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2024年度の全国企業倒産件数は1万70件(前年度比13.4%増)となり、11年ぶりに年間1万件台を突破しました。特に負債5,000万円未満の中小零細企業の倒産が全体の約71%を占め、物価高倒産(925件)、人手不足倒産(350件)、後継者難倒産(507件)といった複合的な要因による倒産が増加しています(株式会社帝国データバンク「全国企業倒産集計2024年度報」参照)。
会社整理を検討する際、多くの経営者が直面するのは「弁護士に依頼すべきか」「費用はどの程度かかるのか」「どのような弁護士を選べばよいのか」という疑問です。
本記事では、会社整理における弁護士の役割、各種手続きの特徴と費用相場、弁護士選定のポイントなど、中小企業経営者が知っておくべき実務的な情報を詳しく解説します。
会社整理には、清算、破産、民事再生など複数の種類があり、それぞれ手続きや目的が大きく異なります。
会社整理の種類を理解することで、自社の状況に最適な手続きを選択し、リスクを最小限に抑えることができます。2024年度のデータによると、倒産全体の約97.4%(9,804件)が清算型(破産、特別清算)であり、再生型(民事再生法、会社更生法)はわずか2.6%(266件)に留まりました。この数値は、多くの企業が再生よりも清算を選択している現実を示しています。
具体的な会社整理の種類として、以下のものが挙げられます。清算は、債務超過でない会社が事業を終了する際に選択する手続きで、会社法に基づいて行われます。破産は、2024年度に9,435件(全倒産の93.7%)を占め、債務超過や支払不能の状態にある会社が、裁判所の監督下で債権債務を清算する手続きです。民事再生は、経済的に困難な状況にありながらも事業に収益性がある会社が選択する手続きですが、2024年度は個人が198件、法人が55件で、法人は2000年度以降で最も少ない結果となりました。なお、会社更生も民事再生と同種の再生型倒産手続ですが、比較的大規模な会社向けの手続であるため、55件と民事再生手続より件数が大きく少なくなる傾向にあります。
清算は、会社を解散し、残った資産を債権者に分配する手続きです。債務超過でない会社が事業を廃止する際の標準的な方法となります。
比較的簡易な手続きで、早期に会社を整理できる可能性があります。裁判所の関与がないため、会社法の規定に従って株主と清算人が主導して進めることができ、手続きの柔軟性が確保されています。
手続きの流れとしては、まず株主総会で解散決議を行い、清算人を選任します。その後、財産目録を作成し、債権者への公告・催告を行います。債権者への弁済を実施し、残余財産があれば株主に分配します。最後に清算結了の登記を行い、手続きが完了します。
メリットとしては、比較的費用が安く、通常30万円から100万円程度で済むこと、手続きが簡便で3か月から6か月程度で完了できることが挙げられます。一方、デメリットとしては、債務超過の場合は通常の清算手続きを選択できず、特別清算又は破産手続きに移行する必要があることが挙げられます。
破産は、債務超過や支払不能といった破産原因を裁判所に認めてもらい、会社の財産を清算して債権者に配当して債権債務を強制的に清算する手続きです。2024年度は9,435件と、倒産全体の93.7%を占める最も一般的な法的整理手続きとなっています。
債務から解放され、再スタートを切るための有効な手段です。破産法に基づく公正な手続きにより、債権者平等の原則のもとで処理が行われ、経営者の法的責任も明確化されます。ただし、2024年度のデータでは、負債100億円以上の大型倒産は9件に留まり、多くは負債5,000万円未満の小規模倒産でした。
手続きの流れは、弁護士への相談から始まり、破産申立書の作成、裁判所への申立てを行います。破産手続開始決定が出されると破産管財人が選任され、財産の調査・換価が行われます。債権者集会が開催され、配当可能な財産がある場合は配当を実施し、最終的に破産手続終結決定により手続きが完了します。
メリットとしては、会社に対する債務が消滅し、新たな事業に向けて再スタートを切ることができること、債権者からの取立てが停止し、精神的な負担が軽減されることが挙げられます。デメリットとしては、会社の再建はできず、その財産は全て分配しなければならないこと、経営者が連帯保証をしている場合は個人破産の検討も必要になることがあります。
民事再生は、裁判所の監督のもと、債務の一部免除や返済計画の変更を行い、事業の再生を目指す手続きです。
事業を継続しながら、法的強制力のもとで債務整理を行うことができます。民事再生法に基づき、債権者の多数決により再生計画を決定し、経営権を維持したまま事業の立て直しを図ることが可能です。
手続きの流れとしては、再生手続開始の申立てを行い、裁判所が再生手続開始決定を出すと監督委員が選任されます。財産評定と債権調査を実施し、再生計画案を作成します。債権者集会で再生計画案の決議を行い、可決されれば裁判所が再生計画認可決定を出します。その後、再生計画に従って弁済を実行していきます。
メリットは、事業を継続できる可能性があり、従業員の雇用を維持できること、経営権を保持したまま再建を進められることです。デメリットとしては、手続きが複雑で期間も長期化し、通常1年以上かかること、費用も高額で、弁護士費用(成果報酬込み)だけで数百万円以上になる傾向があることが挙げられます。2024年度の法人における再生型倒産の少なさは、これらのハードルの高さを物語っています。
弁護士に依頼することで、法的な手続きをスムーズに進め、経営者の精神的な負担を軽減できます。
専門的な知識と経験を持つ弁護士は、複雑な会社整理の手続きを適切にサポートし、債権者との交渉を有利に進めることができます。2024年度は物価高倒産が925件(過去最多)、人手不足倒産が350件(過去最多)、後継者難倒産が507件(過去2番目)を記録し、複合的な要因による倒産が増加しています。このような複雑な状況下では、専門家の支援がより重要となります。
メリットとして、法的手続きの代行があります。破産申立書の作成、裁判所への提出、必要書類の準備など、複雑な手続きを正確かつ迅速に進めることができます。債権者との交渉においても、法的枠組みの中で債務の減額や分割払いなど、有利な条件を引き出すことができます。さらに、不安やストレスを軽減し、冷静な判断をサポートする精神的な支えとなります。従業員や取引先への対応についても、法的な観点から適切なアドバイスを提供し、混乱を最小限に抑えることができます。
一方、デメリットとしては、弁護士費用がかかること、弁護士との連携や手続きに時間がかかる場合があることが挙げられます。
弁護士に依頼することで、会社整理の手続きを円滑に進め、経営者の負担を軽減できます。
弁護士は、法律の専門家として、会社整理に関するあらゆる問題に対応できます。特に2024年度のような複合的な要因による倒産が増加している状況では、物価高対応、人手不足対策、後継者問題など、多岐にわたる課題に対する総合的なアドバイスが不可欠です。
法的手続きの代行として、裁判所への申立書類の作成は、法的要件を満たし、かつ説得力のある内容である必要があり、専門的な技術を要します。債権者との交渉では、債権調査から始まり、債権額の確定、弁済率の交渉、和解条件の調整など、多岐にわたる交渉を法的根拠に基づいて進めることができます。
また、取締役の責任追及リスクの評価と対策、財産の保全措置、労働債権の適切な処理など、経営者個人への影響を最小限に抑えるための法的サポートも重要な役割です。2024年度は建設業(1,932件)、サービス業(2,638件)、小売業(2,109件)で特に倒産が多く、業種特有の問題にも精通した弁護士の支援が求められています。
弁護士費用はかかるものの、それに見合うメリットがあるかどうかを検討する必要があります。
弁護士費用は、会社整理の種類や規模によって大きく異なります。2024年度の倒産企業の71%が負債5,000万円未満の小規模企業であることを考えると、費用負担は相対的に重くなる可能性があります。ただし、これらの費用は共益費用として認められており、適正な範囲であれば債権者からも理解を得られます。
弁護士費用の内訳として、着手金は通常50万円から150万円程度、報酬金は成功の度合いに応じて着手金の50%から100%程度となります。実費として、裁判所への予納金、官報公告費、交通費などが別途必要となります。
時間的な側面では、弁護士との打合せ、資料の準備、手続きの進行に相応の時間を要します。ただし、これは適正な手続きを行うために必要な時間であり、拙速な対応によるリスクを回避するためには必要な投資といえます。また、弁護士との相性の問題もあり、専門性だけでなく、コミュニケーション能力や対応の迅速性なども考慮して選定する必要があります。中小企業活性化協議会への相談件数が2024年度に8,761件(前年度比29%増)と過去最高を記録したことからも、専門家への相談ニーズの高まりが伺えます。
弁護士費用は、会社整理の種類や規模によって大きく異なります。
弁護士費用は、着手金、報酬金、実費などで構成されます。2024年度のデータでは、負債5,000万円未満の倒産が全体の約71%を占めており、小規模案件が中心となっています。一方で、負債100億円以上の大型倒産は9件(前年度19件から大幅減)に留まり、MSJ資産管理(負債6,413億円)のような特殊な大型案件も含まれています。
具体的な費用相場として、清算の場合は比較的シンプルな手続きのため、弁護士費用は30万円から100万円程度、実費を含めても数十万円から数百万円程度で済むことが多いです。
破産の場合、小規模企業で弁護士費用50万円から100万円、予納金20万円から70万円、中規模企業では弁護士費用100万円から200万円、予納金70万円から200万円程度が相場となります。
民事再生は最も複雑な手続きのため、弁護士費用だけで200万円から500万円、大規模な案件では数千万円に及ぶこともあります。ただし、2024年度の民事再生法適用は55件と過去最少であり、費用面のハードルの高さが影響している可能性があります。
弁護士費用は、着手金、報酬金、実費などで構成されます。
それぞれの費用項目について理解しておくことで、費用の見積もりを比較検討しやすくなります。2024年度の倒産企業の平均負債額が前年度比で減少していることから、1件あたりの弁護士費用も相対的に低額化している傾向があります。
着手金は、弁護士に依頼する際に最初に支払う費用で、事件の着手時に支払い、結果にかかわらず返還されません。通常、全体費用の50%から70%程度を占めます。
報酬金は、会社整理が成功した場合に支払う費用で、破産の場合は免責決定時、民事再生の場合は再生計画認可時に支払います。着手金の50%から100%程度が一般的です。
実費には、裁判所への予納金(破産管財人の報酬)、官報公告費(約1万5千円)、郵送費・交通費、登記費用などが含まれます。特に予納金は、東京地裁の場合、負債5千万円未満で70万円、5千万円以上1億円未満で100万円、1億円以上5億円未満で200万円という基準があります。2024年度の倒産の大半が負債5千万円未満であることから、予納金70万円のケースが最も多いと推測されます。
弁護士費用を抑えるためには、複数の弁護士に見積もりを依頼し、比較検討することが重要です。
弁護士事務所によって、費用体系や料金設定が異なるため、複数の見積もりを比較することで、より費用対効果の高い弁護士を見つけることができます。2024年度はゼロゼロ融資後倒産が680件(前年度比2.7%減)と減少したものの、依然として高水準にあり、資金繰りに苦しむ企業にとって費用面の工夫は重要です。
ただし、法テラスは個人破産の援助は行いますが、法人破産や予納金は対象外となることに注意が必要です。
会社整理が得意な弁護士を選ぶためには、専門知識、経験、実績、コミュニケーション能力などを確認することが重要です。
会社整理は、法的な知識だけでなく、経営や財務に関する知識も必要となるため、専門性の高い弁護士を選ぶことが重要です。2024年度は建設業(1,932件、前年度比10.5%増)、サービス業(2,638件、同20.6%増)、小売業(2,109件、同12.5%増)で特に倒産が多く、業種特有の課題に精通した弁護士の需要が高まっています。
選定基準として重要なのは、会社整理・倒産案件の取扱実績です。過去5年間の取扱件数、類似業種・規模の案件経験、破産管財人の経験の有無などを確認します。特に、物価高倒産(925件)、人手不足倒産(350件)、後継者難倒産(507件)といった、2024年度特有の倒産要因に対応した経験があるかも重要なポイントです。
弁護士選びでは、専門知識、経験、実績、コミュニケーション能力などを確認することが重要です。
これらのポイントを確認することで、自社の状況に最適な弁護士を見つけることができます。2024年度は全国9地域のうち8地域で倒産が増加し、特に北陸(前年度比34.0%増)、東北(同28.4%増)で大幅増となりました。地域特性を理解した弁護士選びも重要です。
具体的な確認方法として:
多くの弁護士事務所では、無料相談を実施しています。
無料相談を利用することで、弁護士の人柄や考え方を知り、相性を確認することができます。中小企業活性化協議会への相談件数が過去最高の8,761件に達したことからも、専門家への相談の重要性が認識されています。限られた時間を有効に活用するため、事前準備を十分に行い、具体的な質問事項を整理しておくことが重要です。
無料相談を最大限活用するためには:
会社整理以外にも、事業再生やM&Aなど、事業を立て直すための選択肢があります。
これらの選択肢を検討することで、会社を存続させ、従業員の雇用を守ることができる可能性があります。2024年度の休廃業・解散件数は過去最多の6.9万件に達し、そのうち65.1%が資産超過、51.1%が黒字でした。この事実は、財務的には健全でも後継者難などで事業継続を断念する企業が多いことを示しており、事業再生やM&Aの重要性を物語っています。(株式会社帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024年)」参照)
選択肢として、事業再生には私的整理と法的整理があります。私的整理では、中小企業再生支援協議会の活用(相談件数累計7万6,172件、再生計画策定1万9,822件)、私的整理ガイドラインに基づく手続き、金融機関との個別交渉などがあります。法的整理でも、民事再生や会社更生といった再建型の手続きがありますが、2024年度の利用は低調でした。
M&Aは、事業の全部または一部を他社に譲渡する方法で、株式譲渡、事業譲渡、会社分割などの手法があります。従業員の雇用維持、ブランド価値の承継、創業者利益の確保などが期待できる場合があります。
事業再生は、会社を存続させるための有効な手段です。
経営改善計画を策定し、金融機関からの支援を受けながら、事業の立て直しを目指します。政府は2024年6月末に「コロナ借換保証」を原則終了させ、「経営改善サポート保証」など経営改善・再生に重点を置いた施策へと移行しました。これは、単なる延命ではなく、事業構造の根本的な立て直しを促す政策転換を意味します。
事業再生のプロセスとして:
M&Aは、会社を売却することで、資金を調達し、経営を立て直すための選択肢です。
他の企業に事業を譲渡することで、従業員の雇用を守り、事業を継続することができます。2024年度の後継者難倒産507件という数字は、事業承継の困難さを示していますが、M&Aは有力な解決策となりえます。適切なタイミングでM&Aを決断することで、すべてのステークホルダーにとって最良の結果を得られる可能性があります。
M&Aのプロセスは:
成功のポイントは、財務内容の透明性確保、適正な売却価格の設定、買手との相性の見極め、従業員の処遇への配慮、スピーディーな意思決定などです。特に、経営者の平均年齢が69.4歳という現状を踏まえると、早期の決断が重要となります。
会社整理後の生活設計は、経営者として再スタートするために非常に重要です。
会社整理は、経営者にとって大きな精神的負担となるため、将来の生活設計を立てることで、前向きな気持ちで再スタートを切ることができます。中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援(累計3,079件)も活用可能です。多くの経営者が会社整理後も新たなキャリアを築いており、経営経験は貴重な資産として評価されます。
再スタートの選択肢として:
専門家への相談先として、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー、産業カウンセラーなどが、それぞれの専門分野でサポートを提供しています。
会社整理は、経営者にとって大きな精神的負担となるため、精神的なケアも重要です。
精神的なケアを行うことで、ストレスを軽減し、冷静な判断力を保つことができます。2024年度の後継者難倒産の主因として経営者の病気や死亡が挙げられており、健康管理の重要性が浮き彫りになっています。適切なサポートを受けることで、より早く立ち直り、新たなスタートを切ることが可能となります。
精神的なケアの方法として:
会社整理後の生活を支援するための公的支援制度があります。
これらの制度を活用することで、生活費や再就職支援などを受けることができます。2024年度は建設業での人手不足倒産が111件、運輸・通信業で49件と深刻な状況にあり、これらの業種では再就職の機会も多いと考えられます。制度を理解し、適切に活用することで、経済的な不安を軽減し、再スタートへの準備を整えることができます。
利用可能な公的支援として:
会社整理は、非常に困難な決断ですが、弁護士に相談することで、法的な手続きをスムーズに進め、精神的な負担を軽減することができます。2024年度の企業倒産動向は、中小零細企業が物価高騰、人手不足、後継者難という複合的な構造課題に直面していることを示しています。
本記事で解説した情報を参考に、自社の状況に最適な選択肢を見つけ、前向きな気持ちで次のステップに進んでください。まずは、無料相談を活用し、専門家のアドバイスを受けてみることをおすすめします。
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本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
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