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フランチャイズビジネスは、日本国内において重要な産業分野の一つとなっています。
日本フランチャイズチェーン協会の統計によると、フランチャイズチェーン全体では相当な規模の市場を形成しており、本部と加盟店の間には構造的な情報格差があり、法的トラブルが後を絶たないのが現実です。
フランチャイズ契約は、独占禁止法、中小小売商業振興法、消費者契約法など複数の法律が複雑に関係する特殊な契約類型です。
一般的な売買契約や請負契約とは根本的に異なる法的構造を持つため、専門的な法的知識なしに適切な判断を行うことは困難です。
本記事では、フランチャイズビジネスに関わる全てのステークホルダーが直面する法的課題と、その解決策について実務的な観点から解説します。
加盟店側・本部側それぞれの典型的な法的問題を5つずつ取り上げ、具体的な判例や最新の法改正動向を踏まえて詳細に分析します。
さらに、フランチャイズに精通した弁護士の活用方法を5つの領域に分けて説明し、令和3年の公正取引委員会ガイドライン改訂など最新の法務トピックについても詳しく解説します。
まず、フランチャイズビジネスの基本的な利害関係者を整理します。
加盟店は、本部から商標使用権やノウハウの提供を受けてビジネスを運営する事業者です。
法的には独立した事業主でありながら、本部との継続的な契約関係の下で事業を行うという特殊な地位にあります。
加盟店の主な権利として、商標使用権、営業地域の保護、本部からの経営指導を受ける権利があります。
一方で、ロイヤルティの支払い、営業方針の遵守、競業避止義務の履行などの義務を負います。
法的な特徴として、加盟店は本部に対して相対的に弱い立場にあることが多く、独占禁止法や中小小売商業振興法による保護を受けています。
特に、本部の優越的地位の濫用に対しては、独占禁止法第2条第9項第5号により規制されています。
本部は、自社が開発したビジネスモデルを加盟店に提供し、統一されたチェーンオペレーションを構築する企業です。
法的には、加盟店との間で継続的な契約関係を維持し、ブランド価値の維持・向上に努める義務があります。
本部の主な権利として、商標権の保護、加盟店の営業活動に対する指導・監督権、契約違反時の解除権があります。
同時に、加盟店に対する情報提供義務、適正な経営指導を行う義務、不当な制限を課してはならない義務を負います。
独占禁止法上は、加盟店との取引において優越的地位に立つことが多いため、その地位を濫用した不当な取引制限や不公正な取引方法は厳しく規制されています。
フランチャイズシステムにおける仕入先は、本部が指定または推奨する商品・サービスの提供業者です。
多くの場合、本部が仕入先との間で基本契約を締結し、加盟店は本部を通じて商品を調達します。
法的な観点から重要なのは、本部による仕入先の指定が独占禁止法上の取引制限に該当する可能性があることです。
特に、本部が特定の仕入先からの調達を強制し、加盟店の選択の自由を不当に制限する場合は、不公正な取引方法として問題となります。
また、本部が仕入先からリベートを受け取り、それを加盟店に還元しない場合は、優越的地位の濫用として規制される可能性があります。
顧客は、フランチャイズチェーンが提供する商品・サービスを購入する消費者です。
法的には、個々の加盟店との間で売買契約などの法的関係を締結しますが、チェーン全体のブランドイメージや統一されたサービス品質を期待しています。
消費者保護の観点から、フランチャイズチェーンでは、本部と加盟店の責任分担が重要な論点となります。
商品の品質不良やサービスの欠陥について、顧客は加盟店だけでなく本部に対しても責任を追及できる場合があります。
特に、食品安全や個人情報保護などの分野では、本部の管理責任が厳格に問われる傾向があります。
次に、具体的な法律問題ついて解説していきます。
まず加盟店側のリーガルイシューです。
基本的には、取引上の立場として本部との関係では権利を享受する立場であることから、劣位にあると考えられるため、問題を主張する側に立つことが多いです。
フランチャイズ契約において、本部は加盟希望者に対して法定開示書面を交付し、十分な説明を行う義務があります。
中小小売商業振興法第11条では、14項目の開示事項が定められており、これらの情報を契約締結の少なくとも2週間前に提供しなければなりません。
説明義務違反の典型例として、収益予測の過大表示、競合店の出店予定情報の不告知、本部の財務状況の虚偽記載などがあります。
加盟店側の対策として、開示書面の内容を詳細に検討し、不明な点は必ず質問すること、第三者機関による財務調査を実施すること、同業他社との比較検討を行うことが重要です。
説明義務違反が認められた場合、契約の無効・取消、損害賠償請求が可能となります。
フランチャイズ契約には通常、契約期間中および契約終了後一定期間における競業避止義務が定められています。
しかし、この義務の範囲が過度に広範であったり、期間が不合理に長期であったりする場合は、公序良俗に反して無効となる可能性があります。
競業避止義務の有効性については、判例上、以下の要素を総合考慮して判断されています。
加盟店側の対策として、契約締結前に競業避止条項の内容を詳細に検討し、必要に応じて修正を求めること、契約終了時には弁護士と相談して義務の範囲を明確化することが重要です。
フランチャイズ契約の中途解約時に請求される違約金の額が過大である場合は、無効または減額される可能性があります。
特に問題となるのは、加盟金の返還を認めず、さらに高額な違約金を請求する条項です。
このような条項は、加盟店の解約権を実質的に奪うものとして、公序良俗に反する可能性があります。
加盟店側の対策として、契約書の違約金条項を事前に十分検討し、過大な場合は修正を求めること、解約時には本部の実損害額を詳細に検証することが重要です。
本部による不当な取引制限は、独占禁止法違反として厳しく規制されています。
典型例として、特定業者からの仕入れ強制、販売価格の拘束、営業地域の不当な制限などがあります。
公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(令和3年改訂)では、本部の優越的地位の濫用について詳細な指針が示されています。
参照:https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/franchise.html
特に、合理的な理由なく加盟店の事業活動を制限する行為は、不公正な取引方法として禁止されています。
加盟店側の対策として、取引制限の合理性を常に検証し、不当な制限に対しては公正取引委員会への申告や弁護士への相談を行うことが重要です。
フランチャイズ契約終了後に、元加盟店が本部の商標を不当に使用し続ける場合は、商標権侵害として損害賠償請求や差止請求の対象となります。
しかし、商標の類似性や混同のおそれについては、個別具体的な判断が必要です。
商標権侵害の争点となるのは、主に以下の点です。
第一に、使用している標章が本部の登録商標と同一または類似しているか。
第二に、指定商品・役務と同一または類似の分野で使用しているか。
第三に、商標の使用により出所の混同が生じるおそれがあるか(不正競争防止法の観点からも重要です)。
フランチャイズ契約終了後の商標使用については、契約終了と同時に商標使用権も終了するのが原則です。
元加盟店が類似の店舗名や標章を使用して営業を継続する場合、出所の混同が生じる可能性があり、商標権侵害として問題となることがあります。
加盟店側の対策として、契約終了時には商標の使用を速やかに停止し、類似性のある標章の使用も避けること、新たな商標を使用する際は事前に弁護士による検討を行うことが重要です。
今度はカウンターパートである本部(フランチャイザー)側の法律問題について、5つピックアップして解説していきます。
本部が直面する最も頻繁な法的課題は、加盟店からの各種権利主張への対応です。
特に業績不振に陥った加盟店からの契約条件変更要求、損害賠償請求、契約無効の主張などが増加しています。
加盟店からの典型的な権利主張として、説明義務違反に基づく錯誤無効の主張、競業避止義務の無効確認請求、ロイヤルティ減額請求などがあります。
これらの主張に対して、本部は契約の有効性と履行を求める立場から適切に反論する必要があります。
対応策として重要なのは、まず加盟店の主張内容を正確に把握し、法的根拠の有無を検証することです。
次に、契約書の条項と実際の履行状況を詳細に分析し、本部側の義務履行状況を確認します。
そして、交渉による解決の可能性を探りつつ、必要に応じて法的手続きに移行する準備を行います。
特に注意すべきは、加盟店の権利主張に一定の合理性がある場合の対応です。
全面的に争うのではなく、合理的な範囲での妥協点を見出すことが、長期的なブランド価値の維持には重要です。
フランチャイズ業界は、独占禁止法、中小小売商業振興法を中心とした厳格な法的規制下にあります。
本部は、これらの規制に適合したビジネスモデルを構築し、継続的にコンプライアンス体制を維持する必要があります。
独占禁止法上の主な規制として、優越的地位の濫用禁止、不当な取引制限の禁止、不公正な取引方法の禁止があります。
特に令和3年のガイドライン改訂により、デジタルプラットフォーム上での取引や、環境・社会配慮に関する制限についても新たな指針が示されました。
実務上の対応として、本部は定期的な法務監査を実施し、契約条項や運営方針が最新の法的要求事項に適合しているかを検証する必要があります。
また、加盟店との取引記録を詳細に保管し、規制当局からの調査に備える体制を整備することが重要です。
フランチャイズシステムの核心的価値である営業ノウハウや経営資源が、元加盟店によって不正に利用された場合、本部は不正競争防止法や不法行為に基づく損害賠償を請求できます。
保護対象となる営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たす必要があります。
フランチャイズにおいては、マニュアル、顧客リスト、仕入先情報、調理法・製造法などが典型的な営業秘密となります。
本部側の対策として、まず営業秘密の明確な特定と適切な管理体制の構築が必要です。
具体的には、秘密保持契約の締結、アクセス制限の実施、退職者・元加盟店への持ち出し禁止の徹底などです。
また、侵害発見時には速やかに証拠保全を行い、法的手続きを開始する必要があります。
新規フランチャイズシステムの立ち上げ時には、多数の法的検討事項があります。
商標登録、契約書作成、法定開示書面の準備、加盟店募集における法的規制への対応などを戦略的に進める必要があります。
商標戦略においては、主要な商標について適切な区分で登録を行い、将来の事業展開を見据えた包括的な保護を図る必要があります。
また、海外展開を予定している場合は、主要国での商標登録も並行して進めることが重要です。
契約書については、フランチャイズの特性を踏まえた適切な権利義務関係を定める必要があります。
特に、知的財産権の取扱い、営業秘密の保護、競業避止義務の設定、解約条件の明確化などが重要な検討事項となります。
法務DD(デューデリジェンス)の実施により、既存の法的リスクを事前に把握し、適切な対策を講じることも重要です。
特に、既存事業の知的財産権の状況、契約関係の整理、コンプライアンス体制の評価などを徹底的に行う必要があります。
フランチャイズビジネスにおいて、商標をはじめとする知的財産権の保護は事業の根幹に関わる重要事項です。
適切な知財戦略により、ブランド価値を最大化し、競合他社からの侵害を防止できます。
商標保護の基本戦略として、主要な商標について適切な商品・役務区分での登録を行うことが重要です。
特に、事業分野に関連する第35類(小売業)、第43類(飲食物の提供)などでの登録は必須です。
また、類似商標による混同を防止するため、防衛的登録も検討する必要があります。
意匠権については、店舗デザインや商品パッケージなど、視覚的な独創性がある要素について保護を図ります。
2020年の意匠法改正により、建築物や内装デザインも保護対象となったため、フランチャイズチェーンの統一的な店舗デザインを保護することが可能になりました。
著作権については、マニュアル、研修資料、広告物などについて適切な権利管理を行います。
特に、加盟店が制作する広告物について、本部の著作権との関係を明確にしておくことが重要です。
知財侵害への対応として、侵害発見システムの構築、警告書の発出、法的手続きの実施などを体系的に行う必要があります。
特に、インターネット上での商標侵害については、迅速な対応が被害拡大の防止に重要です。
企業法務弁護士ナビでは、フランチャイズビジネスにおける法律問題に詳しい弁護士を多数掲載しています。
初回相談無料やオンライン面談対応など、こだわりの条件を指定して検索することができるので、まずは弁護士を探してみるところから始めてみましょう。
フランチャイズ事業での形態によることが考えられる主な業種について、5つご紹介していきます。
それぞれの業種の特徴も整理していきます。
コンビニエンスストア業界は、日本最大のフランチャイズ市場の一つです。
セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社だけで約5万店舗を展開しており、フランチャイズシステムの典型例といえます。
法的特徴として、24時間営業という営業形態から生じる労働法上の問題、食品衛生法や酒税法などの各種規制への対応、POSシステムや電子決済に関するシステム契約などが重要な論点となります。
また、環境規制の強化に伴い、プラスチック使用量削減やリサイクル対応など、本部と加盟店が連携して取り組むべき課題も増加しています。
飲食業のフランチャイズは、ラーメン、ファストフード、ファミリーレストランなど幅広い業態で展開されています。
食品衛生法、健康増進法などの規制が厳格で、食中毒事故や異物混入などのリスク管理が重要です。
法的特徴として、レシピや調理法などの営業秘密の保護、食材の品質管理体制、アレルギー表示などの消費者保護対応が重要な論点となります。
特に、本部が提供するレシピの営業秘密性と、加盟店の調理技術との関係は複雑な法的問題を提起します。
また、外国人雇用の増加に伴い、労働法上の問題や在留資格の管理など、新たな法的課題も生じています。
整体院・マッサージ業界のフランチャイズは、あん摩マッサージ指圧師法、柔道整復師法などの医療関連法規の制約の中で事業を展開する必要があります。
無資格者による施術は法律違反となるため、加盟店の資格確認と技術指導が重要です。
法的特徴として、医療類似行為の境界線の問題、広告規制への対応、個人情報保護法の厳格な適用などが重要な論点となります。
特に、「治療」「治る」などの医療効果を連想させる表現は、景品表示法、医師法や薬機法に抵触する可能性があります。
また、施術による事故のリスクもあり、適切な保険加入と事故対応マニュアルの整備が不可欠です。
美容・エステ業界のフランチャイズは、特定商取引法の特定継続的役務提供に該当するため、クーリングオフ制度や中途解約権などの消費者保護規制が厳格に適用されます。
法的特徴として、契約書面の法定記載事項、クーリングオフ期間中の対応、中途解約時の損害賠償の制限などが重要な論点となります。
また、化粧品や美容機器に関する薬機法の規制、個人情報保護法の適用も厳格です。
特に広告法務の観点からは、誇大な広告、過大な景品類提供などから景品表示法の観点からコンプライアンスを徹底することも重要な観点です。
また、美容医療との境界線の問題もあり、医師法に抵触しない範囲でのサービス提供について、明確なガイドラインを設ける必要があります。
学習塾業界のフランチャイズは、教育の質の確保と消費者保護の両立が重要な課題となります。
特定商取引法の特定継続的役務提供として、厳格な消費者保護規制が適用されます。
法的特徴として、契約書面の適切な作成、クーリングオフ制度への対応、中途解約時の取扱い、個人情報保護法の厳格な適用などが重要な論点となります。
特に、生徒の成績向上を保証するような表現は、景品表示法上の問題となる可能性があります。
著作権法の観点では、教材の著作権管理が重要な課題となります。
本部が提供する教材の著作権と、加盟店が独自に作成する教材との権利関係を明確にする必要があります。
また、講師の労働条件や生徒の安全管理についても、適切な体制を構築する必要があります。
フランチャイズビジネスにおいて、弁護士の活用法としてどのような形が考えられるか、効果的な活用法を5つ解説していきます。
フランチャイズ契約の締結・変更・終了の各段階において、弁護士の専門的知識は不可欠です。
契約書のドラフティング、リスク分析、交渉支援、紛争予防の観点から、体系的な法務サポートを受けることができます。
契約締結段階では、法定開示書面の適法性確認、契約条項の妥当性検証、リスク評価と対策の立案が主要な業務となります。
特に、独占禁止法や消費者契約法に抵触する可能性のある条項については、詳細な検討が必要です。
契約履行段階では、運営上の法的問題への助言、契約変更の必要性の判断、トラブルの早期解決支援が重要な役割となります。
例えば、本部の運営方針変更に伴う契約条項の解釈や、加盟店の義務違反への対応などです。
契約終了段階では、解約条件の妥当性確認、競業避止義務の有効性判断、残存する権利義務の整理が主要な業務となります。
特に、営業秘密の返還や商標使用の停止など、知的財産権に関する事項については専門的な検討が不可欠です。
弁護士の活用効果として、法的リスクの最小化、紛争の予防、適切な契約条件の確保により、長期的な事業の安定性を確保することができます。
フランチャイズビジネスにおける知的財産権の保護と活用は、事業成功の重要な要素です。
弁護士(特に弁理士資格を併有する弁護士)による専門的サポートにより、包括的な知財戦略を構築できます。
商標戦略では、適切な商標選択、出願戦略の立案、権利範囲の最適化、侵害対策の実施が主要な業務となります。
特に、国際展開を予定している場合は、各国の商標法制の違いを踏まえた戦略的な出願が必要です。
営業秘密の保護では、秘密管理体制の構築、秘密保持契約の整備、侵害発見時の対応策の立案が重要です。
フランチャイズにおいては、本部のノウハウを加盟店に開示する必要があるため、適切なバランスの取れた保護策が求められます。
著作権対策では、マニュアルや研修資料などの著作物について、適切な権利管理体制を構築します。
特に、加盟店が独自に作成する広告物やマーケティング資料について、本部の著作権との関係を明確にすることが重要です。
知財侵害への対応では、侵害の早期発見、警告書の作成・発送、法的手続きの実施など、段階的な対応策を実施します。
迅速かつ効果的な対応により、ブランド価値の毀損を最小限に抑えることができます。
フランチャイズ関連の訴訟は、契約の性質上複雑な法的争点を含むことが多く、専門的知識を有する弁護士による対応が不可欠です。
訴訟の類型としては、本部と加盟店間の契約紛争、損害賠償請求、契約解除をめぐる争い、競業避止義務違反などが主要なものとなります。
本部側の訴訟対応
本部が加盟店を相手取る訴訟では、契約違反による損害賠償請求、競業避止義務違反に基づく差止請求、営業秘密侵害による損害賠償請求などが典型的です。
これらの訴訟では、フランチャイズ契約の有効性、本部の指導監督義務の履行状況、加盟店の義務違反の立証が主要な争点となります。
弁護士の役割として、まず争点の整理と法的構成の検討を行います。
次に、契約書の条項解釈と適用法令の検討を通じて、本部の権利と加盟店の義務を明確化します。
さらに、証拠収集と整理により、主張の裏付けとなる事実関係を構築します。
加盟店側の訴訟対応
加盟店が本部を相手取る訴訟では、説明義務違反による損害賠償請求、契約条項の無効確認請求、不当な契約解除の無効確認請求などが典型的です。
これらの訴訟では、本部の説明義務の履行状況、契約条項の公序良俗適合性、解除事由の存否が主要な争点となります。
訴訟戦略の立案において、弁護士は事案の特性を踏まえた最適なアプローチを選択します。
例えば、本部の優越的地位の濫用を主張する場合は独占禁止法の観点からの検討を行い、消費者契約法の適用がある場合は消費者保護の観点からの主張を構築します。
訴訟手続きの実務
フランチャイズ訴訟では、営業秘密の保護と立証のバランスが重要な実務上の課題となります。
弁護士は、必要な証拠開示を求めつつ、自社の営業秘密の漏洩を防止する適切な手続きを選択する必要があります。
また、フランチャイズ業界の商慣行や技術的専門性について、適切な専門家証人の選定と証言内容の構築も重要な業務となります。
フランチャイズ事業者は、公正取引委員会、消費者庁、経済産業省などの規制当局による調査や指導に直面する可能性があります。
これらの当局対応において、弁護士の専門的支援は事業継続に重要な役割を果たします。
公正取引委員会への対応
独占禁止法に関する調査や審査に対しては、迅速かつ適切な対応が求められます。
弁護士の役割として、まず調査内容の正確な把握と法的論点の整理を行います。
次に、事実関係の調査と証拠資料の整理により、当局への回答書を作成します。
特に重要なのは、優越的地位の濫用や不公正な取引方法に関する疑いがかけられた場合の対応です。
弁護士は、当該行為の合理性や必要性を法的に構成し、独占禁止法違反には該当しないことを論理的に説明する必要があります。
消費者庁への対応
景品表示法や特定商取引法に関する調査では、広告表示や契約手続きの適法性が問われます。
弁護士は、問題とされた表示や手続きについて、法令の要求事項との適合性を詳細に検討し、必要に応じて改善措置を提案します。
また、消費者安全法に基づく注意喚起や措置要求に対しては、事実関係の正確な把握と、再発防止策の策定が重要となります。
当局対応の実務ポイント
当局対応において重要なのは、初期対応の迅速性と正確性です。
弁護士は、調査通知を受けた段階で、直ちに対応チームを編成し、事実関係の調査と法的検討を開始します。
また、当局との折衝においては、事実に基づく誠実な対応を心がけつつ、会社の正当な権利と利益を適切に主張します。
フランチャイズ事業のM&Aでは、通常の企業買収とは異なる特殊な法的検討事項があります。
フランチャイズシステムの価値評価、加盟店との契約関係の承継、知的財産権の移転などについて、専門的な法的サポートが必要となります。
契約承継における法的課題
M&Aに伴うフランチャイズ契約の承継では、個々の加盟店の同意が必要となる場合があります。
契約書の譲渡禁止条項や変更承認条項について詳細に検討し、必要に応じて加盟店との個別交渉を行う必要があります。
また、本部の変更により加盟店の契約条件に不利益な変更が生じる場合は、適切な補償措置や経過措置を検討する必要があります。
知的財産権の移転手続き
フランチャイズ事業のM&Aでは、商標権、著作権、営業秘密などの知的財産権の適切な移転が重要です。
特に、商標権については、フランチャイズシステムの根幹に関わる資産であるため、確実な権利移転と登録手続きが必要です。
営業秘密については、譲渡契約において秘密情報の範囲を明確に特定し、適切な管理体制の引継ぎを行う必要があります。
買収後の統合プロセス
M&A完了後の統合プロセスでは、異なるフランチャイズシステムの統合や、既存加盟店への新たな契約条件の適用について法的検討が必要です。
弁護士は、統合計画の法的実現可能性を検討し、必要な契約変更や移行手続きを支援します。
情報提供義務の厳格化
近年、フランチャイズ契約における本部の情報提供義務がより厳格に解釈される傾向があります。
これは、本部と加盟店の間の情報格差が構造的に存在し、加盟店保護の必要性が高いことを背景としています。
情報提供義務の対象となる事項は、従来の法定開示事項に加えて、加盟店の適切な判断に必要な実質的な情報まで拡大される傾向があります。
例えば、同一地域での既存店舗の業績情報、競合他社の出店計画、本部の財務状況の詳細などについても、開示が求められる場合があります。
判例の動向を見ると、本部が提供した情報の客観性や正確性について、より厳格な基準で判断される傾向があります。
特に、収益予測や市場分析について、根拠となるデータの信頼性や分析手法の妥当性まで問われるケースが増加しています。
実務上の対応として、本部は情報提供に際して以下の点に注意する必要があります。
第一に、提供する情報の正確性と客観性の確保。
第二に、情報の根拠となるデータや分析手法の明示。
第三に、不確実性やリスク要因についての適切な説明。
第四に、加盟店の理解度に応じた丁寧な説明の実施。
令和3年4月28日に改正された「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」は、フランチャイズ業界にとって重要な法的指針となっています。
この改正は、公正取引委員会が実施したコンビニエンスストア業界の実態調査結果を踏まえて行われました。
改訂の背景と経緯
公正取引委員会は、コンビニエンスストア業界において24時間営業をはじめとした本部と加盟店の関係見直しの動きを受けて、大手コンビニエンスストアチェーンの全加盟店を対象とした大規模実態調査を実施しました。
この調査により、多くの改善すべき課題が明らかとなったため、ガイドラインの改訂が行われました。
主要な改正内容
今回の改訂では、特に以下の5つを柱に指針が示されました。
実務への影響
このガイドライン改正により、フランチャイズ本部は以下の点について、より厳格な対応が求められるようになりました。
情報開示の充実において、加盟希望者に対する情報提供をより詳細かつ具体的に行う必要があります。
特に、収益予測や事業リスクについて、客観的なデータに基づく説明が重要となります。
加盟店との取引関係の見直しにおいて、従来の商慣行であっても、加盟店に不当な不利益を与える可能性がある行為については、その合理性を再検討する必要があります。
コンプライアンス体制の強化において、独占禁止法違反の未然防止に向けた社内体制の整備と、定期的な自主点検の実施が重要となります。
今後の展望
公正取引委員会は、コンビニエンスストア業界以外のフランチャイズ分野についても、必要に応じて実態調査や指導を行う方針を示しています。
このため、フランチャイズ本部は業種を問わず、このガイドラインに沿った適切な事業運営を行うことが重要となります。
フランチャイズビジネスにおける法的課題は、業界の成長と複雑化に伴ってますます多様化しています。
本記事で解説した加盟店側・本部側それぞれの法的問題、業種別の特殊事情、弁護士の活用方法、最新の法務動向を踏まえ、以下の点を重要なポイントとして整理します。
予防法務の重要性フランチャイズ関連の法的トラブルは、事後的な対応よりも事前の予防が圧倒的に重要です。
契約締結前の十分な検討、適切な契約条項の設定、継続的なコンプライアンス体制の維持により、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
専門弁護士の活用価値フランチャイズ法務は複数法領域が交錯する高度専門分野であり、フランチャイズに精通した弁護士による支援が不可欠です。
継続的な法的メンテナンス
法改正や新たな判例の登場により、フランチャイズを取り巻く法的環境は常に変化しています。
一度適法な体制を構築しても、定期的な見直しと更新を行わなければ、法的リスクが蓄積する可能性があります。
ステークホルダー全体の利益調整
フランチャイズシステムの健全な発展のためには、本部・加盟店・消費者など全てのステークホルダーの利益が適切に調整される必要があります。
短期的な利益追求ではなく、長期的な関係構築を重視した法的枠組みの構築が重要です。
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迷ったら早めに専門弁護士へ相談し、最適な解決策を一緒に検討しましょう。