事業清算にかかる費用|費用の内訳・弁護士に依頼すべき理由

専門家監修記事
事業清算する場合、廃業届さえ出せばいいわけではありません。会社なら解散や清算の手続き、登記など、設立時と同様に法律に沿った対応が必要です。誤った判断で高額な撤退コストとならないよう、事業清算に要する費用を確認しておきましょう。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
事業再生・破産・清算

事業清算をするにはどのくらいの費用が必要になるのでしょうか?

 

事業清算をするには、「解散」と「清算」という2つのステップを踏む必要があります。

 

解散とは、会社組織を解体する会社法上の手続、清算とは、会社に残っている財産を換金し、株主へ分配して会社を消滅させる手続を指します。

 

事業清算は手続きが複雑ですが、弁護士に依頼することも可能です。

 

この記事では、事業を清算するにはどんな費用がかかるのか、どのくらいの費用が必要なのかなどをご紹介します。

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事業清算に必要な費用は大きく分けて4種類

事業を清算する場合の費用は、企業の状況により異なりますが、大きく分けると、法手続費や登記代、設備や在庫の処分費用、施設の原状回復費などが欠かせないものとして挙げられます。下記で詳細を説明します。

①法手続費や登記代

事業を清算、廃業する際には、会社だけでなく、個人事業であっても各種の届出が必要です。

 

廃業を選択した場合、最も高額になるのが「法手続費や登記代」で、手続きを弁護士や税理士、司法書士などの専門家に依頼する際の費用となっています。

 

従業員がいれば雇用保険や健康保険など社会保険の手続きも欠かせず、社会保険労務士などに代行してもらうことも考えられます。

 

株式会社などの法人であれば、解散登記や清算結了登記の費用がかかります。

 

残った債務があるなら返済資金も不可欠で、これらを踏まえると「法手続費や登記代」が最も多くなることが予想できるのです。

②設備や在庫の処分費用

廃業に伴う手続きでは、設備や在庫の処分費用も必要です。事業で使っていた設備は中古品として流通している類のものであれば売却が可能ですが、流通していないものや汎用性が低い設備、老朽化などが進んだ設備の場合は、廃棄する費用が必要です。

 

いわゆる閉店セールなどで見られる「在庫の原価割れ販売」など、事業の継続中にはなかった費用が清算段階で顕在化します。

 

事業規模が大きいと使用する設備も多く、在庫などの資産も増えることから、清算費用は規模に比例して大きく異なります。

 

清算時の従業員規模も大きいほど費用が高額となる傾向があります。つまり、大規模な企業ほど撤退費用のハードルも高くなるといえます。

③施設の原状回復費

店舗や社屋、工場などがあれば、壊して更地に戻すなど原状を回復する費用が必要となります。それぞれの数や大きさ、状況などで異なりますが、目安としては坪単価3万円程度で計算すると概算を見積もることができるでしょう。

④フランチャイズ契約の解約金や違約金

フランチャイズ契約の場合は、解約金や違約金が発生するケースもあります。これらは契約内容で変わり、一般的には高額になることが多いとされています。例えば、違約金であれば、【契約期間の残り月数 × 一定額】のような計算方法で算出されているようです。

 

解散から清算結了までに要するそのほかの費用

上記4種類の清算に必要な費用は一般的に高額となりますが、次の登録免許税や官報公告費はほぼ定額で、相対的には低額です。

登録免許税

会社を解散する場合には解散と清算人選任の登記、清算が終わると清算結了の登記を申請します。

 

この解散の登記には、登録免許税で3万9,000円、清算結了登記の登録免許税で2,000円がかかります。

 

【参考:株式会社解散及び清算人選任登記申請書 - 法務局 - 法務省

【参考:株式会社清算結了登記申請書 - 法務局 - 法務省

官報公告費用

清算手続きでは、債権者に対して一定の期間内に債権を申し出ることを官報に公告することが、法律上の義務になっています。

 

官報とは国の機関紙で、国の作用に関わる事柄や公文書などを公示するための事項を記載して、一般に周知させる広報と公告を目的とするものです。

 

官報公告の費用は、「枠付」「普通」「1枠」の場合、3万6,489 円です。

 

【参考:官報公告

 

事業清算の流れと必要な期間は?

事業清算の大まかな流れは、次の通りです。

①清算人の選任

会社の場合は解散後、清算手続きに移り、株主総会の決議で清算人を選任。清算人は取締役のなかから選任されるケースが多く、あらかじめ会社の定款で顧問弁護士などに定めているケースもあります。

 

清算人は原則1人ですが、監査役会のある大きな会社では3人以上を選任することになります。

②清算人の登記

清算人が決まると、解散と清算人に関する清算登記を申請。この登記には、定款や株主総会の議事録、清算人の就任承諾書などが必要です。

③資産を現金化、債権の回収

清算人の登記が終わると、官報で解散を公告。わかっている個別の債権者には、債権の申し出を通知します。続いて、不動産や在庫など会社の財産を売却して現金化し、未回収の債権も回収を行います。

④債務の弁済と残余財産を分配

回収した資金で、まず債権者に優先的に弁済。これは債権の申し出期間の終了後に実施します。

 

債務の弁済後、会社の財産が残っているケースでは、出資者である株主に残余財産を分配することになります。

⑤清算結了の登記

これで決算報告の承認を得れば、清算結了の登記をします。この登記には、決算報告書や株主名簿、株主総会議事録が必要となります。清算結了後、確定申告などを行えば清算手続きは終了です。

 

会社を解散すると、2ヶ月以上の期間を定めて官報に公告した後、清算結了の登記をします。会社の解散手続きだけで、少なくとも2ヶ月を要することがわかります。

 

実際には、その前後に書類の準備や作成を行い、関係者へ説明や交渉の準備などをする時間も必要となるので、2ヶ月ですべてが完了するわけではありません。

 

万が一、書類作成などの準備に時間がかかると、清算結了の登記が完了するまでの時間も延びてしまうことになります。

 

困ったときは弁護士に相談!弁護士費用はどのくらい?

弁護士に事業の清算を依頼すると、相談料、着手金、成功報酬が必要になります。

①相談料

相談だけであれば、弁護士事務所によって異なりますが、通常の相場は5,000円/30分から1万円/1時間程度。初回相談は無料としていたり、完全成功報酬制としていたりするところもあります。

②着手金

特別清算や破産には至らず、通常の清算手続きで済むなら、着手金50万円程度で依頼できるケースが多いです。

③成功報酬

弁護士の報酬は成功の度合いで異なり、難しい案件は成功報酬も高くなる傾向にあります。多くの弁護士事務所では一定の基準を定めているので、事前に問い合わせるのがベターでしょう。

 

まとめ

事業を清算する費用として、企業の規模や状況などによっても異なりますが、通常は法手続費や登記代のほか、設備や在庫の処分費用などが必要です。

 

解散や清算の手続きは、法律に沿った手順で行う必要があり、少なくとも2ヶ月以上かかります。

 

弁護士に依頼すると、着手金や報酬を支払わなければならないので、「法律事務所の敷居は高い」と感じる経営者も多いと思います。

 

しかし、事業の解散・清算をする際には、複雑な手続きや準備すべき必要書類がたくさんあります。

 

弁護士に相談すれば適切なアドバイスをもらうことが期待できますし、正式に依頼すれば手続きを一任し、スムーズかつ的確に事業清算を行えます。

 

費用はかかりますが、その分のメリットも大きいので、事業清算でお悩みの方は弁護士への相談を検討してみてください。

事業清算の依頼を弁護士に依頼した場合にメリットや、弁護士の探し方についてご紹介します。

 

弁護士に依頼するメリットと探す際のポイント

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