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「納品した作品が勝手に改変されていた」
「クレジット表記が削除されている」
「契約書に『著作者人格権を行使しない』と書かれているが、これは問題ないのか」
ビジネスの現場で、このような著作者人格権に関する悩みや疑問を抱えている方は少なくないでしょう。特に、クリエイティブ業界や企業の法務・総務部門では、著作者人格権の取り扱いが適切でないと、予期せぬトラブルに発展するリスクがあります。
著作者人格権は、著作権法で保護される権利の一つですが、財産的な著作権とは異なる特殊な性質を持っており、実務上の注意点も多岐にわたります。
本記事では、文化庁などの公的機関の情報を参照しながら、著作者人格権の基礎知識から実務上のポイントまでを体系的に解説します。
本記事を読むことで、以下の内容を理解できます。
特に、契約段階で確認すべき事項や、トラブル予防のための実践的なポイントについても詳しく取り上げますので、すぐに実務に活かせる内容となっています。
そもそも著作者人格権とは、どのような権利でしょうか。基本的な内容・前提知識について解説していきます。
著作権法では、著作物を創作した著作者に対して、大きく分けて二つの権利を認めています。それが「著作者人格権」と「著作権(財産権としての著作権)」です。
著作権法は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」を目的としています。
著作権法第1条
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
この目的を達成するため、著作権法は二つの側面から著作者を保護しています。
この二つの権利は、それぞれ独立して機能し、保護の対象や性質が大きく異なります。著作者人格権は、まさにこの「人格的利益の保護」を担う権利なのです。
著作者人格権は、著作者の著作物に対する人格的な利益を保護する権利であり、著作権法第18条から第20条に規定されています。
具体的には、以下の4つの権利から構成されています(詳細は次章で解説します)。
文化庁の解説によれば、著作者人格権は「著作者が自己の著作物について有する人格的・精神的利益を保護するための権利」と位置づけられています。
参照:文化庁「著作権制度の概要」
著作者人格権は、著作権法の中でも特に重要な位置づけがあります。
すなわち、著作者の人格そのものを保護する権利であるため、たとえ著作権(財産権)を他人に譲渡した場合でも、著作者人格権は著作者の手元に残り続けます。これは、一身専属性と呼ばれるものであり、著作物が著作者の思想や感情の表現である以上、その創作者としての人格的利益は保護されるべきだという考え方に基づいています。
著作権法第59条
著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
この条文が示すように、著作者人格権は著作者個人と不可分の関係にある権利であり、他人に譲り渡すことができないという重要な特徴を持っています。
実務上、この点は非常に重要です。例えば、企業がデザイナーに発注してロゴを作成してもらい、その著作権(財産権)を譲り受けた場合でも、デザイナーの著作者人格権は残ります。
そのため、ロゴを無断で改変したり、デザイナーの意に反する方法で使用したりすると、著作者人格権の侵害となる可能性があるのです。
また、著作権法第60条では、著作者の死後における人格的利益の保護についても規定しており、著作者の死後であっても、その意思を尊重することが求められています。
このように、著作者人格権は著作権制度の根幹をなす重要な権利として位置づけられているのです。
著作者人格権には、4つの種類がありますが、それぞれの具体的な権利の内容や性質などについて、詳細に解説していきます。
公表権とは、未公表の著作物を公表するかどうか、公表する場合にはいつ、どのような方法で公表するかを決定する権利です。著作者が自ら作り上げた作品を社会公衆に出すことにより、自己充足や意思決定が尊重されます。
著作権法第18条第1項では、次のように規定されています。
著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
公表権について、次の3つのポイントが重要です。
| 1. 「公表」の意味 |
著作物を公衆に提供または提示すること。具体的には、以下のような行為が「公表」に該当します。
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|---|---|
| 2. 未公表の著作物の保護 |
著作者が公表を望まない著作物(例:没原稿、試作品、個人的な日記など)を、第三者にみだりに公表されないことを保護します。 |
| 3. 契約における留意点 |
制作物の納品後、クライアントがいつ公表するかについては、契約で明確にしておく必要があります。 |

例えば、ライターが執筆した記事を、発注者が著者の了解なく予定より早く公開した場合、公表権の侵害となる可能性があります。
また、デザイナーが制作途中のラフ案を、本人の許可なくSNSで公開することも問題となります。
氏名表示権とは、著作物に著作者名を表示するかどうか、表示する場合にどのような名義で表示するかを決定する権利です。
著作権法第19条第1項では、次のように規定されています。
著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
氏名表示権について、次の3つのポイントが重要です。
| 1. 表示方法の選択 |
著作者は、著作物の表示について、以下の選択肢があります。
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|---|---|
| 2. 慣行に従った省略 |
著作権法第19条第3項 例:新聞記事の転載時に記者名を省略することなど |
| 3. クレジット表記のルール |
実務上、どのようなクレジット表記を行うかは、契約で明確にしておきます。
|

例えば、写真家が撮影した写真を広告に使用する際、予算の都合でクレジット表記を省略したいと言われるケースがあります。
しかし、写真家が氏名表示を希望する場合、勝手に省略すると氏名表示権の侵害となる可能性があります。
同一性保持権とは、著作物の内容や題号を著作者の意に反して無断で改変されない権利です。
著作権法第20条第1項では、次のように規定されています。
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
この同一性保持権は、実務上最もトラブルになりやすい権利の一つです。
同一性保持権について、次の3つのポイントが重要です。
| 1. 「改変」の範囲 |
改変とは、著作物の内容や形式を変更することを指します。
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|---|---|
| 2. やむを得ない改変の例外 (著作権法第20条第2項) |
以下のような「やむを得ない改変」は認められます。
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| 3. 契約での対応 |
実務上、一定の範囲での改変が必要となるケースは多いため、契約で以下の点を明確にしておくことが重要です。
|
※デジタル化や生成AIの進展に伴う著作権法20条2項の例外規定の考え方について、文化庁「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」が参考になる。

例えば、Webサイトのデザインを納品した後、クライアントが色調を大幅に変更したり、レイアウトを改変したりした場合、同一性保持権の侵害となる可能性があります。
ただし、レスポンシブ対応のための調整など、著作物の作成や提供の目的や性質上、必要かつ合理的に認められる範囲での変更は認められる場合があります。
名誉声望を害する方法での利用を禁止する権利(以下便宜上「名誉声望保持権」といいます。)は文字通りの定義ですが、厳密には著作者人格権そのものではなく、著作者人格権の侵害とみなされる行為です。その結果、実質的には著作者人格権の一部として機能しています。
著作権法第113条第11項では、次のように規定されています。
著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。
名誉声望保持権について、実務上次の3つのポイントが重要です。
| 1. 「名誉又は声望を害する方法」の意味 |
客観的に見て著作者の社会的評価を低下させるような利用方法を指します。
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|---|---|
| 2. 著作者の主観ではなく客観的判断であること |
侵害性の判断は、著作者が「名誉を害された」と感じるかどうかではなく、客観的に見て社会的評価を低下させる利用かどうかという点で行われます。 |
| 3. 契約での対応 |
|

例えば、教育的な内容の書籍のイラストを、著者の了承なく全く異なる文脈(例:ギャンブルや成人向け商品の広告)で使用した場合、名誉声望を害する利用として問題となる可能性があります。
著作者人格権は、どのような特徴を持つ権利であると整理できるでしょうか。
ここでは著作権との違いについて、より詳細に見ていきましょう。
何を保護しているのかという点で、著作者人格権と著作権の本質的な違いが生じます。
著作者人格権は、著作者の人格的・精神的な利益を保護することを目的としています。著作物は著作者の思想や感情の表現であり、著作者の人格と密接に結びついているため、その人格的価値そのものを守る必要があるという考え方に基づいています。
一方、著作権(財産権)は、著作物を経済的に利用する権利を保護します。複製権、公衆送信権、譲渡権などがこれに該当し、著作物から生じる経済的利益を著作者に帰属させることで、創作へのインセンティブを確保します。
そのため、著作物から生じる経済的利益の所在によって権利侵害の実質があるかどうかの判断に影響します。

この違いは、契約実務において非常に重要です。著作権(財産権)を譲渡する契約を結んでも、著作者人格権は著作者の手元に残ります。そのため、譲渡後も著作者の人格的利益を侵害する行為(無断改変など)は違法となります。
権利の譲渡の可否は、著作者人格権と著作権(財産権)の最も大きな違いです。
著作者人格権は、前記のとおり譲渡することができません。つまり、著作者人格権は著作者個人と不可分の関係にあり、他人に移転することが法律上不可能なのです。契約書に「著作者人格権を譲渡する」と記載しても、その条項は法的に無効となります。
これに対し、著作権(財産権)は、著作権法第61条により、譲渡することができます。企業が外部のクリエイターに制作を依頼する際や様々成果物の作成を想定する契約においては、必ず作成者・受託者から委託者・依頼者に成果物の「著作権を譲渡する」ことを内容とする契約を結ぶことは一般的に行われています。
著作者人格権は譲渡できないため、実務上は「著作者人格権を行使しない」という特約(不行使特約)が用いられます。
ただし、この不行使特約についても注意が必要です。包括的・無制限、あるいは不合理な根拠に基づく不行使特約は、公序良俗に反して無効となる可能性があります。
そのため、不行使特約を設ける場合は、以下のように範囲を限定することが望ましいとされています。

権利不行使特約については、基本的にシンプルな条項で差し支えなく、通常の業務委託契約書などにおいては「受託者は、委託者に対し、本成果物について著作者人格権を行使しない。」といった程度の記載でも直ちに問題にはなりません。
しかし、契約目的や、著作物を供給する側の独自の著作物への依存度、個性の程度によっては、原著作者の権利留保を定めておくのが通例で、その場合は著作者人格権の不行使にも全部又は一部に例外が生じる場合があります。
前記のとおり著作権法第59条により、著作者人格権は「著作者の一身に専属」する権利とされているため、著作者の死亡によって消滅し、相続の対象とはなりません。
ただし、著作者の死後における人格的利益の保護について、前記の著作権法60条に規定しています。これは、著作者人格権そのものが相続されるわけではありませんが、著作者の意思を死後も尊重すべきであるという趣旨です。
一方で、著作権(財産権)は、財産的な権利であるため、著作者の死亡により相続人に相続されます。もっとも、相続された場合であっても、著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年間です(著作権法第51条第2項)。
著作者の死後、その著作物を利用する際には、以下の点に留意する必要があります。
例えば、故人の未発表原稿を出版する場合、相続人から著作権の許諾を得るだけでなく、著作者が生前に公表を望んでいたかどうかも考慮する必要があります。
実務上、著作者人格権の侵害が問題となるケースは数多くあります。ここでは、特に頻繁に発生する典型的な事例を紹介します。
同一性保持権の侵害は、著作者人格権侵害の中で最も多く発生するトラブルです。
Webサイトのデザインを納品した後、クライアントが以下のような変更を著作者の許可なく行った場合、同一性保持権の侵害となる可能性があります。
ただし、著作権法第20条第2項第4号では、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」は認められています。
例えば、以下のような改変は「やむを得ない改変」として認められる可能性があります。
ライターが執筆した記事について、以下のような編集が著作者の許可なく行われた場合、同一性保持権の侵害となる可能性があります。
編集権限の範囲は、契約で明確にしておくことが重要です。一般的には、以下のような編集は許容される場合が多いとされています。
写真家や映像作家の作品について、以下のような加工が許可なく行われた場合、同一性保持権の侵害となる可能性があります。
写真の場合、契約で「通常の編集作業の範囲内での調整」を許可することが一般的です。しかし、以下のような加工は著作者の許可が必要とされる場合が多いでしょう。
著作者が氏名表示を希望しているにもかかわらず、以下のような行為が行われた場合、氏名表示権の侵害となります。
著作者の許可なく、以下のような名義の変更が行われた場合も問題となります。
前記のとおり、著作権法第19条第3項では、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき」は、慣行に従って氏名表示を省略できるとされています。
ただし、この「慣行」は非常に限定的に解釈されており、単に「業界でよくあること」というだけでは認められません。
共同著作物において、一部の著作者の名前だけを削除することも、氏名表示権の侵害となります。例えば、複数のライターが共同で執筆した記事について、一人のライターの名前だけを削除して掲載することは、原則として許されません。
著作物を、当初の目的とは全く異なる、著作者の名誉・声望を害する用途で使用した場合、著作権法第113条第11項の侵害とみなされます。
具体例
著作者の社会的立場や信条と明らかに矛盾する方法での利用も問題となります。
具体例
著作物そのものの品位や格調を大きく損なうような利用方法も、名誉声望を害する行為となる可能性があります。
具体例
名誉声望を害する方法での利用に該当するかどうかは、客観的な判断が求められます。著作者が主観的に「不快だ」と感じるだけでは不十分で、社会通念上、著作者の社会的評価を低下させる利用であると認められる必要があります。この判断においては、以下のような要素が考慮されます。
特に企業における知財法務において、著作者人格権についてどのような点がポイントになるか、基本的な3つを解説していきます。
理論的には、著作者人格権は著作者の人格的利益の保護であり、最も根幹的なものであることから、包括的な権利不行使特約については、著作者の権利利益の保護に欠けるため不適切であるとも考えられます。
しかし、例えば多くの業務委託契約書などにおいては、受託者が委託者の意図や目的に沿った成果物を作成し、著作者側としては没個性的な内容であることから、自ら著作物として権利を保持することを目的としないことが往々にしてあります。
そのため、権利不行使条項は、包括的な条項として置かれ、それに対して特段の問題が生じないというのが実務です。
一方で、作品としての個性が着目されるような芸術性、創作性のある著作物の使用を目的とする場合、著作者側も著作権及び著作者人格権の一部留保を望む場合があり、契約上調整が必要となります。その際には、公表権、氏名表示権、同一性保持権の基本的な3つの権利を中心に個別に行使範囲などを定める必要が出てきます。
第○条(著作者人格権の取扱い)

第○条(著作物の改変の範囲)
第○条(氏名表示)
※上記のように予め契約書で厳格に定めておく場合もありますが、実務上は、ある程度継続的な関係値を築いている契約当事者間においては、メールやチャットなどのテキストベースのやり取りで記録を残しつつ、契約書外での合意により協議決定して運用する場合も少なくありません。
複数の著作者による共同著作物の場合、著作者人格権の取り扱いはさらに複雑になります。
共同著作物とは、「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(著作権法第2条第1項12号)をいいます。
共同著作物の場合、共同著作者の著作者人格権の行使は、全員の同意が必要とされます(著作権法第64条第1項)。
その結果、例えば公表権の話としては公表するには全員の同意が必要となります。また、全員のクレジットの表記についても全員で決める必要があります。同一性保持権に関しても、他者に改変されるのを拒否するには全員の同意が必要ということになります。
もっとも、これではかえって権利保護が図られない可能性もあることから、「各共有者は、正当な理由がない限り、合意の成立を妨げることができない」と規定されています。これは、一人の著作者が合理的な理由なく権利行使に反対し、他の著作者の利益を害することを防ぐための規定です。
共同著作物を制作する場合、以下の点を事前に取り決めておくことが重要です。
第○条(共同著作物としての取扱い)

実務上、共同著作物と混同されやすいのが「結合著作物」です。
結合著作物とは、各人の寄与を分離して個別的に利用できる著作物のことです。例えば、作詞と作曲、文章と挿絵などが該当します。
| 共同著作物 | 結合著作物 |
|---|---|
| バンドの演奏、共著論文、共同制作の絵画など | 作詞作曲が別の楽曲、文章と挿絵が別の書籍など |
結合著作物の場合、各著作者は自己の寄与部分について独立して著作者人格権を行使できます。
近時はAIの急速な発展と普及により、AI生成物に関する著作権の考え方がAI法務における一大論点となっています。AIと著作権という大きなテーマの解説は割愛し、著作者人格権との関係での考え方について、ポイントを解説します。
著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護するものであることから、AIという機械・ロボットが処理して生成したものに著作者人格権の法的保護は生じません。
そのため、AI生成物に著作者人格権が認められるには、そもそもAI生成物について、人の著作物であるといえるかどうか(著作物性)という点が根本的な問題となります。
AI生成物について著作物性が認められるには、人の創作意図と創作的寄与が果たされていて、AIを道具的に使用したものと評価しうるかどうかによって判断されます。
具体的には、以下のような要素によって、著作者の個性や思想感情の表現によるものと認められることが必要です。
最後に、著作者人格権の侵害によりどのような責任が問われうるのか、リスクを正しく理解しておきましょう。
著作者人格権を侵害する行為またはそのおそれがある行為に対して、著作者は差止請求をすることができます。
著作権法第112条第1項
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
使用者は、無断改変された著作物の使用停止をする必要があるほか、氏名表示が欠落している状態の是正をする必要があります。侵害のおそれがある段階でも、予防的に請求できるため、使用前段階などで応じる必要性などが生じます。
具体的には、改変されたデザインの使用中止、著作者名の追加表示、不適切な利用の停止が挙げられます。
著作者人格権の侵害により損害を受けた場合、著作者は損害賠償を請求することができ、賠償責任を負う可能性があります。そして、著作権法第114条では、損害額の推定規定が設けられており、損害額の立証が容易になるよう配慮されており、訴えられた側における立証のハードルは一定あるものといえるでしょう。
著作者人格権の侵害により著作者の名誉や声望が害された場合、著作者は名誉回復のための措置を請求することができます。その結果、次のような措置を取ることが求められることがあります。
著作権法第115条
著作者又は実演家は、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。
著作者人格権の侵害については、刑事罰の対象となります。
著作権法第119条第2項第1号
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(一)著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
なお、著作者人格権侵害罪は、親告罪であるため(著作権法第123条第1項)、著作者の告訴がなければ、検察官は起訴することができません。
法人の代表者または法人の従業者が、その法人の業務に関して著作者人格権侵害罪を犯した場合、行為者だけでなく、法人に対しても罰金刑が科される両罰規定が定められています(著作権法第124条第1項)。
この場合、法人には3億円以下の罰金が科される可能性があります(第119条違反の場合)。企業が従業員の著作者人格権侵害行為について責任を問われる可能性があるため、社内での著作権教育やコンプライアンス体制の整備が重要となります。
著作者人格権は、「面倒な権利」ではなく、創作者の尊厳と創作活動を守るための大切な権利です。著作物を発注する側も、制作する側も、この権利を正しく理解し、相互に尊重することで、より良い創作環境とビジネス関係を築くことができます。
実務において不明な点や複雑な事案に直面した場合は、弁護士や専門家に相談することをお勧めします。また、文化庁のウェブサイトでは、著作権に関する最新情報やQ&Aが公開されていますので、定期的に確認することも有効です。
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