「事業を続けたいけれど、長い間経営難が続いている」そんな場合に、まず思い浮かぶのが「会社破産」という言葉ではないでしょうか。
会社を破産にすると、その後はどうなるのでしょうか。また、破産しないためには他にどのような手続きがあるのでしょうか。
ここでは、会社破産を決断する前に確認しておきたいポイントについて詳しくご紹介します。会社破産について知識を補充し、できるだけ早期に会社経営を立て直しましょう。
会社が破産するとどうなる?
会社破産とは、会社の債務(借入金や買掛金)などが膨らみ、自力での経営再生が難しい場合、裁判者に破産を申し立ててすべての財産(債権・債務)を清算する整理手続きのことです。
事業整理手続には「私的整理」と「法的整理」があり、破産手続きは裁判所が関与して行うため「法的整理」に該当します。
また、会社は破産により清算されて消滅しますので、破産は「再建型」ではなく「清算型」の整理手続です(これらについては後述します)。
ここでは、これらを踏まえて会社破産後はどうなるのかをご紹介します。
①会社の法人格が消滅する
本章のはじめにもお伝えしたように、会社破産は「法的整理」のなかの「清算型」手続きです。
会社の全財産を換価して、最終的には債権者に分配することで、会社の法人格自体が消滅します。
会社破産は、債権者に対して、平等に分配を行うことを目的とした清算型手続きです。
②会社に残された財産を換価し、債権者に支払う
法人破産の場合、裁判所から「破産管財人」が選任されます。破産管財人は破産手続で破産者財産の管理・処分を行う権限を持つ者であり、通常、会社と関係のない第三者の弁護士から選ばれます。
破産手続きでは、管財人主導の下で会社の資産(土地、建物、債権、設備など)すべてが換価処分されて金銭化されます。金銭化された破産者の財産は、債権者の属性に応じて破産手続きにおいて分配されます。
③残った負債が免責される
個人破産の場合、破産手続では裁判所から「免責許可決定」を受けることになりますが、法人破産の場合は、破産手続きで法人自体が消滅するため、このような免責はありません。法人が消滅すれば債務は当然に消滅するからです。
<破産法第253条>
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
引用:破産法第253条
️破産をするかしないかのポイントは?
破産を考える際に重要なことは、会社そのものが消滅するということです。
では、会社破産をするか、しないかのポイントはどこにあるのか、詳しくみていきます。
再生の可能性の有無
会社破産手続きを行うかどうかの最重要項目が、「再生可能の有無」でしょう。
たとえば、赤字部門と黒字部門を切り離すことで採算が見込めるならば、事業切り離しによって問題が解決する場合もあります。また、債務超過となっていても、それがあくまで一時的なものであって、事業内容に将来性がある場合には「再建型」の手続きで対応できるかもしれません。
このような他に取りうる方法を選択しても、結局事業継続が困難という場合は、破産を選択することも視野に入れる必要があります。
このように、最終的に清算型手続きである「破産」を選ぶのか、再建型手続きを選ぶのかは、事業破産に詳しい弁護士に相談しながら慎重に検討する必要があります。
資産や価値の有無
会社破産を行うと、会社の全財産は売却、処分され換金して債権者に平等に分配します。
会社の資産(不動産、動産、知的財産、ブランド力など全ての資産)は破産手続きの中で換価処分がされてしまい、破産する会社には何も残りません。他方、破産ではなく、「民事再生」や「会社更生」であれば、会社自体は生き残ります。
会社を消滅させるべきなのか、存続させるべきなのか、慎重な判断が必要ですね。
債権者の同意が得られるか
破産か再建かを選択する上で、債権者の意向も重要な判断基準となります。
というのも、再建型の整理手続きでは、債権者の負担の下で事業再生を進めるため、債権者の集団的な同意を必要とします。
例えば、民事再生を行う場合、再生計画の認可を得るには債権者の一定数の同意が必要です。また、特定調停や私的整理となると、債権者の個別同意を得なければなりません。
このような債権者の同意が得られそうにないということであれば、最終的には破産手続も視野に入れることになるでしょう。
会社破産のメリット
会社破産にはどんなメリットがあるのでしょうか。
債権者からの支払い請求が止まる
破産者の申立人が受任の通知を送ると、各債権者は個別に債権回収を行うことを停止するのが通常です(貸金業者等は法律上、この段階で直接の催告が禁止されます)。
経営者自身の人生の再スタートになる
会社の債務については経営者も連帯保証しているケースが多く、会社が破産すれば、経営者も破産することが多いです。
経営者も破産して、免責を受ければ、今後の生活を立て直すきっかけを得られるはずです。経営者個人が新しいスタートを切るという意味でも、会社破産にはメリットがあります。
会社破産のデメリット
一方、会社破産によるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
会社が消滅する
会社が破産すると、最終的には会社は消滅します。これまで積み上げてきたもの全てが消滅してしまうことはデメリットと言えるでしょう。
従業員を全員解雇しなければならない
破産に伴い会社が消滅しますので従業員もすべて解雇となります。経営者にとっては、まさに苦渋の決断になります。
経営者も破産するのが通常
上記のとおり、経営者は会社の連帯保証人となっていることがほとんどですので、会社の破産は経営者の破産を意味する場合が多いです。再スタートのきっかけとなるという意味ではメリットですが、個人としても財産を喪失するという意味ではデメリットと言えるでしょう。
私的整理と法的整理の違いを理解しよう
冒頭でご紹介しましたが、事業整理には「私的整理」と「法的整理」の2種類があります。
法的整理
法的整理とは裁判所の手続に基づいて債務者の資産・負債を整理することです。
裁判所が関与することで一定のルールの下処理を進められますが、多額の予納金が必要になったり、法的手続きを行っていることが公になったりするため、企業のマイナスイメージが強くなるというデメリットもあります。
私的整理
私的再生は、債務者と債権者の自主的な協議によって行われる債務整理手続きです。
裁判所は関与しないため、債権者間の公平性を欠くこともありますし、結局協議が調わずに処理が進まないということもあります。
よくある疑問
会社が破産した場合の、取締役の責任とは?
会社が破産した場合でも、直ちに個人である経営者や取締役が会社の負債について法的責任を負うことはありません。法律上、法人と個人は別人格とみなされ、あくまでも法人としての財産・債務は会社のものなのです。
ただし、多くの会社では銀行や金融機関から借入れをする場合、保証人・連帯保証人が代表取締役などの場合が多いでしょう。そのような場合は、会社の代表取締役は、会社の当該債務について支払い義務があります。
会社の債務を個人が支払うのは難しいことが多いため、会社が破産すると同時に連帯保証人の代表者や取締役も自己破産を申し立てるのが通常です。
従業員は解雇?その後の生活はどうなる?
会社が破産するということは、会社そのものが消滅するため、従業員も解雇しなければなりません。なお、会社の破産にあたって従業員の賃金が滞納してしまうような場合「未払い賃金立て替え制度」が利用できる場合があります。
「未払い賃金立て替え制度」とは、従業員の給料の一部を「独立行政法人労働者健康安全機構」が立て替えて支払ってくれる制度です。
この制度が利用できる会社の条件は次の通りです。
- 事業主(会社)が1年以上労働者を雇って、事業を行っていたこと
- 会社が倒産していること
また、この制度を利用するためには従業員にも次の通り条件があります。
- 未払賃金の合計が2万円以上ある
- 倒産後、2年以内に立替払いを請求すること
- 会社の倒産の半年前から倒産後1年半の間に退職をした人
なお、「未払い賃金建て替え制度」の手続き方法については、事業再生に詳しい弁護士事務所に相談してください。
弁護士に依頼しないと破産はできないの?
会社破産を弁護士に依頼しないで行うことは、不可能ではありません。
しかし、会社破産は特に専門的な処理も必要となりますので、これを専門に取り扱う弁護士に依頼するのが適切でしょう。弁護士に依頼をすることで、その後の手続きもスムーズに行えます。
会社の破産は弁護士に相談!
会社破産について相談する場合は、事業再生に実績のある法律事務所を選ぶようにしましょう。
多くの法律事務所では初回相談料を無料としています。まずは気軽に相談してみましょう。
まとめ
債務超過等により、事業再生が難しい場合に行う清算型の手続きが「破産」ですが、破産手続きを行うにも多額の費用がかかります。また、会社が破産となるとこれまで培ってきた会社のブランドや資産も消滅してしまいます。
できるだけそのような事態を避けるためにも、事業再生のご相談は、資金に余力があるうちに会社破産に詳しい弁護士事務所へ相談してください。
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