売買代金など未回収の債権について債権回収を行う場合、以下の通りさまざまな対応方法があります。
- 催告書通知…債務の弁済を促す「催告書」を作成・郵送する方法
- 交渉…債務弁済について話し合いを行う方法
- 民事調停…裁判所指定の調停委員による仲介のもと、債務弁済について話し合いを行う方法
- 支払督促…裁判所を介して、債務を弁済するよう督促する方法
- 訴訟…債務の弁済を求める裁判を起こす方法
- 仮差押・仮処分…訴訟提起前などの段階で、相手の財産などをあらかじめ確保する方法
- 強制執行…強制的に財産などを差押える方法
「どの対応方法を選択するべきか」は自社や相手方の状況などによって異なり、ケースごとに適切に判断しなければなりません。特に、これまで債権回収を行ったことがない場合などは、債権回収について十分な知識・経験のある弁護士に相談してサポートを得た方が良いでしょう。
この記事では、債権回収を弁護士に相談する際の費用相場や、費用倒れを防ぐ方法などについて解説します。
債権回収を弁護士に相談する際の費用|費用内訳
債権回収について弁護士に相談する場合、相談料・着手金・成功報酬金などの弁護士費用が発生します。ここでは、相談時の費用内訳について解説します。
相談料
相談料とは、弁護士に法律相談を行う際にかかる費用を指します。
費用相場としては5,000円/30分程度ですが、なかには回数・時間に制限を設定した上で「無料相談」を行っている事務所もあります。
着手金
着手金とは、弁護士に正式に案件依頼を行う際にかかる費用を指します。着手金は案件依頼時に発生するため、成功程度に関係なく支払わなければなりません。
また事務所によって料金体系は異なり、「依頼内容に応じて料金設定している事務所」のほかに「債権額に応じて料金設定している事務所」などもあります。
成功報酬金
成功報酬金とは、弁護士の案件終了後、成功程度に応じてかかる費用を指します。一般的には、回収額のパーセンテージで算出する事務所が多いようです。
また成功報酬金については、「和解成立時」や「債権回収時」など、事務所によって成功の定義が異なる場合もあるため、依頼前には確認しておく必要があるでしょう。
その他費用
上記の弁護士費用のほかに、書類を郵送する場合や裁判所を介して債権回収を行う場合など、対応方法によっては別途費用が発生することもあります。
債権回収を弁護士に相談する際の費用|対応方法ごとの費用相場
債権回収を弁護士に相談する際、「どのような対応を依頼するか」によって費用は大きく異なります。ここでは債権回収を弁護士に相談する際の費用相場について、対応方法別に解説します。
なお費用については、依頼内容だけでなく事務所によっても異なるため、この記事で紹介する費用相場はあくまで一つの参考としてご覧下さい。具体的な費用が気になる場合は、直接事務所に確認を取ることをおすすめします。
催告書通知
催告書通知によって債権回収を行う場合、費用は「催告書に弁護士名を表記するか否か」に応じて異なります。費用相場としては以下の通りです。
着手金 |
成功報酬金 |
|
弁護士名を表記しない場合 |
1~3万円程度 |
なし |
弁護士名を表記する場合 |
3~5万円程度 |
なし |
その他費用
- 内容証明郵便:1,470円~
交渉
交渉によって債権回収を行う場合、費用は債権額に応じて異なります。
費用相場としては以下の通りです。
債権額 |
着手金 |
成功報酬金 |
100万円未満 |
10万円程度 |
獲得金額の10~15% |
100~300万円 |
15万円程度 |
|
300~500万円 |
20万円程度 |
|
500~1,000万円 |
30万円程度 |
|
1,000~5,000万円 |
40万円程度 |
|
5,000~1億円 |
60万円程度 |
|
1億円以上 |
80万円程度 |
その他費用
- 郵券代:1,470円~
- 登記簿取寄費用:600円
民事調停
民事調停によって債権回収を行う場合、費用は債権額に応じて異なります。
費用相場としては以下の通りです。
債権額 |
着手金 |
成功報酬金 |
100万円未満 |
12万円程度 |
獲得金額の10~20% |
100~300万円 |
18万円程度 |
|
300~500万円 |
24万円程度 |
|
500~1,000万円 |
36万円程度 |
|
1,000~5,000万円 |
48万円程度 |
|
5,000~1億円 |
70万円程度 |
|
1億円以上 |
90万円程度 |
その他費用
- 郵券代:1,015円
- 収入印紙代:訴訟金額によって異なる
支払督促
支払督促によって債権回収を行う場合、費用は債権額に応じて異なります。
費用相場としては以下の通りです。
債権額 |
着手金 |
成功報酬金 |
100万円未満 |
15万円程度 |
獲得金額の15~20% |
100~300万円 |
24万円程度 |
|
300~500万円 |
30万円程度 |
|
500~1,000万円 |
50万円程度 |
|
1,000~5,000万円 |
80万円程度 |
|
5,000~1億円 |
100万円程度 |
|
1億円以上 |
150万円程度 |
その他費用
- 予納郵券代:4,000円
- 資格証明書:500円
- 官製ハガキ:50円
- 収入印紙代:通常訴訟時の半額の印紙代
訴訟
訴訟によって債権回収を行う場合、費用は債権額に応じて異なります。
費用相場としては以下の通りです。
債権額 |
着手金 |
成功報酬金 |
100万円未満 |
15万円程度 |
獲得金額の15~20% |
100~300万円 |
24万円程度 |
|
300~500万円 |
30万円程度 |
|
500~1,000万円 |
50万円程度 |
|
1,000~5,000万円 |
80万円程度 |
|
5,000~1億円 |
100万円程度 |
|
1億円以上 |
150万円程度 |
その他費用
- 予納郵券代:6,000円
- 資格証明書:500円
- 官製ハガキ:50円
- 収入印紙代:訴訟金額によって異なる
仮差押・仮処分
債権回収にあたって仮差押・仮処分を行う場合、費用相場は以下の通りです。
着手金 |
成功報酬金 |
原則30万円~ |
獲得金額の15~20% |
その他費用
- 予納郵券代(債権仮差押えの場合):3,000円程度
- 印紙代:2,000円
- 資格証明書:500円
- 不動産全部事項証明書:500円
- 登録免許税:請求額の0.4%
- 担保金:債権額の20%程度(事件終了時の返却金銭)
強制執行
強制執行によって債権回収を行う場合、費用相場は以下の通りです。
着手金 |
成功報酬金 |
原則20万円~ |
獲得金額の15~20% |
その他費用
- 予納郵券代:5,000円(裁判所によって異なる)
- 印紙代:4,000円
- 資格証明書:500円
- 予納金:不動産の場合は90万円程度(事件終了時に回収分から返却される金銭)
債権回収を弁護士に相談する際の費用倒れを防ぐ方法
「債権を満額回収できなかった」という場合や「予想よりも弁護士費用が高くついた」という場合など、なかには弁護士費用が回収額を上回って費用倒れとなる可能性もあります。債権回収を弁護士に相談する際は、費用倒れのリスクについても考えた方が良いでしょう。
ここでは、債権回収を弁護士に相談する際、費用倒れを防ぐ方法について解説します。
無料相談を有効活用する
事務所によっては、無料相談を行っているところなどもあります。「債権回収できる見込みはあるか」「どの回収方法を選択するべきか」などを相談することで、今後取るべき対応について無料でアドバイスをもらえるため、積極的に活用するべきでしょう。
また対応姿勢や相性など、直接弁護士と相談することでわかることなどもあります。複数の事務所にて無料相談を活用し、それぞれの対応を比較検討することで、依頼内容に合った事務所探しなども行えます。
見積もりを出してくれる事務所を選ぶ
債権回収については、対応方法によって費用が大きく異なります。特に「催告書通知や交渉では回収できず、訴訟手続きを行った」という場合など、複数の対応を行った際は費用が高額になる可能性もあります。
弁護士に相談する際は、さまざまなケースを想定した上で発生する費用について、依頼前の段階で大体の見積もりを出してくれるところを選んだ方が安心でしょう。
また事務所によっては、成功の定義が異なる場合もあるため、「どの時点で成功報酬金が発生するのか」についてもあわせて確認しておくことをおすすめします。
債権回収を弁護士に相談する際の流れ
債権回収について弁護士に相談する場合、主な流れは以下の通りです。
なお、面談を行ったからといって必ずしも依頼する必要はなく、面談後に別の弁護士を選択することも可能です。
- メール・電話にて弁護士へ連絡
- 弁護士による現状や希望内容などのヒアリング
- 面談日時の確定
- 弁護士との面談
- 依頼内容の確定~正式依頼
- 弁護士による業務遂行~問題解決
また面談前には、相手方の社名や住所・債権額・取引日・請求日など、回収したい債権に関する情報を書き出し、整理しておくことをおすすめします。ほかにも、借用書や契約書、メールをプリントアウトした用紙など、取引が行われたことを証明する資料も準備しておくべきでしょう。
まとめ
債権回収について弁護士に相談する際、相談料・着手金・成功報酬金などの弁護士費用のほか、場合によっては収入印紙代や郵券代などの費用が発生することもあります。
特に債権回収についてはさまざまな対応方法があるため、「どの手段で債権回収を行うか」によって金額は大きく異なります。また事務所によっても費用は異なるため、相談時は無料相談なども活用しながら、大体の見積もりを出してもらった上で判断した方が安心でしょう。
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