契約書作成のポイント・記載事項・弁護士に依頼するメリットを解説

専門家監修記事
相手方と取引を交わす際、合意内容を明らかにするために契約書を作成するのが一般的です。契約書の作成に関する明確なルールはありませんが、必要事項を満たしていないと十分に効力を発揮しない可能性もあるため、この記事では、作成する際のポイントをご紹介します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
取引・契約

株式譲渡や商品売買など、相手方と取引を交わす際は、合意内容を明らかにするために契約書を作成するのが一般的です。契約書の作成に関する明確な決まりはありませんが、内容に不備があると十分に効力を発揮しない可能性があります。

 

この記事では、契約書作成のポイントや記載事項、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

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契約書作成する際の記載項目

民法の基本原則の一つに「契約自由の原則」というものがあり、基本的に契約締結の方法・形式は当事者間で自由に決められます。契約書の作成方法について厳格な決まりはありませんが、以下の項目を記載するのが一般的です。

 

  • タイトル
  • 前文
  • 本文
  • 末文
  • 作成日付
  • 当事者の住所・社名・代表者氏名の記名押印

タイトル

まずは、契約内容が一目で理解できるようなタイトルを記載します。

タイトル例としては以下の通りです。

例:「株式譲渡契約書」「売買契約書」「雇用契約書」など。

前文

本文を記載する前に、「具体的にどのような契約内容なのか」を要約した前文を記載します。

前文例としては以下の通りです。なかには、前文すべてが省略されるケースもあります。

例:譲渡人〇〇(以下「甲」)と譲受人○○(以下「乙」)の間で株式の譲渡に関して、以下の通り契約を締結する。

本文

本文では、契約内容について箇条書きで記載します。

箇条書きごとのまとまりを「条」と呼び、内容を判別しやすいように各条の横にタイトルを記載することが一般的です。

 

条内で複数の内容を書き分ける際は、算用数字を用いて箇条書きで区分し、「項」と呼びます。また、条内または項内で列記する際は漢数字を用いて列記し、「号」と呼びます。

 

本文例としては以下の通りです。

例:

第1条(譲渡合意)

甲は、甲が保有する株式(株式種類○○、株式数○○、譲渡価格○○、以下「本株式」という)を乙に譲渡し、第2条の譲渡代金の受領日をもって本株式の所有権を乙に移転するものとする。

 

第2条(譲渡代金の支払い方法)

乙は甲に対して、本株式の譲渡代金として○○円を、○○年〇月〇日までに、甲の指定口座に振込支払いするものとする。

 

第3条(株主名簿の名義書換)

1.甲及び乙は、乙が第2条本契約に基づき株式譲渡に係る代金を甲に支払うのと同時に、対象会社に対し、第1条に定める本株式が甲から乙に譲渡されたことを通知すると共に、本株式の名義書換を請求する。

2.甲は、前項に規定する期日までに、本株式の譲渡について対象会社の承認を得るものとする。

末文

本文の後に、「契約書の作成枚数や保管枚数」などをまとめた末文を記載します。

末文例としては以下の通りです。

例:契約成立の証として本書を4通作成し、甲乙が記名押印したのち、各2通を保有する。

作成日付

契約を結んだ日付を記載することで、作成日付より、契約書が効力を発揮します。

当事者の住所・社名・代表者氏名の記名押印

最後に、当事者の住所・社名・代表者氏名を「記名押印(印刷や代筆などで記載したのち、印を押すこと)」します。場合によっては、本人が自筆で記入したのち印を押す「署名捺印」が採用されることもありますが、どちらでも問題ありません。

契約書作成のポイント

ここでは、契約書作成のポイントを解説します。

当事者間で合意内容を共有しておく

契約書を作成する際は「どのような内容について合意したのか」について、事前に当事者間で把握・共有しておくことが重要です。十分に共有できない状態で作成してしまうと、契約書としての説得力に欠け、トラブル発生時に期待通りの効力を発揮しない可能性もあります。

 

また契約書を作成した後も、互いに読み合せて最終チェックを行うなどして、解釈に齟齬がないか確認しておいた方が安心でしょう。

第三者が読んでも理解できる文章で作成する

契約書は合意内容を明文化したものであり、「具体的にどのような内容の取引が行われたのか」について、第三者が読んでも理解できるように作成する必要があります。会社の独自用語や抽象的な表現を用いることは避け、支払金額や支払期日などの数量情報はできるだけ具体的に記載しましょう。

 

また、契約書を作成する際は法律用語を使用しなければならず、特に接続詞については普段よりも細かく使い分けなければなりません。一例として、「直ちに」「遅延なく」「速やかに」はいずれも「すぐに」という意味合いで使われる用語ですが、法律用語としては以下のように意味合いが若干異なります。

 

  • 直ちに…「どのような理由があっても遅れてはならない」という意味(強制力:大)。
  • 遅延なく…「特別な事情がない限り早く」という意味(強制力:中)。
  • 速やかに…「できる限り早く」という意味(強制力:小)。

それぞれの取引内容に合わせた契約書を作成する

インターネット上には契約書の雛形を載せているサイトもあり、雛形を活用することで手間をかけずに契約書を作成することができます。ただし、雛形には「一般的な条項が中立的な立場で記載されている」ため、注意が必要です。

 

特に、取引内容が特殊な場合や、個別の事情を考慮する必要がある場合などは、雛形を流用しただけでは取引内容に対応しきれないことがあります。雛形を活用する際は「変更・修正箇所はないか」十分にチェックする必要があります。

契約書作成の雛形

一例として、有償で株式譲渡を実施するにあたり「株式譲渡契約書」を交わすと仮定した場合、以下のような形式で作成します。

 

契約書作成を弁護士に依頼するメリット

契約書作成は自力で行うことも可能ですが、弁護士に依頼することで、取引内容に応じた契約書がスムーズに作成できます。ここでは、契約書作成を弁護士に依頼するメリットについて解説します。

個別の事情を反映した契約書が作成できる

「契約書作成のポイント」でも触れたように、契約書は「合意内容を明文化したもの」であるため、当事者間の力関係や、取引に至るまでの背景事情などについて正確に反映する必要があります。

 

弁護士に依頼することで、「どのような経緯で取引に至ったか」「今回の契約でどのような利益を実現したいのか」など、作成前にヒアリングが行われるため、取引内容ごとにマッチした契約書の作成が可能です。特に、雛形を流用しただけでは個別の事情に対応しきれず、自力で契約書が作成できないという場合などは、弁護士に依頼することをおすすめします。

リスク軽減・トラブル防止が期待できる

契約書を作成する際は、取引にかかるリスクやトラブルについても注視しなければなりません。

特に、「誰がどこまで責任を負うか」「保証人に対する保証範囲はどこまでか」などの条項については、できるだけ具体的に作成しておくべきでしょう。

 

弁護士であれば、法律に関する豊富な知識・経験を持っているため、条項の明確化だけでなく「契約書の内容に法的問題性はないか」というリーガルチェックも依頼できます。

 

ほかにも、リスクのあぶり出しなども任せられるため、取引額が大きい場合や取引内容の重要性が高い場合は、特に弁護士に依頼した方がよいでしょう。

交渉のサポートも依頼できる

弁護士であれば、契約書作成のほか、万が一トラブルが発生した場合でも交渉のサポートが依頼できます。

 

なお、契約書作成は行政書士なども対応していますが、あくまで行政書士は書類作成業務がメインです。弁護士の方が対応範囲は広く、交渉のサポート以外にも「取引内容に不利な点はないか」など、取引内容に関するアドバイスも受けられます。

 

「契約書作成だけでなく、取引スキーム全体をサポートしてほしい」という場合は、弁護士に依頼するべきでしょう。

まとめ

契約書の作成に関する厳密な決まりはありませんが、「タイトル」「前文」「本文」「末文」「作成日付」「当事者の住所・社名・代表者氏名の記名押印」などを記載するのが一般的です。

 

作成時は、法律用語を理解した上でわかりやすい表現を用いて、それぞれの取引内容に合わせた事項を記載する必要がありますが、不備なく作成できるか不安な場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。弁護士に依頼することで、個別の事情に合わせた契約書が作成できる上、交渉のサポートなども依頼できます。

 

弁護士に依頼した場合の費用相場としては、10~20万円程度というところです。ただし、なかには枚数ごとに料金体系を設けているところもあり、細かい料金設定は事務所ごとに異なります。実際の費用が気になる場合は、直接事務所に確認することをおすすめします。

 

契約書作成を弁護士に依頼した場合の費用や事務所の選び方をご紹介します。

 

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