著作権の概要 | 目的・種類・著作物の種類・罰則についてまとめ

専門家監修記事
著作権(ちょさくけん)とは、美術や文芸作品のような、人の感情や考え方を表現した創作物(著作物)を保護する権利で、知的財産権の一種とされています。この記事では、著作物とはどのようなものか、著作権の種類、著作権の侵害に対する罰則についてご紹介いたします。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
クレーム・不祥事

著作権(ちょさくけん)とは、美術や文芸作品のような、人の感情や考え方を表現した創作物(著作物)を保護する権利で、知的財産権の一種とされています。

著作権は著作権法で規定されており、これを侵害した場合、民事では損害賠償請求、使用差止めなどを受ける可能性があります。

またまた、刑事では一定の刑罰が科せられる可能性があります。

この記事では、以下のことについてご紹介いたします。

  • 著作物とはどのようなものか
  • 著作権の種類
  • 著作権の侵害に対する罰則

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著作権について知っておくべき目的や効力

まずは著作権がざっくりとどういうものであるかを確認しましょう。

  • 著作権の目的
  • 著作権の発生するタイミング
  • 著作権の効力

著作権の目的はなに?

著作権は、権利者以外が著作物を利用することに対して制限をかけることで、著作権者の創作意欲と経済的利益を保護するものです。

かんたんに言えば、作った人に許可なく公開したり、コピー、改変されたり、著作者の名前を晒してしまうことはダメですよ!という話です。

このようなルールをしっかりと守ることによって、著作者が次の作品を制作したいと思えるようにし、また著作者など関係者に正しくお金という利益が渡るようにするのです。

著作権はなにも、権利を持っている人達だけの利益ではありません。

著作者をはじめとした権利者の人々の利益が保護されることによって、私たちは普段の生活で素晴らしい音楽や漫画、ゲームを楽しむことができるのです。

したがって、豊かな文化、潤いのある日常を過ごすためにも、著作権は大切な権利なのです。

著作権の発生するタイミングはいつ?

著作権は、著作物が作られた時に発生します。

この点においては、同じ知的財産である、特許権・実用新案権・商標権・意匠権とは、登録が不要という面で異なります。

著作権の効力はいつまで?

著作権は著作者が亡くなってから50年に達するまで有効です。

法人および団体名義の著作物は、公表されてから50年に達するまでが著作権の効力が働く期間となります。

一方映画作品に限っては50年ではなく、公表後70年に達するまでです。

アメリカの法律 | 著作権延長法について

余談ですが、アメリカ合衆国には著作権延長法という法律があります。

その名のとおり、著作権の効力が働く期間を延ばすもので1998年に制定されました。

著作権延長法により、著作権の効力の期限が

  • 著作権は著作者の死後70年に達するまで
  • 法人は発行後95年・制作後の120年のどちらか短いほう

になりました。

「ミッキーマウス延命法」、「ミッキーマウス保護法」などと揶揄される著作権延長法ですが、1976年の著作権の改正、そして1998年の著作権延長法の制定を経てミッキーマウスの著作権は現在のところ2023年まで保護されることになっています。

今後も延長の期間は長くなるのでしょうか?

日本の法律では、現在のところ映画を除けば前述の通り著作者の死後50年に達するまでです。

しかし、TPPが締結・施行されると日本でも著作権の効力は著作者の死亡後70年になる見通しです。

著作物の種類と当てはまるの?

著作物は人の感情・思想について表現した作品を指し、著作権法第二条では以下のように規定されています。

一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

引用元:著作権法

著作物の種類について

前述のとおり、思想・感情を表現する文芸・学術・美術・音楽を著作物と呼んでいます。

著作物の種類

具体的なモノ

言語の著作物

小説・脚本・論文・講演など 口頭でも該当

音楽の著作物

楽曲・歌詞 歌詞は言語の著作物にも含まれる

舞踊または無言劇の著作物

演劇における振り付け

美術の著作物

鑑賞目的の美術品 家電製品など実用的な物は含まない

建築の著作物

芸術的な建築物 かなり独創的・奇抜である必要がある

図面・図表・模型・図形の著作物

建築物の設計図面などの思想や感情を表現した図面や図表

映画の著作物

撮影における構図や編集などの面で創作性が感じられる動画

写真の著作物

思想や感情を表現した創作性のある写真

プログラムの著作物

プログラムをディスクなどで表現したものが当てはまる プラグラム言語は含まれない

一方で、著作権法10条2項では、下記のものが著作物に当てはまらないとしています。

2  事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

引用元:著作権法

著作物にならないもの|事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道とは

前述の著作権法10条2項「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」とは重要度を問わず、単なる事実の報道(誰が・いつ・どこで・なにをしたという情報の羅列のニュース)は著作物には当てはまらないという意味で、ニュース記事や報道に使用される写真のすべてが著作物にならないという意味ではありません。

新聞記事やニュース報道を作成する人は、その記事や報道の構成や表現を考え、どういう観点でニュースを捉え、また事実の中からどのような情報をどれくらい選択するかという作業をしています。

ニュース内容のベースそのものは単なる事実であっても、そこに付随する表現やニュースに対する評価・見方は著作物として認められます

かんたんにいうと、起きてしまった事実だけの報道は著作物ではないけれど、その事実の具体的な内容の報道や様子を撮影したものは著作物です。

著作物ではない☓:○年○月○日未明に、○県○市で、○○さんが自動車にはねられ死亡
著作物である○ :上記の事故・事件について詳しく報道している記事や使用している写真

 

著作権の3つの種類

作品の著作者は、著作財産権と著作者人格権を持っています。

この2つの権利は複数の権利を内包したものであり、

  • 著作財産権は、著作物の利用に関する権利
  • 著作者人格権は、著作者の表示に関する権利

という役割があります。

著作財産権

著作財産権は以下のような権利を内包しています。

権利の名前

著作権法

概要

複製権

21条

著作物を複製する

上演権/演奏権

22条

著作物を公衆に上演・演奏する

上映権

22条の2

著作物上映する

公衆送信権等

23条

著作物を公衆送信する

口述権

24条

著作物を公に口述する

展示権

25条

著作物を公に展示する

頒布権

26条

著作物を複製して頒布する

譲渡権

26条の2

著作物や複製物を公衆に提供する権利を譲渡する

貸与権

26条の3

著作物や複製物を貸与する

翻訳権/翻案権

27条

著作物を翻訳・翻案する

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

28条

二次的著作物の原著作物の著作者は、二次的著作物の著作者と同一の権利を持つ

著作者人格権

著作者人格権は以下のような権利を内包しています。

権利の名前

著作権法

概要

公表権

18条

著作物を公表するかどうか あるいはどのように公表するか

氏名表示権

19条

氏名を表示するかどうか 表示するとして本名かペンネームかを決める

同一性保持権

20条

著作物のタイトルや内容を無断で変えられない

著作隣接権について

著作物を市場へ広く流していくためには、著作者以外にも他の人のチカラが必要です。

例えば音楽であれば演奏者、舞踊であれば舞踊家などの実演家が、楽曲のCDを制作するためには、レコード製作者がいなければなりません。

彼らは著作者ではありませんが、著作物を世に広めていく重要な役割を担う対象として保護されます。

著作隣接権は、実演家の権利、レコード製作者の権利、放送事業者の権利、有線放送事業者の権利が定められています。

ここでは実演家の権利について説明します。

氏名表示権

実演家名を表示するかしないかを決めることができる

同一性保持権

実演家の名誉・声望を害するおそれのある改変をさせない

録画権・録音権

自身の録画・録音できる

放送権・有線放送権

自身の放送・有線放送する

二次使用料を受ける権利

商業用レコードが放送で二次使用された場合の対価を受ける

譲渡権

録画・録音されたCDやビデオを提供する権利

貸与権

発売から1年以内の録音物を貸すことができる

送信可能化権

インターネットサイトを利用し求めに応じ送信できる

著作権の侵害に当たらないケース

著作権は権利者に制限があり、許可なく他人の著作物を自由に利用できるケースもあります。

以下の表をご覧ください。

著作物の利用を自由に行えるとき(根拠条文) 概要
私的使用のための複製(30条) 個人や家族などの範囲で著作物の複製ができる
付随対象著作物の利用
(30条の2)
写真撮影や録音・録画などで不当に利益を害さなければ写り込んでも良い
検討の過程における利用
(30条の3)
著作権者の許諾・裁定にて著作物の利用をする場合、必要限度内で利用できる
技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
(30条の4)
録音・録画機器など、技術開発または実用化の試験に利用される場合
図書館等における複製等
(31条)
法令で可能な範囲内で利用者に複製物を提供できる
公表された著作物の引用
(32条)
正当な範囲内で著作物を引用できる
教科用図書等への掲載
(33条)
学校教育上、認められる範囲で教科書に掲載することができる
強化用拡大図書等の作成のための複製等
(33条の2)
視覚障害や発達障害などにより文字や図形の拡大のための複製ができる
学校教育番組の放送等
(34条)
学校教育番組で著作物を放送することができる
学校その他の教育機関における複製等
(35条)
授業で利用するためであれば複製することができる
試験問題としての複製な等
(36条)
採用試験・学校の入学試験の問題として複製し、公衆送信することができる
視覚障害者等のための複製
(37条)
視覚障害者のために点字によって複製することができる
聴覚障害者等のための複製
(37条の2)
聴覚障害者のために、聴覚障害者が必要と認められる範囲・方式で複製・放送できる
営利を目的としない上演等
(38条)
非営利であれば上演や朗読ができる
時事問題に関する論説の転載等
(39条)
転載禁止表示がなければ新聞や雑誌に掲載された論説はほかの新聞や雑誌に掲載できる
政治上の演説等の利用
(40条)
政治上の演説や陳述・裁判での後悔の陳述を利用できる
時事事件の報道のための利用
(41条)
時事事件の報道をする場合、事件を構成する、または事件に関わる著作物を利用できる
裁判手続きなどにおける複製
(42条)
裁判手続きだけでなく、立法・行政での内部資料としてや、特許や商標での審査のために複製できる
行政機関情報公開法等による開示のための利用
(42条の2)
情報公開条例・情報公開法で開示される著作物の複製・再生が可能
公文書管理法等による保存等のための利用
(43条の3)
国立公文書館の館長は公文書管理条例・公文書管理法で歴史公文書等の保存が目的の場合、複製できる
国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
(42条の4)
国立国会図書館の館長はインターネット資料の収集のために必要とされる範囲内で、インターネット資料を複製できる
翻訳、翻案等による利用
(43条)
教科書への掲載・学校教育番組の放送・私的・学校・視覚障害のための複製は、翻案・変形・編曲をすることも可能
放送事業者等による一時的固定
(44条)
放送事業者などは放送のために著作物を一時的に録画・録音を行うことができる 6ヶ月超えて保存できない
美術の著作物等の現作品の所有者による展示
(45条)
美術および写真の著作物の原作品(オリジナル)の所有者は、許諾なく展示会で展示することができる
公開の美術の著作物等の利用
(46条)
講演などに設置されている銅像などは、テレビで放送したり、写真撮影したりすることができる
美術の著作物等の展示に伴う複製
(47条)
展覧会開催者は、展示する対象の著作物を紹介・解説するための小冊子へ掲載できる
美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等
(47条の2)
インターネットオークションに出品する場合は、紹介のための画像を掲載していい
プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等
(47条の3)
自らコンピュータで利用するためにプログラムの複製・翻案することができる
※翻案 誰かによる既存の著作物の大部分をそのままに、細かい点を変更すること
保守、修理のための一時的複製
(47条の4)
機器の修理や保守をする際に、バックアップのために複製することができる
送信の障害の防止等のための複製
(47条の5)
インターネットプロバイダなどのサーバー管理者は、障害発生の防止のために必要と認められる範囲内で複製できる
送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等
(47条の6)
インターネット情報検索サービス事業者は、サービス提供のために認められる範囲内で複製・自動公衆送信ができる
情報解析のための複製
(47条の7)
コンピュータを利用する情報解析するために複製できる
電子計算機における著作物利用に伴う複製
(47条の8)
情報処理の過程において、記録媒体に記録することができる
情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用
(47条の9)
インターネットで効率的に情報提供をする場合に、サーバーなどにデータの保存、翻案ができる
複製権の制限により作成された複製物の譲渡
(47条の10)
複製が認められている著作物は、複製したものを提供することができる

参照元:公益社団法人著作権情報センター 著作物が自由に使える場合は?

著作権侵害と判断された判例

著作権侵害と認められた判例を2つご紹介します。

プログラムを複製し販売した事例

原告の許諾を得ずに本件各プログラムを複製して商品を作成し、「ヤフオク!」において販売していた被告に対し、不法行為(著作権侵害)に基づき損害賠償金の支払いを求めた事案。

主文

1 被告は,原告に対し,280万円及びこれに対する平成27年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

裁判年月日 平成29年 2月20日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 判決

事件番号 平28(ワ)10506号

事件名 損害賠償請求事件

引用元:文献番号 2017WLJPCA02206001

有名アニメーショーンの予告動画を複製し動画サイトにアップロード

原告が被告に対し、氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを経由して「YouTube」に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のDVD内に収録されている予告映像を複製した動画を掲載したことにより原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたと主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求めた事案

裁判年月日 平成28年12月20日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決

事件番号 平28(ワ)31972号

事件名 発信者情報開示請求事件

文献番号 2016WLJPCA12209006

著作権侵害を受けたときの対策 | 4つの民事請求と刑罰について

ご自身が持つ著作権が侵害されたとき、民事と刑事によって、対応することができます。

民事請求について

民事では下記の4つの請求によって権利主張が可能です。

請求の種類

概要

差止請求

侵害行為の停止・予防

損害賠償請求

侵害行為で被った損害の埋め合わせ

不当利得返還請求

侵害行為で得た利益の返還を求める

名誉回復等の措置請求

著作人格権・実演家人格権の侵害に対する名誉回復を求める

刑事での罰則について

著作権は親告罪なので、刑事訴訟をしたい場合は告訴状を警察署に提出しなければなりません。

権利の種類

刑罰について

著作権

10年以下の懲役
又は
1,000万円以下の罰金

出版権

著作隣接権

著作人格権

5年以下の懲役
又は500万円以下の罰金

実演家人格権

法人

3億円以下の罰金

法人以外はいずれも懲役と罰金の併科(両方とも受ける)される可能性もあります。

みなし侵害について

直接的に著作権の侵害をしていなくても、著作権の侵害になるケースもあります。

  • 頒布(不特定多数の人に配ること)を目的として、海賊版であることを知って輸入する行為
  • 海賊版であることを知りながら、頒布する目的で所持する・頒布する・頒布する旨の申出(広告すること)をすること
  • 海賊版であることを知りながら、商業として輸出するために所持すること

三  第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

引用元:著作権法 第119条2項

みなし侵害の罰則

前述のみなし侵害に当てはまる行為をした場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に科される可能性があります。

こちらも他の罰則と同じように懲役・罰金の併科もあります。

著作権侵害については弁護士に相談しよう

もし自分が著作権の侵害に遭った場合、まずは著作権の侵害行為をやめるよう加害者に連絡することから始めますが、加害者側が違反などしていないと言ってくる可能性もあります。

そうなれば争いになるケースも考えられますから、そもそも著作権を侵害しているのかの事実を確かめる意味でも、著作権に詳しい弁護士に一度相談してみるのが良いでしょう。

著作権を侵害された被害者の立場として何をするべきか分からない場合は、専門家の意見を聞くことをオススメします

まとめ

最後に今回の記事についてまとめさせていただきます。

  • 著作権は著作権者の創作意欲と経済的利益を保護する権利
  • 著作権は著作権と著作者人格権に分けられる
  • 民事請求には差止請求・損害賠償請求・不当利得返還請求・名誉回復等の措置請求の4つ
  • 刑事は懲役または罰金または併科
  • 法人は3億円以下の罰金

以上です。

お読み頂きありがとうございました。

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