会社の経営が厳しくなり、従業員や取引先に対する支払いなどが追いつかなくなってきた場合、事業破産を検討することになるでしょう。
しかし、事業破産は人生でも1度あるかないかの出来事。どのような手順を踏むか、どれくらいの期間が必要なのかなど、わからない人がほとんどでしょう。
この記事では、『事業破産にかかる期間や流れ』について説明しています。『破産をするかしないかの判断ポイント』についても説明していますので、事業破産を検討している人はぜひ、ご一読ください。
事業破産にかかる期間は6ヶ月が目安
破産する会社によっても異なりますが、事業破産にかかる期間は約6ヶ月です。会社債権者や、会社の財産が多いと破産手続にかかる期間が長くなってしまう傾向があります。
破産にかかる期間が短く済むケースには、債権者に対する配当がない場合があります。弁護士の受任にも時間がかかってしまうことがあるので、早めに相談しておくことで、破産にかかる期間を短縮することができます。
会社破産の流れ
ここでは、弁護士に破産手続の委任をした場合の流れについて、よくある事例ごとに解説していきます。
①受任通知(弁護士への依頼)
依頼者から破産手続の委任を受けた弁護士はまず、会社債権者に対して受任通知を行います。この時点で債権者からの連絡はすべて弁護士が受けることになるので、債権者と適切なやり取りを行うことができます。
②裁判所への破産申立
弁護士はまず、依頼者から契約書や確定申告書などの資料を収集して破産申立書を作成し、証拠書類とともに裁判所に提出します。
提出後、裁判所と弁護士で面接を行い、破産に至った経緯や、債権者や財産の状況などを詳しく説明します。
③破産手続開始決定および破産管財人の選任
法律上求められる要件に問題ないと裁判所が判断すれば、破産手続の開始決定がなされます。
会社の破産事件の場合は、裁判所は破産管財人を選任します。破産管財人とは、裁判所によって選任される会社財産を管理する者のことで、主に弁護士が選任されます。
破産管財人は破産した会社の財産について管理権限を持ちます。破産手続の開始が決定した時点で、会社は財産について一切の処分ができなくなるということです。
破産管財人が会社財産を換価する際には、必要に応じて協力する必要があります。
裁判所の決定と破産管財人の選任については、会社債権者に通知しなくてはなりません。
なお、会社が破産を依頼した弁護士と、裁判所が選任した弁護士(破産管財人)は別々なので、混同しないように注意しましょう。
④債権者集会
破産管財人と債権者、破産者が集まって開かれる債権者集会では、破産管財人から管財業務についての結果報告がなされ、裁判所が必要な決定をします。
管財業務が終了していれば、必要に応じて配当がなされます。配当がない場合は、この時点で破産手続が終了します。
一方、管財業務が完了していない場合には、破産手続が続行され、次の債権者集会の日程が決められます。
⑤破産手続終結決定
裁判所は、破産管財人からの破産者の免責に関する意見を参考に、免責の許可・不許可の判断をします。この判断が決定すると、破産手続が終結します。
このように、破産手続には債権者や裁判所、破産管財人とやり取りなどに多大な時間と労力が必要ですので、独力で行うことは現実的ではありません。
破産をするかしないかの判断ポイントは?
そもそも自分の会社は破産すべきか?とお悩みの方も多いでしょう。判断のポイントを解説します。
会社を立て直せるか
会社を立て直すことができるのであれば、それがベストです。現時点で赤字であったとしても、まだできることはあるかもしれません。
債務の超過額がそこまで大きくないのなら、破産する必要はありません。
財産を守りたいか
破産手続が開始されると、会社財産は換価され債務の支払いに充てられます。ここで余った財産についても、債権者に配当されてしまいます。つまり、破産してしまうと会社財産は基本的にすべて失うことになります。
会社自体も無くなってしまうので、会社自体にあるブランド価値も失ってしまいます。
会社の財産を失ってもいいのであれば破産した方がいいですが、会社の財産を失いたくないのであれば、他の方法を検討することをおすすめします。
債権者の同意が得られるか
破産は、倒産の1つの方法です。倒産には、破産のほかにも、民事再生などの方法があります。
民事再生とは、会社債権者などの利害関係者の多数の同意のもとに再生計画を策定し、会社の再建を図る手続きです。詳しくは、下記『その他の手段を検討してみよう』で説明しています。
民事再生の手続きをするためには、再生計画について債権者の民主的な総意が必要です。このような総意を得られないのであれば、民事再生を選択することは困難かもしれません。
法に則った手続きを踏むか|法的整理と私的整理
裁判所の手続による債務整理を法的整理と言うのに対し、債務者が債権者と直接交渉して債務を整理することを私的整理と言います。
私的整理はあくまで債権者との交渉なので、債権者が応じない場合は、法的整理を採用するしかありません。
債務超過額が大きい場合も、ご自身ですべてを把握して交渉することは難しいので、法的整理を採用した方がいいと思います。
代表者が責任を負うか
株式会社であれば通常、代表者が個人として責任を負うことはありません。代表者個人が債権者に対して債務保証している場合は、注意が必要です。
代表者は会社債務について保証人として責任を負うため場合によっては代表者の破産処理も必要となるでしょう。
その他の倒産手段を検討してみよう
「倒産=破産」だと思ってはいませんか?
倒産は、破産のほかにも法的整理である『特別清算手続』、『民事再生手続』、『会社更生手続』などを含む広い概念です。現在の会社の状況に応じて、適切な手段を選択しましょう。
特別清算手続
特別清算手続は、清算型手続とも呼ばれ、会社法に基づく倒産手続きです。特別清算手続も破産と同様に裁判所によって行われ、会社の財産と会社自体は消滅します。
特別清算手続は株式会社のみに適用され、他の形態の会社や個人では利用できません。
民事再生手続
民事再生手続は再建型手続とも呼ばれ、民事再生法に基づく清算手続です。民事再生手続はすべての財産を消滅させるのではなく、一定の財産の保有を認めている点で、破産や特別清算手続とは異なります。
民事再生手続では、裁判所が監督委員を選任します。監督委員は手続の進行を監督するのみで、実際に手続を進行するのは再生債務者自身になります。
民事再生手続は株式会社かどうかによらず利用でき、経営陣の刷新も要求されません。
会社更生手続
会社更生手続は、再建型手続とも呼ばれ、会社更生法に基づく倒産手続です。民事再生手続と同様に、すべての財産を消滅させずに一定の財産の存在を認めた上で会社を存続させる更生手続です。
会社更生手続は民事再生手続と異なり、裁判所が選任した更生管財人が手続きを遂行します。取締役などの経営陣は退陣しなければなりません。
会社更生手続は株式会社しか利用することができません。
私的整理
私的整理は法的整理と異なり、裁判所などの公的機関が介入せずに倒産をする方法です。事業財政ADRの裁判外紛争解決制度などが、私的整理の代表的な制度です。
私的整理は公的な介入がないため、債権者と交渉をして比較的自由に手続きをすることができますが、債権者から同意を得られない場合には、法的整理を利用するしかありません。
まとめ
ここまで破産手続の流れや他の手段についてみてきました。
そもそも自分の会社は破産させる必要があるのか、という判断もなかなか難しいですよね。
会社の規模や債権者の数などによって、会社が取るべきベストな手続きはそのときの会社の状況によって異なります。それぞれの手続きの性格を理解し、ベストな手続を利用することがとても大切です。
破産手続を選択した場合、どの段階においても適切な対応が必要になってきます。特に、慣れていない裁判所とのやりとりや、債権者への対応には頭を悩ませるでしょう。しかし、破産手続をスムーズに行うことは、会社従業員や債権者を守る上で重要です。
破産手続を検討されているのであれば、倒産の解決実績のある弁護士に相談することを、強くおすすめします。
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