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公益通報者保護法の改正はいつから?―2026年12月1日施行の改正法を見据え企業が取り組むべき実務対応を解説

2026.5.5
2026.5.5
2025年6月公布・2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法を弁護士が体系解説。フリーランス保護対象への拡大、推定規定・直罰規定の新設、消費者庁の立入検査権限など、企業のコンプライアンス担当者が今すぐ取り組むべき内部通報体制の実務対応を整理。
執筆弁護士
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旭合同法律事務所
弁護士 川村将輝
公益通報者保護法の改正はいつから?―2026年12月1日施行の改正法を見据え企業が取り組むべき実務対応を解説というタイトルの記事のサムネイル画像

最新の公益通報者保護法の改正はいつから施行されるのか、という不安を持たれている方は多いのではないでしょうか。

同法は2004年の制定以来、2022年と2025年の2段階にわたって大きく改正されており、特に2025年改正(令和7年改正)は2026年12月1日の施行を控え、企業のコンプライアンス担当者にとって今まさに対応が急務となっています。

2022年改正では従業員301人以上の事業者への内部通報体制整備が初めて義務化されましたが、2025年改正はさらに一歩踏み込み、フリーランス・業務委託者への保護拡大、解雇・懲戒処分に関する「推定規定」と「直罰規定」の新設、消費者庁への立入検査権限の付与といった、企業の法的リスクを根本から変える内容が盛り込まれています。

本記事では、企業顧問を中心に活動してきた弁護士として、施行日・改正内容・実務対応の三つの観点から、法務担当者・コンプライアンス担当者・管理職の方々が今すぐ取り組むべき事項を体系的に解説します。

本記事のポイント
  • 公益通報者保護法の改正は2段階:2022年6月1日施行(体制整備義務化)、2026年12月1日施行(推定規定・直罰規定・立入検査権限)
  • 2025年改正の最大の特徴は「フリーランス・業務委託者」への保護拡大と、通報後の不利益取扱いへの「推定規定」導入による挙証責任の転換
  • 「推定規定」により、通報後の解雇・懲戒は企業側が「通報とは無関係」であることを立証しなければならない重い義務が生じる
  • 消費者庁の「立入検査・勧告・命令権」が新設され、行政による実効的な監督が始まる
POINT まず自社が改正の影響を受けるか、弁護士に5分で確認しませんか?

2025年改正は301人未満の企業・フリーランスを多数活用する企業も実質的な対応が必要です。「うちは関係ない」と判断する前に、自社が改正の射程に入るかをまず確認するのが先決です。

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この記事に記載の情報は2026年05月05日時点のものです

公益通報者保護法とは?制度の基本と保護対象

企業の不正行為が社会に与える影響を踏まえ、2004年に制定・2006年に施行された公益通報者保護法は、内部告発(公益通報)を行った労働者を解雇・降格などの不利益取扱いから守ることを目的とした法律です。以下では、制度の基本と保護される通報の要件を確認します。

法律の目的と制定の背景(2004年制定・2006年施行)

公益通報者保護法は、食品偽装、産地偽装、欠陥製品隠蔽、不正会計といった企業不正が相次いだことを背景に、「内部告発者を守ることで法令遵守を促進する」という立法趣旨のもとで制定されました(同法第1条)。主な目的は次の二つです。

  • 通報者の保護:公益通報を行ったことを理由とする解雇の無効化・不利益取扱いの禁止
  • 法令遵守の確保:企業内に内部通報制度を整備させることで、違法行為の早期発見・是正を促す

制定当初は保護される通報者が「労働者(雇用労働者)」に限定され、対象法令も刑事罰のある一定の法律に限られていたため、保護の実効性が低いという批判がありました。こうした課題を受けて、2022年改正で「退職後1年以内の退職者」と「役員」が保護対象に追加され、さらに2025年改正で「フリーランス・業務委託者」まで対象が拡大されるという段階的な改正が続いています。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

公益通報者保護法違反が発覚した事案では「制度はあるが機能していない」というものが数多く見受けられます。規程が形式的に整備されていても、経営陣が通報窓口を無力化していたり、従事者が守秘義務を軽視していたりするケースです。

保護される「公益通報」の3要件(通報者・通報対象事実・通報先)

法律上の保護を受けるためには、次の3要件をすべて満たす必要があります(公益通報者保護法第2条)。

要件 内容
【要件①】通報者の要件 「労働者等」であること。2022年改正後は①雇用労働者(正社員・パート・派遣等)、②退職後1年以内の退職者、③役員が含まれます。さらに2025年改正では、④フリーランス・業務委託者(いわゆる「特定受託事業者」)も加わります。
【要件②】通報対象事実の要件 「法令違反行為」であること。当初は刑事罰のある法令に限定されていましたが、2022年改正で行政罰(過料等)の対象となる法令違反も追加されました。対象法令は別表に列挙されており、食品衛生法・金融商品取引法・個人情報保護法・独占禁止法など、企業が関わる主要な法令が網羅されています。
【要件③】通報先の要件 通報先は「内部通報(事業者内部)」「行政機関」「報道機関等(外部通報)」の3種類があります。それぞれ保護を受けるための信憑性要件・手続的要件が異なり、内部通報が最も緩やかです。2025年改正では行政機関への外部通報要件が一部緩和されます。
弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

実務上特に注意していただきたいのが「通報対象事実の特定」です。担当者が「これは公益通報に当たらない」と誤判断して通報を受理しなかったり、通報者に対し「根拠が薄い」と圧力をかけたりするケースがあります。

法律は通報者が「法令違反の事実があると思料するに足りる相当の理由がある」ことで足りるとしており(外部通報の場合)、必ずしも違反の確証は要りません。「通報内容が事実かどうかを審査する権限は企業にはない」という原則を全管理職に徹底しておくことが、後日の法的リスクを大幅に低減します。

2025年改正(令和7年)|2026年12月1日施行の全内容

2025年6月11日に公布された「公益通報者保護法の一部を改正する法律」(令和7年法律第62号)は、2026年12月1日に施行されます。以下、改正内容を5つの柱に分けて解説します。

改正の成立経緯と施行スケジュール(2025年6月11日公布)

2022年改正の施行後、消費者庁が実施した実態調査では、改正法の趣旨が必ずしも企業現場に浸透していないことが明らかになりました。特に①フリーランス・業務委託者が保護の対象外であること、②通報を理由とする解雇等の不利益取扱いに対する制裁が行政指導にとどまり抑止力が低いこと、③消費者庁が違反を把握しても実効的な執行手段を持たないことが課題として指摘されました。

これを受け、消費者庁は2024年に有識者検討会を設置。2024年12月に検討報告書が取りまとめられ、2025年3月に国会へ改正案が提出されました。衆参両院での審議を経て2025年6月11日に公布となり、施行日は公布日から1年6ヶ月後の2026年12月1日と定められています(附則第1条)。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

「2026年12月まであと1年以上ある」と余裕を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実態は異なります。内部通報規程の改訂・弁護士との協議・取締役会や株主総会への報告・従業員への周知といった一連のプロセスを踏むと、少なくとも6〜8ヶ月は必要です。

特に従業員1,000名超の上場企業では、内部統制報告書への影響や社外取締役・監査委員会への説明を要する場合があり、対応開始が遅れれば施行に間に合わない事態も十分に起こりえます。今すぐ担当部署に着手を指示することをおすすめします。

フリーランス・業務委託者への保護対象拡大

2025年改正の最大の目玉の一つが、保護対象を「フリーランス・業務委託者(特定受託事業者)」に拡大する点です(改正法第2条第1項)。これにより、個人事業主として企業から業務委託を受けるフリーランサーが、委託元企業の法令違反を通報した場合、契約解除・取引停止・報酬不払い等の不利益取扱いを受けても法的保護が得られるようになります。

保護の具体的内容は、雇用労働者と同様に「不利益取扱いの禁止」です。不利益取扱いに当たる行為として、契約の解除、取引条件の一方的な不利益変更、業務の全部または一部の停止などが含まれます。

なお、フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・2024年11月施行)との関係では、同法と公益通報者保護法改正が相まって、フリーランスに対する企業の取扱いが格段に厳しく規制される環境になります。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

フリーランスや業務委託者が自社の取引先として存在する場合、この改正は直ちに契約管理上のリスクを生みます。例えば、委託先のフリーランサーが「御社の製品に食品衛生法違反がある」と行政機関に通報した後で、あなたの会社がそのフリーランサーとの契約を解除すれば、「通報を理由とした契約解除」と認定されうるのです。

実務上の対策としては、①業務委託契約書に「本法に基づく通報を理由とした契約解除は行わない」旨の確認条項を追加する、②契約解除の際は通報との時間的・事情的な切断性を記録に残す、の2点が最低限のリスクヘッジとして有効です。既存の業務委託契約書のひな形を弁護士に点検してもらい、必要な条項追加を行っておくことを強くおすすめします。

公益通報を阻害する要因への対処

2025年改正では、公益通報制度そのものを形骸化・無力化しようとする行為を規制するための規定が新設されます。具体的には、事業者が①通報窓口への通報を受け付けない運用を故意に行うこと、②通報者の特定情報を意図的に漏えいすること、③従事者に通報の受理を拒否させる指示を出すことなどが、従来の「努力義務」から「義務」へと強化されます。

あわせて、通報窓口を「有名無実」にするような制度設計(例:複数の窓口を設置しているが実際には一つしか機能しない、窓口担当者が経営陣の指示を受けて通報を握りつぶす等)が発覚した場合、消費者庁による勧告・命令の対象となります。

解雇・懲戒処分の無効、推定規定と罰則規定の新設など

2025年改正の中で、企業の法的リスクに最も直接的な影響を与えるのが「推定規定」と「直罰規定」の新設です。

規定 内容
【推定規定】 改正法では、「公益通報の日から1年以内に通報者が解雇・懲戒その他の不利益取扱いを受けた場合、その不利益取扱いは通報を理由とするものと推定する」という規定が設けられます。これは挙証責任を企業側に転換する規定であり、企業は「当該解雇・懲戒は通報とは無関係で、正当な業務上の理由によるものである」ことを積極的に立証しなければなりません。従来は通報者側が「通報を理由とする不利益取扱いであること」を証明する必要があったため、立証の困難さが課題でした。改正後はこの点が大きく変わります。
【直罰規定】 従来、不利益取扱いに対する制裁は消費者庁からの行政指導・勧告・公表にとどまっていました。2025年改正では、不利益取扱いを行った事業者や担当者個人に対して刑事罰を科すことができる「直罰規定」が新設されます(個人:6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金/法人:3,000万円以下の罰金)。これにより、「行政指導を受けても実害がない」という認識でいた企業に対し、刑事制裁という強力な抑止手段が加わります。
弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

推定規定の導入は、企業の人事・労務管理に極めて大きな影響を与えます。公益通報をした従業員に対して、その後に(たとえ通報とは無関係の理由で)解雇・降格・減給・異動などを行った場合、企業はその正当性を立証する責任を負います。

実務対応として今すぐ行うべきことは、①公益通報をした従業員に関する人事情報を通報歴と切り離して管理する仕組みを作ること、②人事評価・懲戒・解雇の決定プロセスにおいて通報歴の参照を禁止するルールを明文化すること、③不利益取扱いに当たりうる措置を行う前に法務部門または弁護士に必ず確認させる社内手続を設けることです。直罰規定の新設を踏まえ、担当役員・人事部門長への重点周知を今すぐ行ってください。

行政機関(消費者庁)の監督・執行権限強化(立入検査・命令権)

2025年改正の第5の柱が消費者庁の執行権限の大幅強化です。改正前は、企業が体制整備義務を履行しない場合でも消費者庁が直接介入する手段はほとんどなく、行政指導・公表という「ソフトな手段」にとどまっていました。改正後は以下の権限が消費者庁に付与されます。

  • 報告徴収権:企業の内部通報体制や対応状況について報告を求める権限
  • 立入検査権:企業の社内規程・通報対応記録・関連書類を現地で調査する権限
  • 勧告・命令権:体制整備義務の不履行や不利益取扱いの継続に対して是正を命じる権限
  • 公表権:命令違反等の事業者名・違反内容を公表する権限

消費者庁の立入検査は税務調査に似た側面を持ち、検査に備えた記録の整備・証拠保全が重要になります。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

消費者庁の立入検査権付与は、コンプライアンス対応の次元を大きく変えます。これまでは「万一の訴訟リスク」への備えとして内部通報制度を整備していた企業も、今後は行政調査に耐えうる記録管理を意識する必要があります。

今から徹底すべきは、①内部通報の受付・調査・措置の各ステップについて記録を作成・保管するルールの明文化、②調査担当者(従事者)が誰で、どのような権限を与えられているかの明確化、③通報案件ごとのクローズド・ファイルの整備です。消費者庁の調査官が来訪した際に「どの書類をどこに出せばよいか」がすぐわかる状態を作っておくことが、混乱なく対応できる最大のポイントです。

POINT 推定規定リスクのスコアリング、自社の人事プロセスを点検しませんか?

推定規定の導入により、通報後1年以内の解雇・懲戒は企業が「正当な業務上の理由」を立証する義務を負います。人事評価・降格・異動の判断プロセスに通報歴の混入リスクが残っていないか、施行前に点検が不可欠です。

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2025年改正が企業に与える影響と実務対応

2025年改正の内容を踏まえ、企業が対応すべき実務上の課題を三つの観点から整理します。

フリーランス・業務委託者との契約管理の見直し

改正法施行後は、フリーランスや業務委託者が「公益通報者保護法上の通報者」となりえます。そのため、これらの方々との契約・取引管理に次の見直しが必要です。

  • 業務委託契約書の見直し:守秘義務条項が通報行為を禁止または制約するような解釈を生まないよう、「本契約は公益通報者保護法上の通報を制限するものではない」旨の文言を追加する
  • 反社会的勢力排除・コンプライアンス条項の確認:通報を理由とした取引停止が「コンプライアンス違反」として逆に自社のリスクになっていないか確認する
  • 既存の業務委託先へのアナウンス:内部通報窓口の利用が可能であることを周知する

特に、多数のフリーランスと継続的取引関係にある事業者(IT・クリエイティブ・建設・物流等)は、本改正の影響を直接受けるため、法律事務所への相談を含めた早期対応が不可欠です。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

業務委託契約書のひな形を多数保有している企業様に対しては、まず全ひな形の洗い出しと一括点検を行うことを推奨しています。「秘密保持義務」や「競業避止義務」「契約解除事由」の条項に、公益通報を排除・制約する文言が含まれていないかをチェックするのが最初のステップです。

さらに踏み込んだ対応として、業務委託先のフリーランスを内部通報窓口の利用対象として明示的に位置づけることを検討してください。内部通報を活用して問題が「外に出る前に」発見・解決できる環境を整えることが、企業の長期的なリスク管理に資します。

解雇・懲戒処分に際する法的リスクの管理

推定規定の導入により、公益通報後の人事決定には従来以上に慎重なプロセス管理が求められます。企業は次の点を徹底する必要があります。

  • 通報歴の人事評価からの完全分離:公益通報の有無や内容を、人事評価・昇降格・異動・解雇の判断材料に一切含めない旨をHRポリシーに明記する
  • 不利益取扱いに当たりうる措置の事前審査:降格・減給・業務変更・解雇などの措置を検討する際は、対象者の通報歴を確認し、推定規定が適用されうる状況かを法務部門が事前にスクリーニングする
  • 事後的立証のための記録整備:措置決定の理由・経緯・証拠資料を事後的に再現できる形で保管する

特に人事部門・管理職への研修は不可欠であり、「通報後に何かあれば推定規定が働く」という認識を現場に浸透させることが最も重要です。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

顧問先企業でトラブルになりやすいのが「通報から1〜2年後の人事異動」です。通報直後に動くのは避けるが、少し間を置いてから不遇な異動をさせるという事例があります。しかし改正後の推定規定は、時間的な間隔があっても「通報を理由とする不利益取扱い」と認定される可能性が残されています。

推定規定に対抗するための唯一の手段は「正当な業務上の理由が客観的に証明できること」です。そのためには、人事決定の前段階で、①なぜその措置が必要か、②通報の有無とは無関係に当該措置が検討されていたことを示す証拠(会議録・メール等)が揃っているかを必ず確認してください。

内部通報体制の再点検チェックリスト(10項目)

2022年改正対応で一度整備した内部通報体制も、2025年改正を踏まえて見直しが必要です。以下の10項目を今すぐ確認してください。

  • 規程の最新化: 内部通報規程が最新の法改正(2025年改正)を反映した内容になっているか
  • フリーランス対象の明記: フリーランス・業務委託者が通報窓口を利用できる旨が規程に明記されているか
  • 退職者対象の記載: 退職後1年以内の退職者も通報者として受け付ける旨の記載があるか
  • 従事者の指定: 「従事者」が正式に指定され、守秘義務が書面で確認されているか
  • 情報管理フロー: 通報者の秘密を保持するための情報管理フロー(誰に・どのタイミングで・何を報告するか)が明確化されているか
  • プロセスの文書化: 調査・是正・報告の一連のプロセスが文書化され、記録が保管されているか
  • 役員関連ルート: 経営陣・役員が関与する案件を扱うルート(役員による通報・役員を対象とする通報)が規定されているか
  • 社内窓口の独立性: 社内窓口の担当者が独立性を保てる立場にあり、経営層から恣意的な指示を受けない構造になっているか
  • 外部窓口の設置: 外部窓口(弁護士事務所等)が設置・活用されているか
  • 定期的な周知: 制度の存在・利用方法について毎年度の従業員周知が実施されているか

1項目でも該当しないものがあれば、施行日までの優先対応事項として整理してください。複数項目に該当する場合は、外部弁護士による点検依頼を検討することが推奨されます。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

上記10項目をチェックした結果、3つ以上に問題があった場合、2026年12月の施行に間に合わない可能性が高いです。特に④の「従事者の指定」は、2022年改正から既に義務化されている事項ですが、中小・中堅企業を中心にいまだ未対応のケースが散見されます。

おすすめの進め方は、①まず法務部門または外部弁護士によるチェックリスト点検(2〜3週間)、②現状とあるべき姿のギャップを整理した改訂計画書の作成(1ヶ月)、③新規程のドラフト作成・社内コンセンサス形成(2〜3ヶ月)、④全従業員への説明会・eラーニング実施(1〜2ヶ月)、という4ステップです。今すぐ着手して間に合うスケジュールです。

内部通報体制整備の実務的な進め方

ここでは、2026年12月の改正施行に向けて内部通報体制を実務的に整備するための具体的な手順を解説します。

通報窓口の運用見直し(社内窓口 vs 外部窓口)

内部通報窓口は「社内窓口」と「外部窓口(弁護士・第三者機関)」の両方を設けることが望ましいとされています。社内窓口は法務部・コンプライアンス部・監査部などに設置されることが多いですが、以下の問題点が生じやすいです。

  • 通報内容が経営幹部に筒抜けになるリスク:守秘義務の不徹底
  • 担当者が人事権を持つ上司の影響下にある場合:事実調査が恣意的になるリスク
  • 役員や代表取締役に関する通報:「なかったこと」にされるリスク

外部窓口として弁護士事務所を利用する場合は、①通報者の匿名性を担保できる、②弁護士職務上の秘密保持義務が自動的に適用される、③経営陣から独立した調査が可能という利点があります。費用対効果の観点から、少なくとも「役員関連案件」については外部窓口(弁護士)を経由する運用にすることが推奨されます。

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

社内窓口と外部窓口のすみ分けが明確でないと、通報者が「どちらに言えばよいかわからない」という状況が生まれ、結局誰も使わない制度になります。

実務上の最善策は、①通常案件は社内窓口、②役員・上級管理職が当事者または関係者となる案件は外部窓口(弁護士)、③匿名希望の案件は外部窓口、という3段階の使い分けを規程に明記することです。通報者が自分の案件がどのルートに該当するかをひと目で判断できるフローチャートを社内に掲示・配布するだけで、制度の実効性が大幅に上がります。

従事者の指定と情報管理のあり方の見直し

「従事者」とは、公益通報者保護法第11条に基づき、事業者が内部通報に関する業務に従事させるために指定した者です。2022年改正で義務化されており、指定された従事者には刑事罰付きの守秘義務が課されます(同法第12条・第21条:30万円以下の罰金)。

従事者指定における主な実務上の留意点は次のとおりです。

  • 指定書面の作成:従事者の氏名・役職・担当業務範囲を明記した指定書を作成し、本人に交付・署名させる
  • 守秘義務の範囲の明確化:「通報者の特定につながる情報」「通報内容」「調査の経緯」のすべてが秘密保持の対象であることを確認させる
  • 定期的な指定の見直し:異動・退職によって従事者が入れ替わる場合、速やかに指定変更と守秘義務の再確認を行う
  • 情報管理システムの整備:通報情報へのアクセス権を従事者のみに限定するシステム設定(パスワード管理・アクセスログ記録)を行う
弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

従事者の守秘義務違反は刑事罰の対象ですが、私の経験上、違反事案の多くは「悪意」ではなく「うっかり漏洩」から生じています。例えば、「この件は調査中だから人事部長に相談してもいいよね」という認識から漏えいが起きるケースが典型です。

従事者指定時には必ず個別面談を実施し、「通報者の同意がない限り、いかなる情報も第三者(上司も含む)に開示してはならない」という認識を具体的な事例を交えて徹底することが重要です。マニュアルを渡して終わりではなく、ケーススタディ形式の研修を年1回以上実施することを標準化してください。

社内周知と不利益取扱いの禁止に関する徹底

内部通報制度を実効的に機能させるためには、制度の存在と利用方法を全従業員(2025年改正後はフリーランスも含む)に定期的に周知することが不可欠です。また、不利益取扱いの禁止を現場の管理職に徹底することが、推定規定・直罰規定への対応として最も効果的な予防策となります。

周知の具体的手段としては次のようなものが有効です。

  • 入社時研修への組み込み:全新入社員に対して内部通報制度の説明を入社研修に必修で含める
  • 管理職研修への組み込み:不利益取扱いの禁止・推定規定・直罰規定についての説明を管理職昇格研修に含める
  • 年次eラーニング:毎年度1回、全従業員に内部通報制度の内容・利用方法・禁止事項についてのeラーニングを受講させ、修了確認を記録する
  • 社内イントラネットへの掲載:窓口連絡先・通報手順・Q&Aを常時閲覧できる状態に置く
弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

「研修を実施した」という記録そのものが、消費者庁の立入検査時に「体制整備義務を履行している」ことの証拠となります。eラーニングシステムのログ、研修の出席簿・受講確認書、及び理解度確認テストなど、記録が残る形での実施が不可欠です。

特に管理職向け研修では「報復防止」のメッセージを明確に伝えることが重要です。「通報者を探ろうとすること自体が違法行為になりうる」「通報者と思われる人物への態度変化は厳しく問われる」という具体的なメッセージを、会社のトップ(代表取締役または社長)の言葉で伝えることが現場への最大の抑止効果を生みます。

是正措置・報告体制の整備

内部通報があった場合、受付・調査・是正・報告という一連のプロセスを記録し、適切な体制で処理することが法令上も実務上も求められます(公益通報者保護法第11条第2項・消費者庁指針)。

受付
通報受領記録
事実調査
ヒアリング・証拠
是正措置
違反停止・処分
フィードバック
通報者への通知
経営報告
取締役会への報告

各ステップの実務的なポイントは次のとおりです。

  • 受付:通報受領日時・通報内容の概要・匿名か記名かを記録するフォームを整備する
  • 事実調査:関係者へのヒアリング・証拠収集・事実認定のプロセスを文書化する。調査担当者の利益相反がある場合は担当を変更する
  • 是正措置:法令違反が認定された場合の是正手順(違反行為の停止・再発防止策・関係者への処分等)を規程に定める
  • 通報者へのフィードバック:通報者(匿名でない場合)に対して調査・対応結果を適切に通知する
  • 経営・取締役会への報告:案件の類型・件数・対応状況を定期的(少なくとも年1回)に取締役会または監査委員会に報告する体制を整備する
弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

是正措置プロセスの中で最も問題が起きやすいのが「調査の中立性」です。通報の対象となる人物が調査プロセスに影響力を持っている場合、事実が歪められるリスクがあります。

対策として、①社外取締役または外部弁護士が関与する調査委員会を設置できる仕組みを規程に盛り込む、②重大案件(役員関与・刑事事件の可能性がある案件)については外部調査機関(弁護士・公認会計士等)への委託を標準とする規定を置く、の2点を強く推奨します。「身内だけで調査した」という事実は、後に訴訟等で問題となることが多く、中立性の担保が企業防衛につながります。

POINT 推定規定・直罰規定への対応、実施前に必ず弁護士へ

従事者指定・守秘義務確認・是正措置の手順整備は、いずれも実施後では取り返しのつかないコンプライアンス事故に発展します。実施前に弁護士に相談することで、推定規定・直罰規定の射程を踏まえた手順設計と、立入検査に耐える記録管理を組み立てられます。

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2026年12月施行に向けた企業対応ロードマップ

2026年12月1日の施行まで残り約7ヶ月(2026年5月時点)です。以下のロードマップを参考に、優先順位をつけて対応を進めてください。

今すぐ取り組むべき対応(2026年前半まで)

Phase 1:現状把握(〜2026年6月)

・現行の内部通報規程と実際の運用状況のギャップを外部弁護士に点検依頼する
・従事者の指定状況・守秘義務の確認状況を洗い出す
・フリーランス・業務委託先との契約書に通報制約条項がないかを確認する
・通報窓口の独立性・外部窓口の設置状況を確認する

Phase 2:改訂計画策定(〜2026年6月)

・現状のギャップを踏まえた内部通報規程の改訂計画書を作成する
・改訂スケジュール・担当者・予算を決定し、経営層の承認を得る
・外部窓口(弁護士等)の選定・契約を完了する

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

Phase 1の現状点検は、外部弁護士に依頼することを推奨します。内部のコンプライアンス部門だけで点検を行うと、「自分たちで作った制度の問題点を指摘しにくい」という心理的バイアスが働きやすく、問題が見落とされることが多いからです。

弁護士による点検は通常2〜4週間・費用は規模によりますが数十万円程度です。施行後に消費者庁の立入検査・勧告・命令を受けて発生するレピュテーション損害や是正費用と比較すれば、予防コストとして非常に合理的な投資です。今すぐ顧問弁護士にご相談ください。

施行前6ヶ月以内(2026年7月〜11月)に完了すべきこと

Phase 3:規程改訂・社内整備(〜2026年9月)

・改訂した内部通報規程について、取締役会での承認を得る
・新規程を踏まえた従事者の再指定・守秘義務の書面確認を完了させる
・人事・労務管理上の対応(推定規定対策のための人事プロセス見直し)を完了させる
・業務委託契約書のひな形を改訂し、フリーランス保護対応の条項を追加する

Phase 4:周知・研修・施行前確認(〜2026年11月)

・全従業員への新規程の説明会・eラーニング実施と受講記録の保管
・管理職向け「不利益取扱い禁止・推定規定・直罰規定」専門研修の実施
・フリーランス・業務委託先への通報窓口利用可能化の周知
・施行直前の最終確認チェックリストの実施(法務部門または外部弁護士による)

弁護士 川村将輝
弁護士 川村将輝のワンポイント解説

施行前の最終確認において特に確認すべきポイントは「書類が揃っているか」ではなく「制度が実際に機能する状態にあるか」です。具体的には、従事者が守秘義務の意味を正確に理解しているか、外部窓口の弁護士が通報を受け付けられる態勢にあるか、通報情報へのアクセス制限がシステム上で担保されているか、の3点を実際に確認してください。

また、施行後に最初の通報案件が発生した際に、担当者がパニックにならないよう「通報受付から是正完了までのシミュレーション訓練」を2026年11月中に1回実施することをおすすめします。外部弁護士も参加した形で模擬案件を処理してみると、手順の抜け漏れや担当者の認識のズレが事前に発見できます。

まとめ

本記事では、公益通報者保護法の改正がいつ施行されるかという基本情報から、2022年改正・2025年改正の全内容、そして2026年12月1日施行に向けた具体的な実務対応ロードマップまでを体系的に解説しました。

最後に、改正の要点と今すぐやるべきことを整理します。

2025年改正の要点と今すぐやるべきこと

  • 2026年12月1日施行:フリーランス・業務委託者も保護対象となる。業務委託契約書の見直しが急務。
  • 推定規定と直罰規定:通報後の人事措置は企業が「正当な業務上の理由」を証明しなければならない。人事プロセスと記録管理の抜本的見直しが必要。
  • 消費者庁の立入検査権:行政による実効的な監督が始まる。記録の整備と体制の可視化が不可欠。
  • 今すぐやるべきこと:①現行規程の弁護士点検、②フリーランス契約書の見直し、③従事者の再指定と守秘義務確認、④外部通報窓口の設置・強化。

公益通報者保護法の改正対応は、単なるコンプライアンス義務の履行にとどまらず、企業としての法的リスク管理・ESG経営・ガバナンス強化の根幹に関わる課題です。改正施行前に専門家(弁護士)の支援を受けて、実効性のある内部通報体制を整備することが、企業価値の保全につながります。

内部通報体制の整備・点検は、改正法の趣旨を踏まえた実務的視点が欠かせません。施行までの限られた期間を計画的に活用するためにも、早期に弁護士への相談を検討することをおすすめします。

POINT 2026年12月までに、まずは無料相談から始めましょう

公益通報者保護法の改正対応は、規程改訂・契約書改訂・従事者指定・研修と、複数領域にまたがる横断プロジェクトです。早期に弁護士と連携し、自社のロードマップを描くことが、立入検査・推定規定リスクへの備えとして最も確実です。

企業法務弁護士ナビには、コンプライアンス・公益通報対応に注力する弁護士が全国で多数登録しています。まずは無料相談で現状の体制を確認してみませんか。


  • 2026年12月施行カウントダウン対応
  • 規程改訂テンプレ提供事務所多数
  • 初回相談無料
  • 外部通報窓口の受託対応

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旭合同法律事務所
川村将輝
2020年司法試験合格。現在は、家事・育児代行等のマッチングサービスを手掛ける企業において、規制対応・ルールメイキング、コーポレート、内部統制改善、危機管理対応などの法務に従事。
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