トラブルを避けるためのクレーム対応|4つの基本と留意点とは

専門家監修記事
悪質なクレームは、カスタマーハラスメントなどと呼ばれ、更なるトラブルを招きかねません。クレームに正しく対応することにより、会社の社会的信用や対応する従業員を守ることにつながります。この記事では、基本的な対応から、タイプごとの適切な対処法についてご紹介します。
牛島総合法律事務所
猿倉 健司
監修記事
クレーム・不祥事

「お客様は神様」という意識が根強く残る日本社会ですが、悪質なクレーム対応に苦慮している事業者も多いでしょう。このような悪質なクレームは、カスタマーハラスメントなどとも呼ばれます

 

近時は、クレームと称して店員に対して謝罪を強要し、SNS(ソーシャルメディア)にアップロードして拡散させるという例も数多く見られるところです。

 

クレームに対して適切な対応を行わなければ更なるトラブルを引き起こす原因になります。他方で、適切なクレーム対応は、会社の社会的信用や対応する従業員を守ることにつながります。この記事では、基本的な対応から、タイプごとの悪質なクレーマーに対する適切な対処法についてご紹介します。

悪質クレーマーでお困りの方へ

悪質なクレームには、会社や従業員だけで対応するのはおすすめできません。会社だけで交渉し続けると、更なるトラブルに発展するリスクがあるからです

二度としないように誓約してもらったり損害を請求したりするには、弁護士を通し対応していくことをおすすめします。電話・無料相談もできますので、まずは最寄りの事務所に相談してください。

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クレーム対応の4つの基本

クレーム対応の基本は以下の4つです。

具体的な対応についてご紹介します。

1:誠実な対応を行う

まずなによりもクレームに対して、誠実な対応を心がけることが重要です

ここで留意すべきは、後述する事実確認をしないままに「会社のサービスが悪かった」「商品が悪かった」などと謝罪を行ってしまうことは避けるべきです。

 

初期の段階で謝罪すべき場合があるとすれば、トラブルが発生したことにより「不便・不快な思いをさせたこと」に対してのものになります。

 

また、相手が悪質なクレーマーである場合などは、誠実な対応を行いながらも、毅然とした態度で対応することが必要です。後述のとおり、悪質なクレーマーによって、恐喝や脅迫、威力業務妨害など刑事事件となりうる行為がなされるケースもあります。

2:丁寧に「相手の話を聞く」|事実確認及びクレームのポイントを把握する

クレーム対応においては、相手の話を丁寧に聞くことで、事実確認を行うとともに、怒りや不満の根本的な原因を探していく作業が必要になります。

クレーム内容が商品の欠陥やサービスの不備などこちら側に責任がある場合も十分考えられるため、怒りや不満の根本的な原因を探すことは、円満解決のために非常に重要です。

 

例えば、「10年は壊れないと言われて買った商品が壊れた」というクレームがなされた状況であっても、怒りの根本が「ものが壊れた」ことのみならず、店員の不誠実な態度であったこともあります。このような場合、解決策として「返金します」との提案をしても、怒りのポイントを十分に把握していないがために、「お金の問題ではない」と相手を余計に怒らせてしまう可能性もあるでしょう。

 

また、最適な解決策を検討するために、最終的に何を望んでいるのかを明確にしてもらうことが有用な場合もあります。

必ず「事実確認」を行い、クレームのポイントを理解する

クレームを受けた際は、必ず「いつ」「誰が」「どこで」「何を」したことに対するクレームなのかについて事実確認を行い、直後にメモでまとめましょう。また、相手の住所・連絡先・氏名も必ず控えておきます。

 

示談交渉や裁判手続において、当初のクレーム内容がどのようなものであったかが重要となる場合もあるために必要となります(たとえば、クレームの内容が変遷する場合等)。

3:「解決策」の提示・その場で決定しない

その場で、「ご意見を参考に、社員を教育致します」などと謝罪を行うことで、相手が納得すると場合も多いかと思います。

ただし、ここで重要なのは、「慰謝料を支払え」「従業員をクビにしろ」などと、金銭に関する要求や不当と思われる要求がなされた際に、その場で安易に回答をしないということです。

 

対応として、「大変恐縮ですが、私だけでは決定することができません。上司とも相談した上で、後日ご連絡致します」などと説明し、自分で決められない旨をはっきりと伝えることが考えられます。

4:クレーム対応の体制・対応マニュアルをあらかじめ策定しておく

発生したクレームは、クレーム内容・対応内容・最終的な解決をデータベースでまとめ、些細なものであっても社内(対応部門)に共有することが求められます。また、あらかじめクレーム対応の体制・対応マニュアルを整備しておき、それに従い対応するということが重要です。

 

具体的には、クレーム対応の体制を整え、クレーム対応責任者を設置しておきましょう。クレーム対応の責任部署及び責任者を決めた上で、実際にクレームが生じた場合に、どの部署に報告をするのか、誰がクレーム対応の判断を行うのかの対応マニュアル、組織体制の整備をしておく必要があります。

 

また、クレーム対応についての研修を実施することもよく行われています。具体的な対応マニュアル等の作成、社内研修等については弁護士等の専門家に相談するのが得策です。

悪質クレーマーでお困りの方へ

悪質なクレームには、会社や従業員だけで対応するのはおすすめできません。会社だけで交渉し続けると、更なるトラブルに発展するリスクがあるからです

二度としないように誓約してもらったり損害を請求したりするには、弁護士を通し対応していくことをおすすめします。電話・無料相談もできますので、まずは最寄りの事務所に相談してください。

悪質クレーマーとされる3つのタイプと適切な対処法

ここでは悪質クレーマーとされる人をタイプごとに分け、それぞれの正しい対処法についてご紹介します。

 

タイプ1|返金・代金支払いの免除を目的とするクレーマー

経済的な利益を得るために、大声や暴言をもって従業員を責め立て、商品・金品の代金支払いの免除、返金を要求するタイプのクレーマーです。

 

例えば、飲食店などにおいて、注文から料理の提供までに時間が掛かったなどという事実とは異なる指摘をして「お金を払いたくない!」などと言って飲食代の免除を求めるケースや、もともと不備がない商品を自ら壊し「不良品であるため返金しろ」と言って返金を求めるケースが挙げられます。

正しい対処法

相手方の主張が事実かどうかについて確認の上で、理由がない場合には明確にお断りすることが重要です。代金支払いの免除や返金対応について今すぐ約束しろと言われることもありますが、そのような約束はできないことを明確に伝えてください

 

また、理由がないにもかからず、過度に威圧することにより金銭の支払いや料金の免除を要求する行為は、恐喝や脅迫、威力業務妨害などの刑事事件として成立する場合もあります。例えば、「迷惑料を払わないのであればSNSに拡散する」「納得出来ないので毎日電話する」などと言って店内で騒ぐような行為などがありえます。

 

このような事態となった場合、毅然とした態度で対応することが重要です。例えば、以下のように説明をすることが考えられます。

例)会社としては事実確認と説明を尽くしているので、これ以上は対応できかねます。

もちろん、このような対応で退散する場合もあれば、さらに怒りを増幅させてしまう場合もあるでしょう。後者の場合には、警察や弁護士を呼ばなければならない事態にまで至る場合もありえます。また、訴訟等の法的手続となった場合には、その場でのやりとりを証拠として残しておくことが有用となるため、相手の発言内容などを録音するなどして記録しておくことが重要です。

タイプ2|「クレーム」をしたいだけのクレーマー

店舗の従業員や相談窓口をストレスのはけ口として利用するクレーマーです。ストレスを発散することが主な目的である場合等は、話の内容が支離滅裂だったりするケースがあります。

正しい対処法

ストレスを発散することが主な目的である場合には、話を聞くことで目的が達成されるため、できるだけ話しを聞くことが重要といえます。しかし、あまりに話が続き、怒りが収まらないようであれば、警察や弁護士を呼んで対応してもらうことが必要な場合もあるでしょう。

タイプ3|アドバイザーになりきっているクレーマー(善意のクレーマー)

意外と厄介なのが、この種のクレーマーです。会社のためになると考えて、積極的にアドバイスや指導を行ってくれますが、感謝されたことが病みつきになり、頻繁に登場して結果として業務を妨げてしまうということもあります。その上、こちらがそのアドバイスに従わないと「せっかく会社のためを思って言っているのに」などと言ってさらなるクレームに発展する可能性があります。

正しい対処法

有益なアドバイスや指導をいただけること自体は企業にとってはありがたいことですが、それが頻繁になると業務に支障をきたすこともあります。「自分はこの会社の役に立っている」という意識が強くなりすぎると、長い話に付き合わされて、対応する従業員を長時間拘束することにもなるでしょう。

 

このようなクレーマーには、会社に対するアドバイスを、アンケート用紙に書いてもらったり、予め対応できる時間を伝えてアポイントを取ってもらい、その時間内でのみ対応したりすることが考えられます。

【解決事例つき】悪質なクレーマーに困ったら弁護士に相談!

悪質なクレーマー対応に困った場合、「弁護士に相談する」というのも1つの解決策です。

悪質なクレーマー対応で弁護士に相談できること

クレーム対応について弁護士に以下のようなことを相談できます。

「毎回クレームをつけてくる客に対応する具体的方法を教えてほしい」

「悪質なクレーマーに対して法的な手段をとりたい」

「悪質なクレーマーのせいで商品が壊れ、また従業員が精神的なストレスを受けたため、損害賠償を請求したい」

「悪質なクレーマーがネットに誹謗中傷を投稿しているので、削除したい」

「悪質なクレーマーを刑事告訴したい」

「会社のクレーム対応体制、対応マニュアルを整備したい」

「クレーム対応の研修を行ってもらいたい」 など

問題化しているクレーム対応に加え、会社のリスク管理や体制を整えるためのアドバイスも可能です。

 

上記で説明したとおり、クレーム対応の責任部署及び責任者を決めた上で、実際にクレームが生じた場合に、どの部署に報告をするのか、誰がクレーム対応の判断を行うのかについての対応マニュアルや組織体制の整備をしておくことが有用です。また、クレーム対応についての研修を実施することもよく行われています。

弁護士への相談で解決できた事例

悪質なクレーマーにネット上で誹謗中傷された事例

解決までの期間

ケースバイケースで、2ヶ月~1年以上も

【相談者様】

「悪質な悪質なクレーマーがネットに誹謗中傷を投稿しているので、削除したい」ということで、弁護士事務所へ尋ねられました。

【弁護士の対応】

相談後、ウェブサイトの投稿削除の仮処分・訴訟を担当しました。その後、投稿した発信者情報開示の仮処分・訴訟も担当し、解決まで親身にサポートしました。

クレーム対応の組織体制の整備支援した事例

解決までの期間

1~3ヶ月程度

【相談者様】

「会社のクレーム対応体制を整えたく、クレーム対応の研修を行ってもらいたい」とのことで、弁護士事務所へ尋ねられました。

【弁護士の対応】

クレーム対応フローやマニュアル、組織体制の整備支援をしました。また、従業員に対し、クレーム対応についての研修を実施しました。

弁護士に相談するタイミング

基本的な弁護士に相談するタイミングは、クレームにより問題が発生したタイミング、または問題が発生しそうなタイミングです。

 

しかし、上記で説明したとおり、問題を大きくしないためには、あらかじめクレーム対応の体制・対応マニュアルを整備しておき、それに従い対応するということが重要です。また、クレーム対応についての研修も依頼できます。

 

弁護士と顧問契約したり、体制を整えるために弁護士に相談したりすることもできますので、少しでも不安を感じており「弁護士に相談したい」と思ったときに相談しておくことをおすすめします。

悪質クレーマーでお困りの方へ

悪質なクレームには、会社や従業員だけで対応するのはおすすめできません。会社だけで交渉し続けると、更なるトラブルに発展するリスクがあるからです

二度としないように誓約してもらったり損害を請求したりするには、弁護士を通し対応していくことをおすすめします。電話・無料相談もできますので、まずは最寄りの事務所に相談してください。

まとめ

クレームは、会社の利益・改善につながることもあるため、誠実な対応が必要ですが悪質なクレーマーに対しては、早々に自衛を心掛け、タイプに応じて対応を変えることをおすすめします。悪質クレーマー対策マニュアルやガイドラインを整備することが有効ですが、具体的なケースで対応が難しい状況になってしまった場合には、弁護士や警察に相談して解決するようにしましょう。

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