
事業を成長させ、売上や利益をさらに伸ばしていくためには事業拡大が欠かせません。
ただし、ひと口に事業拡大といってもさまざまな種類があり、それぞれで実施すべき戦略や達成できる目標も異なります。
そのため、事業拡大を目指すには基礎知識をしっかり押さえたうえで、自社に合った拡大戦略を選ばなければなりません。
本記事では、事業拡大の定義や事業拡大の手段、実際に拡大を進めるための5つのステップについて、実際の事例を交えながら解説します。
自社事業のさらなる拡大を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
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事業拡大とは?既存・新規の分野で事業を大きくすること
事業拡大とは、既存の事業をさらに大きくしたり、新規分野の事業に挑戦したりすることをいいます。
社会や市場の環境は、グローバル化やデジタル技術の進化によって絶え間なく変化し続けています。
そのため、現時点で利益が発生していても、同じ事業だけに頼っているといずれ成長が止まってしまうリスクがあります。
変化に取り残されず、会社が継続的に成長を続けていくためには、今の事業だけに満足せず、新しい分野にもどんどん挑戦する姿勢が重要です。
会社の成長を促し、将来を守るためにも、事業拡大は欠かせない取り組みといえるでしょう。
事業拡大の3つの手段|対象となる製品と市場で異なる
事業拡大の代表的な手段としては、以下3つがあります。
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それぞれ特徴があるので、しっかりと理解しましょう。
1.新製品開発|新しい製品やサービスを開発する戦略
新製品開発とは、既存市場に投入できる新しい製品やサービスを開発することで売上を伸ばす戦略です。
たとえば、スマートフォンメーカーが、すでに自社のスマートフォンを使っている人向けに最新のワイヤレスイヤホンを開発・発売するケースなどが該当します。
この戦略では、既存顧客のニーズに応える製品を開発できるか、他社とは違う特徴を持った製品を開発できるかがポイントになります。
2.新市場開拓|インターネット販売や海外進出をする戦略
新市場開拓とは、インターネット販売や海外進出などをおこない、既存製品やサービスを違う市場に展開することで売上を伸ばす戦略です。
たとえば、日本国内だけで人気だったアニメキャラクターグッズを、海外でも販売してファンを増やすケースなどが該当します。
新市場の開拓では、市場が増えることで売上などの規模が拡大するメリットがある一方、すでに競争相手がいるというデメリットもあります。
そのため、製品そのものの魅力に加えて、営業力や販売ネットワークの強さもポイントになるでしょう。
3.多角化|M&Aや事業提携によって新領域に進出する戦略
多角化とは、M&Aや事業提携によって新しい製品やサービスを新市場に投入することで売上を伸ばす戦略です。
多角化は、大きく以下の4つのタイプに分かれます。
種類 | 概要 | 具体例 |
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水平型 | 既存の事業と関連性のある新たな事業に進出する戦略 | 自動車メーカーがトラックを製造する |
垂直型 | 既存の市場に対して、川上または川下の事業を展開する戦略 | カフェを経営していた会社が、コーヒー豆の販売に乗り出す |
集中型 | 強みを持つ技術やブランドなどを製品・サービス開発に活用し、新たな市場に投入する戦略 | カメラメーカーが、既存の技術を活かしてドローン用の高性能カメラを開発する |
集成型 | 既存の技術や市場とは無関係な分野に進出する戦略 | 電気部品メーカーが、ゲームや音楽などのエンタメ系事業に乗り出す |
この戦略では、未知の分野に飛び込むことになるため、製品開発やマーケティングにかかるコストやリスクも高くなりますが、成功すれば安定した成長が期待できます。
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事業拡大を実施する際の大まかな流れ|5ステップ
事業拡大は、主に以下のような流れで進みます。
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ここから、各ステップについて詳しく解説します。
1.目標設定や環境分析をおこなう
まずは、自社の現在の状況をしっかりと把握したうえで、どのような目標を達成したいか具体的に決定しましょう。
たとえば「顧客を増やしたい」「既存顧客の購入単価を上げたい」「経営を黒字化したい」など、会社によって目指すゴールは違います。
また、事業成長のためには、ターゲットとなる市場や競合他社を詳細に調査しなければなりません。
市場の大きさや成長のスピード、顧客ニーズなどを調査すれば、自社の強みやビジネスチャンスが見えてくるでしょう。
2.事業拡大の種類・手段を決定する
目標が決まったら、目標を達成するための事業拡大の種類・手段を決定します。
既存事業を成長させるのか、それとも新事業に挑戦するのかなどによって、選択すべき手段は異なるはずです。
3.具体的なビジネスプランを策定する
事業拡大の種類・手段を決めたあとは、具体的なビジネスプランを策定します。
ビジネスプランには、達成したい目標やその目標に向かうための具体的な戦略、必要となる資金の計画、マーケティングの方法、人材や資金などのリソースの使い方などを整理してまとめます。
ビジネスプランは、投資家や関係者に事業の内容や将来性をわかりやすく伝える資料としても活用されるので、具体的に策定することを心がけましょう。
4.人員の確保や資金調達などをおこなう
次に、事業を拡大するために必要となる人材や資金、設備、流通体制などのリソースを確保します。
リソースが不足していると、事業拡大が失敗するリスクが高まります。
リソースの確保には負担がかかりますが、将来の成長を考えた「先行投資」として積極的に取り組みましょう。
5.ビジネスプランを実行してモニタリングする
リソースを確保したら、策定したビジネスプランを実行します。
実行後は、売上の状況や顧客の反応などをチェックして、見直すべき点があればすぐに改善し、PDCAを回しましょう。
改善を何度も繰り返すことで、事業の着実な成長につながるはずです。
【事例】事業拡大とはどのような手段なのか理解を深めよう
ここでは、実際に事業拡大に成功した企業の事例を紹介します。
企業拡大のイメージを掴むためにも、ぜひ参考にしてください。
1.プリント技術を活かして女性向け転写ステッカーを開発した事例
株式会社プリントテクニカは、特殊印刷技術を活かし、転写ステッカーやネイルシールなどを製造する企業です。
本企業は、2016年に携帯電話向け特殊カバーフィルムの販売単価の低落が原因で業績が赤字転落しました。
その後、赤字化を受け、経営方針を売上重視から利益率重視に転換し、新製品の開発に取り組んでいます。
その結果、新製品の中でネイルシールやタトゥーシールなどの「女性向けの転写ステッカー」が高い利益率を確保し、2018年以降は業績の黒字化を維持するようになりました。
【参考記事】生産品目別のコストを従業員と共有し、利益率が確保できる新製品の開発に成功した企業- 事例を探す(事例ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
2.段ボールメーカーが放送や梱包などの庫内物流サービスを始めた事例
パック・ミズタニ株式会社は、自動車部品や精密機械を運ぶための段ボール製造を主力事業とする企業です。
リーマンショック後、顧客の海外拠点新設や内製化により売上減少が予想されていました。
そこで、自社の強みを活かして物流企画事業を立ち上げ、工場内の作業や資材管理まで受け持つ物流サービスを提供して顧客のコスト削減に貢献しました。
その結果、売上が1.5倍にまで増加しています。
【参考記事】パック・ミズタニ株式会社- 事例を探す(事例ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
3.温泉旅館の広大な敷地を活かしてサテライトオフィス事業を始めた事例
株式会社和多屋別荘は、佐賀県の嬉野温泉にある1950年創業の旅館です。
本企業は、感染症の影響を受けやすいこともあり、以前から「一泊二食」のビジネスモデルからの脱却を検討していました。
そこで、自社の事業を「旅行の販売」から、同社最大の経営資源である「2万坪の敷地の管理・運営」へと見直し、他社から打診を受けたことを契機に2020年4月からサテライトオフィス事業を開始しました。
また、ワーケーション用の宿泊プランを新設しました。
その結果、安定した賃料収入と高い利益率を得ることに成功しています。
【参考記事】株式会社和多屋別荘- 事例を探す(事例ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
さいごに|新製品開発や多角化などで事業拡大を進めよう!
本記事では、事業拡大についてその手法や流れなどを詳しく解説しました。
市場環境は日々変化しているので、既存のビジネスモデルだけに頼っていると、いずれ成長が鈍化したり、予期せぬリスクに直面したりするおそれがあります。
事業拡大を目指すには、現状に満足せず、新しい市場やニーズに柔軟に対応する姿勢が欠かせません。
事業拡大には、新製品を開発して既存顧客のニーズをさらに深掘りする方法もあれば、まったく新しい分野に挑戦して事業の柱を増やす方法もあります。
自社の強みや将来の目標によって自社に最適な方法を選んで、事業拡大を進めましょう。
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