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ネット上で悪質な書き込みを発見したとき、どのように対応すべきか判断に迷う経営者や総務担当者は多いはずです。
企業への誹謗中傷を放置すると、経営全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。対応が遅れるほど投稿は拡散してしまうため、早めに対応方針を固めるとともに、未然に防ぐための備えも進めておきましょう。
本記事では、誹謗中傷発生時の対応手順や、被害を未然に防ぐための事前対策、名誉毀損で違法となる要件、実際の裁判例を解説します。誹謗中傷を放置した際のリスクや弁護士に依頼するメリットにも触れました。誹謗中傷から自社を守るための参考にしてください。

企業がおこなうべき誹謗中傷対策は、大きく以下の2種類に分けられます。
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すでに被害が出ている場合は、投稿の拡散を止める事後対策が最優先です。一方で、新たな誹謗中傷を防ぐには、事前対策にも取り組む必要があります。
それぞれの概要を見ていきましょう。
事後対策とは、すでに誹謗中傷がおこなわれた状況で取る対策を指します。
被害のさらなる拡大を防ぎ、悪質な投稿の削除や加害者への責任追及を進めることが目的です。適切に対応すれば、企業の信用回復にもつながります。
各手順の詳しい進め方は、「誹謗中傷がおこなわれたときの事後対策7つ」の章で解説します。
事前対策とは、誹謗中傷の被害が発生する前に取り組んでおく予防策を指します。
新たな誹謗中傷の発生を防ぐとともに、万が一被害が出た際に迅速に動ける社内体制を整えておくことが目的です。事前対策を整えておけば、突発的な炎上が起きても慌てずに初動を進められるでしょう。
詳しくは、「誹謗中傷による被害が発生する前にしておくべき事前対策6つ」の章で解説します。
ここでは、事後対策7つの手順を、発見直後の初動から法的措置まで順番に解説します。
まずは投稿された内容が事実かどうか確認し、リスク評価を進めます。
関係部署や該当店舗、当事者などへの聞き取りを進め、誹謗中傷の内容が事実か否か、誇張・虚偽が混在していないかを調べましょう。該当する事実がなかったり、切り取られ方で誤解が生じていたりするケースも少なくありません。
次に誹謗中傷によって、以下のような観点からどのような影響が生じるか評価をします。
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影響が少ないと判断された場合は、誹謗中傷を無視するのも選択肢のひとつです。
事実確認と並行して、証拠の保存を進めましょう。誹謗中傷の投稿は本人や運営側に削除される可能性があるので、その前に証拠に残す必要があります。
誹謗中傷の投稿をスクリーンショットしたり、モニターに投稿を表示して別の機器で撮影したりして記録しましょう。スクリーンショットなどをする際は、以下の内容がはっきり映るようにします。
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証拠が残っていないと、投稿者への法的措置が難しくなるおそれがあります。
事実確認とリスク評価を並行して進めつつ、適切なタイミングで公式見解を発信することを検討します。企業や組織が沈黙を続けると、「事実を隠しているのではないか」「対応する意思がないのではないか」といった憶測を招き、誹謗中傷や炎上がさらに拡大する場合があります。
発信する場合には、自社サイトや公式SNSなど、発信主体が明確な公式チャネルを用いて、現在の状況を簡潔に伝えましょう。調査に時間を要する場合でも、「現在、事実関係を確認中です」「確認が取れ次第、改めてお知らせします」といった一次コメントを早期に発信することで、誠実な対応姿勢を示すことができます。
発信内容は、確認された事実関係に応じて慎重に使い分ける必要があります。
自社に落ち度や不備が確認された場合には、事実を認めたうえで謝罪をおこない、あわせて原因や今後の改善策・再発防止策を具体的に示すことが信頼回復につながります。一方、内容が事実無根の虚偽情報や悪意あるデマであると判断された場合には、その点を冷静かつ明確に否定し、必要に応じて削除要請や法的措置を検討している旨を毅然とした態度で表明します。
いずれの場合も、感情的・攻撃的な表現は避け、事実と方針のみを簡潔に伝えることが重要です。公式見解はあくまで火消しと信頼維持を目的とし、さらなる対立や拡散を招かないよう慎重に設計しましょう。
証拠を確保したら、サイト運営元へ投稿の削除を依頼しましょう。
多くのプラットフォームには、投稿の削除申請フォームが用意されています。投稿内容の違法性などを根拠に、削除を申請しましょう。
ただし、表現の自由を理由に断られたり、違法性の判断がつきにくいとして削除に応じてもらえなかったりすることも考えられます。
運営側が任意の削除に応じないときは、裁判所への「仮処分」の申立ても検討しましょう。仮処分は、通常の裁判より短期間で結論が出る手続きで、申立てから数ヵ月程度で命令が発令されます。命令が出されれば、サイト管理者は削除に応じるケースがほとんどです。
損害賠償や刑事告訴を進めるには、匿名の投稿者を特定しなくてはなりません。
発信者を特定する方法には、大きく分けて、従来型の「発信者情報開示請求」と、裁判所の非訟手続である「発信者情報開示命令」があります。
従来型の手続きでは、そのためには、以下2種類の開示請求をおこなう必要があります。
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より具体的には、「発信者情報開示請求」や「発信者情報開示命令の申し立て」といった手続きをおこないます。
一方、2022年10月に導入された発信者情報開示命令制度では、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダに対する開示を、一つの裁判手続の中で進めることが可能となっています。
これらの手続きは、時間との勝負です。インターネットサービスプロバイダが記録を保存する期間は3~6ヵ月程度で、保存期間が過ぎれば投稿者の特定が難しくなります。手続きはできるだけ速やかに開始しなくてはなりません。
発信者情報開示請求や発信者情報開示命令の申し立ての手順については、以下記事をご覧ください。
【関連記事】発信者情報開示請求とは?誹謗中傷から自分を守るために知っておきたい基礎知識
悪質性が高く、社会的評価の低下や業務への深刻な影響が生じている書き込みについては、警察への相談や刑事告訴の検討も選択肢となります。
刑事告訴とは、被害者が捜査機関に対し犯罪の事実を申告し、処罰を求める手続きです。名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪であるため、原則として告訴がなければ起訴されません。
企業への誹謗中傷では、主に以下の犯罪が成立するかが問題となります。
| 罪名 | 成立するケース |
|---|---|
| 名誉毀損罪(刑法230条) | 不特定多数が閲覧できる場で事実を示し、企業の社会的評価を低下させた場合 |
| 侮辱罪(刑法231条) | 具体的な事実の摘示を伴わずに、公然と企業や個人を侮辱した場合 |
| 業務妨害罪(刑法233条・234条) | 虚偽の情報を流して企業の信用を傷つけたり、業務の妨げになる行為をしたりした場合 |
告訴状を受理してもらうには、客観的な証拠集めが重要です。被害内容がわかるスクリーンショットや発信者情報を整えて提出しましょう。
なお、刑事手続きは時間を要することや、必ずしも立件されるとは限らない点も踏まえ、削除請求や民事上の対応と併せて、総合的に判断することが重要です。
発信者が特定できた場合、違法な誹謗中傷行為によって被った損害について、民事上の損害賠償請求を検討します。
損害賠償請求では、不法行為(民法709条)に基づき、誹謗中傷と相当因果関係のある損害について補償を求めることができます。相手に請求できる可能性がある主な賠償項目は以下のとおりです。
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なお、売上減少や広告費用については、誹謗中傷との因果関係や金額を具体的な証拠で立証できなければ、裁判で認められない可能性が高い点に注意が必要です。
まずは、内容証明郵便などを用いて相手方に請求をおこない、示談交渉による解決を目指します。示談が成立すれば、訴訟を経ずに比較的短期間かつ低コストで解決できる場合があります。
相手が話し合いに応じない、または請求を拒否する場合には、民事訴訟の提起を検討します。判決や和解調書などの債務名義に基づき損害賠償が認められたにもかかわらず、相手が任意に支払わない場合には、給与や預金などに対する強制執行による回収が可能です。
ここでは、社内ルールの整備からネット上の監視体制まで、取り組んでおきたい事前対策を6つ解説します。
誹謗中傷による被害を最小限に抑えるためには、投稿内容に応じた対応の判断基準を事前に定めておくことが重要です。その場の感情や担当者の主観で判断してしまうと、対応が遅れたり、対応の過不足によって炎上を拡大させたりしてしまうおそれがあります。
あらかじめ、「経過観察とする書き込み」と「即座に対応すべき書き込み」を明確に区別するルールを社内で共有しておきましょう。全てのネガティブな投稿に過剰に反応してしまうと、業務負担が増えるだけでなく、かえって注目を集める結果になりかねません。
一方で、以下のような投稿は放置すると法的・社会的リスクが高まるため、即対応の対象と位置づけておく必要があります。
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これらは、企業の信用毀損や従業員の安全、業務の継続に直接的な影響を及ぼす可能性があるため、速やかな確認・削除要請・公式見解の検討などの初動対応が求められます。
判断基準とあわせて、「誰が発見し、誰が最終判断をおこなうのか」「どの段階で上長や専門部署にエスカレーションするのか」まで決めておくことで、誹謗中傷発生時にも迷いなく対応体制へ移行することができます。
情報漏えいや不適切なSNS投稿を防ぐため、定期的に社員への教育を実施しましょう。
過去には、飲食チェーンでアルバイトの悪ふざけ動画がSNSに投稿され、全国ニュースとなった事例もあります。個人の軽い投稿が、企業全体の信用を揺るがす事態に発展しかねません。
「匿名だからバレない」という思い込みが、不適切な投稿の引き金になるケースもあります。「ネット上の投稿は匿名であっても特定されるリスクがある」点を念入りに伝えましょう。
公式アカウントと従業員の個人アカウントの双方について、運用ルールやガイドラインを策定しておきましょう。
ルールがなければ、投稿の判断が担当者個人に委ねられ、炎上リスクが高まります。
最低限押さえておきたいルールの例は、以下のとおりです。
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あわせて、ガイドラインに「不適切な投稿」の具体例も記載しておきましょう。どこからがNG かの基準が曖昧なままでは、担当者ごとに認識のズレが生じやすくなります。
また、業務と関連する不適切なSNS投稿については、就業規則や懲戒規程と紐づけた対応方針をあらかじめ明記し、従業員に十分周知しておくことが重要です。
誹謗中傷や個人攻撃のリスクを抑えるため、役員や従業員の個人情報は、必要性を十分に検討したうえで慎重に取り扱うことが重要です。一度インターネット上に公開された情報は、拡散や保存を完全に防ぐことが難しく、思わぬ形で悪用される可能性があります。
特に、採用ページや社員ブログなどで私生活に近い情報を発信した場合、誹謗中傷や嫌がらせ、プライバシー侵害といった個人攻撃の標的になるリスクが高まります。公開を控える、または慎重に判断すべき主な情報の例は以下のとおりです。
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採用や広報を目的として社員紹介を掲載する場合でも、本人の明確な同意を得たうえで、公開する情報は業務紹介に必要な範囲にとどめることが望まれます。あわせて、掲載の目的、公開範囲、掲載期間について事前に説明し、本人がいつでも掲載内容の見直しを申し出られる体制を整えておくことも重要です。
法令や社会のルールを守る健全な企業風土づくりも、炎上対策になり得ます。
ハラスメントや残業代未払いなどの問題を放置していると、SNSでの告発や内部通報へとつながりかねません。取引先への対応に問題があるのもリスクです。
炎上リスクを防ぐために、以下のような取り組みを検討しましょう。
| 事項 | 目的 |
|---|---|
| 匿名の内部通報窓口 | 不満や問題点を社内で吸い上げ、SNSや外部への流出を防ぐ |
| 定期的な従業員アンケート | 労務環境や職場の課題を早期に把握し、是正につなげる |
| 経営層からのメッセージ発信 | コンプライアンス重視の姿勢を明確にし、風通しの良い組織文化を醸成する |
これらの仕組みは、問題を「起きてから対応する」のではなく、芽の段階で把握し是正することを目的としています。
自社の労務環境や取引先対応に課題がないか、経営層・管理職・現場それぞれの視点で定期的に棚卸しをおこない、改善を積み重ねることが、結果として炎上や誹謗中傷の起こりにくい組織づくりにつながります。
誹謗中傷や風評被害を早期に発見するため、自社名やブランド名をキーワードに口コミを定期的に検索・監視する体制を整えておくことが重要です。問題となる投稿を早い段階で把握できれば、事実確認や対応方針の検討、削除要請などの初動対応を速やかにおこなうことができ、被害の拡大を抑えやすくなります。
特に以下のような媒体は、定期的なチェック対象として押さえておきましょう。
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なお、全ての投稿が削除対象になるわけではありませんが、早期に発見できれば、拡散前に状況を把握し、適切な対応判断を行える点に大きな意義があります。「誰が」「どの媒体を」「どの頻度で」確認するのかをあらかじめ決め、担当者不在や見落としが発生しないようルール化しておきましょう。
必要に応じて、モニタリングツールや外部サービスの活用も検討すると、負担軽減とチェック精度の向上につながります。
事後対策として投稿者の処罰を求めるには、書き込みが違法といえるかどうかの判断が欠かせません。
企業への誹謗中傷が違法となる根拠には、名誉毀損のほかにも侮辱や業務妨害などがあります。なかでも名誉毀損は問題になりやすいため、ここでは名誉毀損に絞って解説します。
名誉毀損として犯罪が成立するための要件は、以下の4つです。
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ここでは、それぞれ詳しく解説します。
1つ目の要件は、事実を摘示して企業の社会的評価を低下させることです。
名誉毀損罪が成立するためには、「事実を摘示」したことが必要です。
ここでいう「事実」とは、その内容が真実であるか虚偽であるかという意味ではなく、証拠などによって真偽を判断することができる具体的な事柄を指します。
たとえば、「この会社は食品の産地を偽装している」「従業員にサービス残業を強要している」といった投稿は、具体的な事実を述べるものであるため、「事実の摘示」にあたる可能性があります。
これに対し、「最低の会社だ」「ひどい会社だ」といった抽象的な悪口や評価だけでは、具体的な事実を摘示しているとはいえず、名誉毀損罪ではなく侮辱罪が問題となる場合があります。
なお、名誉毀損罪は、摘示された事実が虚偽である場合に限って成立する犯罪ではありません。刑法230条1項は「その事実の有無にかかわらず」と規定しているため、摘示した事実が真実であっても、いったん名誉毀損罪の構成要件に該当する可能性があります。
ただし、真実である場合には、後述する刑法230条の2によって処罰されない場合があります。なお、刑事上の名誉毀損罪が成立するには、具体的な事実の摘示が必要です。一方、民事上は事実の摘示がない「意見・論評」であっても、名誉毀損として責任が認められる場合があります。
2つ目の要件は、書き込みに公然性があることです。
公然性とは、「不特定または多数」の人がその内容を閲覧できる状態を指します。
「不特定」とは、閲覧者の範囲に特段の制限がない状態をいい、「多数」とは、特定少数に限られず、一定数以上の第三者が認識し得る状態を指します。人数の多寡が厳密に定められているわけではなく、拡散される可能性があるかどうかが重視されます。
SNSやレビューサイト、掲示板に書き込まれた内容は、不特定多数が閲覧できる状態に置かれるため、公然性・公表性が認められるケースが多いといえます。
一方で、個人同士のダイレクトメッセージのように閲覧者が限定された場でやり取りされた内容は、公然性・公表性がないと判断されます。もっとも、伝達先を通じて内容が不特定多数に広まる蓋然性がある場合には、公然性が認められることがあります。
たとえば、社内向けメールで共有された内容が、受信者によってSNSなどで社外に拡散されることが予見できる場合には、当初の伝達先が少人数であっても本要件を満たす可能性があります。
3つ目の要件は、投稿者に故意があることです。
故意とは、その内容を投稿すれば、企業の社会的評価が低下する可能性があることを認識しながら、あえて投稿した場合を指します。必ずしも「評価を下げたい」という目的や強い悪意までが必要とされるわけではありません。
なお、刑事上の名誉毀損罪は故意犯であるため、故意がある場合にのみ成立します。一方、民事上の損害賠償責任については、故意だけでなく過失があった場合でも責任を問われる可能性があります。
4つ目の要件は、書き込みについて違法性阻却事由(刑法230条の2)が認められないことです。
以上の要件を満たす投稿であっても、一定の場合には名誉毀損罪として処罰されません。
刑法230条の2第1項は、摘示された事実が、
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という要件を満たす場合には、処罰しないと定めています。
たとえば、企業による法令違反や消費者の安全に関わる問題について、社会に知らせることを目的として、その内容が真実であることを証明できる場合には、企業の社会的評価を低下させる投稿であっても、名誉毀損罪として処罰されない可能性があります。
一方、企業に対する個人的な恨みを晴らすことが主な目的であった場合や、摘示した事実が真実であることを証明できない場合には、刑法230条の2による保護を受けられないことがあります。
適切な手順を踏めば、匿名の投稿者を特定し、損害賠償請求に結びつけることも可能です。
ここでは、実際に裁判所が名誉毀損を認定した裁判例を2つ紹介します。
転職サイトの口コミ掲示板に企業の内部事情に関する書き込みがなされた事案で、投稿内容が名誉毀損に該当する可能性が高いとして、発信者情報の開示が命じられた裁判例です。
本事案では、口コミ欄に「サービス残業を強要されている」「2ヵ月間成果が出ないと解雇される」といった内容の投稿がおこなわれました。
裁判所は、これらの投稿が会社の社会的評価を低下させる内容であると認定しました。
また、原告企業が提出したタイムカードの記録や従業員に対する調査結果、人事評価制度に関する資料などを踏まえ、投稿内容が真実であると認めるに足りないとして、違法性が阻却されない可能性が高いと判断し、権利侵害の明白性を肯定して発信者情報の開示を命じました。
Googleマップの口コミ投稿について名誉毀損の成立が認められ、投稿者に対し200万円の損害賠償と投稿の削除が命じられた裁判例です。
本事案では、兵庫県尼崎市で眼科医院を運営する医療法人に関し、Googleマップの口コミ欄に「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」などの投稿がおこなわれました。
これらの投稿は、患者の承諾を得ることなく医療行為をおこなったかのような印象を与える内容であり、医院の社会的評価を低下させるかどうかが争点となりました。
裁判所は、当該投稿が一般の閲覧者に「患者から適切な承諾を得ることなく、勝手に医療行為をする医院である」との印象を与えると指摘しました。そのうえで、投稿者は、投稿内容が真実であること、または真実であると信じる相当の理由があることを裏付ける客観的証拠を十分に示しておらず、医院の社会的評価を低下させる表現を正当化できるだけの根拠があるとはいえないと判断しました。
その結果、当該投稿は違法性が阻却されない名誉毀損に当たるとして、裁判所は投稿者に対し、200万円の損害賠償の支払いと投稿の削除を命じました。
誹謗中傷を放置すると企業にさまざまなリスクが及ぶので、十分に注意しなくてはなりません。
ここでは、主なリスクを4つ解説します。
企業に関する悪評や誹謗中傷が検索結果の上位に表示されると、新規顧客の獲得や商品の購入につながりにくくなります。
多くの消費者は、商品を購入したりサービスを利用したりする前に、企業名やサービス名で検索し、口コミや評判を確認しています。検索結果や口コミ欄にネガティブな情報が目立つ状態が続けば、企業や商品の信頼性に疑問を持たれ、購買を控えられてしまうおそれがあります。
また、こうしたネガティブな評判がSNSで拡散されると、影響はさらに大きくなります。事実関係が十分に確認されないまま情報が広がり、不買運動や問い合わせの増加、クレーム対応などに追われることで、業績に直接的な打撃を受けるケースもあります。
一度失われた売上や企業イメージ、顧客からの信頼を回復するには、多大なコストと時間がかかる点にも注意が必要です。
求職者が企業の悪評を目にすると、応募や内定の辞退につながります。
求職者の多くは、応募前や面接前に企業の口コミサイトを確認しているでしょう。
企業に関する誹謗中傷や悪評が目立つ状態が続くと、求職者から敬遠され、採用活動が難航するおそれがあります。
多くの求職者は、応募前や面接前に企業名を検索し、OpenWorkや転職会議などの口コミサイトで評判を確認しています。そこで「ブラック企業」「パワハラがある」といった書き込みを目にすると、事実関係の真偽にかかわらず、不安を感じて応募を見送ったり、内定を辞退したりする可能性があります。
その結果、採用にかけた広告費や選考工数が無駄になるだけでなく、必要な人材を確保できない状態が長期化し、慢性的な人手不足や組織運営への支障につながるおそれがあります。
ネット上の悪評は、既存社員の不信感を生み、退職の引き金になります。
自社がネットで叩かれている状況を目にすれば、従業員のモチベーションは下がります。「この会社にいて大丈夫なのか」「キャリアに傷がつくのでは」といった不安が社内に広がっていきます。
とくに会社への愛着が薄い若手層や中途入社組は、こうした空気に敏感です。退職者が増えれば残された社員の業務負担も増え、さらなる離職を招く悪循環に陥りかねません。
問い合わせやクレーム対応に追われ、本来の業務がストップしてしまうリスクもあります。
炎上が起きると、嫌がらせの電話やメールが殺到するケースも見られます。カスタマーサポートや総務の業務は止まり、取引先への連絡にも遅れが生じます。
対応にあたる従業員への精神的な負担も見過ごせません。心ない言葉を浴び続けた担当者がメンタル不調に陥り、休職や退職へつながるリスクもあります。
誹謗中傷を放置すると経営全体に悪影響が及ぶため、早めの対応が欠かせません。
ただし、削除請求や発信者情報開示請求を進めるには法的な専門知識が求められるため、社内の担当者だけで対応するにはハードルが高いです。
そこでおすすめなのが、企業法務が得意な弁護士に相談・依頼することです。ここでは、弁護士に相談・依頼する主なメリットを3つ解説します。
削除請求や発信者情報開示請求、損害賠償請求といった法的手続きを、弁護士が代理人として適切かつ効率的に進めてくれます。
誹謗中傷への法的対応では、「どの投稿が、どの法律に違反しているか」を整理したうえで、客観的な証拠に基づく主張を構築する必要があります。裁判所に提出する申立書や訴状の作成も含め、社内の担当者のみでこれらを進めるのは現実的に大きな負担となります。
弁護士に相談・依頼すれば、投稿内容を法的観点から精査し、削除請求や発信者情報開示といった段階的な対応を判断したうえで進めてもらえます。必要に応じて、裁判所を通じた仮処分などの強制力のある手続きや、損害賠償請求、刑事告訴を含めた対応についても検討・支援を受けることができます。
弁護士に対応窓口を任せることで、総務担当者や経営者が本来の業務に集中できるようになります。
誹謗中傷への対応は、悪意のある書き込みや感情的な主張に日々向き合う必要があり、担当者の精神的な負担が大きくなりがちです。弁護士が代理人となれば、投稿者やサイト運営元とのやり取り、裁判所への書類作成・提出などの対外的な対応を一括して任せることができます。
社内の人員が誹謗中傷対応から切り離されることで、通常業務への影響を抑え、経営判断や本来注力すべき業務に集中できる体制を整えることが可能になります。
誹謗中傷への事後対応だけでなく、トラブルの再発を防ぐための社内体制づくりについても、弁護士に相談・依頼することができます。
たとえば、退職者による悪評が発端となっている場合、労務管理や職場環境に法的なリスクや改善すべき点が潜んでいるケースも少なくありません。弁護士に相談すれば、法務・労務の観点から、就業環境や社内ルールの見直しについて助言を受けることが可能です。
また、SNS運用ルールの策定や就業規則への反映についても、法的に有効で実務に耐えうる形で整備できます。さらに、誹謗中傷が発生した場合の社内対応マニュアルについても、証拠保全の手順や関係部署への報告フローなどを踏まえた内容で作成を支援してもらうことができます。
ここでは、企業の誹謗中傷対策についてのよくある質問をまとめました。
企業の誹謗中傷対策において中心となる法律の一つが、「情報流通プラットフォーム対処法」です。あわせて、名誉毀損などを定める民法や刑法の知識も重要になります。
情報流通プラットフォーム対処法は、旧プロバイダ責任制限法を改正し、2025年4月1日に施行された法律です。インターネット上の誹謗中傷や権利侵害への対応を強化することを目的としています。
主な内容は、以下の3つです。
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大規模特定電気通信役務提供者には、削除申出窓口の整備や削除基準の公表などが義務付けられています。
【参考】インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)|総務省
専門業者への依頼には注意が必要です。
いわゆる誹謗中傷対策業者の中には、検索結果上でネガティブな情報を目立たなくすることを目的として、「逆SEO」と呼ばれる施策を中心におこなう業者も存在します。逆SEOとは、企業に関するポジティブなコンテンツを検索上位に表示させることで、誹謗中傷を含むページの検索順位を下げ、風評被害の抑制を図る方法です。
ただし、逆SEOのなかには著作権やGoogleのガイドラインに抵触する手法も存在します。不適切な施策を実施すると、著作権侵害などのトラブルに巻き込まれるリスクや、Googleからペナルティを受けてサイト評価が下がるリスクがあります。
また、他人に代わって法的な交渉や手続きをおこなうのは、弁護士法72条が禁じる「非弁行為」にあたります。業者には、投稿の削除請求や発信者の特定、損害賠償請求といった法的対応はできません。
弁護士であれば、投稿の削除や発信者の特定、損害賠償請求まで対応できるため、抜本的な解決が目指せます。
匿名で手軽に書き込めるネットの特性と、個人の不満や正義感が結びつくのが主な原因です。
スマートフォンの普及により、不満を感じた顧客や退職者が、感情のままにすぐ投稿できる環境が広がりました。本名を出さずに発信できるため、書き込みへの心理的なハードルが低く、「バレないだろう」という思い込みが誹謗中傷を誘発しています。
また、SNSには「拡散力」と「蓄積性」があります。1回の投稿がリポストやシェアで瞬時に広がり、一度書き込まれた情報は検索エンジンを通じて長期間残り続けます。消費者が衝動的に書き込んだ内容が、翌日には多数の人に閲覧されている状況もみられます。
「企業は叩いても反撃してこない」「匿名であれば特定されない」という誤った認識も、書き込みがエスカレートする原因です。
正当なクレームの範囲を超え、企業の社会的評価や業務に不当に悪影響を与える表現は、誹謗中傷に該当する可能性があります。必ずしも虚偽であることが要件となるわけではありません。
正当なクレームと誹謗中傷の違いは、一般に次のように整理されます。
| 区分 | 具体例 | 性質 |
|---|---|---|
| 正当なクレーム | 「接客態度が悪かった」 「料理が冷めていた」 |
個人の感想や、事実に基づく穏当な指摘 |
| 誹謗中傷 | 「あの会社は食材を偽装している」 「社長が過去に犯罪を犯している」 |
事実の真偽を問わず、社会的評価を不当に低下させる表現 |
誹謗中傷は、ネット掲示板に限らず、Googleマップの口コミやSNSなど、誰でも閲覧可能な媒体で拡散された場合に問題となります。ただし、全ての批判や低評価が誹謗中傷にあたるわけではなく、内容や表現方法、根拠の有無などを踏まえて判断されます。
悪質なケースでは、名誉毀損だけでなく、業務妨害罪や脅迫罪に該当する可能性もあります。判断に迷う投稿を見つけた場合は、誹謗中傷対応に詳しい弁護士に相談することが有効です。
本記事では、誹謗中傷発生時の対応手順や被害を未然に防ぐ事前対策、名誉毀損で違法となる要件について解説しました。
企業の誹謗中傷対策は「事後対策」と「事前対策」の2本柱で進める必要があります。すでに被害が発生している場合は、証拠保存・削除請求・発信者特定・損害賠償請求といった事後対策を迅速に進めましょう。あわせて、社内教育やSNSルールの策定、口コミの定期チェックといった事前対策にも取り組んでおくと、再発防止につながります。
誹謗中傷を放置すれば、企業に多方面で悪影響が及びます。ただし、社内だけで削除請求や開示請求を進めるのは、法的知識の面でもハードルがあります。企業法務が得意な弁護士に早めに相談し、対応を任せるのがおすすめです。
企業法務弁護士ナビでは、企業法務分野が得意な弁護士を地域や相談内容から絞り込めます。初回相談無料の事務所も多数掲載されています。
まずは弁護士に相談して、誹謗中傷対策を適切に進めましょう。
編集部
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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