株式譲渡にかかる税金とは?計算方法や譲渡先ごとの課税関係を解説

専門家監修記事
株式譲渡を行って譲渡所得が発生する場合、税金がかかります。税金の計算方法は、「譲渡元が個人か法人か」「取引価格がいくらか」「譲渡先が個人か法人か」などによって異なります。この記事では、株式譲渡にかかる税金について、計算方法や課税関係を解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
M&A・事業承継

株式譲渡は「対価と引き換えに、株主が保有する株式を譲渡する行為」を指し、M&Aの手法の一つに当たります。株式譲渡で考えられるパターンとしては、以下の4つが挙げられます。

 

  • 個人から個人へ行うケース
  • 個人から法人へ行うケース
  • 法人から個人へ行うケース
  • 法人から法人へ行うケース

 

株式譲渡を行って譲渡所得が発生する場合は税金がかかりますが、税金の計算方法は、譲渡元、取引価格、譲渡先などによって異なります。

 

この記事では、株式譲渡を行った際にかかる税金について、計算方法譲渡先ごとの課税関係などを解説します。

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株式譲渡にかかる税金の計算方法

株式譲渡を行って利益を得た場合、譲渡所得に対して税金が発生します。

譲渡所得は、以下のように「株式譲渡による総収入金額」を構成する要素の一つです。

 

 

したがって、株式譲渡にかかる税金を計算するためには、まず「譲渡所得がいくらか」計算する必要があります。なお、上場株式と一般株式どちらの場合も計算手順は同じです。

譲渡所得を計算する

譲渡所得は以下の計算式で求められます。

譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費・委託手数料・負債利子・その他経費等)

 

総収入金額(譲渡価額)

総収入金額は、株式と引き換えに譲渡された対価を指します。

 

必要経費(取得費・委託手数料・負債利子等)

必要経費は、以下のように取得費・委託手数料・負債利子等に分類されます。

 

  • 取得費・・・株式を初めて取得した際に発生した費用のことで、資本金を指す
  • 委託手数料・・・株式譲渡時に仲介会社を介した場合に発生する手数料のこと
  • 負債利子・・・株式を取得する際に要した負債の利子のこと

税金を計算する

譲渡所得にかかる税金は、「株主が個人か法人か」によって計算方法が異なります。

 

個人株主の場合

個人株主の場合、所得税、復興特別所得税、住民税などが課税され、税金は以下の計算式で求められます。

株式譲渡にかかる税金=譲渡所得×20.315%(所得税および復興特別所得税15.315% + 住民税5%)

 

法人株主の場合

法人株主の場合、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などが課税され、税金は以下の計算式で求められます。

株式譲渡にかかる税金=譲渡所得×約30%(法人税等。会社ごとの課税所得金額によって税率は異なる)

譲渡所得に対する課税方式

譲渡所得に対する課税方式は、「株主が個人か法人か」によって異なります。

 

個人株主の場合、給与所得や事業所得などとは分け、個別に税額を計算する「申告分離課税制度」が適用されます。一方、法人株主の場合、ほかの所得と合算して税額を計算する「総合課税制度」が適用されます。

取引額・譲渡先による課税関係

株式譲渡にかかる税金は、「株式譲渡にかかる税金の計算方法」で解説した手順で計算できますが、株式譲渡を時価以下または時価以上で行った場合、別の税金が課されたり、計算方法が異なったりするケースもあります。

 

ここでは、「株式譲渡を時価以下または時価以上で行った場合」の売主の課税関係について解説します。

時価以下で株式譲渡した場合

株式譲渡を時価以下で行った場合、売主の課税関係は以下の通りです。

なお、以下の条件の下、非上場会社の株式を1株譲渡したと仮定します。

 

  • 取得費:100円(その他経費、手数料等は0円)
  • 時価:1,000円
  • 譲渡価額:300円

 

株式譲渡の流れ

売主の課税関係

個人→個人

譲渡所得(300-100=200)について、所得税、復興特別所得税、住民税が課税

個人→法人

譲渡所得(300-100=200)について、所得税、復興特別所得税、住民税が課税

 

時価差額分(1,000-300=700)について、みなし譲渡取得として所得税、復興特別所得税、住民税が課税

法人→個人

譲渡所得(300-100=200)について、法人税等が課税

 

時価差額分(1,000-300=700)について、寄付金として扱う(買主が売主の役員の場合は役員賞与、買主が売主の従業員の場合は賞与として扱う)

法人→法人

譲渡所得(300-100=200)について、法人税等が課税

時価差額分(1,000-300=700)を寄付金として扱う

時価以上で株式譲渡した場合

株式譲渡を時価以上で行った場合、売主の課税関係は以下の通りです。

なお、以下の条件の下、非上場会社の株式を1株譲渡したと仮定します。

 

  • 取得費:100円(その他経費、手数料等は0円)
  • 時価:1,000円
  • 譲渡価額:3,000円

 

株式譲渡の流れ

売主の課税関係

個人→個人

譲渡所得(1,000-100=900)について、所得税、復興特別所得税、住民税が課税

 

時価差額分(3,000-1,000=2,000)について、贈与財産として贈与税が課税

個人→法人

譲渡所得(1,000-100=900)について、所得税、復興特別所得税、住民税が課税

 

時価差額分(3,000-1,000=2,000)について、一時所得(売主が買主の役員または従業員の場合は給与所得)として、所得税が課税

法人→個人

譲渡所得(3,000-100=2,900)について、法人税等が課税

法人→法人

譲渡所得(3,000-100=2,900)について、法人税等が課税

株式譲渡の税金計算に不安がある場合

株式譲渡にかかる税金を正確に計算するためには、税金に関する専門的な知識が必要な場合もあります。

 

ケースごとの税金の計算方法や金額について知りたい場合は、税理士へ相談したほうがよいでしょう。なお、株式譲渡に関する手続きについてサポートやアドバイスなどが受けたい場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

株式譲渡にかかる税金は、「譲渡元が個人か法人か」「譲渡額が時価と比較していくらか」「譲渡先が個人か法人か」などによって、それぞれ異なります。なかには、税法や会社法などが絡んで計算が複雑になるケースもあるため、「具体的にいくら税金が発生するか」正確に知りたい場合は、税理士へ相談することをおすすめします。

 

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