売掛金を回収する方法|時効期間や回収不能時の対応も解説

専門家監修記事
取引先と掛取引を行っている企業の場合、「相手方から売掛金が支払われない」というケースもあります。未回収のまま放置しておくと、時効が成立して回収不可能になる可能性もあるため、迅速に回収対応を行うべきでしょう。この記事では、売掛金の回収方法や時効期間を解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
取引・契約

取引先と掛取引を行っている企業の場合、「相手方から売掛金が支払われない」というケースもあります。

 

売掛金を回収できないまま放置しておくと時効が成立し、回収不可能になる可能性もあります。場合によっては、企業経営に大きな悪影響が生じることもあるため、迅速かつ適切に回収対応を進めた方が良いでしょう。

 

この記事では、売掛金を回収する方法や回収期限、回収できない場合の対応などを解説します。

売掛金を回収する方法

売掛金を回収する方法としては、主に以下のものがあります。

ここでは、それぞれの回収方法について解説します。

 

  • 内容証明郵便による通知
  • 任意交渉の実施
  • 相殺の実施
  • 債権譲渡の実施
  • 法的手段による回収

内容証明郵便による通知

債務の支払いを求める旨を記載した書類を作成し、内容証明郵便で送付する、という方法です。

内容証明郵便とは、差出人・差出先・差出日時・記載内容などについて郵便局が証明する制度であり、訴訟発展時には証拠としても働きます。ただし、あくまで任意での支払を促すものに過ぎませんので、債務者に対する強制力はありません。

 

なお内容証明郵便については作成規定があり、作成時は以下のポイントを押さえておく必要があります。

 

  • 文字数(縦書きの場合)…1行20字以内・1枚26行以内
  • 文字数(横書きの場合)…1行20字以内・1枚26行以内、1行13字以内・1枚40行以内、1行26字以内・1枚20行以内
  • 用紙…同じものを3通作成(提出用・郵便局保管用・自社用)
  • 印鑑…実印でなくても可。なお書類が複数枚に及ぶ場合は、綴目に契印が必要

 

また一般的に催告書請求書などの表題を付けることが多く、以下のような形式で作成します。

 

任意交渉の実施

債務の支払いについて相手方と交渉を行う、という方法です。

ただし、この方法は法律によるものではなく、あくまで任意の交渉であるため、「相手方が交渉に対応できる状況にあるか」「どのような形での合意を望んでいるか」などの点がポイントとなります。

 

また交渉にあたっては、支払期限や利息などの交渉内容について、相手方が合意しやすいよう事前に考えておく必要があるでしょう。

相殺の実施

相手方に対して未払いの買掛金がある場合、買掛金と売掛金を相殺することで回収対応を済ませる、という方法です。相殺時は、債務を相殺する旨を記載した通知書を作成したのち、内容証明郵便にて送付することで完了します。

 

ただし、相殺できる範囲は買掛金の未回収分までであるため、売掛金の金額が買掛金よりも大きい場合などは、完全に相殺することはできません。そのような場合は、相殺しきれない部分について引き続き回収対応を行うことになります。

債権譲渡の実施

相手方に対する金銭債権を債権回収会社(サービサー)に売却処分することで、譲渡対価の限度で回収する、という方法です。回収リスクをサービサーに転嫁することができる半面、譲渡対価額は大幅に割り引かれるため、額面通りの回収はできません。

法的手段による回収

上記対応のほかに、以下のような法的手段による回収もあります。

 

  • 支払督促
  • 民事調停
  • 訴訟
  • 強制執行(差押え)

 

なお上記の法的手段を行ったのち、裁判所にて請求が認められた場合は、債権の存在・範囲を示す公的文書である債務名義を取得できます。債務名義を取得することで、後で解説する「強制執行(差押え)」に移行することができます。

 

ここでは、法的手段によるそれぞれの回収方法について解説します。

 

支払督促

簡易裁判所を介して、債務の支払いを命じる「督促状」を送ってもらう、という方法です。

支払督促手続きを行って請求が認められた場合、債務名義として仮執行宣言付支払督促を取得することができます。

 

また強制執行に移行する場合は、債務名義に執行力を与えるための「申立手続き」を別途行わなければなりません。

しかし、支払督促にて取得できる仮執行宣言付支払督促については、すでに執行力が付与されている債務名義に当たります。したがって申立手続きを行う必要がなく、スムーズに移行することができます。

 

民事調停

裁判官・調停委員会による仲介のもとで相手方と交渉を行う、という方法です。

民事調停手続きを行って請求が認められた場合、債務名義として調停調書を取得することができます。

 

民事調停は、法的手段の中でも比較的簡易かつ低額で行うことができる手続きです。裁判所の調停員を交えた債権者・債務者の協議・話合いの場であるため、互いの考えを自由に主張することができます。

 

訴訟

債務の支払いについて裁判を起こす、という方法です。

訴訟手続きを行って請求が認められた場合、債務名義として確定判決仮執行宣言付判決を取得することができます。

 

また相手方の住所が判明していない場合などでも、訴訟であれば手続きを進めることができる場合があります。ただし、出廷や証拠提出などの訴訟手続きには時間・労力がかかるため、対応時は弁護士などにサポートを依頼すると良いでしょう。

 

強制執行(差押え)

相手方が保有する財産などを強制的に回収する、という方法です。

上記の法的手段を行ったにもかかわらず相手方が応じない場合などは、最終的な手段として対応を検討しても良いでしょう。

 

なお強制執行では、「相手方がどのような財産を保有しているのか」という点がポイントとなるため、財産の保有状況によっては望ましい結果が得られないこともあります。

売掛金を回収できる期限

売掛金には時効が定められています。時効期間を過ぎて時効成立した売掛金については、原則回収することができないため、時効が成立する前に回収対応を行う必要があります。

 

ここでは、売掛金の時効期間・中断方法・時効期間後の対応について解説します。

時効期間

商法第522条にて、営業行為により生じた売掛金の時効期間は原則5年と定められています。

しかし、売掛金の種類によって時効期間は異なり、1~3年に規定されているものもあります。主なものをまとめると以下の通りです。

 

時効の中断方法

売掛金の時効は、以下の手続きを行うことで中断(延長)できます。ここでは、それぞれの中断方法について解説します。

 
  • 請求(裁判上の請求・裁判外の請求)
  • 差押え(仮差押え・仮処分)
  • 債務者による債務承認

 

請求(裁判上の請求)

裁判上の請求とは「法的手段による回収」で解説した、支払督促・民事調停・訴訟などの裁判手続きを指します。これらの手続きを行って請求が認められ、裁判所にて債務名義を取得することができた場合、時効を10年間延長することができます。

 

請求(裁判外の請求)

裁判外の請求とは「内容証明郵便による通知」で解説した、催告書請求書などの作成・送付手続きを指します。この手続きを行うことによって、時効完成を6ヶ月間延長することが可能です。

 

差押え(仮差押え・仮処分)

強制執行(差押え)」で解説した差押え(強制執行)や、差押えの前段階である仮差押え・仮処分を行った場合も、時効を延長することができます。

 

仮差押え・仮処分とは、財産処分の禁止など、「相手方が保有する財産を仮押さえする手続き」を指します。また差押えの実施にあたっては債務名義が必要ですが、仮差押え・仮処分については債務名義が不要です。

 

これらの手続きについて裁判所より申立てが認められた場合、裁判所の指定する一定期間だけ時効を延長することができます。

 

債務者による債務承認

債務者が、以下のような「債務の存在を認める行為」を行った場合も時効を延長することができます。

 

  • 同意…「債務承認書」や「支払約束書」といった、債務支払いに関する文書作成を行うこと
  • 一部弁済…債務の一部を支払うこと
  • 支払猶予願…「返済延長」や「減額」といった、支払猶予を申入れること

 

債務承認が行われることで、これまでの時効経過は消滅して振り出しに戻ります。なお債務承認は、すでに時効期間を過ぎているものについても適用されます。

時効期間後の対応

たとえ時効期間を過ぎたものであっても、場合によっては回収対応が行えることもあります。

売掛金の時効が成立するには、時効が成立していることを主張する時効の援用が、債務者によって行われる必要があります。

 

この時効援用前に、債務者が債務承認をした場合は、以後、時効を援用することはできなくなります。

売掛金を回収できない場合の対応

資金繰りの困窮などにより、相手方から売掛金を回収できる見込みがない場合の対応として、売掛金の放棄があります。

 

未回収の売掛金については、「回収可能性が認められない」という状況のもとで債権放棄をすることで、損金として処理できます。気を付けなければならないのは、単に権利放棄をしても損金として処理できるわけではなく、回収可能性がないことが客観的に認められることが必要という点です。この点については必ず税理士等の専門家に相談してください。

 

企業経営に大きな悪影響が生じる場合

また売掛金が回収できないことによって、企業経営に大きな悪影響が生じる場合は、「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」などの行政による融資を検討しても良いでしょう。

 

取引企業倒産対応資金とは、日本政策金融公庫が行っている融資制度で、対象企業は1億5,000万円までの融資を受けられます。融資を受けた場合、8年以内に返済する必要がありますが、特に時間的・金銭的余裕がない場合は有効な手段でしょう。詳細は「取引企業倒産対応資金|日本政策金融公庫」より確認できます。

売掛金を回収する際は弁護士に相談

売掛金を回収するには、任意交渉・債権譲渡・訴訟などさまざまな手段があるため、ケースに応じて適切な回収方法を判断しなければなりません。判断にあたっては、自社や相手方の状況などを十分考慮する必要があるでしょう。

 

また時効の成立が迫っている場合は、時効の中断などの対応についても検討しなければならないケースもあります。「どの回収手段が適切か判断できない」「不備なく手続きを進められるか不安」という場合は、債権回収について実績のある弁護士に相談した方が良いでしょう。

 

弁護士であれば、今後の対応に関する効果的なアドバイスが期待できます。また催告書などの書類作成や、民事調停などの裁判手続きに関するサポートも望めるため、自力で行うよりも早期解決が見込めます。

まとめ

売掛金を回収する方法は、内容証明郵便や任意交渉といった任意回収のほか、支払督促や民事調停といった法的手段などもあります。

 

また売掛金の時効は原則5年と定められており、時効成立までに回収対応を行う必要があります。時効が迫っている場合などは、請求や差押えなどを行うことで中断することもできます。

 

なお万が一回収できなかった場合は、売掛金の放棄や融資の活用など、回収とは別の対応を検討する必要があるでしょう。

 

売掛金の回収について、自力で行うことに少しでも不安がある場合は、企業法務に注力している弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することで、企業状況に応じたアドバイスやサポートなどが受けられ、スムーズな問題解決が期待できます。

 

債権回収は弁護士を通し催促してもらうことで、今まで応じる気がなかった相手も、すぐに対応してくれることがあります。弁護士が行ってくれる具体的なことや解決事例を紹介します。

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