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2026年10月1日に改正男女雇用機会均等法が施行され、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が、採用活動を行うすべての事業主の義務となりました。対象は応募者だけでなく、就職説明会やインターンシップの参加者、OB・OG訪問で自社の社員を訪ねた学生にまで及び、企業規模による猶予措置もありません。
厚生労働省の調査では、就職活動中にセクハラを受けたと回答した学生が約3割にのぼる一方、過去3年間に企業側で相談を受けたのはわずか0.7%でした。被害が企業に届いていない実態が、今回の義務化の背景にあります。
本記事では、求職者等セクハラ防止措置義務の対象範囲・指針が定める11項目の措置・違反時のリスク・施行後の点検手順を、条文と一次資料に基づいて解説します。
記載内容は2026年10月9日時点の法令・指針・通達・Q&A(2026年9月30日改訂版)に基づいています。条文は、断りのない限り改正後(2026年10月1日施行)の条番号で表記しています。
求職者等セクハラの措置義務は採用活動を行う事業主であれば企業規模を問わず、施行日からすでに適用されています。面談ルールの策定・規程改定・相談窓口の設置など、揃えるべき要素が複数あります。
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男女雇用機会均等法11条1項は、改正前から、事業主に対し「その雇用する労働者」が職場でセクハラを受けることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。求職者は事業主と雇用関係にないため、改正前は措置義務の対象外でした。
改正前のセクハラ指針では、自社が雇用する労働者以外の者に対する言動について、事業主が行うことが「望ましい取組」と位置づけられていました。今回、求職者等セクハラが措置義務に格上げされたことに伴い、整備告示(令和8年厚生労働省告示第53号)により、旧指針の「望ましい取組」から求職者等に対する言動の記載が削除されています。任意の取組から法的義務へ、位置づけが明確に変わったことになります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年12月26日 | 労働政策審議会が建議「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」を取りまとめ |
| 2025年3月11日 | 改正法案を第217回国会に提出(閣法第50号) |
| 2025年5月20日 | 衆議院本会議で修正議決 |
| 2025年6月4日 | 参議院本会議で可決・成立 |
| 2025年6月11日 | 公布(令和7年法律第63号) |
| 2025年12月11日〜2026年1月9日 | 指針案のパブリックコメント(意見5件・案の修正なし) |
| 2026年1月20日 | 労働政策審議会が指針案要綱等を「妥当」と答申 |
| 2026年2月26日 | 施行期日政令(令和8年政令第17号)と指針(同告示第52号)を公布 |
| 2026年4月24日 | 施行通達(雇均発0424第1号・第2号)とQ&Aを発出 |
| 2026年9月30日 | Q&Aを改訂(10月1日から適用) |
| 2026年10月1日 | 施行(措置義務の開始) |
出典: 参議院「第217回国会 議案情報(閣法第50号)」/厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」
今回の改正法は、①ハラスメント対策の強化、②女性活躍の推進、③治療と仕事の両立支援という3つの柱で構成されています。このうちハラスメント対策の強化には、求職者等セクハラの措置義務化に加えて、カスタマーハラスメント対策の義務化(労働施策総合推進法の改正)が含まれます。
施行期日を定める政令(令和8年政令第17号)により、これらはいずれも2026年10月1日施行と定められました。求職者等セクハラとカスハラは対象こそ異なりますが、求められる措置の骨格(方針の明確化・相談体制・事後対応・プライバシー保護)は共通しています。人事部門としては、別々のプロジェクトとして走らせるより、規程改定・窓口設計・研修を一体で設計するほうが実務負荷を抑えられます。
カスハラ対策義務化の詳細は、カスハラ対策の義務化とは?2026年10月施行で企業が講ずべき措置を弁護士が解説で取り上げています。

今回の改正で、男女雇用機会均等法は枝番号のついた条文が整理され、条番号が繰り下がりました。職場のセクハラは11条のまま据え置かれましたが、責務規定(改正前11条の2)は12条へ、マタハラの措置義務(改正前11条の3)は15条へ移動し、新設の求職者等セクハラが13条・14条に入っています。履行確保の規定も、報告徴収・助言指導勧告の29条が35条、企業名公表の30条が36条、過料の33条が39条へと繰り下がりました。
実務で影響が出るのは、ハラスメント防止規程・就業規則・研修教材に条番号を引用している場合です。「均等法11条の3に定めるとおり」と書いた社内文書は、10月1日以降、存在しない条番号を引用していることになります(現在は15条)。旧条番号で「29条」「30条」「33条」を引用している場合は、現在は調停の打切り・時効の完成猶予・省令への委任という別の条文を指しています。施行後の点検の際に、条番号だけでなく「男女雇用機会均等法(職場における妊娠・出産等に関するハラスメント)」のように内容を併記しておくと、次の改正でも修正が最小限で済みます。
厚生労働省の委託調査「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、2020〜2022年度卒業で就職活動またはインターンシップを経験した男女1,000名を対象に、就活等セクハラの経験が調べられています。
| 調査 | 場面 | 経験率 |
|---|---|---|
| 令和5年度調査 | インターンシップ中 | 30.1%(n=758) |
| 令和5年度調査 | インターンシップ以外の就職活動中 | 31.9%(n=737) |
| 令和2年度調査 | 就職活動・インターンシップ全体 | 25.5%(n=1,000) |
出典: 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(令和6年3月)/同「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書(概要版)」(令和3年3月)
令和2年度調査と令和5年度調査では設問の構造が異なるため、単純な比較はできません。厚生労働省は令和2年度調査の結果を「約4人に1人」、令和5年度調査の結果を「約3人に1人」と表現しています。
男女別では、インターンシップ中が男性32.4%・女性27.5%、インターンシップ以外の就職活動中が男性34.3%・女性28.8%と、いずれも男性の経験率のほうが高い結果となっています。就活セクハラを女性のみの問題として捉えると、対策の射程を誤るおそれがあります。指針も、同性に対する言動を含み、被害者の性的指向やジェンダーアイデンティティを問わないことを明記しています。
受けた内容として多いのは「性的な冗談やからかい」38.2%、「食事やデートへの執拗な誘い」35.1%、「不必要な身体への接触」27.2%です(インターンシップ中に被害を受けた人・n=228・複数回答)。行為者と場面には、次のような偏りがあります。
| 場面 | 行為者(上位2つ・複数回答) |
|---|---|
| インターンシップ中 | インターンシップ先で知り合った従業員 47.4%/インターン先での上司・指導役(役員以外)32.0% |
| インターンシップ以外の就職活動中 | 大学のOB・OG訪問を通して知り合った従業員 38.3%/学校・研究室等へ訪問した従業員、リクルーター 37.0% |
出典: 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」27頁
被害を受けた場面としては、インターンシップ以外の就職活動では「リクルーターと会ったとき」32.8%が最も高く、次いで「内々定を受けた後」26.0%となっています。正式な採用面接の場よりも、面接以外の一対一の接点で被害が起きているという構造が読み取れます。人事部門の管理が届きにくい場面ほどリスクが高いということであり、これが今回の指針が「面談のルールをあらかじめ定めて周知すること」を求めている理由でもあります。
同じ調査の企業調査(従業員30人以上の企業・団体7,780社が回答)では、過去3年間に就活等セクハラの相談があったと回答した企業は0.7%にとどまります。パワハラ64.2%、職場のセクハラ39.5%と比べて際立って低い数字です。
被害を受けた学生の側では、その後「何もしなかった」がインターンシップ中16.2%、それ以外12.3%。何もしなかった理由として最も多いのは「何をしても解決にならないと思ったから」(インターンシップ中48.6%)でした。心身への影響としては「就職活動に対する意欲が減退した」がインターンシップ中34.6%、それ以外40.0%と最多です。
学生の3割が被害を訴える一方で企業への相談は0.7%という差は、被害が起きていないのではなく、企業に届いていないことを示しています。「当社では相談が来ていないから問題ない」という認識は、実態と乖離している可能性があります。
対策の状況を見ると、就活等セクハラの予防・解決のための取組を実施している企業は52.4%で、6類型のハラスメントのうち最も低い水準でした(職場のセクハラは92.7%)。具体的な取組を尋ねた設問では「特にない」が53.0%で最多となり、従業員1,000人以上の企業でも42.1%が「特にない」と回答しています。
他方、日本経済団体連合会が会員企業を対象に実施したアンケート(2025年1月公表・回答222社)では、就活等ハラスメント対策を「取りまとめて実施している」が48.2%、「検討している」が11.7%でした。実施している取組の内訳は、「リクルーターや採用担当者等を対象とする面談時等のルールの策定」73.6%が最多で、「研修の実施」69.1%、「ハラスメント行為者に対する処罰の明確化」45.5%と続きます。
出典: 日本経済団体連合会「ハラスメント防止対策に関するアンケート調査結果」(2025年1月21日)

相談件数0.7%という数字を「自社にリスクがない証拠」と読まないことが大切です。選考中の学生は不利益を恐れて申し出ませんし、そもそも企業に窓口があること自体を知りません。義務化後は、窓口を設けたうえで求職者本人にその存在を周知することまでが措置の内容に含まれます。
体制を整えた直後は相談件数が増えるのが自然です。件数の増加は制度が機能し始めた兆候であって、対策の失敗ではありません。ここを経営層に事前に説明しておかないと、最初の1件が出た段階で「窓口を作ったせいで問題が起きた」という受け止めになり、現場が相談を握り潰す方向に働いてしまいます。
改正後の男女雇用機会均等法13条1項は、措置義務の対象を「求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの」と定めています。この「その他これに類する者」は、均等法施行規則に新設された2条の3で、求職者以外の者であって次に掲げる者と定められました。
施行通達によれば、「求職者」とは、当該事業主に雇用されようとしてその意思を表示している者を指し、募集に応じた者や採用面接を受ける者が該当します。新卒採用に限られず、中途採用の応募者も含まれます。
| 区分 | 具体例 | 措置義務の対象 |
|---|---|---|
| 求職者 | 求人に応募した人、採用面接を受けている人(新卒・中途を問わない) | 対象 |
| 採用に資する活動の参加者 | 就職説明会・企業セミナーの参加者、インターンシップ参加者、OB・OG訪問で自社の従業員を訪ねた学生 | 対象 |
| 実習を受ける者 | 教育実習生、看護実習生 | 対象 |
| 専ら教育目的の参加者 | 授業の一環としての社会科見学の参加者、企業を招いた学内講演会の聴講者 | 対象外 |
出典: 厚生労働省「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」(令和8年4月24日 雇均発0424第1号)に基づき作成
採用内定者の扱いは、労働契約が成立しているかどうかで変わります。最高裁は、採用内定通知と誓約書の提出により始期付きで解約権を留保した労働契約が成立したと判断しています(大日本印刷事件・最判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁)。施行通達も、この判断枠組みを前提に、労働契約が成立したと認められる場合の内定者は「労働者」として、職場のセクハラに関する11条1項の措置義務および同条2項の不利益取扱い禁止の対象になるとしています。この場合、内定取消しは「不利益な取扱い」に含まれます。
労働契約の成立が認められない段階であれば、13条に基づく求職者等セクハラの措置の対象です。いずれにせよ、内定通知の前後どちらであっても企業の措置は及ぶことになります。内定式・内定者懇親会・内定者向けSNSグループでのやり取りも、いずれかの枠組みで射程に入ると考えられます。
もう一つ実務で判断に迷うのが、最終面接を担当することの多い役員の扱いです。13条1項が対象とするのは「当該事業主が雇用する労働者による」性的な言動であるため、雇用契約に基づかない取締役等は、条文上の行為者の範囲から外れる可能性があります。もっとも、役員の行為による被害は、会社法上の責任や企業のレピュテーションの問題として企業自身に跳ね返ります。改正後14条3項も、法人の役員自身が求職者等に対する言動に注意を払う努力義務を負うと定めています。防止方針の適用対象には役員を含めて設計するのが実務的です。
指針は、求職活動等の例として次の場面を挙げています。
これらは対面の場面に限られません。指針は、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれることを明記しています。面談後に個人のアカウントから学生へ連絡を取るような行為も、当然に射程に入ります。
「求職活動等」に当たるかどうかは、労働者の職務との関連性、求職活動等との関連性、労働者と求職者等との関係性、参加者、参加や対応が強制的か任意かなどを考慮して個別に判断されます(厚生労働省Q&A 問30)。たとえば求職活動の開始前から部活動などの私的な活動で面識があったか、といった観点も考慮されうるとされています。もっとも、会社が主催していない個人的なつてやアプリ経由のOB・OG訪問であっても、行為者が自社の従業員である以上は対象になりうるため、会社が把握できない経路こそ事前のルール設定で管理しておくのが安全です。
労働者派遣法47条の2は、派遣先を「派遣労働者を雇用する事業主」とみなして、男女雇用機会均等法の一定の規定を適用しています。今回の改正で、このみなし適用の対象に求職者等セクハラの措置義務(改正後13条1項)と事業主の責務(同14条2項)が追加されました。条文中の「雇用管理上」は「雇用管理上及び指揮命令上」と読み替えられます。採用アシスタント業務や説明会の運営を派遣スタッフが担っている企業では、派遣先として自社が措置を講じる立場になるため、研修やルール周知の対象から漏らさないよう注意が必要です。
一方、業務委託の相手方として検討している個人事業主は、労働者として雇用されようとする人ではないため、求職者等セクハラの措置義務の対象には含まれません。ただしフリーランスに対するハラスメント対策は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)14条により、2024年11月1日から既に体制整備の義務が課されています。どちらの枠組みで対応するかを整理したうえで、窓口や規程の適用範囲を決めておく必要があります。
報道等では「就活ハラスメント対策の義務化」とまとめて語られることがありますが、今回措置義務となったのはセクシュアルハラスメントに限られます。整理すると次のとおりです。
| 区分 | 行為の例 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 措置義務 | 求職者等に対する性的な言動 | 改正後 男女雇用機会均等法13条1項(義務) |
| 望ましい取組 | 就活生へのパワハラ的言動、性的指向・性自認に関する侮辱的言動やアウティング | 求職者等セクハラ防止指針6・パワハラ指針6(努力・配慮)※項番はいずれも2026年10月1日改正後のもの |
| 枠外だが責任は生じうる | 内定と引き換えに就職活動の終了を迫る行為(オワハラ)、長時間の拘束 | 政府要請の対象。態様により民法709条の不法行為となりうる |
政府は毎年、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省の連名で経済団体等に対し、採用選考時のハラスメント防止を要請しています。2027年度卒業予定者に関する要請(2026年3月24日付)では、改正均等法の施行を踏まえた雇用管理上の措置の実施と、必要に応じた教育機関の相談窓口との連携が明記されました。
出典: 内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」/厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
実務上の注意点として、相談窓口の受付範囲を性的な言動だけに限定しないことをおすすめします。学生からの申告が「圧迫面接だった」「内定辞退を認めてもらえない」という内容だった場合に受け付けられないと、窓口としての信用を失います。窓口は就活ハラスメント全般で受けたうえで、内部の処理を義務対象かどうかで分ける設計のほうが現実的です。
事業主が講ずべき措置の具体的な内容は、「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)が定めています。施行通達は、これらの措置を企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものと位置づけており、中小企業に対する猶予期間はありません。
| 柱 | 講ずべき措置(計11項目) |
|---|---|
| (1) 方針等の明確化と周知・啓発 | ① 求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する ② 行為者に厳正に対処する方針と対処の内容を就業規則等に定め、周知・啓発する ③ 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発する |
| (2) 相談体制の整備 | ④ 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する ⑤ 相談窓口の担当者が内容や状況に応じ適切に対応できるようにする |
| (3) 事後の迅速かつ適切な対応 | ⑥ 事実関係を迅速かつ正確に確認する ⑦ 被害を受けた求職者等に対する配慮の措置を講じる ⑧ 行為者に対する措置を適正に行う ⑨ 再発防止に向けた措置を講じる |
| (4) 併せて講ずべき措置 | ⑩ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知する ⑪ 相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する |
出典: 「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)
まず、求職者等に対するセクハラを行ってはならないという方針を明確にし、その内容を労働者に周知・啓発することが求められます。あわせて、行為者に対して厳正に対処する方針と対処の内容を、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、周知・啓発する必要があります。
既存の就業規則に職場のセクハラに関する懲戒規定がある企業でも、その適用対象が「他の労働者に対する行為」に限定されていないかを確認しておくことをおすすめします。求職者への行為が懲戒事由として読み込めない条文になっていると、いざ処分をする際に根拠を欠くことになりかねません。
相談窓口をあらかじめ定め、その存在を求職者等に周知することが求められます。従業員向けのイントラネットにだけ窓口を掲載しても、求職者はアクセスできません。採用サイトや募集要項、説明会の資料など、求職者の目に触れる場所に記載する必要があります。
指針は、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられるとしています。選考の合否を握る人事担当者が窓口を兼ねていると、学生が「相談すれば落とされるのではないか」と感じ、相談をためらう可能性があるためです。外部の法律事務所や専門機関へ委託する方法もあります。
また、セクハラに該当するかどうかの判断が微妙な場合であっても、広く相談に対応することが求められています。窓口の入口で選別しない運用にしておくことが重要です。
相談の申出があった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた求職者等への配慮の措置と、行為者に対する措置を適正に行い、再発防止に向けた措置を講じることが求められます。
職場のセクハラと異なり、被害者が自社の従業員ではないため、被害者側の状況を把握しにくいという難しさがあります。事実確認が困難な場合には、男女雇用機会均等法に基づく調停など第三者機関の紛争解決制度を利用する方法も指針に示されています。
ただし、均等法24条1項は労働者の募集および採用についての紛争を調停の対象から除外しており、施行通達(雇均発0424第1号 第6)も、求職活動等におけるセクハラに係る紛争について求職者等は同様に除かれるとしています。指針は調停に言及していますが、求職者本人が調停を申請することはできない点に注意してください(求職者等が調停の参考人として出頭を求められることはあります。厚生労働省Q&A 問43)。
相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を周知すること、そして相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発することが求められます。
ここで、条文の建て付けを正確に押さえておく必要があります。改正後の男女雇用機会均等法13条2項は、次のように定めています。
事業主は、労働者が事業主による求職者等からの前項の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
職場のセクハラに関する11条2項が「労働者が前項の相談を行つたこと又は……協力した際に事実を述べたことを理由として」と定めているのに対し、13条2項には「相談を行つたこと」という文言がありません。求職者等セクハラでは相談を行うのが自社の労働者ではなく求職者であるためで、13条2項が直接保護しているのは、相談への対応に協力して事実を述べた自社の労働者ということになります。条文上、求職者本人への不利益取扱いを直接禁じる規定は置かれていません。
ただし、これは求職者に不利益な扱いをしてよいという意味ではありません。相談したことを理由に選考で不利に扱えば、指針が求める「事後の迅速かつ適切な対応」や「不利益な取扱いをされない旨の周知」を欠くものとして措置義務違反と評価されうるほか、民事上は不法行為責任(民法709条)を負う可能性があります。また、労働契約が成立していると認められる採用内定者は「労働者」にあたり、内定取消しは11条2項の不利益取扱いの問題となります。条文が誰を保護しているかという議論と、実務として何をしてはいけないかは別です。
今回の指針で特徴的なのが、(1)③の「求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発すること」です。指針は、そのルールの例として次を挙げています。
さらに、求職者等に対しては、このルールを踏まえた面談等に関する留意事項を、ホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知することが挙げられています。
職場のセクハラ対策やパワハラ対策では、方針・窓口・事後対応が中心で、「接触の仕方そのものをあらかじめ設計する」という発想は前面に出ていませんでした。前述の実態調査で、被害の多くが正式な面接以外の一対一の接点で起きていることを踏まえると、この面談ルールの設計が実務上の中心的な作業になります。

面談ルールを作るとき、厳しくしすぎて採用活動が回らなくなる例と、緩すぎて実効性がない例の両方を見てきました。判断の軸は「そのルールが守られなかったときに、会社として処分できる書き方になっているか」です。「〜が望ましい」という努力目標の書き方だと、違反があっても懲戒の根拠になりません。
もう一点、ルールは公表した瞬間から会社自身を拘束します。「面談は必ず複数名で実施します」と掲げたなら、繁忙期でも守れる体制が必要です。守れない可能性がある項目は、最初から現実的な水準で書いておくほうが、対外的な信頼を損ないません。裏を返せば、ルールを公表している企業でルール違反の接触が起きた場合、その社員の行為は「会社の定めに反する行為」として懲戒処分の判断がしやすくなります。求職者の保護と、企業側の処分の根拠づけを同時に果たす仕組みだと理解しておくとよいでしょう。
| 層 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 行政 | 報告徴収・助言・指導・勧告 → 勧告に従わない場合の企業名公表 | 改正後 男女雇用機会均等法 35条・36条 |
| 行政(求人) | 公表された場合、違反が是正されていない間や是正から6か月以内は、ハローワーク・職業紹介事業者が求人を受理しないことがある | 職業安定法 5条の6第1項3号、同法施行令1条、同法施行規則4条の5 |
| 行政(過料) | 報告をせず、または虚偽の報告をした場合に20万円以下の過料 | 改正後 男女雇用機会均等法 39条 |
| 民事 | 被害者からの損害賠償請求(行為者の不法行為責任、企業の使用者責任等) | 民法709条・715条等 |
| 事実上 | 報道・SNSでの拡散による採用ブランドの毀損、応募者数の減少 | — |
改正後の男女雇用機会均等法35条1項は、厚生労働大臣が法律の施行に関し必要があると認めるときに、事業主に対して報告を求め、または助言・指導・勧告をすることができると定めています。この権限の一部は都道府県労働局長に委任されています。
そのうえで36条は、勧告を受けた事業主がこれに従わなかった場合に、その旨を公表することができると定めています。この公表の対象となる違反類型に、求職者等セクハラの措置義務(13条1項)と不利益取扱いの禁止(同条2項)が明記されています。新卒採用を継続的に行う企業にとって、採用に関する法令違反で社名が公表される影響は小さくないと考えられます。
さらに、2026年10月1日施行の職業安定法施行令の改正により、求職者等セクハラの措置義務違反(13条1項・2項)で公表された事業主は、ハローワークや職業紹介事業者が求人の申込みを受理しないことができる対象に加わりました。違反が是正されていない間や、是正から6か月を経過していない間が対象です。採用活動そのものに直接響くリスクとして押さえておく必要があります。
改正後39条は、35条1項の規定による報告をせず、または虚偽の報告をした者を20万円以下の過料に処すると定めています。
この過料は、措置義務に違反したこと自体に対する制裁ではなく、労働局の報告徴収に応じなかった場合の制裁です。「措置を講じていなければ20万円の過料」と説明されることがありますが、条文の建て付けは異なります。
そのうえで、措置義務に違反したこと自体に対する刑事罰(拘禁刑・罰金刑)は設けられていません。ただし、罰則がないことは、対応が不要であることを意味しません。民事上は、行為者本人の不法行為責任(民法709条)に加え、事業の執行についてなされた行為として企業が使用者責任(民法715条)を問われる可能性があります。さらに、企業が防止措置を怠っていた事情は、企業自身の責任を基礎づける方向に働きうるものです。措置義務が法律上明記されたことで、「何もしていなかった」という事実が争点として持ち出されやすくなる点は、実務上の変化として押さえておく必要があります。
就職活動中の学生は、SNSや口コミサイトで情報を共有しています。個別の事案が可視化されやすく、いったん広がると、その年度だけでなく後続の年度の採用にも影響が及ぶおそれがあります。実態調査でも、被害を受けた学生の心身への影響として「就職活動に対する意欲が減退した」が最多となっており、企業側の一つの言動が個人の職業選択に与える影響は小さくありません。

民事の場面で企業の責任が問題になったとき、裁判所は「会社としてどのような体制を整え、どう運用していたか」を具体的に見ます。方針を定めていたか、面談のルールがあったか、研修を実施していたか、相談を受けてから何日で動いたか。こうした事実の積み上げが、企業側の主張を支えます。
逆に言えば、記録が残っていない対応は、していないのと同じに扱われかねません。相談受付日、事実確認の実施日、対応の内容と決裁者を、定型のフォーマットで残す運用を今のうちに作っておくことをおすすめします。義務化への対応と、将来の紛争への備えは、同じ作業で両立できます。
求職者からの申告は、被害者が自社の従業員ではないため、事実確認も配慮措置も通常のハラスメント対応とは勝手が違います。初動を誤ると、行為者への処分の根拠が揺らぎ、民事上の主張も組み立てにくくなります。
労務問題に対応する弁護士と対応フローと記録様式を先に固めておけば、実際に申告があったときの判断が速くなります。
求職者等セクハラとカスハラは同じ2026年10月1日に施行されました。どちらも「方針の明確化」「相談体制」「事後対応」「プライバシー保護」という骨格を共有しているため、点検も整備も一体で進めると重複作業を減らせます。措置義務は「講じている」ことが要件であり、規程を作っただけでは足りず、指針が定める相手(労働者・求職者等)への周知・啓発と、相談に実際に対応できる体制の整備までそろって、初めて措置を講じた状態になる点に注意してください。
STEP 1では、後述の採用接点の棚卸しとあわせて、指針の11項目のうち何が済んでいて何が残っているかを一覧にします。STEP 2は、就業規則の改定を待たずに着手できる部分です。求職者等へのセクハラを行ってはならない旨の方針を社内に通知し、面談ルールと相談窓口を採用サイト・募集要項・案内メールなど求職者が目にする経路に掲載します。ただし、行為者への対処方針と対処の内容は、就業規則その他の服務規律を定めた文書への規定が別途必要です。
STEP 3の意見聴取・届出は、就業規則そのものを改定する場合に必要になる手続で、時間がかかります。施行日を過ぎているからといって省略はできないため、STEP 2と並行して早めに着手し、STEP 4の周知と研修までを一続きで完了させます。
常時10人以上の労働者を使用する事業場で就業規則を変更する場合は、労働基準法上の過半数代表者からの意見聴取(90条)および所轄労働基準監督署への届出(89条)、そして労働者への周知(106条)が必要です。届出だけでは足りず、周知して初めて効力の前提が整う点に注意してください。施行日を過ぎていても手続は省略できないため、必要な期間を見込んで計画を立てる必要があります。
最初の作業は、自社と求職者が接触する場面をすべて洗い出すことです。採用面接、会社説明会、インターンシップ、OB・OG訪問、リクルーター面談、内定者フォロー、採用代行や人材紹介会社を経由した接触など、想定より多くの接点があるのが通常です。棚卸しの単位で「誰が対応するか」「どこで行うか」「記録は残るか」を並べると、ルールを作るべき箇所が見えてきます。
指針が例示する「面談時間および場所の指定」「実施体制」「やり取りに用いるSNSの種類の指定」を具体化すると、次のような論点になります。以下は検討すべき項目の一例で、業種・採用規模・オンライン比率によって適切な水準は異なります。
| 項目 | 検討すべき内容 |
|---|---|
| 場所 | 面談を行える場所を、自社の会議室・大学構内のオープンスペース・オンラインなどに限定するか。個室や飲食店での実施をどう扱うか |
| 時間帯 | 実施できる時間帯(例: 平日の就業時間内)を定めるか。1回あたりの上限時間を設けるか |
| 人数・体制 | 一対一を認めるか、複数名での対応を原則とするか。オンラインの場合の録画・記録の扱い |
| 連絡手段 | 学生との連絡を会社のメールアドレス・採用管理システムに限定するか。個人のSNSアカウントでの連絡をどう扱うか |
| 飲食・酒席 | 懇親会や食事を伴う場を設けるか。設ける場合の飲酒の可否と参加者の範囲 |
| 内定者フェーズ | 内定式・内定者懇親会での飲酒、内定者向けSNSグループでの私的な接触をどう扱うか |
| 違反時の扱い | ルールに反した接触が判明した場合の報告経路と、懲戒規定との関係 |
実態調査で行為者として最も多かったのは、OB・OG訪問を通して知り合った従業員(38.3%)と、学校・研究室等へ訪問した従業員やリクルーター(37.0%)でした。被害場面としても「リクルーターと会ったとき」が32.8%で最多です。面接や説明会よりも、この経路の設計が効果を左右します。検討すべき論点は次のとおりです。
いずれも採用活動のしやすさとのバランスがあります。すべてを一律に禁止するのではなく、リスクの高い組み合わせ(社外・夜間・一対一・飲酒)に絞って制限し、それ以外は届出制にするといった設計が現実的です。
就業規則または社内規程に、求職者等に対するセクハラを禁止する条項と、違反した場合の対処を定めます。次は条項の骨格の一例です。
(求職者等に対するセクシュアルハラスメントの禁止)
第○条 従業員は、当社の求人に応募した者、会社説明会・インターンシップその他当社が実施する採用に資する活動に参加する者、実習生および当社の従業員を訪問した学生(以下「求職者等」という)に対し、性的な言動により当該求職者等の求職活動等を阻害する行為を行ってはならない。
2 前項の言動には、対面によるもののほか、電子メール、ソーシャル・ネットワーキング・サービスその他の情報通信手段を用いて行われるものを含む。
3 従業員は、求職者等との面談等にあたり、会社が別に定める求職活動等に関するルールを遵守しなければならない。
4 第1項または前項に違反した従業員に対しては、第○条(懲戒)の定めるところにより懲戒処分を行うことがある。
上記は一般的な参考例であり、個別の事案への適合を保証するものではありません。特に第4項が参照する懲戒事由の書きぶり、処分の相当性、手続の適正は、既存の就業規則の構成や過去の運用によって判断が変わる部分で、事故が最も起きやすい箇所です。改定にあたっては弁護士に確認することをおすすめします。
求職者は社内イントラネットにアクセスできません。したがって、周知の経路は労働者向けとは完全に別に設計する必要があります。ここが実装の難所であり、指針が求める「求職者等への周知」の核心でもあります。
| 経路 | 掲載する内容と留意点 |
|---|---|
| 採用サイトの固定ページ | 面談ルールと相談窓口の全文。更新オーナーは広報または採用担当 |
| 募集要項・求人媒体 | 要点と参照先URL。媒体側の入力欄に文字数制限がある場合が多い |
| エントリー完了メール | 定型文に窓口の連絡先を追加。採用管理システムのテンプレート修正が必要 |
| 面接・説明会の案内メール | 面談の場所・時間帯・連絡手段のルールを明記 |
| インターン・実習の初日案内 | 受入部署からのアナウンスと配付資料 |
| OB・OG訪問の受付時 | 申込受理の返信に留意事項と窓口を記載 |
なお、応募者だけが閲覧できるマイページに掲載した場合、周知・啓発を行ったといえるのは求職者等の全員が閲覧できる場合に限られます(厚生労働省Q&A 問39)。採用サイトの誰でも見られるページを軸に、複数の経路で周知しておくのが確実です。
経路ごとに更新のオーナーが分かれる点に注意が必要です。採用サイトは広報、募集要項は媒体担当、案内メールのテンプレートは採用管理システムの管理者というように担当が異なると、どこかが漏れます。誰が何を直すかの分担を決め、掲載漏れがないかを経路ごとに確認することをおすすめします。掲載文の一例は次のとおりです。
採用選考におけるハラスメント防止の取り組みについて
当社は、採用選考・会社説明会・インターンシップ・当社社員への訪問等の場面において、応募者のみなさまが安心して選考に臨めるよう、以下の取り組みを行っています。
・当社社員との面談は、当社の会議室またはオンラインで、就業時間内に実施します。
・みなさまへのご連絡は、当社の採用担当窓口(採用管理システムおよび当社ドメインのメールアドレス)から行います。社員個人のSNSアカウント等から選考に関する連絡を行うことはありません。
・上記と異なる方法での連絡や、選考と関係のない私的な誘いを受けた場合は、下記の相談窓口までご連絡ください。ご相談の内容によって選考上不利益な取り扱いを受けることはありません。
【相談窓口】○○(連絡先・受付方法)
窓口を設計する際の主な選択肢は、社内窓口、外部委託窓口、既存のハラスメント窓口の拡張の3つです。求職者が利用することを前提に、次の点を確認しておくと運用のずれが起きにくくなります。
あわせて押さえておきたいのが、学生本人ではなく大学のキャリアセンター等から情報提供を受けるルートです。指針は、教育機関が設置する相談窓口から情報提供があった場合の連携に言及しており、政府の要請文書にも同様の記載があります。学生が企業に直接申し出るより、大学に相談するほうが心理的なハードルが低いことを考えると、実際にはこの経路のほうが多くなる可能性もあります。
この場合、①大学からの連絡を誰が受けるか、②学生本人の同意なく氏名等が伝えられた場合にどう扱うか、③本人に接触せずに事実確認をどこまで進めるか、という3点をあらかじめ決めておくと、受け取った側が動けなくなる事態を避けられます。
研修の対象を人事部門だけに限定すると、実態調査で行為者として最も多かったOB・OG訪問の対応者やリクルーターが抜け落ちます。学生と接する可能性のある社員を広く対象に含めることが必要です。派遣スタッフが採用業務を担っている場合は、派遣先として自社が措置を講じる立場になります。
研修の対象に含めるべき社員
労働局から報告を求められた場合(改正後35条1項)に、何をもって「措置を講じた」と示すのかも考えておく必要があります。次のような記録が残っていれば、説明の材料になります。
報告を求められたときに示せるよう揃えておきたい証跡
規程改定には意見聴取・届出・周知という手続が必要で、着手から完了までに一定の期間がかかります。何から手を付けるかを誤ると、未対応の状態が長引くことになります。
企業法務弁護士ナビでは、就業規則・社内規程の整備に対応できる弁護士を地域や条件で検索できます。自社の採用フローに合わせた条文案の確認から相談できます。
実際に求職者から申告があった場合の流れは、次のように整理できます。被害者が自社の従業員でないため、通常のハラスメント対応と異なる配慮が必要になります。
STEP 1 相談の受付と初期記録
受付日時・申告内容・申告者の連絡先と、選考への影響がない旨を伝えたことを記録します。この時点で事実認定をせず、まず受け止めることが重要です。
STEP 2 事実関係の確認
申告者・行為者とされる社員の双方から事情を聴取します。メール、採用管理システムの履歴、SNSのやり取り、入退館記録など客観的な資料を早い段階で保全します。申告者は自社の従業員ではないため、聴取への協力は任意である点に配慮が必要です。
STEP 3 被害を受けた求職者への配慮
選考を継続する場合の担当者の変更、面談方法の変更など、申告者の意向を確認しながら措置を検討します。選考結果に影響が及ばないことを明示します。
STEP 4 行為者への措置
確認した事実と就業規則の懲戒事由を照らし、処分の要否と程度を判断します。事実関係の確認が困難な場合は、男女雇用機会均等法に基づく調停など第三者機関の利用も選択肢になります。
STEP 5 再発防止
同種事案の発生原因(面談ルールの不備、周知不足、特定の場面への集中など)を特定し、ルールと研修に反映します。個別事案の内容が特定されない形で、全社に注意喚起を行います。
事実確認や処分の判断は、プライバシー保護と表裏の関係にあります。関係者の氏名や事案の詳細が社内で共有されすぎると、別の権利侵害を招きかねません。誰がどこまでの情報にアクセスできるかを、あらかじめ決めておくことをおすすめします。
専任の人事・法務担当者がいない企業でも、措置義務は同じように適用されます。施行日を過ぎてもまだ対応が済んでいない場合に、限られたリソースで優先すべきなのは次の3点です。
この3点は、いずれも大きな費用をかけずに着手できます。そのうえで、研修の実施、記録様式の整備、外部窓口の活用へと段階的に広げていく進め方が現実的です。
対象になります。施行通達は、指針が定める措置について企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないとしており、中小企業向けの猶予期間は設けられていません。労働者を雇用し、採用活動を行うすべての事業主が対象です。
採用活動を行っている事業主は、2026年10月1日以降、指針が定める措置を講じていなければ措置義務を満たしていないことになります。措置義務違反そのものに刑事罰はありませんが、都道府県労働局による報告徴収や助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表されることがあります。未対応の項目がある場合は、方針の周知と相談窓口の掲載など就業規則の改定を待たずにできる措置から着手し、規程の改定手続も並行して進めることをおすすめします。
対象になります。採用内定により労働契約が成立したと認められる場合は「労働者」として職場のセクハラに関する規定(改正後11条)の対象となり、成立が認められない段階では求職者等セクハラ(同13条)の対象です。内定者懇親会やフォロー面談も、いずれかの枠組みで措置の射程に入ると考えられます。
兼用は可能です。ただし、求職者等が利用できることが分かる形で周知する必要があります。従業員向けの掲示だけでは求職者には届かないため、採用サイトや募集要項への記載が欠かせません。指針は、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられるとしています。
対象になりうると考えられます。「求職活動等」に当たるかどうかは、労働者の職務との関連性、求職活動等との関連性、当事者の関係性、参加が任意か強制かなどを考慮して個別に判断されます(厚生労働省Q&A 問30)。会社が主催していない訪問であっても、行為者が自社の従業員である以上は対象になりうるため、申込経路の一本化や連絡手段の限定といった事前のルール設定が重要になります。
今回措置義務となったのはセクシュアルハラスメントのみです。就職活動中の学生に対するパワハラやオワハラは、指針上の「望ましい取組」および政府の要請にとどまり、法律上の措置義務にはなっていません。もっとも、態様によっては民事上の責任が生じうるほか、相談窓口の受付範囲を性的な言動に限定すると窓口としての信用を損なうため、実務上は就活ハラスメント全般で受ける設計をおすすめします。
措置義務違反そのものに対する刑事罰はありません。行政上は報告徴収・助言・指導・勧告があり、勧告に従わない場合には企業名が公表されることがあります。20万円以下の過料も定められていますが、これは措置義務違反への制裁ではなく、報告をせず、または虚偽の報告をした場合の制裁です。このほか、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
労働者派遣法47条の2により派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、求職者等セクハラの措置義務が適用されます。この場合「雇用管理上」は「雇用管理上及び指揮命令上」と読み替えられます。研修や面談ルールの周知の対象に、採用業務に関わる派遣スタッフを含める必要があります。
2026年10月1日、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は、「望ましい取組」から「法的義務」へと変わりました。対象は求人への応募者にとどまらず、説明会やインターンシップの参加者、OB・OG訪問で自社の社員を訪ねた学生にまで及び、企業規模による猶予もありません。
実態調査が示すのは、被害の多くが正式な面接ではなく一対一の接点で起きており、しかもその大半が企業に届いていないという構造です。今回の指針が面談ルールの事前明確化と求職者への周知を求めているのは、この構造に手を入れるためだと考えられます。
施行後に確認したい最低限のアクション
「当社にはこれまで相談が来ていない」という状況は、リスクがないことの証明にはなりません。施行を機に、自社の採用プロセスのどこで求職者と接点があるのかをあらためて洗い出し、そこにルールと窓口を用意しておくことが、学生を守ると同時に企業自身を守ることにつながります。
就業規則・社内規程の改定、面談ルールの設計、実際に申告があった場合の対応方針については、企業法務に注力する弁護士にご相談ください。
求職者等セクハラへの対応は、規程整備・面談ルールの設計・懲戒処分の判断・紛争化した場合の対応まで法的論点が広範囲に及びます。同日施行のカスハラ対策と重なるため、社内リソースだけで進めると手が回らないこともあります。
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