業務上横領とは?被害を受けた場合における企業の対応などを詳しく解説

専門家監修記事
業務上横領は、大手の企業や中小企業を問わず起こりうる犯罪であり、事業に重大な影響を及ぼします。ガバナンス不全やコンプライアンス体制を確保するために必要な考え方や、万が一被害を受けた場合の対応策について弁護士が解説します。
旭合同法律事務所
川村将輝
監修記事
クレーム・不祥事
この記事に記載の情報は2025年05月02日時点のものです

導入文

企業活動において、内部不正は大きなリスクのひとつです。

その中でも「業務上横領」は、企業の資産を直接的に侵害し、発覚すれば信用失墜、取引停止、株価下落など深刻な影響を及ぼしかねません

特に近年は、SNSによる情報拡散や、コンプライアンス重視の社会風潮により、企業の内部不正対応には迅速かつ適切な初動が求められるようになっています。

本記事では、企業法務と刑事事件対応に精通した弁護士の視点から、業務上横領とは何か、どのようなリスクが潜んでいるのか、そして不正を防止し、万一発覚した場合の具体的な対応方法について、実務的な観点からわかりやすく解説します

発覚後の適切な初動対応は、損害を最小限に抑え、企業価値を守るために不可欠です。ぜひ自社のリスク管理体制見直しに役立ててください。

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本記事のポイント

  1. 業務上横領の基本的な定義と、横領罪・背任罪など他の犯罪類型との違い
  2. 業務上横領が起きやすい社内リスクポイントとその兆候
  3. 不正発覚後に企業が取るべき具体的な対応フロー
  4. 横領防止のための実践的な内部統制・コンプライアンス施策
  5. 弁護士に相談する際の準備事項とメリット

業務上横領とは?

そもそも業務上横領とは何か、犯罪の構成要件の内容など基本的な知識について、ポイントを解説します

業務上横領の定義と構成要件

業務上横領は、刑法第253条に規定されている犯罪類型です。条文は次のとおり定められています。

刑法第253条

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して遂行する事務を広く指し、雇用契約に基づく従業員の行為に限らず、取締役や委託契約先の担当者なども含まれます。

業務上横領罪が成立するためには、以下の5つの構成要件を満たす必要があります。

  1. 業務従事者であること
     例:会社の経理担当者、営業職員、店舗責任者など。
  2. 占有していること
     例:集金した封筒で保管している、預金口座情報や入出金を管掌している等。
  3. 他人の物であること(自分の所有に属しないこと)
    例:会社の売上金など
  4. 横領行為
     例:現金を自己口座に振り込む、在庫を無断で売却するなど。
  5. 不法領得の意思及び犯罪の故意
     例(不法領得の意思):自己の利益のために資金を流用する意思があること。

※故意は、1から4に該当する事実に対する認識及び認容

横領罪の本質に関わる部分として重要な要素は、5点あります。

  • 占有・支配を観念することができる物であること
  • 占有している物であること
  • 業務性
  • 所有権を侵害する実態を伴うこと
  • 権限の逸脱行為であること

1つ目は、利益横領が不可罰とされていることとの観点で重要です。

空想上の財産など実体がなく人が支配する状態が観念できない場合、それは利益として法律上保護される場合はあっても、横領罪として罰せられるものではありません。

2つ目は、窃盗罪など占有侵害を処罰する犯罪との区別の観点で重要です。

3つ目は、業務上横領罪として刑罰が重くなる根拠として重要です。

4つ目は、法益侵害性を考える上で重要です。

単に民事上何らかの債権債務関係の中で、自分が相手方に対して未払いとなっている金銭がある場合、観念的には相手方の所有に属すべき金銭であるとしても現実的に所有権を侵害するものではなく、犯罪ではありません。

5つ目は、背任罪との区別の観点で重要です。

他の横領との違い

「横領罪」には複数の類型が存在し、業務上横領はその中でも特に重い法定刑が定められています。他の横領との違いを整理しましょう。

類型

定義

法定刑

単純横領(刑法第252条)

自己の占有する他人の物を横領

5年以下の懲役

業務上横領(刑法第253条)

業務上占有する他人の物を横領

10年以下の懲役

遺失物等横領(刑法第254条)

遺失物・漂流物など占有を離れた他人の物を横領

1年以下の懲役または10万円以下の罰金

単純横領と業務上横領の違いは、占有の性質にあります

業務上横領では「業務として占有している」という特別な信頼関係が背景にあるため、裏切った場合の違法性がより大きく評価され、刑罰が重くなっています。

また、遺失物等横領は拾得物や漂流物を占有するケースに限られ、発生場面が大きく異なります。

背任(特別背任)との違い

業務上横領と混同されやすい犯罪に「背任罪」があります。

背任罪(刑法第247条)は、他人のために事務処理をする者が自己または第三者の利益を図るため、本人に損害を与える行為を対象としています。

簡単に言えば、

  • 業務上横領:占有している財産を自己のものとする行為
  • 背任:財産自体は直接占有していないが、権限を濫用して損害を与える行為

という違いがあります。占有の有無と権限逸脱・濫用行為という2つのポイントがあります

※実務上は前者で判断されることも多いですが、横領行為の本質論の要素として権限逸脱行為と濫用行為の違いが挙げられます。本記事では、割愛します。

さらに、取締役などの会社役員が行う背任行為については、会社法第960条に特別背任罪が定められています。

こちらも10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という重い刑罰が科されています。

窃盗や詐欺との違い

窃盗罪(刑法第235条)や詐欺罪(刑法第246条)と業務上横領も、しばしば比較されることがあります。

類型

行為内容

占有関係

業務上横領

既に占有している他人の物を自己のものとする

○(自己占有)

窃盗

他人の占有を侵害して物を奪う

×

詐欺

欺罔行為で相手の物や財産上の利益を移転をさせる

×(欺罔により任意移転)

つまり、業務上横領は「占有を得た後に裏切る犯罪」、窃盗は「占有を侵害する犯罪」、詐欺は「だまして占有を得る犯罪」と位置付けることができます

特に業務委託契約の場面では、実際の占有状況が窃盗か横領かを分ける重要な判断基準になります。

業務上横領が起こりうるリスクとなるポイント

企業経営における実務上、業務上横領が起こりうるリスクとしては、どのような点が挙げられるでしょうか。

現金保管

業務上横領が最も起こりやすい場面の一つが、現金を直接取り扱う業務です。

特に、小口現金や売上金の管理がルーズな環境では、少額の不正が長期間にわたり繰り返されるケースが多く見られます。

そして、現代のように金融機関や各種資金移動・決済サービスを通じて、デジタル空間上ログが残ったり認証セキュリティが一般化しているところ、現金はアナログで、「足がつきにくい」態様です。

そのため、帳簿やレシートの改ざん、出納帳の不整合などで不正が隠蔽されるリスクが高まります。

金庫やレジに対するアクセス制限、定期的な実地棚卸しや監査などのチェック体制が構築されていない場合には、特に注意が必要です

属人的なバックオフィス体制

経理や出納業務、購買管理などの重要な業務を、特定の社員一人に任せきりになっており、特に客観的に業務状況を把握し難いような仕組みの中で属人化した業務体制では、業務フローの透明性が損なわれ、ミスや不正が発見されにくくなります。

長年同じ職務に従事している社員が「この人しかわからない」「この人がいないと業務が止まる」といった状態になると、内部監査や経営陣の関与が困難になり、不正が温存されやすくなります。

また、業務フローが本人の経験や暗黙知に依存している場合、仮に別の人に業務を引き継いだとしても全貌の把握に時間がかかり、不正の痕跡を見逃すおそれがあります

稟議フローや社内規程の不備・形骸化

不正を防ぐためには、企業内で明確なルールを設け、そのルールが実際に運用されていることが重要です。

しかしながら、実態としては「承認印があればOK」といった形式的なチェックのみで、内容の妥当性を精査しないまま決裁が通ってしまう企業も少なくありません。

たとえば、社内規程に「2名以上の承認を必要とする」と書かれていても、実務では上長が形式的に承認しているだけの場合、実質的な抑止力とはなりません。

社内規程が存在するだけでなく、定期的な見直しと研修を通じて、従業員にその趣旨が周知徹底されていることが必要です

情報セキュリティの不備

デジタル化が進む現代では、業務で扱う情報の大半が電子データとして管理されています。

特に経理・出納システムやワークフローシステムにおいて、アクセス制限やログの取得・保存が適切に行われていない場合、操作履歴が追えず、不正を証明することが困難になります。

また、USBメモリや私用クラウドなどを通じたデータの持ち出しが物理的に可能な環境であれば、証拠隠滅が容易になり、不正の発覚が遅れる要因となります。

情報セキュリティは「情報漏洩を防ぐ」観点だけでなく、「不正行為を記録し、発見・抑止する」観点からも、企業の内部統制における中核的要素です

押印権限やフローの不透明さ

銀行印や実印などの重要な印章が、誰の管理下にあり、どのような手続を経て使用されているかを明確にできているでしょうか。

もし、印章の保管者とその使用権限者が同一人物であれば、チェック機能が働かず、勝手に契約書や出金書類を作成・押印されるリスクが極めて高くなります。

さらに、承認フローにおいて「上長の印鑑はあるが、実際は確認していない」といった慣習があると、決裁権限の濫用が横行する原因となります。

押印管理台帳の整備や、電子印を含めた使用履歴の記録、そして承認権限の分離といった措置を講じることが重要です

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業務上横領の予防策

業務上横領を未然に防止し、企業として重大な不正がなく適正な業務運営を恒常的に維持するには、どのような対策が必要でしょうか。

属人化を防ぐ

業務上横領の温床となるのが、「この人にしかできない」という属人化です。

特定の社員だけが会計システムの操作権限を持ち、出納帳簿の記帳や振込処理などを一手に担っている場合、不正を企てたとしても気づかれるまでに時間がかかります。

このようなリスクを回避するには、業務の分担と職務分掌を明確にし、相互チェックの体制を構築することが不可欠です。

たとえば、取引データの入力者と承認者を別の人物に設定し、一定期間ごとにジョブローテーションを実施することで、不正を継続的に行うことを容易にできない状態にできます。

また、積極的なシステム導入により、アーキテクチャ的に人の悪意が介在することなく資産や資金を管理できる仕組みづくりが重要です

社内規程の整備

内部統制の第一歩は、ルールの明文化です。

「就業規則」「会計処理規程」「稟議規程」「不正防止規程」など、横領防止に直結する社内規程を整備し、全従業員に周知することが重要です。

規程があっても、現場で形骸化していては意味がありません。

また、規程を形だけの存在にしないためには、定期的な研修やeラーニングを通じて、従業員に内容を浸透させることが求められます。

特に新入社員や中途採用者には、業務フローに沿ったリスク教育をタイミングよく実施することで、モラル醸成と予防意識の定着を図ることができます

資金や財産の動きの透明性確保

属人化を防ぐ仕組みづくりの観点で触れましたが、不正の抑止には、「誰が・いつ・何をしたか」が明確に記録され、いつでも遡って確認できる状態を整備することが効果的です。

ワークフローシステムや経費精算システム、会計ソフトなどは、可能な限り操作履歴(ログ)を残す機能が備わったものを選定し、ログの定期的な監査を行いましょう。

たとえば、稟議申請から決裁、入金・出金処理までの一連の業務がすべて電子化されていれば、不正行為が行われたとしても、その痕跡をログからたどることができます

また、ログ管理を行っているという事実自体が、社員への強い抑止力として働きます。

専任の経理担当やCFOの配置

中小企業では、外部の目による監査体制が十分でないことが多く、結果として内部不正が長期間にわたって見過ごされることがあります。

こうした状況を防ぐために、外部の会計士や弁護士による監査・レビューを定期的に導入することが有効です。

たとえば、年に1回の外部監査だけでなく、四半期ごとの簡易レビューを実施し、帳簿と現金の突合、在庫と伝票の整合性確認など、ポイントを絞ってチェックすることで、重大な不正を未然に防ぐことができます

また、外部CFOや内部監査専門のコンサルティングサービスを活用することで、費用を抑えつつ高い抑止効果を得ることが可能です。

ネットバンキングを通じた3Dセキュア

多くの業務上横領は、インターネットバンキングを利用した不正送金によって行われています。

パスワードの使い回しや、振込承認が1人で完結している場合は、非常にリスクが高くなります。

これを防ぐには、以下のような対策が有効です。

  • 振込実行時にワンタイムパスワードを導入する
  • 二段階認証(生体認証+パスワードなど)を義務化する
  • 承認者と実行者を分けるダブルチェック制度を導入する
  • 海外送金や高額振込には管理職の追加承認を設ける

資金移動のプロセス自体にシステム的な制約を課すことで、担当者の独断による操作を困難にし、不正行為へのハードルを高めることができます。

業務上横領の事案が起きた際に企業が知っておくべきリスク

業務上横領が発覚した際、企業が直面するのは「お金がなくなった」という損害だけではありません。

事案が公になることで、企業活動全体に波及する複合的なリスクを認識しておく必要があります。

レピュテーションリスク

最も深刻な影響の一つが、企業の信用失墜です。

不祥事が報道された場合、顧客や取引先、株主などのステークホルダーからの信頼を失い、長期的なブランドイメージの低下につながります

SNSで拡散された情報は一度広がると回収が難しく、ネット上の風評が企業に定着する可能性もあります。

特に上場企業や大手企業では、メディア対応の遅れや不適切なコメントがさらなる炎上を招くリスクがあり、広報部門や弁護士と連携したクライシスマネジメントが求められます。

信用リスク

不正が発覚した企業に対しては、金融機関や取引先が「リスクのある企業」と評価するおそれがあります

たとえば、融資条件の悪化や、取引限度額の縮小、新規契約の停止などが生じることがあります。

これにより資金繰りに影響を及ぼし、経営上の意思決定にもブレーキがかかる事態となり得ます。

税務会計リスク

業務上横領による損害金は、基本的には法人税法上の損金として認められません

特に、不正の発覚が過年度に遡る場合、修正申告が必要になり、追加の法人税・住民税・事業税に加えて、加算税や延滞税が課されることもあります。

そもそも、業務上横領が行われ、被害額も大きく一定期間継続的に行われていたような場合、財務会計書類に何らか不備が生じていたり、実態と合わないような経理処理が見えない形で行われている可能性が高いと考えられます。

そうした書類を前提にしていた税務申告についても、追徴課税のリスクがあります。

また、監査法人との関係にも影響を与え、監査報告書への「重要な不備」の記載や意見不表明といった重大な影響が出ることも想定されます。

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業務上横領の事案が起きた際の対応の流れ

業務上横領の疑いが生じた場合、企業としては冷静かつ迅速に対応を進める必要があります。

対応の遅れや初動の誤りが、事態の深刻化や証拠の隠滅、外部からの信頼喪失を招くからです。

以下に、実務で取るべき対応の流れを時系列で整理します。

被害の特定

まず行うべきは、具体的な被害の内容と範囲を特定することです。これが、簡単なようで、ある意味最大の難所ともいえます。

実際上証拠で犯罪性が十分に立証できる部分と、極めて怪しいが決定的な証拠がない部分、あるいは情況証拠はあるが立件するには困難を要する部分、犯罪性が全くない部分などが混在し、グラデーションがある場合があるためです。

実際に犯罪として立件したり、損害賠償をしたりアクションを取るには、証拠で裏付けられる被害を特定していく必要があります。

そこで、会計帳簿や出納帳、電子取引履歴、伝票などから、着服された金額、対象となる取引、影響のある部門や取引先などを洗い出します。

過去にさかのぼって数ヶ月~数年分を確認する必要がある場合もあり、負担が大きくなるため、社内だけで対応が難しい場合は、弁護士や会計士の関与を検討すべきです

被疑者の特定

証拠や状況証拠をもとに、関与が疑われる従業員を特定します。

社内のPCログやネットバンキングの履歴、社内でのヒアリング内容などを組み合わせ、誰がどのタイミングで不正行為に関与したのかを特定していきます。

直接証拠がない場合でも、状況証拠が積み重なれば、懲戒手続の正当性を確保する根拠になります。

客観的な証拠や記録の確認

証拠保全は早期に行う必要があります。

不正を働いた本人が証拠隠滅を図る可能性もあるため、帳簿やデータベース、ログファイルなどをコピー・保存し、元のデータが改ざんされないよう保護します

最近では、デジタルフォレンジック(電子証拠の収集・分析)の手法が活用されるケースも増えています。

法務担当や弁護士と対応検討

被害額や本人の反省状況、返還の意思などを考慮し、刑事告訴するか、民事的な損害賠償請求で終結させるか、慎重な判断が必要です。

懲戒処分についても、就業規則との整合性、解雇の有効性、裁判等のリスクを検討する必要があります。

こうした法的対応を検討する際には、労務・企業法務に強い弁護士の関与が極めて重要です

民事と刑事両面での対応検討

横領による損害を回収するには、民事訴訟での損害賠償請求に加え、資産保全のための仮差押や仮処分も検討されます。

一方、刑事告訴を行うことで、捜査機関による調査が進み、刑事罰の対象とすることができます。

刑事事件として扱うことで、抑止力となり、社内外に対して毅然とした姿勢を示すことが可能です

被疑者への対応

本人からの聴取は、複数名で臨み、記録を残すことが重要です。

刑事手続が進んでおり、被疑者に弁護人が付いている場合には、弁護士を同席させたうえで、事実確認や返還交渉、退職合意などの対応を進めます。

誓約書や示談書の作成にあたっては、顧問弁護士等によるチェックが不可欠です

社内外への公表と再発防止策

不祥事への対応では、「説明責任」も問われます。

特に上場企業や取引先が多い企業では、適切な時期に公表し、再発防止策を同時に発表することが信頼回復の鍵となります。

社内にも、改善策を文書化して共有し、組織全体でコンプライアンス意識を高める必要があります。

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業務上横領の事案が起きた際に必要な証拠例

対応を進める上では、証拠の収集と保全が最重要課題のひとつです。

ここでは、横領の立証に役立つ主な証拠例を具体的に整理します。

種類

具体例

ポイント

入出金記録

銀行口座の取引明細、振込履歴

被害可能性がある取引の日時や振込先の名義と時系列の整理

出納帳・帳簿

日計表、経費帳、領収書

横領行為の可能性がある不自然な内容がないか、改ざん痕跡がないか確認

社内決裁書類

稟議書、支払申請書

押印者・承認者の真偽、出納長と整合するかの確認など

社内体制がわかるもの

組織図など

被疑者の立場として業務性や占有者の地位の証拠として

電子ログ

会計ソフトの操作履歴、PCのアクセスログ

占有の立証、ログインIP、操作時刻の整合性

メール・チャット履歴

支払指示、確認メッセージなど

占有、不法領得の意思や故意の立証、犯行手口の立証:指示系統・認識のズレを明確にする

防犯カメラ映像

金庫・倉庫・出納室などの映像記録

時系列で状況を再現可能か

雇用契約書・規程類

就業規則、懲戒処分規定

処分の根拠があるかどうかを確認

上記のような社内の書類を調査分析し、法的には法務担当や顧問弁護士が協働しつつ構成要件に照らして整理しつつ、検討していくことが重要です

まとめ

業務上横領は、企業内部で発生する最も深刻なコンプライアンス違反の一つです。

損害額が多額に及ぶだけでなく、発覚時には企業の評判を大きく傷つけ、事業の継続性にも悪影響を及ぼします。

本記事では、以下のような観点から業務上横領のリスクと対応について詳述してきました。

  • 業務上横領の法的定義と、他の犯罪類型との違い
  • 社内に潜むリスク要因とその兆候
  • 実効性ある内部統制と社内ルールの整備
  • 不正発覚時の初動対応と法的手続
  • 必要となる証拠と弁護士との連携

社内で少しでも「おかしい」と感じることがあったら、それは予兆である可能性があります。

早期対応によって被害を最小限にとどめるとともに、企業全体として不正に「気づける」「対応できる」仕組みを整備することが、経営上の重要課題と言えるでしょう。

業務上横領は企業にとって深刻な問題であり、適切な初動対応と再発防止策の構築が重要です。

自己流で対応する前に業務上横領被害回復に精通した弁護士にご相談いただくことをおすすめします

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