内部統制における監査の内容や流れ・企業が取るべき対応を解説

専門家監修記事
J-SOXの対象となる上場企業は、J-SOX対応として、財務報告にかかる内部統制の評価内容などを記載した「内部統制報告書」を作成したのち、外部監査人の監査を受ける必要があります。この記事では、内部統制における監査の内容や流れ、企業が取るべき対応を解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
IPO

内部統制とは、企業における組織運営について、適正かつ健全に行うための一連の仕組みのことを指します。

 

企業に対して内部統制の整備・構築を義務付ける法律としては、金融商品取引法(J-SOX)会社法の2つがあります。ともに内部統制に関する監査が実施されるという点は共通しているものの、対象企業や監査主体などの点で異なります。

 

この記事では「J-SOXが定める内部統制」に焦点を当て、内部統制における監査の内容や流れ、企業が取るべき対応などを解説します。

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内部統制における監査が行われるまでの流れ

J-SOXについてはすべての上場企業が実施対象となり、「財務報告にかかる内部統制」について以下の流れで対応を進めるのが通常です。

 

  1. 内部統制に関する整備状況の把握
  2. 把握された不備の対応・整備状況の評価
  3. 内部統制に関する運用状況の把握
  4. 把握された不備の対応・運用状況の評価
  5. 最終的な不備の集計・「開示すべき不備」にあたるか判断
  6. 内部統制報告書の作成
  7. 外部監査人(監査法人や公認会計士)による監査
  8. 内部統制報告書・内部統制監査報告書の公表

 

J-SOXでは、①~⑤のプロセスを経て作成した内部統制報告書について、監査法人や公認会計士による監査が行われます。

内部統制報告書の記載内容

J-SOXの対象企業は、事業年度ごとに内部統制報告書の作成・提出が義務付けられており、企業名や代表者氏名などの基本的な企業情報や、以下5つの事項なども記載する必要があります。

 

  • 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項
  • 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項
  • 評価結果に関する事項
  • 付記事項
  • 特記事項

 

なお、内部統制報告書を提出しなかった場合や重要事項に虚偽記載があった場合などは、5億円以下の罰金が科される可能性もあり、企業は不備なく適正に作成しなければなりません(金融商品取引法第207条)。一般的な作成例としては以下の通りです。

 

第一号様式
【表紙】
【提出書類】 内部統制報告書
【根拠条文】 金融商品取引法第24条の4の4第 項
【提出先】 __財務(支)局長
【提出日】 平成 年 月 日
【会社名】(2) _______________
【英訳名】 _______________
【代表者の役職氏名】(3) _______________
【最高財務責任者の役職氏名】(4) _______________
【本店の所在の場所】 _______________
【縦覧に供する場所】(5) 名称(所在地)
1【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】(6)
2【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】(7)
3【評価結果に関する事項】(8)
4【付記事項】(9)
5【特記事項】(10)

参考元:内部統制報告書|金融庁

内部統制における監査の内容

J-SOXでは、監査人である監査法人や公認会計士によって、内部統制報告書の記載内容が適正であるかという点について監査が行われます。監査では主に以下の項目が対象となり、必要に応じて質問の実施や文書・記録の確認などが行われます。

 

  • 内部統制の評価範囲
  • 全社的な内部統制の評価内容
  • 業務ごとのプロセスに関する内部統制の評価内容

 

上記項目について監査が行われた後は、監査結果を記載した内部統制監査報告書が監査人によって作成されます。また監査時に、財務報告に大きな影響を及ぼすような「重要な欠陥」があった場合は、経営者に対して報告・是正要求が行われます。

 

なお新規上場企業については、金融商品取引法第193条より、上場後3年間は内部統制報告書の監査免除が受けられます(資本金100億円以上や負債合計1,000億円以上など、社会的影響力の大きい企業は除く)。

 

ただし内部統制報告書の作成・提出については免除されないため、「内部統制における監査が行われるまでの流れ」で示した、⑦を除く①~⑧については通常通り対応する必要があります。

内部統制監査報告書の記載内容

「内部統制監査報告書」では、内部統制報告書に関する監査人の監査結果が記載され、記載内容は以下4つのパターンに分類されます。

 

  1. 無限定適正意見…記載内容はおおむね正しい。
  2. 限定付適正意見…一部不適切な箇所はあるものの、記載内容はおおむね正しい。
  3. 不適正意見…記載内容は不適切である。
  4. 意見不表明…記載内容が適切かどうか判断できない。

 

もし監査結果が「不適正意見」や「意見不表明」であったとしても、それによって直ちに上場廃止が確定するというわけではありませんが、企業は「無限定適正意見」の獲得を目標に対応するべきでしょう。

内部統制における監査について企業が取るべき対応

内部統制報告書の記載内容が適正であれば、企業側に別途対応が求められることはありません。

しかし記載内容が適正でない場合は、是正要求などの対応が求められ、さらに手間・労力がかかってしまう可能性もあります。

 

監査対応をスムーズに済ませるためにも、企業としては「内部統制に関する整備・運用状況の把握・評価」など、内部統制報告書の作成に至るまでのプロセスについて、不備なく適正に行う必要があるでしょう。

 

各プロセスの対応にあたっては、監査法人と監査方針などについて確認・相談しつつ進めることで、監査対応もスムーズに済ませることができるでしょう。また、監査時には資料の提出を依頼されることもあるため、監査前には関係書類を準備・整理しておくこともおすすめします。

J-SOXについて弁護士に相談するメリット

J-SOXは「一度対応しておけばよい」というものではなく、企業状況や企業周辺の環境変化などにも対応し、評価作業の更新などを定期的に行う必要があります。

 

特に「これまでJ-SOX対応したことがない」という場合は、予想以上に手間・労力がかかり、本業に支障をきたす可能性もゼロではありません。

 

J-SOX対応について十分な知識・経験がない場合は、企業法務に注力した弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、内部統制にかかる評価範囲の確定や必要書類の作成など、企業状況に応じた効果的なサポート・アドバイスが期待できるため、スムーズなJ-SOX対応が望めるだけでなく、本業に集中する時間的・精神的余裕も確保できるでしょう。

まとめ

すべての上場企業は、財務報告にかかる内部統制の評価内容などを記載した内部統制報告書を作成したのち、公認会計士や監査法人による監査を受ける必要があります。

 

監査人は「内部統制の評価範囲」や「全社的な内部統制の評価」などの項目を対象に、内部統制報告書の記載内容の適正性について監査を行ったのち、監査結果について記載した内部統制監査報告書を作成します。

 

監査対応をスムーズに済ませるためにも、企業は「内部統制に関する整備・運用状況の把握・評価」や「不備の集計・判断」など、内部統制報告書の作成に至るまでのプロセスについて、不備なく適正に行う必要があるでしょう。

 

ただし対応時には多くの手間がかかるため、企業法務分野に注力した弁護士に相談するなどして、サポート・アドバイスを依頼することをおすすめします。

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