
病院やクリニックを経営するうえでは、診療ミスをめぐる患者とのトラブル、医療未払いの発生、診療報酬に関する行政対応など、さまざまな問題への対応が欠かせません。
これらの対応を誤ると、経営に悪影響を与える可能性もあります。
そこで頼りになるのが、医療分野に強い弁護士です。
弁護士は、些細な相談から突発的なトラブル対応まで幅広く対応してくれます。
信頼できる弁護士を見つけておけば、安心して日常業務に専念できるでしょう。
本記事では、医療分野に強い弁護士の探し方や選び方のポイント、弁護士に相談できる主な内容や依頼時の費用相場などを解説します。
自院にあった弁護士を見つけるための参考にしてください。
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医療法務に強い弁護士の探し方
医療業界には、ほかの業種とは異なる特有の法的課題があります。
このような法的課題に適切に対応してもらうためには、医療法務に強い弁護士に相談・依頼することが重要です。
ここから、医療法務に強い弁護士の主な探し方を3つ紹介します。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるので、自社に合った方法を選びましょう。
知り合いや業界関係者に紹介してもらう
まず、信頼できる知り合いや業界関係者から、弁護士を紹介してもらう方法が考えられます。
知人からの紹介であれば、弁護士の人柄や実際の対応など、ネットでは得られない情報を事前に把握できます。
弁護士を探す手間も省けるでしょう。
ただし、紹介された弁護士が必ずしも自社の業種や相談内容に精通しているとは限りません。
また、弁護士の相性が合わなかった場合に断りづらさを感じるケースもあるので、注意が必要です。
弁護士会に適任者を紹介してもらう
各都道府県にある弁護士会を通じて、弁護士を紹介してもらう方法もあります。
弁護士会では、地域の事情に詳しい弁護士を無料で紹介してもらえる点がメリットです。
ただし、候補者の選択肢が少ない場合があり、希望する分野に精通した弁護士を紹介してもらえるとは限りません。
紹介された弁護士が自社のニーズに合っているかをよく確認しましょう。
インターネット検索で探す
インターネット検索を活用して医療分野に強い弁護士を探す方法もあります。
ホームページを公開している法律事務所であれば、事務所の強みや対応分野、料金の目安などを確認することができます。
たとえば「医療法務 弁護士」など、業界や専門分野に絞った検索ワードを使えば、自社のニーズに合った弁護士を効率よく探せます。
また、弁護士ポータルサイトなどを活用すれば、さまざまな弁護士から自院に合った弁護士を探すことも可能です。
一方で、インターネット上の情報が古かったり、記載内容が事実と異なっていたりするケースもあるため、情報の正確性を見極めたうえで判断しましょう。
医療法務に強い弁護士を選ぶときのポイント
ひと口に「医療法務に強い弁護士」といっても特徴は弁護士によってさまざまです。
自院に合った弁護士を選ぶためには、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
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それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
医療分野に関する専門知識や豊富な解決実績があるか
医療機関では、患者対応に関する問題、厚生局への対応など医療業界特有の法的課題が生じやすく、取り扱う内容も多岐にわたります。
これらの問題に適切に対応するためには、弁護士が医療業界の法制度や実務に精通していなければなりません。
医療機関を継続的にサポートしてきた実績を持つ弁護士であれば、過去の経験を活かし、的確なアドバイスや解決策を提案してくれる可能性が高いでしょう。
素早い対応が期待できるか
医療機関では、問題発生時の対応の遅れが事態の悪化につながります。
とくに、患者や職員とのトラブル、行政機関への対応の際には、迅速な判断と対処が求められるでしょう。
そのため、法的トラブルに素早く対応してくれる弁護士を選ぶことが重要です。
対応スピードの目安や、緊急時の優先対応の可否を事前に確認しておくと安心です。
夜間・休日の依頼にも対応しているか
医療機関では、夜間や休日にトラブルが発生する可能性も十分に考えられます。
そのため、営業時間外でも連絡が取れるか、緊急のメールに当日中に返信できるかなど、緊急時の対応内容や対応スピードも確認しておきましょう。
人柄がよく、相性がよいと感じるか
医療分野について精通しており、豊富な実績のある弁護士であっても、実際にやり取りをする中で「相談しづらい」と感じてしまうこともあるはずです。
弁護士との顧問契約を締結する前には、人柄や対応の丁寧さ、相談のしやすさを確認しましょう。
相性がよく、信頼して相談できる弁護士なら、今後のトラブルについても安心して対応を任せられるはずです。
医療法務に強い弁護士に相談・依頼する場合の費用
ここからは、医療法務に強い弁護士に相談・依頼する場合の費用相場を解説します。
なお、医療法務を弁護士に依頼する場合、主に以下2つの依頼形式が考えられます。
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では、それぞれの依頼形式ごとに弁護士費用の相場を紹介します。
顧問契約の場合|一般的には月額5万円程度~が相場
医療機関と弁護士の間で顧問契約を結ぶ場合の費用相場は、月額5万円程度です。
サービス範囲には、定型的な契約書のリーガルチェックや日常的な法律相談への対応が含まれるのが一般的です。
ただし、複雑な契約書の作成・チェックや患者からのクレーム対応などを依頼する場合は、別途追加費用が発生する可能性があります。
また、複数の病院を運営している法人の場合、それぞれの拠点に対応する必要があるため、顧問料が高くなる傾向があります。
医療機関の規模や対応範囲に応じて、適切な料金プランを選びましょう。
スポットで依頼する場合|依頼内容などによって大きく異なる
顧問契約を締結せず、トラブルが起きた際にスポットで依頼する場合、料金相場は依頼内容によって大きく異なります。
たとえば、簡易なリーガルチェックを弁護士に依頼する場合、一般的な費用相場は1件あたり5万円~15万円程度ですが、医療過誤などの専門的な案件対応を依頼する場合、数十万円から数千万円がかかることもあります。
弁護士と顧問契約を締結しておけば、月額の顧問料を支払う代わりに、通常の依頼費用よりも割安でサービスを受けられるケースも多いです。
継続的に相談する必要があれば、顧問契約も検討しましょう。
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医療分野において弁護士に相談・依頼できることの例
医療分野について、弁護士にはどのような業務を任せられるのかが気になる方も多いでしょう。
医療分野では、主に以下のような業務を弁護士に相談・依頼できます。
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ここから、それぞれの具体的な業務内容について解説します。
医療過誤・医療事故への対応
医療分野に強い弁護士には、医療過誤や医療事故への対応を依頼可能です。
医療機関において、万が一医療過誤や医療事故が発生してしまうと、患者や家族から損害賠償請求を受けたり、警察による捜査を受けたりする可能性があります。
また、当事者間で事実関係に争いがあれば、裁判などに発展してしまうケースもあるでしょう。
その点、弁護士に相談・依頼することで、事実関係の整理や交渉・訴訟への準備を早期に進めることができ、スタッフの精神的・時間的な負担を軽減できます。
患者からのクレーム対応
弁護士には患者からのクレーム対応も任せることができます。
医療機関では、どれだけ患者に対して誠実に対応していても、スタッフの対応に関する不満や診療や治療方針、手術内容に関する不満など、患者から一方的かつ理不尽なクレームを受けることがあります。
ただでさえ神経をとがらせている中で、医師や看護師などのスタッフ自身がクレームに対応するとなると、精神的な負担が大きくなってしまい、さらなるトラブルに発展する恐れもあるでしょう。
その点、弁護士に相談・依頼することで、状況に応じて法的な観点から冷静かつ適切な対応が可能です。
院内の混乱を最小限にとどめ、病院の信頼やスタッフの安心感を守ることにもつながります。
口コミ・レビューなどによる風評被害への対応
医療分野に強い弁護士であれば、理不尽な口コミや嫌がらせレビューなどによる風評被害にも適切に対応することができます。
近年では、医療機関を選ぶ際に口コミやレビューを参考にする人が増えています。
そのため、インターネット上の医療機関の評価は集患に大きな影響を与える重要な要素です。
しかし、口コミやレビューの中には、事実と異なる内容や悪意のある投稿が含まれていることもあります。
これらの投稿によって医療機関の評判が損なわれると、患者が離れてしまうなど、風評被害につながるでしょう。
その点、弁護士に相談・依頼すれば、投稿内容が名誉毀損や業務妨害に該当するかを判断したうえで、投稿者への警告・削除要請といった法的措置を講じるなど、法的な観点から迅速かつ適切に対応できます。
広告や契約書などのリーガルチェック
医療分野に強い弁護士であれば、広告や契約書などの手続きにおいて法的な問題がないかをチェックすることも可能です。
医療機関では、雇用契約や賃貸借契約、医療機器の保守契約など、日々さまざまな契約を取り交わします。
契約書の内容は医療機関の運営に直結するため、内容をよく確認せずに締結すると思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
また、契約書は一度作成して終わりではなく、法改正や実務の変化に合わせて見直す必要があります。
また、医療広告については、医療法・薬機法・景品表示法などのルールに反していないかチェックが欠かせません。
広告の表現次第では、規制違反を問われるリスクもあります。
弁護士に相談・依頼すれば、契約書や広告が法的に問題がないかを的確に確認し、必要に応じて内容の修正や改善をサポートしてくれます。
医療費未払い問題への対応
医療分野に強い弁護士は、医療費の未払い問題についても適切な対応が可能です。
医療機関では、高額な入院費回収や外国人患者からの医療費回収に悩まされるケースがあります。
医療費が長期にわたり支払われないと、経営への悪影響を与えかねません。
医療費未払いに関しては、まず病院内で対応マニュアルを整備し、一定の手順に沿って請求するのが基本ですが、それでも支払われないケースもあります。
未払いが発生してから時間が経過すると、時効によって請求権が消滅するリスクがあるので、早めに対応しなければなりません。
その点、弁護士に相談・依頼すれば、内容証明郵便を送付するなど、法的な手段を用いて支払いを促せます。
迅速な対応が可能なので、請求権消滅のリスクを減らせるでしょう。
人事労務環境の整備
弁護士と顧問契約を結んでおけば、労務環境整備についても相談することができます。
医療機関では、とくに時間外労働の上限規制や健康配慮措置に留意する必要があるため、スタッフの人事労務環境の整備が欠かせません。
適切な対応を怠ると、職場の秩序が乱れ、医療提供体制そのものに支障をきたすおそれがあります。
最悪の場合、法的トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
そこで、弁護士に相談・依頼することで、法令に即した就業規則の整備や雇用契約書の見直し、労働時間・休憩時間の管理体制の構築など、実務に即した助言を受けられます。
また、トラブルが発生した際には、迅速かつ適切に対応し、紛争の深刻化を防げます。
労使間トラブルへの対応
医療分野に強い弁護士であれば、患者とのトラブルだけでなく、従業員とのトラブルにも対応が可能です。
医療機関では、未払い残業代の請求、職員同士のいじめやパワーハラスメントの発生など、病院と従業員間でさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
トラブルを放置すると、職場環境の医療体制が悪化する可能性があるので、早期対応が重要です。
また、弁護士に相談・依頼することで、適切な事実確認や内部調査の方法について助言を受けられます。
必要に応じて、就業規則の整備や指導記録の適切な残し方についてもアドバイスをもらえるでしょう。
厚生局による個別指導・監査のサポート
医療分野に強い弁護士には、厚生労働省からの個別指導や監査のサポートも依頼できます。
個別指導とは、厚生局が保険医や医療機関に対して、保険診療・診療費請求に関する資料を確認し適切におこなうよう指導することをいいます。
また、監査とは厚生局が保険医医療機関や保険医に対し、保険診療や診療費の請求に不正がないかチェックすることです。
個別指導や監査の結果、診療や請求内容に問題があると判断されると、行政処分が科される可能性もあります。
最悪の場合、保険医療機関の指定が取り消される事態にもつながりかねません。
その点、事前に弁護士に相談・依頼しておけば、手続きの流れや必要な対応について的確なアドバイスを受けられます。
さいごに|医療分野の法律トラブルへの対処は弁護士のサポートが必要不可欠
本記事では、医療分野に強い弁護士の選び方や探し方、依頼できる業務内容などについて詳しく解説しました。
医療法人を経営していれば、法的トラブルに直面することは避けられません。
対応が遅れると、裁判に発展するリスクもあります。
トラブルに適切に対応するには、専門的な知識が不可欠なので、早めに弁護士に相談することが重要です。
とくに医療分野に強い弁護士であれば、専門性の高い視点からの対応が期待できます。
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