建築業界の破産事例を元に破産の流れ、相談すべきタイミングを解説

専門家執筆記事
実際に起こった建築業界の破産事例を元に、具体的な解決方法や流れ、相談時の注意、タイミングなどについて破産・再生・清算などの法務が得意な弁護士に解説していただきました。
諏訪坂法律事務所
黒井新
執筆記事
事業再生・破産・清算

「経営が思わしくない」「今後の資金繰りに不安が出てきた…」と不安を抱えていませんか。2018年の倒産件数は8,235件、負債総額は1兆4,854憶6,900万円(参考:全国企業倒産状況)。そのうち、建設業は1,431件と全体の約17%を占めました

 

会社の運営に少しでも不安を感じた場合、早い段階で弁護士に相談することで破産以外の道を選べるかもしれません。

今回は建築業の破産方法や流れ、相談すべきタイミング、ポイントなどを諏訪坂法律事務所黒井 新弁護士に解説していただきました。

事例1:専属下請工事業者(株)が破産したケース

賃貸用アパートの建築・管理を行う業者A社の一次下請として事業展開。ほぼA社の専属となることで、2009年には13憶2,244万円の売り上げを出していた。

 

しかし、その後の不景気によりA社が建築よりも賃貸をメインに切り替えたことから、受注が大幅に減少し、2010年には売上高が2億7,168万円までに低下。

 

実質代表者1名での運営となり、A社の専属もやめ他会社からの受注も受けていたが、業績は改善せず、2018年5月18日地方裁判所へ破産を申請した。

(参考:http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20180601_2.html)

このような事件の場合、まず債権者に受任の通知をするとともに、労働関係の整理、事務所賃貸関係、リース物件関係の整理を行っていきます。

 

相談する前の注意点は、一部の債権者(例:個人)に偏頗弁済をしないことです。無理に返済する前にご相談ください。

 

このような相談をするタイミングですが、事業の継続が困難であると判断した時期など、ギリギリのタイミングではなく、そうした不安が生じた時期に相談して頂くことで選択肢が広がります。

 

相談時には、可能な限りすべての債権者の情報と売掛金など保有する債権についての情報を持ってきていただくことで、スムーズに対応することができます。

事例2: 建築請負業者(株)が破産したケース

設計施工一貫体制を中心に、都市型住宅の施工販売をメインとした事業展開を行っていた。近年は、シェアハウス物件の施工にも尽力することで業績を拡大、2016年には13憶8,928万円の売り上げを出した。しかし、2018年にシェアハウスの運営会社の経営難により建築代の未払いが発生し、その影響で資金不足に陥った。

 

建築代の完済を求め裁判を行ったが、その間に資金調達も困難になり資金繰りが改善せず2018年11月27日、地方裁判所へ破産の申請を行った。

(参考:http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20181127_1.html)

基本的な進め方や注意点は事例1と同じになります。一時的な資金不足とすれば、裁判より資金調達に注力した方がよかった事例かもしれません。

事例3:戸建分譲業者(株)が破産したケース

戸建住宅の建築工事から、注文や分譲住宅のリノベーション・新築まで幅広く事業を展開しており、デザイン性の高さから認知度を高め、市内を中心に5つの展示上を設けていた。2012年には約36億9,000万円の売り上げを出し、その後も好調な業績を辿った。

 

しかし、2017年の消費税増額に伴い、注文や分譲住宅の需要が減少し、2019年には売上高が25憶200万円まで低下。人件費や経費がかさみ、支払いの遅れも発生するなど資金繰りが逼迫した末、2018年4月10日に事業を停止し、地方裁判所へ破産申立てを行った。

(参考:http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20180412_01.html)

 

受任後は速やかに、債権者へ受任通知を送達致します。その後は事例1と同様に事業に関係するものたちを整理していきます。

 

この事例では特に、雇用関係の整理が大変かもしれません。破産を決定した場合、従業員への丁寧な説明が必要になるでしょう。そのような雇用関係の整理も、独自で進めるより、一度弁護士に相談して頂くことで、不要な従業員トラブルを回避できると思われます。

事例4:債権者側から破産が申し立てられたケース

不動産業をメインに、貸金業や温泉・サウナ施設の経営などを幅広く手掛け、1992年には売り上げ高5億5,385万円を出していた。しかし、2000年には経営不振の末、金融機関により温泉・サウナ施設が競売にかけられた。

 

不動産や貸金業の方面で事業の拡大を計画し、資金を募ったが頓挫し業務停止になった末に、2017年11月28日に債権者から破産を申し立てられ、破産開始が決定された。

(参考:http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20171212_02.html)

債権者から破産を申立てられて破産するケースもあります。ただ、債権者から申し立てられる前に自ら清算を選択するか、債権者との誠実な協議の必要性があったかもしれません。

 

自ら清算を選択するタイミングや債権者と協議するタイミングの見極めはとても重要ですが、当事者からすると難しいかと思います。少しでも不安を感じたら、まずは弁護士に相談するのが望ましいでしょう。

 

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