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「理不尽なクレームにどこまで応じるべきか」と、ひとりで悩んでいる経営者や担当者の方も多いはずです。
要求の内容や手段が社会通念を超えていれば、無理に応じる必要はありません。しかし、対応を誤ると従業員が疲弊し、退職や訴訟トラブルなど会社側の負担に発展するおそれもあります。
さらに、要求の当否を見誤って安易に謝罪や金銭対応を重ねると、悪質な相手からの要求がエスカレートしかねません。
本記事では、理不尽なクレームの見分け方、会社が取り組むべき準備、発生したときの対応、放置するリスクを順に解説します。適切な体制づくりの参考にしてください。
そもそも、理不尽なクレームとはどのようなクレームをいうのか確認しておきましょう。
理不尽なクレームかどうかは、要求内容と要求方法の2つで判断します。要求の中身または方法が不当・悪質であれば、理不尽なクレームに該当します。
以下では、それぞれのケースを具体例つきで解説します。
1つ目は、要求内容が不当または悪質なケースです。
厚生労働省のマニュアルでは、要求内容が妥当性を欠く場合として次の2つが示されています。
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たとえば、こちらの対応に落ち度がなかったにもかかわらず、「迷惑料として50万円払え」といったクレームを入れるケースが該当します。
商品に欠陥があれば、謝罪や交換に応じるのは当然です。一方で、自社に落ち度がなければ、要求に正当な理由はないと考えられるため、応じる必要はありません。
2つ目は、要求方法が不当または悪質なケースです。
たとえ要求内容に一理あったとしても、要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして不相当であれば、理不尽なクレームにあたります。
厚生労働省のマニュアルでは、不相当とされる言動として以下の類型が示されています。
| 類型 | 言動の例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴る、物を投げつける |
| 精神的な攻撃 | 「殺すぞ」と脅す、「バカ」とののしる |
| 威圧的な言動 | 大声で怒鳴る、机をたたく |
| 土下座の要求 | 「土下座して謝れ」と迫る |
| 継続的・執拗な言動 | 同じ要求の電話を何度も繰り返す |
| 拘束的な行動 | 退去を求めても居座る、長時間拘束する |
| 差別的な言動 | 国籍や性別を侮辱する発言をする |
| 性的な言動 | 従業員の体に触れる、性的な発言をする |
| 従業員個人への攻撃・要求 | 名指しでSNSに晒す、自宅を聞き出そうとする |
| 類型 | 言動の例 |
|---|---|
| 商品交換の要求 | 欠陥のない商品の交換を求める |
| 金銭補償の要求 | 根拠のない慰謝料を求める |
| 謝罪の要求 | 落ち度を超えた謝罪を繰り返し求める |
表に挙げた言動は、悪質な場合は脅迫罪や強要罪、威力業務妨害罪などの犯罪にあたります。
犯罪にあたる言動が出た時点で、通常のクレーム対応は打ち切ってください。会社と従業員を守る対応への切り替えが必要です。
クレームに対応する体制を整備しても、理不尽なクレームを完全には防げません。クレーマー行為を受けたり言いがかりに近い要求をされたりしたときには、会社として適切な対応をとりましょう。
ここでは、主な対応を3つ解説します。
クレームを受けたら、まずは反論せず、顧客が主張する事実関係を確認してください。
顧客の主張を5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)でメモに整理し、社内の記録と照らし合わせます。
自社に過失があった場合は、謝罪のうえで交換や返品に応じましょう。一方で、状況を正確に把握するまでは、安易に非を認める発言を避けてください。
顧客が感情的になっていても、対応する側は冷静さを保つことが大切です。
被害を受けた従業員の心のケアも進めてください。カスハラ・クレーマーの被害は、従業員の心身に影響を残します。
従業員から話を聞いたうえで、「カスハラを受けたのはあなたの責任ではない」などと伝えてください。担当を一時的に外す、休みを取らせるといった配慮も大切です。
心身への負担が続くと、メンタルヘルス不調に陥るおそれもあります。不調の兆候が見られたら、早めに産業医や社内外の相談窓口につなげてください。
同じクレームを繰り返さない仕組みづくりにも取り組んでください。
まずは、対応の記録を社内で共有しましょう。「どんな要求があり、どう対応したか」を残しておくと、似たケースが起きたときの判断材料になります。
クレームの原因が商品やサービスの不備にある場合は、不備そのものの改善も必要です。理不尽な要求への対処と正当な指摘への改善は、それぞれ別の課題として取り組みましょう。
あわせて、トラブルに発展しやすい事例を研修で共有し、対応方法を定期的に見直しましょう。
【関連記事】トラブルを避けるためのクレーム対応|4つの基本と留意点とは
労働施策総合推進法の改正により、2026年10月1日からすべての企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務づけられます。
対策を怠ると、厚生労働大臣から助言・指導・勧告を受け、従わない場合は企業名を公表されるおそれもあるため、改正法の施行日までに、社内の体制を整備しておきましょう。
企業が事前に取り組むべき内容を4つ紹介します。
まずは、「カスハラを容認しない」という会社の基本方針を明確にしてください。
そして、就業規則や服務規律に方針を明記したうえで、全従業員に周知してください。店頭や自社サイトで「不当な要求には応じません」と表明する方法も有効です。
トップが方針を打ち出せば、現場の従業員は迷わず断れます。「会社が守ってくれる」という安心感が、対応のブレを防ぎます。
基本方針を決めたあとは、具体的なクレーム対応マニュアルを作りましょう。
盛り込む内容は、初期対応の手順、社内の報告ルート、対応を打ち切る基準などです。「誰が・どこまで・どう対応するか」を決めておくと、担当者ごとの判断のばらつきを防げます。
マニュアルは、一度作って終わりではありません。実際に起きたクレームを都度反映させると、自社の実情に合った内容へ近づくでしょう。
策定したマニュアルは、定期的な教育や研修を通して現場に浸透させてください。
研修では、正当なクレームとの見分け方や、断り方のフレーズを実践形式で学ぶのが効果的です。ロールプレイングを取り入れると、本番でも落ち着いて対応できます。
新人だけでなく、管理職向けの研修も必要です。管理職は現場から相談を受ける立場のため、判断の質が問われます。
従業員が一人で不安を抱え込まない仕組みとして、相談窓口や相談担当者を決めておくのも重要です。
窓口は、パワハラやセクハラ対策で設けた窓口と一本化してもかまいません。「困ったら誰に相談するか」が決まっているだけで、現場担当者の心理的な負担は大きく減ります。
相談を受けたら、担当者は内容を記録し、会社として対応を引き取ってください。あわせて、相談した従業員のプライバシーを守り、相談を理由とする不利益な取り扱いをしない配慮も必要です。
【関連記事】カスハラは弁護士に相談するべき?メリット・選び方・解決方法を解説
理不尽なクレームへの対応を現場任せにしていると、会社自身が大きな不利益を受ける可能性があるため、注意してください。
放置した場合に起こりうるリスクを、3つに分けて解説します。
企業には、従業員の生命や身体の安全を守る安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。
カスハラを放置して従業員が心身に不調をきたした場合、企業は安全配慮義務違反として法的責任を問われるおそれがあります。被害を受けた従業員から、損害賠償を請求されるかもしれません。
訴訟になれば、対応に時間も費用もかかります。事前の方針づくりや研修で被害を防ぐほうが、負担ははるかに小さく済むでしょう。
【関連記事】安全配慮義務違反とは?主なケースや会社を訴える場合に必要な知識、判例も解説
「会社は守ってくれない」と感じた従業員は、職場を離れていく可能性があります。
理不尽なクレームへの対応は、精神的な負担が大きい業務です。負担をひとりで抱えたまま放置されれば、休職や退職を選ぶ従業員が出てもおかしくありません。
経験のある従業員を失えば、採用や教育に新たなコストがかかります。残った従業員の負担も増えるため、さらなる退職を招く悪循環に陥るでしょう。
クレームの放置は、企業のイメージ低下にもつながります。
たとえば、カスハラ被害を受けた従業員が、会社の対応をSNSに書き込むケースです。一度広まった投稿を完全に消すのは難しく、「従業員を守らない会社」というイメージが残ってしまうでしょう。
イメージの悪化は、採用活動にも響きます。求職者が下調べで口コミを見る時代では、応募をためらう人も出てくるはずです。
弁護士にクレーム対策を依頼すると、判断と交渉の両面でメリットが得られます。
クレーマーからの要求に応じるべきかどうかは、素人には自己判断が難しい問題です。しかし弁護士であれば、条文や判例を踏まえた判断ができます。
たとえば要求の一部に正当性がある場合でも、どこまで対応すれば十分かを一緒に整理してもらえるため、初動の判断ミスを防げます。応じる必要がないと判断できれば、理由を示したうえで毅然と交渉を打ち切ることも可能です。
また、悪質なクレーマーとの直接交渉も任せられます。威圧的な言動にさらされる機会を減らせる点は、会社だけでなく従業員にとっても大きなメリットです。
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相談内容や業種、会社の所在地から弁護士を絞り込めるため、自社の状況に合った事務所を短時間で見つけられます。カスハラ対応は初動の判断や交渉のノウハウによって結果が大きく変わるため、実績のある弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
初回相談無料の事務所も掲載されているため、顧問弁護士がいない会社でも気軽に利用できます。費用の見積もりを比較しながら、自社に合う依頼先を選べる点も特徴です。
理不尽なクレームへの対応に不安があれば、まずは無料相談から始めてみてください。
理不尽なクレームへの対応は、相談窓口やマニュアルの整備、被害を受けた従業員のケアまで、会社全体で取り組む課題です。対策を怠れば、安全配慮義務違反や従業員の退職といったリスクも生じます。
自社だけでの対応が難しい場合は、弁護士への相談がおすすめです。要求に応じる義務があるかの判断や、悪質なクレーマーとの交渉を任せられます。
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編集部
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
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