートガバナンス」の定義を見てみましょう。

 

「本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・ 従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。」

引用元:金融庁|コーポレートガバナンス・コード

 

この定義をかみ砕くと、コーポレートガバナンスには以下の要素が含まれていると考えられます。

 

  1. 株主をはじめとした、会社の多様なステークホルダー(関係者)の利害を踏まえたものであること
  2. ステークホルダーの視点から見てフェアな形で、かつスピーディに適切な意思決定を行うための仕組みであること

 

 

「コーポレートガバナンス・コード」とは?

ここからは本題である「コーポレートガバナンス・コード」について解説します。具体的な内容に入る前に、まずはコーポレートガバナンス・コードの概要・法的拘束力の有無・適用対象となる企業について見ていきましょう。

企業統治に関する東証のガイドライン

コーポレートガバナンス・コードは、企業がコーポレートガバナンスを実現するための指針として位置づけられているガイドラインです。コーポレートガバナンス・コードを策定したのは金融庁と東京証券取引所(東証)であり、現状では東証のガイドラインとして位置づけられています。

コーポレートガバナンス・コードに法的拘束力はある?

コーポレートガバナンス・コードは、あくまでも東証のガイドラインであり、それ自体に法的拘束力はありません。したがって、違反があった場合でも、制裁金などのペナルティが直ちに課されることはありません。

 

しかし、東証の上場企業にとって、東証のガイドラインを無視する選択肢は事実上存在しないのが実情です。したがって、コーポレートガバナンス・コードは、東証の上場企業にとって実質的なルールとして機能しているといえます。

 

また後に解説するように、東証のその他の上場規則に抵触することによって、違反企業が事実上の不利益を受けてしまう可能性があります。そのため、東証の上場企業は、コーポレートガバナンス・コードを遵守することが強く推奨されます。

 

なお対象企業は、コーポレートガバナンス・コードに掲げられている各原則をすべて必ず遵守しなければならないわけではありません。

 

コーポレートガバナンス・コードには「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)の原則」が採用されており、各原則を採用しないこともできますが、その場合には理由を十分説明することが要求されます。

コーポレートガバナンス・コードはどのような企業に適用される?

コーポレートガバナンス・コードは東証のガイドラインですので、適用対象は東証の上場会社となります。

 

コーポレートガバナンス・コードは、

  1. 抽象的なレベルでの原則を示した「基本原則」
  2. 基本原則をより具体化した「原則」
  3. 原則をさらに具体的な行動レベルに落とし込んだ「補充原則」

 

の3段階によって構成されています。

 

このうち、東証第一部・第二部の上場会社については全原則、マザーズおよびJASDAQの上場会社は基本原則についての遵守が求められています。一方、東証の上場会社でない会社については、コーポレートガバナンス・コードが適用されることはありません。

 

しかし、より良い企業統治を実現するという観点からは、コーポレートガバナンス・コードの内容を参考にすることは有用と考えられます。

 

コーポレートガバナンス・コードの内容を解説

コーポレートガバナンス・コードの各原則の内容について詳しく解説します。

 

コーポレートガバナンス・コードの原文は、以下の東証の公表資料をご参照ください。
参考:「コーポレートガバナンス・コード」(株式会社東京証券取引所)

 

コーポレートガバナンス・コードは、5つの基本原則と、それに連なる原則・補充原則から成り立っています。以下では、5つの基本原則ごとに章を分けて解説し、必要に応じて原則や補充原則の内容にも触れていきます。

株主の権利・平等性の確保

<基本原則1>

上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

 

株主は、会社の実質的な所有者としても捉えられる、会社にとってきわめて重要な存在です。

 

そのため、株主の権利と平等性を確保することへの要請はきわめて強く、コーポレートガバナンス・コードでも第1の基本原則として掲げられています。なお基本原則1では、単に保有株式数に応じた形式的な権利を認めるにとどまらず、「実質的な」株主の権利と平等性の確保を要請しているのが特徴といえます。

 

たとえば、以下のような対応が会社に求められます。

少数株主の意見に耳を傾ける

・株主の判断の役に立つような情報を適確に提供する

 

さらに、株主の利害に対して重大な影響を及ぼすような事柄については、きちんと株主に対して説明をすべきであることも指摘されています。たとえば、以下の内容については、株主に対する説明や開示を適切に行う必要があります。

 

・資本政策の基本的な方針

・株式の政策保有に関する方針

・買収防衛策

・増資、MBOなど

・役員や主要株主などとの取引

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

<基本原則2>

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

 

株主以外にも、会社はさまざまなステークホルダーが存在します。基本原則2では、会社が従業員・顧客・取引先・債権者・地域社会などのステークホルダーと適切に協働する必要性が指摘されています。

 

特に原則2-1や2-3において、企業の社会的責任(CSR)や社会・環境問題への対応について言及されていることは、企業が社会的存在として活動すべき点を強調する記述として特徴的といえるでしょう。

 

さらに原則においては、

 

  • 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保
  • 従業員による内部通報
  • 従業員の資産形成のための企業年金制度

 

などについても言及されています。

適切な情報開示と透明性の確保

<基本原則3>

上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

 

上場会社は、多くの人々からの投資対象になるため、財務基盤や経営戦略などの透明性も重要になります。

 

金融商品取引法などの法令上要求される開示義務を果たすことは当然ですが、基本原則3ではそれに加えて、上場会社が任意に情報開示を主体的に行うべきことを提唱しています。

 

情報開示をするにあたっては、ひな形的な記載に終始するのではなく、情報の利用者にとってわかりやすく役に立つ内容とすることが大切です。

 

原則3-1では、上場会社が情報開示をすべき事項の例として、次のものを挙げています。

・経営理念、経営戦略、経営計画

・コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方、基本方針

・経営陣幹部、取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続き

・経営陣幹部の選解任、候補者の指名を行うに当たっての方針と手続き

・経営陣幹部の個々の選解任、指名についての説明

 

また原則3-2では、外部会計監査人による監査の重要性についても指摘されています。

取締役会等の責務

<基本原則4>

上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、

(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと

(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。

 

会社の経営を株主より委託された者として、取締役などの経営陣が果たす役割は大きいといえます。その一方で、取締役で組織される取締役会の役割も非常に重要です。取締役会は、会社の意思決定機関であると同時に、個々の取締役に対する監督機能を果たす必要もあります。

 

基本原則4では、会社の持続的成長・中長期的企業価値の向上を目指すために、取締役会がその責務を適切に果たすべきことが提唱されています。なお会社の体制によっては、取締役会の責務の一部を監査役会などの別の機関が果たすべき場合もあり、その際にも基本原則4が適用されます。

 

基本原則4に関連して、各機関が果たすべき役割について言及されている部分を抜粋して見てみましょう。

 

取締役会の役割

各原則の中では、取締役会の役割として以下のものが挙げられています。

  • ・会社の経営理念などを確立し、戦略的な方向付けを行うこと
  • ・経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
  • ・独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

監査役・監査役会の役割

監査役・監査役会については、自らの守備範囲を過度に狭くとらえるのではなく、能動的・積極的に権限を行使して経営陣に対する監督機能を果たすべきことが言及されています。

独立社外取締役の役割

取締役の中でも、特に独立取締役の役割・責務について言及されていることも大きな特徴です。そもそも取締役には、大きく分けて、経営の方針や経営改善に向けた意思決定と他の取締役への監督という2つの役割が課されています。

 

独立社外取締役は、これらの役割をより客観性の強い立場から果たすことが期待されているといえるでしょう。なお、上場会社においては、独立社外取締役は少なくとも2名以上選任することが必要です(原則4-8)。

 

また、誰を独立社外取締役に据えるかについても、独立性を実質的に担保することに主眼を置いた判断基準を策定・開示すべきとされています(原則4-9)。

株主との対話

<基本原則5>

上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

 

会社(の経営陣)が株主と相対する場は、主に株主総会になります。しかしそれ以外の場においても、会社が株主と建設的な対話を行うことが、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にとって大切であることが指摘されています。

 

原則5-1では、こうした株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取り組みに関する方針を策定・開示することを会社に求めています。また、経営戦略や経営計画を策定・公表するに当たっては、その内容などを株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うことが重要です(原則5-2)。

 

コーポレートガバナンス・コードを遵守しないとどうなる?

コーポレートガバナンス・コード自体に法的拘束力がないということは、すでに解説したとおりです。しかし、コーポレートガバナンス・コードを遵守しないと、企業にとって事実上の不利益が及んでしまう可能性も否定できません。

 

以下では、東証の上場企業がコーポレートガバナンス・コードを遵守しないとどうなってしまうのかについて解説します。

直ちに罰則の対象になるわけではない

コーポレートガバナンス・コードには法的拘束力がないので、罰則がすぐに適用されるわけではありません。たとえば役員が逮捕されたり、会社や役員が罰金などを課されたりすることもありません。

コーポレート・ガバナンス報告書において理由説明が求められる

しかし、すでに言及したとおり、コーポレートガバナンス・コードには「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」の原則が採用されています。

 

つまり東証の上場企業は、コーポレートガバナンス・コードを「遵守する」か、さもなければ「遵守しない理由を説明する」かのどちらかの行動を取らなければなりません。

 

コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない場合の理由説明については、上場会社が東証に対して提出するコーポレート・ガバナンス報告書に記載することが求められます。

(参考:「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(日本取引所グループ)

理由説明がない場合には公表措置等の対象となる可能性がある

コーポレート・ガバナンス報告書において、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しないことの理由が十分に説明されない場合、東証の上場規則違反に該当します。

 

(コーポレートガバナンス・コードを実施するか、実施しない場合の理由の説明)
第436条の3
 上場内国株券の発行者は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を第419条に規定する報告書において説明するものとする。この場合において、「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲については、次の各号に掲げる上場会社の区分に従い、当該各号に定めるところによる。
(1) 本則市場の上場会社
 基本原則・原則・補充原則
(2) マザーズ及びJASDAQの上場
 会社
 基本原則
 追加〔平成27年6月1日〕

引用元:有価証券上場規程436条の3

 

この場合、東証の判断によって、理由説明義務に違反した企業名が公表されてしまう可能性があります(同規程508条1項1号)。

 

(公表措置)
第508条
 当取引所は、次の各号に掲げる場合であって、当取引所が必要と認めるときは、その旨を公表することができる。
(1) 上場会社が第4章第2節の規定に違反したと当取引所が認める場合
(1)の2 上場会社が第427条の2第1項の規定に違反したと当取引所が認める場合
(1)の3 上場会社が第421条の3(第4項を除く。)又は第421条の4の規定に違反したと当取引所が認める場合
(2) 上場会社が第4章第4節第1款の規定に違反したと当取引所が認める場合
(3) 上場会社が会社法第331条、第335条、第337条又は第400条の規定に違反した場合
2 第435条から第439条までの規定のいずれかに違反した場合又は前項第3号に該当した場合は、上場会社は、直ちに当取引所に報告するものとする。
 一部改正〔平成20年2月6日、平成21年8月24日、平成24年4月1日、平成25年7月16日〕
引用元:有価証券上場規程508条

 

上場企業にとっては、東証によって企業名が公表されることは、コーポレートガバナンスがしっかりしていない会社であるという烙印を押されることと同じです。会社の評判を落とさないためにも、上場会社には「コンプライ・オア・エクスプレイン」の原則に従った行動が求められているといえます。

 

コーポレートガバナンス・コードへの対応は弁護士に相談を

上記で解説したように、東証の上場企業にとって、コーポレートガバナンス・コードへの対応は非常に重要です。対応を検討する際には、コーポレートガバナンス・コードの内容はもちろんのこと、東証の上場規則の内容についても踏まえる必要があります。

 

それぞれ細かい決まりも多いため、漏れのない対応をするためには、弁護士に相談することをおすすめいたします。弁護士は、コーポレートガバナンス・コードと東証の上場規則の内容を全体的に把握したうえで、依頼者の企業にとってどのような形でコーポレートガバナンス体制を築くのが最適かをオーダーメイドで検討いたします。

 

コーポレートガバナンス・コードへの対応について検討中の企業の方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

 

まとめ

コーポレートガバナンス・コードは、法的拘束力はないものの、東証の上場企業にとって事実上のルールとして機能しています。東証の上場企業には、「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」の原則に基づいた行動が求められています。

 

すなわち、コーポレートガバナンス・コードを遵守するか、さもなければ遵守しない理由を説明することが必要です。不遵守の理由説明を怠った場合、東証によって企業名が公表され、企業の評判に傷がついてしまうリスクがあります。

 

そのため、コーポレートガバナンス・コードへの対応を疎かにするのは得策ではありません。コーポレートガバナンス・コードへの対応については、コードや上場規則の内容を踏まえて行う必要があるため、弁護士に相談することがおすすめです。

 

自社のビジネスにとってプラスになる形での対応を検討するためにも、まずは一度弁護士にご相談ください。

ページトップ