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長年地域医療に貢献してきた病院の閉院を決断することは、経営者にとって非常に重い選択です。
「患者様や職員にどう説明すればよいのか」「手続きの進め方がわからない」「莫大な費用がかかるのではないか」「法的なトラブルに巻き込まれないか」といった不安を抱えている方も多いでしょう。
実は、2024年の医療機関の倒産件数は64件、休廃業・解散件数は722件と過去最多を更新し、今後も増加が予想されています。(【参考】 「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」帝国データバンク)
本記事では、病院閉院の手続きから費用、スケジュール、患者・職員への対応、そして弁護士に相談するメリットや最適な弁護士の探し方まで、網羅的に解説します。
病院の経営が厳しくなったとき、すぐに閉院を選択するのは早計かもしれません。
実は、閉院以外にも病院の存続や地域医療への貢献を継続できる方法があります。
近年、医療機関のM&Aが活発化しています。
事業譲渡のメリットは以下の通りです
ポイント事業譲渡を検討する場合、病院の財務状況が極度に悪化する前に動き出すことが重要です。
早めの相談により、より良い条件での譲渡が可能になるかもしれません。
経営コンサルタントと協力して、以下のような改善策を実施することで、病院を存続させられる可能性があります
病床数を減らしたり、診療科を限定することで、経営を安定させる方法もあります。
地域のニーズに合わせた規模での運営により、持続可能な経営が実現できるかもしれません。
閉院を決断した場合、計画的に手続きを進めることが重要です。
一般的に、閉院までには6ヶ月から1年程度の準備期間が必要となります。
医療法人の場合、理事会で閉院の決議を行います。
決議内容には以下を含めます
保健所、厚生局、医師会などへ閉院の意向を伝え、必要な手続きについて相談します。
注意
この段階では職員や患者様への告知は行いません。
情報が漏れると混乱を招く可能性があるため、慎重に進めることが重要です。
閉院の3ヶ月前を目安に、患者様への告知を開始します。
告知方法は以下の通りです
全職員を対象とした説明会を開催し、以下の内容を説明します
専門業者と契約し、適切な処分方法を決定します。
特に医薬品は、麻薬や向精神薬など特別な管理が必要なものがあるため注意が必要です。
法律により、カルテは5年間の保管義務があります。
保管場所と管理方法を決定し、患者様からの開示請求に対応できる体制を整えます。
閉院後は所定の日数以内に、以下の機関への届け出が必要になります。
以下は、個人診療所を閉院する際の主要な手続きをまとめたものです。
保健所
地方厚生局
保険医療機関廃止届(遅滞なく)各都道府県
麻薬施用者業務廃止届(15日以内)福祉事務所
麻薬施用者業務廃止届(15日以内)医師会
退会届(遅滞なく)税務署
個人事業廃止届(遅滞なく)各都道府県税事務所
個人事業廃止届(遅滞なく)医師国民健康保険組合
資格喪失届(遅滞なく)年金事務所
労働基準監督署
確定保険料申告書(50日以内)※「遅滞なく」は法令用語で時間的即時性が「直ちに」「速やかに」に続く言葉で、即時性が最も弱いものとなっています。
【参考】「個人診療所・個人病院の 閉院手続きについて」ヒキツグ
上記はあくまでも個人診療所の場合の手続きで、主要なものに限られます。
病院規模やそれぞれの病院の状況によっては、これらの他にも様々な手続きが必要になることもあるので、専門家への相談を検討するべきでしょう。
病院閉院には想像以上の費用がかかります。
事前に必要な資金を把握し、計画的に準備することが重要です。
項目 | 概算費用 | 備考 |
---|---|---|
退職金 | 職員数×平均退職金額 | 就業規則に基づいて算出 |
解雇予告手当 | 30日分の賃金相当額 | 解雇予告期間が30日未満の場合 |
※上記は目安であり、実際の設備の規模や内容に応じて変わります。
※上記は目安であり、実際の案件の内容等に応じて変わります。
資金計画のポイント
閉院費用の総額は、病院の規模により500万円から数千万円に及びます。
早期に専門家と相談し、正確な見積もりを取得することが重要です。
病院閉院において最も重要なのは、患者様への適切な対応です。
特に入院患者様や定期通院されている方々への配慮が欠かせません。
すべての患者様に一斉に告知するのではなく、以下の順序で段階的に行います
告知文書には以下の内容を記載します
近隣の医療機関と事前に協議し、患者様の受け入れ体制を整えます。
特に以下の点について確認が必要です
すべての患者様に対して、診療情報提供書を作成します。
特に以下の患者様については、詳細な情報提供が必要です
患者様からの問い合わせに対応するため、専用の相談窓口を設置します。
看護師やソーシャルワーカーを配置し、きめ細やかな対応を心がけます。
重要
閉院後も一定期間、カルテ開示や診療情報提供の請求に対応する必要があります。
連絡先と対応体制を明確にしておきましょう。
職員は病院にとって最も重要な資産です。
閉院に際しては、職員の生活を守るための最大限の配慮が必要です。
まず全職員を対象とした説明会を開催し、以下の内容を説明します
全体説明会の後、部門や職種ごとに詳細な説明会を実施します。
特に以下の点について具体的に説明します
近隣の医療機関や関連施設の求人情報を積極的に収集し、職員に提供します。
可能であれば、受け入れ先医療機関との集団面接会を開催することも効果的です。
以下のような内容のセミナーを開催します
希望者には個別のキャリア相談を実施し、一人ひとりの状況に応じた支援を行います。
就業規則に基づいて退職金を計算し、支払いスケジュールを明確にします。
資金繰りが厳しい場合は、分割払いも検討しますが、職員の同意が必要です。
大規模な人員整理を行う場合、労働基準監督署への届出が必要な場合があります。
弁護士や社会保険労務士などの専門家と相談の上、対応を進めるのが適切です。
成功のポイント
職員への誠実な対応は、閉院までの業務を円滑に進める上で不可欠です。
可能な限り手厚い支援を行うことで、最後まで協力を得られます。
病院の閉院は、地域医療に大きな影響を与えます。
地域住民の医療アクセスを確保するため、計画的な対応が必要です。
地域医師会と早期に協議を開始し、以下の点について調整します
市町村の保健福祉部門と連携し、地域医療への影響を最小限に抑える対策を検討します。
必要に応じて地域住民向けの説明会を開催し、以下の内容を説明します
市町村の広報誌やホームページを活用し、広く情報を周知します。
急激な閉院は地域に大きな混乱をもたらします。
可能であれば、以下のような段階的な縮小を検討します
病院を閉院した後も、様々な法的義務が残ります。
これらを適切に処理しないと、後々問題となる可能性があります。
医療法により、診療録(カルテ)は5年間の保管義務があります。
以下の書類も同様に保管が必要です
※診療録と一体のものとして5年間保存することが望ましいと考えられます。
カルテの保管場所を確保し、以下の体制を整えます
閉院後も以下の税務申告が必要です
医療法人の場合、主に、以下の手続きが必要です
閉院後も過去の診療に関する医療事故の訴訟リスクがあります。
医師賠償責任保険は、少なくとも5年間は継続することをおすすめします。
※実際の賠償リスクを見積もったうえで保険継続の可否・期間を決めるのが適切です。
患者様からの問い合わせや訴訟に対応するため、連絡先を確保しておく必要があります。
注意
閉院後も法的責任は継続します。
特にカルテの保管義務違反は罰則の対象となるため、確実に管理体制を整えましょう。
病院閉院は複雑な手続きを伴うため、各分野の専門家のサポートが不可欠です。
早期から専門家チームを組織し、計画的に進めることが成功の鍵となります。
医療法務に詳しい弁護士は、以下の業務をサポートします
医療機関専門の税理士は、以下の業務を担当します
労務管理の専門家として、以下をサポートします
閉院に至る前の段階で、以下の支援が可能です
医療機関特有の事情に精通した弁護士を選ぶことが重要です。
過去の病院閉院支援の実績を確認しましょう。
他仕業と連携してサポートできる体制があるか確認します。
ワンストップで対応できる事務所や、他仕業との提携関係を持つ弁護士かどうかを事前に確認しておくと良いでしょう。
閉院時は資金繰りが厳しいことが多いため、費用を明確に提示してくれる弁護士を選びます。
見積書を取得し、追加費用の有無も確認しましょう。
専門家への相談は、以下のタイミングで行うことをおすすめします
時期 | 相談内容 | 相談先 |
---|---|---|
経営悪化の兆候が見えた時 | 経営改善、M&Aの可能性 | 医業経営コンサルタント |
閉院を検討し始めた時 | 閉院の進め方、法的リスク | 弁護士 |
閉院を決定した時 | 税務対策、労務管理 | 弁護士、税理士、社労士 |
閉院後 | 清算手続き、カルテ管理 | 弁護士、税理士 |
このように、病院閉院には多くの専門家の協力が必要ですが、中でも弁護士の役割は特に重要です。
なぜなら、閉院手続きの多くは法的な側面を含み、一つの判断ミスが大きなトラブルに発展する可能性があるからです。
病院閉院の手続きは複雑で、法的リスクも多く潜んでいます。
医療法務に精通した弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
病院閉院には、医療法、労働法、会社法など、様々な法律が関わります。
弁護士は、これらの法律に基づいて適切な手続きを進め、以下のようなリスクを回避します
病院が債務を抱えている場合、弁護士が債権者との交渉を代理します。
法的知識と交渉経験により、支払い条件の緩和や債務の減額など、有利な条件を引き出すことが可能です。
退職条件や退職金の支払い方法について、法的に適切かつ双方が納得できる落としどころを見つけます。
医療法務が得意な弁護士は病院閉院に必要な手続きを熟知しているため、以下のような効率化が図れます
これにより、経営者は患者様や職員への対応に集中することができます。
病院の閉院は経営者にとって精神的に非常に辛い決断です。
弁護士が法的な問題を一手に引き受けることで、経営者の精神的負担が大幅に軽減されます。
また、「法的に正しい手続きを踏んでいる」という安心感も得られます。
医療法務が得意な弁護士は閉院後も以下のようなサポートを継続します
弁護士費用は依頼内容や病院の規模により異なりますが、一般的な相場を把握しておくことは重要です。
費用項目 | 相場 | 備考 |
---|---|---|
相談料 | 5,000円~10,000円/時間 | 初回相談無料の事務所も多い |
着手金 | 50万円~300万円 | 病院規模により変動 |
報酬金 | 着手金と同額程度 | 成功報酬として |
実費 | 10万円~50万円 | 印紙代、交通費等 |
債務額が大きく、債権者が多い場合は、交渉や手続きが複雑になるため費用が増加します。
職員との間でトラブルがある場合、労働審判や訴訟対応が必要となり、追加費用が発生します。
弁護士費用は決して安くありませんが、以下の点を考慮すると費用対効果は高いといえます
重要
費用面で不安がある場合は、分割払いや成功報酬型の料金体系を採用している法律事務所もあります。
まずは初回相談で費用について率直に相談することをおすすめします。
病院閉院を成功させるためには、医療法務に精通した弁護士を選ぶことが極めて重要です。
しかし、一般的な弁護士検索では、本当に病院閉院に強い弁護士を見つけることは困難です。
以下のような経験・実績を持つ弁護士を選びましょう
病院閉院には様々な法的課題があるため、以下のような体制を持つ事務所が理想的です
病院閉院は長期間にわたる手続きになるため、以下の点も重視しましょう
病院閉院を弁護士に相談する際、多くの経営者が抱く疑問にお答えします。
A: できるだけ早い段階での相談をおすすめします。
理想的には、経営が厳しくなり始めた時点で一度相談し、閉院以外の選択肢も含めて検討することが望ましいです。
遅くとも、閉院を決断する前には必ず相談してください。
A: 多くの法律事務所では、以下のような柔軟な支払い方法に対応しています
まずは無料相談で、費用面の不安を率直に伝えることが大切です。
A: 弁護士には厳格な守秘義務があります。
相談内容や依頼内容が外部に漏れることはありません。
むしろ、弁護士が窓口となることで、情報管理を徹底できます。
A: 弁護士は以下の業務を代理・代行できます
ただし、患者様への説明や職員への直接的な説明は、経営者自身が行う必要があります。
A: 状況により異なりますが、以下を目安にしてください
A: 規模に関わらず、以下の理由から弁護士への相談が望ましいと考えられます。
A: そのようなことはありません。
多くの法律事務所では、初回相談後に検討期間を設けています。
複数の弁護士に相談して、比較検討することも可能です。
病院を閉院する際には、さまざまな法律問題に直面する可能性があります。
例えば、患者の転院先確保や診療録の管理だけではなく、職員への解雇予告や退職金支払い、医療機器の処分、債権債務の整理など、多岐にわたります。
これらの法的リスクをできるだけ回避し、また、トラブル発生時に迅速な対応をとるには、医療業界の事業再生・破産・清算に詳しい弁護士と早期から連携して、計画的に閉院手続きを進めることが重要です。
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閉院手続きの着手が遅れるほど法的リスクが高まり、関係者への影響も大きくなるので、病院閉院について少しでも検討しているなら、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士にご相談ください。
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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