海外企業と取引して英文契約書を交わす場合、和文契約書とは作成形式が異なるため注意が必要です。
特に日本ではハンコ文化が主流であるのに対し、海外ではサイン文化が主流であり、署名欄以外の場所にサインするケースもあります。また名前や日付などについても、契約書内容に則って記入する必要があり、予期せぬ契約トラブルを避けるためにも正しい記入方法を知っておきましょう。
この記事では、英文契約書でサインする場所やサインの書き方などを解説します。
英文契約書でサインする場所
英文契約書は以下の条項・構成で作成するのが通常です。
①表題部(タイトル) ②前文(契約背景や目的など) ③定義条項(契約書内で用いる用語の定義) ④本体条項(権利義務や取引内容の詳細) ⑤一般条項(当事者間での合意条件) ⑥末尾文言(契約書の締めとなる文言) ⑦署名欄(署名・役職・日付など) ⑧付属書類(規定細部を補完する書類を添付) |
契約書例としては以下の通りで、末尾にある⑦の署名欄にサインします。
①Agreement This Agreement, is made by and between X corporation and Y corporation. (本契約はX社とY社の間で締結される) WITNESSETH ② WHEREAS, X corporation desires to sell to Y corporation certain products hereinafter set forth, and WHEREAS, Y corporation is willing to purchase from X corporation such products. (X社はY社へ後述する製品を販売したいと考えており、Y社はX社から同製品を購入したいと考えている) NOW THEREFORE, in consideration of the mutual agreements contained herein, the parties hereto agree as follows: (よって、本契約における約束を約因とし、以下の通り合意する) ③~⑤ Article 1. Definitions(定義条項) ~~~~~(中略)~~~~~ Article 8, Payment(支払条件) ⑥ IN WITNESS WHEREOF, the parties have caused their authorized representatives to execute this Agreement as of the date first above written. (本書内容の証として、両社はそれぞれ権限をもつ代表者をして、上記記載日に本契約書に署名させた) ⑦ By: ___________________ Name: ________________ Title: _________________ Date: ____/_____/______ Place: ________________ ⑧ |
英文契約書でサインする際の書き方
英文契約書では、主に以下の事項を記入します。
・署名(By) ・名前(Name) ・役職(Title) ・日付・ 場所(Date・Place) |
署名(By)
Byと表記されている欄には、自分の名前を手書きで記入します。
なかにはSigned byやSignatureと表記されているケースもありますが、記入方法は同じです。また、署名は本人証明のために用いられるため言語指定はなく、漢字・英語どちらで記入しても問題ありません。
名前(Name)
Nameと表記されている欄には、自分の名前をローマ字で「名前・姓名」の順に記入します。また手書きで記入する必要はなく、パソコン記入やゴム印などでも問題ありません。
なお、以下のように但し書きがある場合は、指定内容に沿って記入する必要があります。
・Print Name、Printed Name、Please Print…「一文字ずつ明確に記入する」 (例:アシロ 太郎…Taro Asiro) ・Block Capitals…「大文字で記入する」 (例:アシロ 太郎…TARO ASIRO) |
役職(Title)
Titleと表記されている欄には、自分の役職名を英語で記入します。一般的に、代表取締役であればPresidentと記入すれば問題ありません。
役職を指す用語は国毎に異なるため、なかにはCEOやManaging Directorと記入するケースもありますが、契約にあたっては「署名者が契約締結にかかる権限を有しているか」という点が大きなポイントとなります。したがって「どのような役職を名乗るべきなのか」と、さほどナーバスになることはないでしょう。
日付・ 場所(Date・Place)
Dateと表記されている欄には、署名した年月日を記入します。
なお、アメリカ英語とイギリス英語では以下のように記入順が異なります。記入前に、どちらが適用されるのか確認しておきましょう。
・アメリカ英語…月/日/年 (例:2019年5月28日…May/28/2019) ・イギリス英語…日/月/年 (例:2019年5月28日…28/May/2019) |
契約書において、日付は契約期限の起算日などを示す重要な項目です。誤解が生じないよう、数字のみで記入することは避け、上記のように英語名を交えて記入した方が良いでしょう。
場所(Place)の書き方
取引によっては場所の記入が求められるケースもあります。署名欄にPlaceと表記されている場合は、署名した場所を「都市名・国名」の順に記入します。
例:東京で署名する場合…Tokyo, Japan |
記入例
「2019年5月28日に東京にて、代表取締役のアシロ太郎が英文契約書にサインする」と仮定した場合、以下のように記入します。
By:アシロ 太郎(手書きで記入) Name:Taro Asiro Title:President Date:May/28/2019 Place:Tokyo, Japan |
英文契約書でサインは割り印・契印の代わりとなる
和文契約書では、内容の改ざん防止や正当性の証明などのために、割り印や契印を押すのが通常です。ただしサイン文化が主流である外国では、割り印や契印の代わりにサインをするのがほとんどです。
綴じ方に関する明確な規定はないため、ケースによって取るべき対応は異なりますが、なかには署名欄を除く全ページの余白部にイニシャルサインをすることもあります(例:アシロ太郎であれば「TA」)。
イニシャルサインをすることで、全ページが一連の文書であることを証明できるため、抜き取りや差し替えなどの不正行為が防止できます。「少しでも契約トラブルを避けたい」と考えている方は行うべきでしょう。
英文契約書の作成・チェック・翻訳を依頼した場合の弁護士費用
英文契約書の手続きに不安がある場合は、弁護士によるサポートを受けるのが効果的でしょう。弁護士であれば、内容チェック・修正・契約書作成・翻訳などのサポートが受けられ、迅速な手続きが望めます。
弁護士に相談する場合は弁護士費用がかかりますが、依頼する事務所や契約内容などによって費用は大きく異なります。費用詳細は事務所へ直接確認することをおすすめしますが、費用一例としては以下の通りです。
依頼内容 |
弁護士費用(1ページあたりの費用) |
英文契約書のチェック |
1万~1万5,000円程度 |
英文契約書の修正 |
1万~1万5,000円程度 |
英文契約書の作成 |
1万5,000~2万円程度 |
英文契約書の翻訳 |
1万5,000~2万円程度 |
まとめ
トラブルなく契約を結ぶためにも、取引時は適正に契約書を作成しなければなりません。
英文契約書を交わす際は、署名・名前・役職・日付・ 場所などを記入する必要があり、「但し書きがあるかないか」「アメリカ英語とイギリス英語のどちらが適用されるのか」などによって記入内容は異なります。
また「英語に自信がなく契約書対応が不安」という場合は、弁護士に相談するのも効果的です。弁護士であれば、契約書作成・内容チェック・修正・翻訳などのサポートが受けられるため、自力で対応するよりも迅速な手続きが望めるでしょう。