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リース契約は、設備投資の負担を軽減し、企業の成長をサポートする有効な手段です。
本記事では、リース契約書の記載事項から、契約条項の詳細な解説、契約時の注意点、そして万が一のトラブルへの対策まで、リース契約に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。
リース契約を検討している企業の担当者様、個人事業主様、中小企業の経営者様にとって、安心して契約締結に臨むための必携ガイドです。
リース契約は、所有権を移転せずに一定期間、資産を賃借する契約です。初期費用を抑えられ、資金調達手段として有効であるため、多くの企業で利用されています。
リース契約の対象となる資産は多岐にわたります。コピー機、自動車、医療機器、IT機器、建設機械、工作機械など、企業活動に必要な様々な設備がリース契約の対象となっています。特に技術革新の速い分野では、最新設備を導入しやすいリース契約が重宝されています。
リース契約には、初期費用抑制、税務上のメリット、陳腐化リスクの回避などの利点がある一方、総支払額が高くなる、中途解約が難しいなどの課題も存在します。
メリットとしては、初期投資額を大幅に削減できることが挙げられます。例えば、1,000万円の医療機器を購入する場合、全額を一括で支払う必要がありますが、リース契約なら月額20万円程度の支払いで利用を開始できます。また、リース料は全額損金算入が可能なため、税務上の優遇措置も受けられます。さらに、契約期間終了後は最新機種への入れ替えが容易で、技術の陳腐化リスクを回避できます。
デメリットとしては、リース料総額が購入価格を上回ることが挙げられます。金利相当分や手数料が含まれるため、5年間のリース総額は購入価格の1.2〜1.3倍になることもあります。また、原則として中途解約ができないため、事業環境の変化に柔軟に対応できない場合があります。解約する場合は、残リース料の一括支払いなど、高額な違約金が発生します。
リース契約は、ファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類に大別され、会計処理や契約期間、所有権の移転などで大きな違いがあります。
ファイナンスリースは、リース期間中の解約が不可能で、リース物件の購入価額のほぼ全額をリース料総額で回収する契約です。実質的に割賦購入に近い性質を持ち、リース期間は物件の法定耐用年数の70%(10年超の場合は60%)に相当する年数(1年未満の端数切捨て)以上に設定されます。契約満了時には、再リースまたは買取オプションが付されていることが一般的です。
オペレーティングリースは、リース期間が比較的短く、リース料総額が物件価額の一部のみを回収する契約です。航空機や船舶、建設機械など、市場での再販価値が高い物件に適用されることが多く、メンテナンスサービスが含まれることもあります。ただし、2027年4月から適用される新リース会計基準では、オペレーティングリースも原則としてオンバランス処理が必要となるため、財務諸表への影響に注意が必要です。
リース契約書には、リース物件、リース料、リース期間、解約条件、保証、保険など、契約当事者の権利義務を明確にする重要な事項が記載されています。これらの条項は、将来のトラブルを防ぐための重要な役割を果たします。
リース物件は、型番、製造番号、数量などを明確に記載し、誤解がないように特定する必要があります。物件の特定が曖昧だと、契約不履行やトラブルの原因となるため、細心の注意が必要です。
具体的な記載例として、「株式会社○○製、型番ABC-123、製造番号2024-0001のデジタル複合機1台」のように、メーカー名、型番、製造番号を正確に記載します。複数台の場合は、各機器の情報を個別に列記し、設置場所も併記することで、より明確な特定が可能となります。また、付属品やオプション機器がある場合は、それらも漏れなく記載することが重要です。
リース料は、総額、月額、支払期日、支払方法などを明確に記載し、双方が合意する必要があります。リース料は契約期間中の重要な支払い義務であり、支払条件の明確化はトラブル防止に直結します。
標準的な記載内容として、「月額リース料○○円(消費税別)、毎月末日締め翌月○日払い、指定口座への自動振替」といった形で明記します。リース料の前払いが必要な場合や初回リース料が異なる場合は、その旨も明確に記載します。また、消費税の取り扱い、振込手数料の負担者、支払遅延時の遅延損害金(年率14.6%が一般的)についても規定しておくことが重要です。
リース期間は、開始日と終了日を明確に記載し、更新の有無や条件についても定める必要があります。リース期間は契約の有効期間であり、更新条件は将来の契約継続に関する重要な要素となります。
通常、「リース期間は令和○年○月○日から令和○年○月○日までの○年間とする」と明記します。再リースについては、「期間満了の3ヶ月前までに書面による終了通知がない場合は、1年間の再リース契約が成立したものとみなす」といった自動更新条項を設けることが一般的です。再リース料は、通常、当初月額リース料の10分の1程度に設定されることが多いですが、この点も明確に規定しておく必要があります。
解約条件は、中途解約の可否、違約金の有無、違約金の計算方法などを明確に記載する必要があります。ファイナンスリースは原則として中途解約不可ですが、やむを得ない事情による解約時の取り扱いを定めておくことが重要です。
標準的な条項として、「本契約は、リース期間中解約することができない。ただし、やむを得ない事由により解約する場合は、残存リース期間の全リース料相当額を違約金として一括して支払うものとする」と規定します。また、規定損害金方式を採用する場合は、「違約金=(残存リース料総額)−(未経過保険料・税金等)+(撤去費用)」といった計算式を明記することで、透明性を確保できます。
リース物件の保証内容、保険の種類、保険料の負担者などを明確に記載する必要があります。保証と保険は、リース物件の故障や損害に対するリスクを軽減するための重要な規定です。
物件の保証については、「リース物件の性能保証は、製造者の保証条件による」と規定し、リース会社は契約不適合責任を負わないことを明確にすることが一般的です。保険については、「リース会社は動産総合保険に加入し、保険料はリース料に含まれる」と規定します。ただし、地震・津波・戦争などの免責事項や、ユーザーの故意・重過失による損害は保険対象外となることが契約書でも明記されているか、動産総合保険の保険約款中に記載があるので確認する必要があります。
リース会社とリース利用者の権利義務、責任範囲を明確に記載する必要があります。権利義務と責任の明確化は、トラブル発生時の責任所在を明確にするために不可欠です。
ユーザーの主な義務として、「善良なる管理者の注意をもってリース物件を使用・保管する」「リース物件の改造・譲渡・転貸を行わない」「定期的なメンテナンスを実施する」などを規定します。一方、リース会社の義務として、「リース物件の引渡し義務」「ユーザーの使用を妨げない義務」などを明記します。また、リース物件の滅失・毀損時の危険負担について、「天災地変その他不可抗力による場合でも、ユーザーはリース料の支払いを免れない」という規定を設けることが一般的です。
リース契約書は、契約内容を十分に理解し、自社にとって不利な条項がないか慎重に確認する必要があります。契約書は法的な拘束力を持つため、安易にサインすると後々トラブルになる可能性があります。
リース料は、物件の価格、金利、リース期間などを考慮して、妥当な金額であるか確認する必要があります。リース料率(月額リース料÷物件価格)は、リース期間5年の場合で1.8〜2.2%程度が一般的な水準です。
複数のリース会社から見積もりを取得し、以下の点を比較検討することが重要です。月額リース料だけでなく、リース料総額を比較し、物件価格に対する倍率を確認します。また、リース料に含まれるサービス内容(保険、メンテナンス等)も比較対象とします。金利水準が市場金利と比較して適正かどうかも重要なチェックポイントです。特に、リース料総額が物件価格の1.5倍を超える場合は、その妥当性を慎重に検討する必要があります。
中途解約の条件は、違約金の金額、解約手続きなどを確認し、不利な条件がないか確認する必要があります。特に、事業環境の変化が激しい業界では、柔軟な解約条件の確保が重要となります。
確認すべきポイントとして、解約が認められる事由(倒産、事業撤退、天災等)を明確に把握し、違約金の計算方法が規定損害金方式か残リース料全額かを確認します。解約申し出から実際の解約までの期間や手続きも重要です。また、リース物件の返却方法、原状回復義務の範囲、返却時の査定基準なども事前に確認しておく必要があります。可能であれば、一定期間経過後の解約条件緩和条項の追加交渉も検討すべきです。
保証期間、保証範囲、保険の種類、保険金額などを確認し、十分な保証と保険が確保されているか確認する必要があります。リース期間中の様々なリスクに対する備えとして、これらの内容は極めて重要です。
メーカー保証については、保証期間がリース期間をカバーしているか、保証対象となる故障の範囲、保証期間延長オプションの有無と費用を確認します。動産総合保険については、保険金額が再調達価額か時価額か、免責金額の設定、地震・水害等の特約の有無を確認します。また、保険事故発生時の手続きフローや、保険金でカバーされない場合のリース料支払い義務についても、事前に理解しておくことが重要です。
リース契約後には、物件の故障、リース料の滞納、中途解約など、様々なトラブルが発生する可能性があります。トラブル発生時の対応を事前に理解しておくことで、被害を最小限に抑えることができます。
物件が故障した場合は、速やかにリース会社に連絡し、修理または交換を依頼する必要があります。故障への迅速な対応は、業務への影響を最小限に抑えるために不可欠です。
故障発生時の具体的な対応手順として、まず故障の状況を詳細に記録し(日時、症状、エラーメッセージ等)、リース会社の指定連絡先に速やかに報告します。メーカー保証期間内であれば、メーカーのサービス窓口にも連絡し、修理の手配を行います。代替機の必要性がある場合は、その旨も併せて相談します。重要なのは、独断で修理業者に依頼せず、必ずリース会社の指示に従うことです。無断修理は保証対象外となる可能性があります。
リース料を滞納した場合は、遅延損害金が発生するだけでなく、契約解除となる可能性もあります。通常、年率14.6%の遅延損害金が課され、リース料の滞納が2~3か月続くと、契約解除の対象となるのが一般的です。ただし、契約書に具体的な期間が明記されているため、必ず契約内容を確認する必要があります。
滞納が発生しそうな場合の対処法として、支払い困難が予想される段階で、早期にリース会社に連絡し、事情を説明します。一時的な資金繰りの問題であれば、支払い猶予や分割払いの交渉が可能な場合もあります。リース会社との協議内容は必ず書面で確認し、合意事項を明確にしておきます。また、滞納が信用情報機関に登録される前に解決することが、将来の資金調達への影響を避けるために重要です。長期的な支払い困難が予想される場合は、早期の契約見直しや、弁護士等の専門家への相談も検討すべきです。
中途解約は、原則として認められませんが、やむを得ない事情がある場合は、リース会社と交渉する必要があります。ファイナンスリースの特性上、中途解約には高額な違約金が伴うため、慎重な判断が求められます。
中途解約を検討する際の実務的アプローチとして、まず契約書の解約条項を詳細に確認し、違約金の正確な金額を把握します。次に、解約理由を明確にし、リース会社に事情を説明します。事業撤退、倒産、天災などの不可抗力的事由であれば、違約金の減額交渉の余地があります。また、リース物件の第三者への譲渡(リース契約の承継)が可能かどうかも確認します。場合によっては、残リース期間が短い場合は、解約よりも契約満了まで継続する方が経済的に有利なこともあるため、総合的な判断が必要です。
リース契約に関するよくある質問とその回答をまとめました。実務担当者の疑問を解消し、適切な判断材料を提供します。
A: 一概にどちらが得とは言えません。資金繰りを重視する場合や、設備の陳腐化が早い業界ではリースが有利です。一方、長期間使用する設備で、資金に余裕がある場合は購入が経済的です。税効果も含めた総合的なシミュレーションを行い、自社の経営戦略に合った選択をすることが重要です。
A: リース会社によって審査基準は異なりますが、一般的には直近2〜3期の決算書、資金繰り表、事業計画書などが審査対象となります。債務超過や税金滞納がある場合は審査通過が困難ですが、黒字経営で納税実績があれば、多くの場合審査を通過できます。小規模事業者向けの小口リースでは、審査基準が緩和される場合もあります。
A: 2027年4月1日以後開始する事業年度の期首からは両者とも、原則としてすべてオンバランス処理(資産・負債として計上)の対象となりますが、契約の柔軟性に違いがあります。短期間の利用や、頻繁な設備更新が必要な場合はオペレーティングリースが適しています。一方、長期間の安定利用を前提とする場合は、トータルコストが抑えられるファイナンスリースが有利です。
A: 新リース会計基準は2027年4月1日以後開始事業年度から強制適用されますが、2025年4月1日以後開始事業年度から早期適用も可能です。既存のオペレーティングリース契約もオンバランス化の対象となるため、早期の契約棚卸しと影響額の試算を開始することを推奨します。
リース契約は複雑な契約であり、専門家への相談を強くおすすめします。特に、新リース会計基準の適用、大型案件の契約交渉、トラブル発生時の対応では、企業法務に精通した弁護士の専門的知見が不可欠です。
リース契約において弁護士に相談すべき理由は多岐にわたります。まず、契約書の内容確認とリスク評価において、不利な条項の発見と修正提案、将来のトラブルを防ぐための条項追加、業界慣習と法的要件のバランス調整などの専門的なアドバイスを受けられます。
また、トラブル発生時の迅速な対応も重要です。販売店の倒産や虚偽説明への対処、リース物件の故障・毀損時の責任問題、中途解約交渉や違約金の減額交渉など、法的な観点からの適切な対処法を指導してもらえます。
さらに、新リース会計基準への対応においても、既存契約の見直しと影響評価、契約条項の変更必要性の判断、会計士・税理士との連携サポートなど、総合的な支援を受けることができます。
リース契約に関する法的サポートを受けるには、企業法務に対応可能な弁護士を見つけることが重要です。企業法務弁護士ナビでは、リース契約を含む企業法務に対応可能な弁護士を効率的に探すことができます。
企業法務弁護士ナビを利用するメリットとして、地域や専門分野から最適な弁護士を検索できること、各弁護士の実績や専門性を事前に確認できること、初回相談料や費用体系を比較検討できることが挙げられます。特に、リース契約のような専門性の高い分野では、経験豊富な弁護士を選ぶことが成功の鍵となります。
リース契約において、以下のようなタイミングでは必ず弁護士に相談することをおすすめします:
早期の相談により、問題の予防と適切な対処が可能となり、結果的にコスト削減にもつながります。
リース契約を締結する前に、以下のチェックリストを活用して、契約内容の確認漏れを防ぎ、自社にとって最適な契約条件を確保しましょう。
このチェックリストを活用することで、リース契約に関する検討漏れを防ぎ、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。特に重要な項目については、必ず専門家の助言を求めることをおすすめします。
本記事では、リース契約書の雛形から、契約条項の詳細な解説、契約時の注意点、そして万が一のトラブルへの対策まで、リース契約に関するあらゆる情報を網羅的に解説しました。
リース契約は、適切に活用すれば企業の成長を力強くサポートする有効なツールとなります。しかし、契約内容を十分に理解せずに締結すると、思わぬトラブルや財務上の負担を招く可能性もあります。特に、2027年から適用される新リース会計基準は、企業の財務諸表に大きな影響を与えるため、早期の対応準備が必要です。
本記事を参考に、リース契約に関する知識を深め、自社にとって最適な契約条件を見極めて、安心して契約締結に臨んでください。そして、リース契約を事業の成長に繋げていきましょう。複雑な案件や判断に迷う場合は、躊躇せず専門家に相談することで、より確実な意思決定が可能となります。
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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