AIと弁護士による契約書レビューのメリットを比較|AIレビューの実用性と賢い使い分け

専門家監修記事
AIによって契約書のレビューが簡略化できる時代になりつつある今、企業は弁護士とAIレビューを上手に利用して、より安全かつ迅速な契約締結が可能なのでしょうか。AIレビューの実用性と利用リスク、弁護士との比較をし、賢い使い分をついて紹介します。
ベンチャーラボ法律事務所
淵邊 善彦
監修記事
取引・契約

現在、さまざまな分野でAI化が進んでいます。法律分野においてもAIを活用したサービスが登場しており、その一つとして「契約書のAIレビュー」があります。

契約書AIレビューとは「AIが契約書の内容についてチェックを行う」サービスのことで、弁護士費用や専門性が心配で弁護士へ相談するのをためらっている方にとっては、大きな朗報と言えるでしょう。

そのAIレビューサービスのなかでも代表的なものが『Legal Force』というAI契約書レビューサービスです。

legalforce

契約書に潜むリスクは AI が即座に洗い出し。
修正の参考となる条文例は瞬時に検索。
搭載されているひな形集はいつでも最新。
人手と時間をかけるしかなかった
契約書業務の品質向上を、効率的に実現します。

引用元:https://legalforce-cloud.com/

ただ、契約金額、契約相手、契約内容等によっては、実績のある弁護士にチェックしてもらった方が、むしろ安くて安心できるケースもあります。そこで本記事では、AIレビューの実用性やメリット、弁護士にレビュー依頼をした場合を比較しながら、ご紹介します。

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契約書のAIレビューとは

まずは契約書のAIレビューについて、特徴や必要性など基本的な知識を解説します。なおAIレビューを提供するサービスは複数存在するため、ここで解説する機能とは異なる場合もありますが、あくまで参考の一つとして見て頂けると幸いです。

AIレビューの具体的な機能

AIレビューの具体的な機能としては、契約書の条項について「自社にとって有利であるか不利であるか」や「不足している項目/余分な項目はあるか」といったリスク判定のほか、具体的な修正案の提示などが挙げられます。

さらにリスク判定や修正案の提示にあたっては、判定理由・提示理由などもあわせて表示されることもあります。なお利用時の流れとしては、まずword文書で作成した契約書ファイルをアップロードして、ソフト内にデータを取り込みます。

次に「レビュー依頼」をクリックして審査を開始し、あとは完了通知が届くのを待つだけ、と非常に簡単です。審査については1日程度で完了し、早ければ数時間程度で済むこともあるようです。

対応できる契約書

対応できる書類の範囲は提供する会社によって異なります。また、英文契約書についてはどこまで海外の言語や海外の法律に対応できるか、契約するサイトが網羅している機能と性能で大きく変わるのでご注意ください。

契約書のAIレビューを導入する3つのメリット

契約書作成の際に心強い味方となるAIレビューですが、具体的には以下のようなメリットが見込めます。

  • 専門的な知識がなくてもある程度は契約書をチェックできる
  • 相手から提示された契約書の検討にかかる手間を短縮できる
  • 契約書のクオリティにバラつきが出ない

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

専門的な知識がなくてもある程度は自分でチェックできる

法的な知識が不十分な状態で契約書対応を進めてしまうと、トラブルの元となるだけでなく、自社にとって不利な契約内容となってしまう恐れもあります。

しかし、AIが契約書の問題点をチェックしてくれる上、修正点がある場合は具体案も提示してくれるため、特別な知識がなくても契約書をチェックすることができます。

また、この条文を受け入れた場合、自社にどんなリスクがあるのかも過去のトラブルの事例を挙げて教えてくれますので、リスクを承知した上で、相手方との交渉ができます。

契約書対応にかかる手間を短縮できる

契約書の条文について、一つ一つチェックしていくには手間がかかります。また、外部の専門家に依頼するような場合、依頼先のスケジュールなどによっては数日程度の時間がかかることも考えられます。

しかしAIレビューを導入することで、早ければ数時間程度で、契約書をチェックできます。「手間なくスピーディに契約書をチェックできる」という点も大きなメリットです。

契約書のクオリティにバラつきが出ない

自力で契約書チェックを行う場合、担当者の法的な知識・経験によってはクオリティにバラつきが出る可能性もあります。

しかしAIレビューを導入することで、そのサイトが提供しているサービスに対応する内容の契約書であれば、同じクオリティのチェックが受けられます。「契約書の種類を問わず、一定レベルの契約書のチェックができる」という点もメリットと言えるでしょう。

AIレビューだけで契約書をチェックするリスク

AIレビューを導入することで、リスク把握や修正対応を効率的に済ませられるという点は大きなメリットですが、必ずしも「すべての契約に導入できる」とは言い切れません。

また、対応している契約書の種類も、業務委託契約や守秘義務契約などまだまだ限定的で、あらゆる分野を網羅しているとは言い難い状況です。

ビジネスの実態を理解したうえでのリスクの指摘が難しい

その契約書が対象としているビジネスがどのような実態であり、どのようなリスクがあるかは、契約書を見ただけではわかりません。

現場の担当者からヒアリングをしっかりしたうえでレビューすることが必要です。しかし、現状ではAIレビューにそのような機能がまだ備わっていません。特に新規ビジネスで先例が少ない分野や、新しい契約類型については対応できないことになります

取引先との関係を検討した上での柔軟な判断が難しい可能性がある

例として「双方がそれぞれ自社に有利な雛形を用意した」というようなケースでは、相手方との力関係や取引実績、信用力などを考慮した判断が必要となることもあり得ます。

良好な関係性が築けているのであれば、「将来性を見込んで、今回はそちら主体で話を進めてもらって構わない」などのやり取りが交わされることもあるでしょう。しかし、契約相手との関係を慎重に判断し、柔軟な対応をしなければならない場合、AIレビューのみでは網羅しきれない可能性が高くなります。

トラブルの際に責任者がいなくなる可能性がある

AIレビューは、知識のない方でも簡単に作成できるのが大きな特徴です。ただし、AIのみに頼ってしまうと、万が一契約書の内容によってトラブルが発生した場合、責任の所在について問題になる可能性があります。

AIレビューを利用する場合は必ず責任者が必要になるでしょう

AIが出した答えを契約の相手方に出す前に、人間が必ず目を通し、判断しなくてはなりません。ただそうなると、責任者は一定の法的な知識も必要になるかと思われます。

AIレビューと弁護士を比較|賢く使い分ける方法

契約書対応については、AIレビューだけでなく弁護士にも任せることができます。しかし、対応内容や費用など特徴はそれぞれ異なるため、状況に応じて使い分ける必要があるでしょう。

AIレビューと弁護士に依頼した場合の違いを比較

AIレビューと弁護士について、主な違いをまとめると以下の通りです。

 

弁護士

AIレビュー

契約書のチェック

契約書の修正

完全オーダーメイドの契約書作成

△または×

契約書作成後のフォロー

×

追加項目の提案

海外用の契約書の作成

 ・日本語以外の言語での契約書

 ・日本法以外の準拠法への対応

(事務所により異なる)

(製品により異なる)

依頼から修正までの期間

(事務所により異なる)

最短で数時間

費用相場

内容によって金額が変動する

パック・セットで一定(契約書数の上限あり)

AIは、短時間で大量の契約書を一定のクオリティでさばくことができるため、効率を重視するのであれば有益かもしれません。

一方弁護士の場合、事務所によって作成までの期間や費用は様々です。しかし、今までどのような契約を行ってきたのか、取引の実態や契約相手との力関係はどうか、など会社の性質や業務内容を踏まえ、今後のビジネスを見据えた完全オーダーメイドの契約書を作成してもらえます。また、トラブル発生時には対応してもらうことが可能です。

AIレビューと弁護士の選び方

上記の通り、AIレビューと弁護士のどちらを利用したとしても、自力で作成するよりは有益な効果が見込めます。なかには「どちらを利用するのが良いか」と決めかねている方も多いのではないでしょうか。どちらがおすすめか簡単にわかる診断図を用意しましたので参考にしてみてください。

この他にも、「AIレビューの導入がおすすめの会社」と「弁護士への相談がおすすめの会社」の特徴を解説します。

AIレビューの導入がおすすめの会社

主に以下に該当する会社は、AIレビューの導入がおすすめです。

  • 社内に法務部があるもしくはある程度法律に関する知識のある社員がいる
  • 契約書の作成にある程度慣れている、もしくは類似の契約書ばかりなので、過去に締結した契約書と比較することが容易にできる
  • スピーディに契約書作成を済ませたい
  • あまり費用をかけたくない

弁護士への相談がおすすめの会社

主に以下に該当する会社は、弁護士への相談がおすすめです。

  • 契約金額が大きく、会社にとって大変重要な契約である
  • 特殊な業種の事業を行っている
  • 初めて締結する種類の契約書で、内容もかなり複雑である
  • 自社の現状に最適な契約書を作成したい
  • 契約締結に至るまで、相手と交渉すべきポイントの優先順位も含めて全面的にサポートしてほしい
  • 万が一トラブルが発生した場合は早期解決したい

賢く使い分ける方法とは?

AIレビューも弁護士もそれぞれメリット・デメリットがありますので、両方導入もしくはポイントで使い分けることが必要です。また、どちらが最適かを弁護士に直接相談してみるのも一つの方法です。

代表的な契約書AIレビューサービス3つ

ここでは、国内の代表的な契約書AIレビューサービスを3つご紹介します。

LegalForce(リーガルフォース)

株式会社LegalForceが提供するAI契約書レビューサービス。代表取締役CEOである角田望さんは法律事務所ZeLo・外国法共同事業の弁護士でもあり、開発専任の弁護士、提携法律事務所が常に最新の知見を提供しているのが最も大きな強みとなっています。

主な機能として

  • 約30種の契約書レビューが可能
  • 契約書に潜む不利な条文や欠落条項、抜け漏れの指摘
  • キーワード検索による自社のひな形やレビュー
  • 過去の契約書から欲しい条文を瞬時に検索
  • 法律事務所ZeLoが作成する書式・ひな形約300類型400点以上が利用可能

公式サイトによれば、作業環境を変えることなく、契約書業務にかかる時間を平均 3割削減できるとしています。

AI-CON(アイコン)Pro

AI-CON(アイコン)Pro

URL:https://ai-con-pro.com/

GVATECH株式会社が提供する契約書レビューサービス。こちらの代表山本俊さんも、Legalforce同様、法律事務所(GVA法律事務所)の代表弁護士であり、開発に携わる現役の弁護士です。

基本的な機能はLegarForceと同様のようですが、主なトピックとして、日本初の英文契約書レビューに対応しているという点です。(2020.09.28時点)

GVA TECH株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山本 俊、以下GVA TECH)は、エンタープライズ向けAI契約書レビュー支援クラウド「AI-CON Pro」に、英文契約書をレビューする機能を新たに搭載いたしました。

英文契約書においても、一般的な基準だけでなく、企業が独自に定めた基準に対応するリスク検知機能の提供は、日本初となります。
引用元:【日本初】英文契約書への対応開始のお知らせ

LAWGUE

URL:https://lawgue.com/


最高品質のAI搭載クラウドエディタ』というのが謳い文句のAIレビューサービス。オンラインエディタ機能に強みをもっており、WordやPDFでアップロードした契約書のレビューだけではなく、文書作成時に発生してしまう、インデントの乱れや表記揺れ、条番号や参照番号のずれ等を、リアルタイムに自動検出・補正するエディタ機能が魅力です。

運営は株式会社日本法務システム研究所、こちらも代表者である堀口圭さんは現役の弁護士でもあります。

今回ご紹介した3社以外にも、

  • り〜が〜るチェック(株式会社リセ、代表:藤田美樹(弁護士))
  • LegalSifter(弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所代表:小野智博(弁護士)
  • LawFlow(LawFlow株式会社代表:則竹理宇(弁護士))

などがあり、6社とも弁護士が代表を務めており、実務として契約書に関わる有資格者が開発していることになりますね。

まとめ

AIレビューを利用することで、リスク把握や修正対応などの作業を代わりに行ってくれるため、効率的に契約書対応が済ませられます。ただし、必ずしもすべてのケースに適しているというわけではありません。そのため。臨機応変な対応力が求められるような場面などは弁護士に依頼した方が安心です。

さらに弁護士であれば、ビジネスの実態を理解してもらったうえでオーダーメイドの契約書作成が依頼できるほか、契約締結に至るまでのサポートも依頼できるなど、「幅広いサポートが望める」という点でAIレビューとは異なります。

特に「安心して契約を済ませたい」と考えている方については、弁護士を選択することをおすすめします。契約書をめぐる交渉過程では、交渉項目の優先順位をつけることも重要です。「この点は譲るからこの点は譲歩してほしい」など、お互いに歩み寄りながら最終的な締結を目指します。

現時点ではまだAIに優先順位の判断や交渉はできませんので、難しい交渉が必要になる契約は弁護士に依頼したほうが、結果的に会社にとって最適な判断ができます。AIレビューは各国で始まったばかりで、改善の余地がまだまだあります。

対応できる契約書の種類や対応する言語、準拠法にも限界があります。従って、法律的な知識が全くない会社や個人が法務機能をAIに全面的に頼るのは危険が伴います

ある程度社内で判断できる人材がいて、AIが導き出した答えを人間がきちんとレビューできてはじめて、業務の効率化につながることでしょう。いずれにせよ、AIと弁護士を上手に活用する時代がまもなく到来すると思われます。

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