業務委託契約書を書くときには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
最近では、業務委託契約書の雛型をインターネットで手軽にダウンロードできることもあり、弁護士などの専門家に依頼せず、自分で作成したものを使用するケースも散見されます。
しかし契約書作成の際、いくつかの点に注意しないと双方で認識相違が生まれ、後にトラブルへと発展するかもしれません。
そこで今回は、契約締結から完了後まで安心して業務委託するために必要な契約書の書き方や注意点についてご紹介します。
業務委託契約書は個人で一から作成するより雛型の使用がおすすめ
業務委託契約書の作成方法は主に3つあります。まず一から自分で作成する方法、次に契約書の雛型を使用して作成する方法、そして弁護士に依頼する方法です。
弁護士に依頼するケースを除き、自分で作成する場合は雛型の使用が手軽でおすすめです。
業務委託契約書の書き方で大切なことは、 仕事を依頼する側の委託者と業務を遂行する側の受託者間で以下の取り決めがなされているかどうかです。
両者での取り決めがしっかりなされていることで、契約締結から完了までトラブルなく進められるでしょう。
業務委託契約書の書き方|必ず確認すべき9つのポイント
委託者および受託者それぞれの利益を守り、不要なトラブルを起こさないようにするために必要な9つのポイントと書き方の見本を以下にまとめました。
受託者と委託者の署名や名称
受託者と委託者の名称を記載する欄と、それぞれの署名欄を記載します。名称の記載欄は、業務委託契約書上部に、署名欄は下部に設けるのが一般的です。それぞれの見本図を以下にまとめました。
【名称の記載欄】
【署名記載欄】
引用元:国土交通省
具体的な業務内容
具体的な業務内容を記載しましょう。
どのような業種で、具体的に受託者はどんなことをするのか記載します。
逆に、このような業務は委託対象外であるといった文言を入れるのも良いと言えます。
記載例は下図のとおりです。
引用元:国土交通省
委託期間や納品期日など
業務委託期間や納品期日を記載します。
業種や委託業務内容などによっては、検品方法などの記述を入れるケースもあります。
また、契約期間満了後は自動更新となるのか、途中解約は可能かどうかの記述も入れておくと良いでしょう。
引用元:国土交通省
報酬や委託料の具体的な金額と支払い方法
報酬や委託料についての記載を行います。
このとき、必要経費の請求や保証金の有無についても記載しておきましょう。
また、支払い方法や支払い期日に関する記述も忘れないようにしたいところです。
引用元:国土交通省
契約内容の変更や解除などの条件
契約内容の変更や解除に関する記述です。
どのような場合に契約解除となるのか、具体的に記載することをおすすめします。
このとき、契約終了後に受託者がすべきことなどがあれば、その旨も残しておきましょう。
引用元:国土交通省
機密保持に関する事項|権利の帰属
機密保持に関する事項の記述です。
業務で知り得た情報は、業務遂行以外に使用しないことや、第三者に漏洩しないといった記載が一般的でしょう。
さらに、ライターやデザイナーなど納品物のある業種の場合、権利の帰属がどこになるのかも記載します。
引用元:国土交通省
紛争や損害賠償条項
紛争や損害賠償条項についても記述を残します。
損害賠償条項は、具体的にどのような違反をしたら責任を負うのか残しておくと良いでしょう。
また、どのようn責任を負うのかも記載しておくのがおすすめです。
引用元:国土交通省
業務委託契約書の書き方で心得ておきたい知識
業務委託契約書の書き方をマスターする上で、心得ておきたい3つの知識があります。
以下のことは、ふとしたきっかけでトラブル発生となるかもしれません。
どの内容も決して難しいものではありませんので、書き方と一緒に覚えておきましょう。
業務委託契約書の作成は委託者側で行うのがベター
業務委託契約書の作成は、委託者または受託者どちらが作成しても問題ありません。
ただし、受託者に作成を依頼してしまうと、委託者の求める委託が実現されない可能性があります。
そのため、契約書の作成は委託者側で行うのがベターでしょう。
作成後は受託者に確認してもらうことが大切
業務委託契約書を作成した後は、受託者に確認してもらいましょう。
受託者が作成した場合は、委託者に確認してもらいます。
もし、確認者から訂正を求められた場合は、双方で話し合った上で修正を行います。
契約書は必ず2通作成うち1通には収入印紙を貼る
作成した業務委託契約書は、必ず2通作成しましょう。
2通作成する理由は、契約書の偽造や加筆をされないようにするためです。
また、委託の内容が、仕事の完成を求めるものである場合には、委託の金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。
このことは、印紙税法の第2条にも定められています。
受託者が負うべき義務を知る
善管注意義務とは、業務委託取引上において要求される、注意事項を守って業務に従事する義務のことを言います。
業務委託契約のうち、法律行為や事実行為を委任する場合、仕事の依頼を受けた受託者は、この善管注意義務を負わなければなりません。
また、受託者が者の完成を請け負う場合には、瑕疵のないものを引き渡す義務があります。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う
引用元:民法(請負人の担保責任)
第六百三十四条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
引用元:民法
業務委託契約書および業務委託基本契約書に 類似した書類
業務委託契約書と業務委託基本契約書は、名称が異なるのみで違いはありません。
内容は同じものと認識してください。
その他にも業務委託契約書と似た書面があるため、違いについて以下にまとめました。
業務委託証明書
委託者または受託者以外の第三者に、業務委託を受けていると証明する書類のことを言います。
例えば、母親が業務委託を受けて仕事をしていることを証明するために、子供の保育園に業務委託証明書を提出するケースがあります。
業務請負契約書
業務委託契約書と業務請負契約書は名前こそ似ていますが、受託者に求める業務内容により使用するケースは異なります。
具体的な違いは、与えられた業務を処理するのか、ひとつのプロジェクトを完成させるのかという点です。
- 業務委託契約書:与えられた業務を処理するのが目的であるが、請負の趣旨の場合もある
- 業務請負契約書:ひとつのプロジェクトを完成させるのが目的
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法
業務委託契約書の書き方に関する注意点
業務委託契約書の書き方に関する注意点について確認していきましょう。
以下に挙げた内容は、委託者と受託者の認識相違を起こさないために、とても大切なものです。
安易に契約締結をせず、双方で内容に問題ないことを確認してから署名捺印をしましょう。
業務内容や報酬・責任範囲はできる限り明確に書く
業務内容や報酬、責任範囲については、できる限り明確に記載しましょう。
曖昧且つ不明慮な記述は、後に委託者と受託者の認識相違を生む可能性があります。
また、一方的な内容は相手方に不信感を抱かせることになるため注意が必要です。
受託者から業務委託契約書の確認と同意を得てから契約する
業務委託契約書の作成後は受託者にも確認してもらい、同意を得てから契約締結に使用しましょう。
万が一、受託者が修正を求めてきた場合は、双方で話し合った上で訂正してください。
まとめ
業務委託契約書は、委託者と受託者の委託契約が締結したことを証明するだけでなく、双方の認識相違をなくす点でも重要な働きを持ちます。
契約書は、書き方だけでなく注意点やポイントなどもあわせて心得ておきましょう。