非上場株式の譲渡手続きや株価の算定・税金について

専門家監修記事
非上場企業が株式譲渡をする際の手続きの流れについてご紹介します。株価の算定方法や発生する税金についても解説していますので、非上場株式の譲渡を検討されている場合は、参考にしてみてください。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
M&A・事業承継

株式には市場で取引される上場株と市場で取引されていない未上場株(非公開株)があります。

この記事では、非上場株を取引する場合の手続きなどをご紹介します。株価の算定方法や発生する税金についても解説していますので、非上場株式の譲渡を検討されている場合は、参考にしてみてください。

 

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非上場株式は譲渡制限があるのが通常

非上場企業は、定款に株式の譲渡制限を記載しています。譲渡制限とは、株式の譲渡をする際に会社の承認を得る必要があるという取り決めです。

 

会社の定款に以下のような記載がある場合には、株式譲渡について会社の承認がなければ、譲受人は自身が株主であることを会社に主張できません。

 

株式の譲渡制限の例文

当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。

 

上場株は譲渡制限がありませんが、非上場株は譲渡制限が付されているのが通常です。

 

非上場株式を譲渡する手続きの流れ

非上場株式の譲渡手続きは、以下の流れで進められます。

 

株式譲渡の手続きの流れ

  1. 株式譲渡契約の締結
  2. 取締役会(株主総会)での譲渡承認
  3. 株式譲渡契約の実行
  4. 株主名義の書換え

 

それぞれの手続きの内容やスケジュールについては、以下の記事で解説をしています。手続きの詳細については、こちらをご参照ください。

 

【詳細記事】株式譲渡の手続きの流れ|必要書類や注意事項について

 

 

非上場株式の株価の算定方法

非上場株式は市場取引がないため、価格の算定は容易ではありません。そのため、譲渡人と受取人が交渉をして、お互いが納得できる価格を設定する必要があります。

 

お互いの合意があれば価格はいくらでも問題ないですが、合理的な方法で価格を設定しないと税務上の問題も生じます。以下の3つ典型的な算定方法を挙げていますが、これ以外にもDCF法などがあります。また、実際の株価算定の際には複数の方法を組み合わせて算定するのが通常です。

 

非上場株価の算定方法

  • 類似業種比順方式
  • 純資産価格方式
  • 配当還元方式

 

類似業種比順方式

類似業種比順方式とは、企業が行う事業と似た業務を行っている企業の株価を参考にして、株式の価格を決定する算定方法です。主に大企業(従業員70人以上の会社)の株式取引の際によく用いられます。

 

類似した業務を担う上場企業の、1株あたりの配当金額と利益金額、純資産価額を参考にして株価を評価します。

 

純資産価格方式

純資産価格方式とは、『株式取引時にもし会社が解散した場合、全資産を売却した利益はいくらになるのか』を参考にして、株式の価格を決定する算定方法です。主に中小企業の株式取引の際によく用いられます。

 

『相続開始時に会社を売却した場合の利益(税引後)÷相続開始時における発行株式数』の計算式で1株あたりの価格を算出して、株式譲渡の条件(売却額)を判断します。

 

<例:売却利益3,000万円、発行株式数1,000の場合>

『3,000万円』÷『1,000』=『3万円(1株あたりの価格)』

 

配当還元方式

配当還元方式とは、会社が現時点で株主に出せる配当金の価格を参考にして、株式の価格を決定する算定方法です。主に株式の所有数が少ない(30%以下)株主が株式取引をする際に用いられます。

 

『(1株辺りの過去2年間の平均配当金×10%)×(1株あたりの資本金等の額÷50円)』が配当還元方式の1株あたりの計算式です。なお、計算結果が2.5円を切る場合には、1株あたり2.5円として扱われます。

 

非上場株式の譲渡で発生する税金

非上場株式の譲渡で利益が出た場合には、税金が発生します。税金の計算式は以下の通りです。

 

区分

税率

上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)

20%(所得税15%、住民税5%)

一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)

20%(所得税15%、住民税5%)

 

※譲渡益の計算方法の詳細は国税庁のHPをご参照ください。

 

無償で株式を譲渡した場合

無償での株式取引は譲渡益がないので、譲渡側には税金が発生しないと考えられます。しかし、譲渡先が法人の場合には、株式譲渡時の時価を基にした贈与税が発生するので注意してください。

 

所得税の税率は株式の時価にかかわらず20.315%です。

 

株主が亡くなって相続をした場合

株主が亡くなって株を相続する場合には、相続税が発生します。相続で引き継ぐ株式の価格は、会社(株式の発行元)と相談をして決定するケースが一般的です(株式の相続方法については『株式を相続する際の手順』をご参照ください)。

 

相続税の基礎控除額は『3,000万円+(相続人の数×600万円)』なので、株式を含めた相続財産がこの金額を超える場合には、相続税を支払わなければいけません。

 

<相続税の早見表>

課税価格

税率

控除額

1,000万円以下

10%

-

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

 

非上場株式を譲渡するメリット

非上場株式を譲渡するメリットをご紹介します。

 

事業継承が容易|メリット

株式譲渡を行うメリットは、経営権を容易に移すことができる点です。株式譲渡は単に、会社の株式を移転させるだけですので、会社の権利関係に何ら変動を生じさせません。そのため、会社の取引関係や組織を変動させることなく、経営権のみ第三者に譲り渡すことが可能なのです。実際、株式譲渡によるM&Aは事例としても多いです。

事業承継・譲渡をご検討の方へ

引き継いでよかった」と思える事業承継・事業譲渡をするには、事業内容に沿った契約書の作成が必要です。どのような契約書を作成すべきか、作成事例をご紹介します。

 

契約書の作成ポイントを確認する

まとめ

非上場企業の株式には譲渡制限があるケースがほとんどです。

また、株価や税金の計算方法は株式譲渡をする状況によって変わるので、株式譲渡をする際には事前に確認しておきましょう。ご自身だけでの判断が難しい場合には、税理士や弁護士などの専門家への相談をご検討ください。

 

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