従業員が頻繁に無断欠勤する、無断欠勤したまま出勤してくれない場合、当該従業員の退職も検討するかと思います。相当期間、無断欠勤の状態が継続する場合、解雇の対象になり得るでしょう。しかし、状況によっては、「無断欠勤」を理由に解雇することが不当解雇に当たり、訴訟に発展する可能性もあります。
この記事では、無断欠勤が続く従業員に対する正しい対応についてご紹介します。
無断欠勤が続けば解雇対象となる
無断欠勤が相当期間続く場合、解雇の対象になり得ます。しかし、無断欠勤が続いたという理由で直ちに解雇が正当化されるものでもありません。解雇の有効性は、無断欠勤の期間、理由、態様に左右されます。
例えば、無断欠勤の理由が、うつ病などの精神的疾患や連絡が取れなくなるような病気・ケガによる場合、直ちに解雇することは正当化されにくいかもしれません。もし、会社に休職制度があればそれを適用し、休職制度の中で処理する方が無難と言えます。
他方、無断欠勤について何も正当な理由がないような場合は、労務提供義務の重大な不履行と評価されてもやむなしといえます。この場合、本人に欠勤の理由を繰り返し確認すると共に出勤を命じてください。このような対応を尽くしても出勤が確保されない場合は解雇処分もあり得ると思われます。
なお、正当な理由のない無断欠勤が繰り返され、幾度となく注意をしても改善せず、かつ無断欠勤により会社業務に具体的支障が生じているような場合は「懲戒解雇」できる可能性があります。ただし、懲戒解雇はその有効性が認められるハードルが極めて高いので、これを選択するべきかどうかは慎重に判断する必要があります。あくまで最後の手段であると認識してください。
<労働契約法第15条>
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
無断欠勤をした・している社員に退職してもらう方法
無断欠勤が解雇の対象となることは上記のとおりですが、解雇はその有効性が争われやすく、そうなった場合紛争化してしまいます。そのため、無断欠勤を繰り返すような従業員には解雇に及ぶ前に退職勧奨をして任意で辞めてもらう方が安全と言えます。
退職勧奨による退職
退職勧奨とは、会社側が当該従業員に任意で退職するよう求める行為です。あくまで話合いにより任意の退職を促す行為であるため、原則として適法です。
しかし、「従業員が退職を断っているのに執拗に退職を求める」などは退職勧奨ではなく「退職強要」として違法となる可能性があります。あくまで従業員の自由意思による退職を求めるものであることは十分注意してください。
就業規則にのっとって退職手続きを行う
例えば、就業規則に「1ヶ月以上無断欠勤が続き音信不通の場合、自然退職扱いとする」と規定されている場合、これに基づいて退職処理を行うこともあり得ます。もっとも、当該規定により当然に退職(雇用終了)が認められるかどうかは、最終的には裁判所の判断になり得ます。
単なる解雇事由の一つと評価されて、解雇と同様に厳格な審理の対象となる可能性もありますので注意しましょう。
就業規則にのっとって懲戒処分を行う
上記は従業員を解雇するという前提での話ですが、解雇の前段階として無断欠勤を理由として懲戒処分を行うことは実施すべきでしょう。
懲戒処分は会社の行う制裁処分であるため、就業規則に定める懲戒事由に明確に該当する必要があります。また、就業規則に懲戒の手続があれば原則としてこれを遵守する必要があります。まずは就業規則の定めから懲戒処分が可能かどうかを確認してください。
まとめ|無断欠勤による退職トラブルは弁護士に相談しよう
無断欠勤はそれ自体非常識な行為であり、当然解雇が許されると誤解しているケースもあります。しかし、問題はそれほど簡単ではありません。不安があれば、無断欠勤による退職トラブルについて企業労務に詳しい弁護士に相談し、専門的な目線で対応してもらいましょう。
また、企業労務に詳しい弁護士に依頼する際は、無断欠勤に関するトラブルの実績があるかどうかもポイントです。多くの弁護士事務所で初回の法律相談は無料の場合が多いですから、ぜひ比較検討してみてください。