取引形態の一つに企業間取引があります。
企業間取引では、一度に大規模な取引が行われるため、実務的な負担が軽いというメリットがありますが、取引先を一つ喪失しただけでも売り上げが大きく落ちるというデメリットもあります。
この記事では、企業間取引のメリット・デメリットや流れ、ポイントなどについて、売り手側・買い手側それぞれの視点から解説します。
企業間取引とは
企業間取引(Business to Business)とは、企業同士が対価と引き換えに製品や商品、資材などを提供する取引を指します。企業間取引は「BtoB」や「B2B」と略されることもあり、企業と消費者(Consumer)が行う取引については「BtoC(Business to Consumer)」と略されることもあります。
企業間取引は、製品の仕入れや資材の調達などを主として、「製造業者と卸売業者」や「卸売業者と小売業者」などの間で行われます。例として、新築住宅を建築して消費者へ販売する場合、企業間取引として「住宅建築のための土地購入」や「建築資材の購入」などが行われます。
これまでは、訪問やテレアポなどの手段を用いて行われていましたが、最近ではインターネットを利用した企業間取引(EC:electronic commerce)が多く行われています。経済産業省が示した以下の表によると、企業間取引のEC市場は年々拡大しており、2017年時点で約317兆円に及びます。
企業間取引のメリット・デメリット
ここでは、企業間取引を行うメリット・デメリットについて、売り手側・買い手側それぞれの視点から解説します。
メリット
企業間取引は、BtoCと比べると取引量や取引額のスケールが大きく、一度の取引で売り手側・買い手側ともに大きな利益が発生しやすいことが特徴としてあります。
売り手側にとっては、梱包・配送や請求書の作成などの実務的負担が軽い、というメリットがあります。
また、売り手側が後払い決済に対応している場合などは、買い手側にとって資金繰りにかかる負担が軽い、というメリットがあります。ほかにも、BtoCと比べると顧客数が限られるため顧客管理にかかる負担が軽い、という点なども挙げられます。
デメリット
一度の取引による取引量や取引額が大きい分、売り手側にとっては、競合他社の出現や取引先の倒産などの理由によって、取引先を一つ失っただけでも大きく売上が落ちてしまう、というデメリットがあります。
また、企業間取引では取引関係が長期化・固定化されやすいため、買い手側にとっては、企業選択を誤った場合に柔軟に取引先を変更することが難しく、広範囲に渡って影響が生じることもある、というデメリットがあります。
企業間取引の流れ
現在はインターネットの普及により、企業が自社で設置したECサイトで取引を行う「自社サイト型」や、既存のECサイトに店舗を出店して取引を行う「モール型」など、さまざまな取引手法が登場しています。これらは時間や場所の制約なく商品検索・購入ができることから、多くの企業で導入されています。
取引の細かい流れはケースごとに異なりますが、一例として、卸売業者が設置した「自社サイト型」を利用して卸売業者と小売業者が企業間取引を行う場合、以下のような流れで取引を進めます。
- 小売業者による卸売業者への問い合わせ
- 商談場所・日時を決定
- 取引内容・条件・金額を商談
- 商談成立後、取引開始
企業間取引を行う際のポイント
企業によっては特有の商習慣があり、過去の取引実績や条件をベースとして、お得意先・通常取引先・非取引先など、取引先ごとに販売価格・決済方法・取扱商品の公開範囲などを変えている場合もあります。特に、買い手側は頭に入れておいたほうがよいでしょう。
企業間取引について弁護士に相談するメリット
企業間取引については、支払いが遅れたり、製品に欠陥が見つかったり、といったトラブルが発生するケースも考えられます。ただし、取引時に合意事項を記載した契約書を作成しておくことで、トラブル発生時もスムーズな問題解決が望めます。
弁護士に相談することで、「契約書の内容が実際の取引内容に合致しているか」「契約書の内容に法的問題性はないか」など、契約書に関する法的視点からのチェックが受けられます。さらに「そもそも取引内容は妥当といえるか」など、取引内容に関するアドバイスも期待できます。
「企業間取引を行おうと考えているが、トラブルのリスクは少しでも小さくしたい」と考えている場合は、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
まとめ
企業間取引を行うことで、売り手側にとっては対価の受取、買い手側にとっては製品などの仕入れが大きなスケールで実現するため、企業成長の大きなきっかけとなることもあります。
ただし、支払いトラブルや製品トラブルなどが起こった場合は、損失を被る可能性もあります。トラブルを未然に防止する手段としては「合意内容をまとめた契約書を作成すること」が考えられますが、自力で作成する自信がない場合は、法的知識・経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
企業間取引をするのであれば契約書作成は欠かせません。どのような内容を書けばよいのかわかりやすく解説します。 |