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クリニックを経営していると、患者からのクレーム、従業員との労使紛争、医薬品業者との契約トラブルなど、さまざまな法的トラブルに巻き込まれるリスクがあります。
これらのリーガルリスクを排除するには、普段から弁護士によるサポートを受けるのがおすすめです。
本記事では、クリニックをめぐる法律問題を得意とする弁護士に相談できる窓口や弁護士に相談するときの注意点、弁護士と顧問契約を締結するメリットなどについてわかりやすく解説します。
【クリニック経営者向け】弁護士と相談ができる窓口3選
クリニック経営者が弁護士と相談できる窓口には、主に以下3つがあります。
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ここからは、それぞれの窓口の特徴について解説します。
1.企業法務弁護士ナビ|医療法務が得意な弁護士を探して相談できる
企業法務弁護士ナビは、企業法務関係の総合リーガルポータルサイトです。
企業法務を得意とする法律事務所・弁護士を検索したり、企業法務関係のコラムを閲覧したりできます。
企業法務弁護士ナビを利用すれば、具体的な相談内容、業界、法律事務所の所在地から、利用者の希望条件に合った法律事務所・弁護士を無料で検索可能です。
「医療業界に強い近くの法律事務所を知りたい」「来所不要で法律相談できる企業法務のプロのアドバイスが欲しい」などのニーズも満たせるので、信頼できる弁護士をお探しのクリニック経営者の方はこの機会にぜひご活用ください
2.弁護士会|弁護士を紹介してくれたり、無料相談に応じてくれたりする
クリニック関係に強い弁護士を探す際は、弁護士会に相談するのもおすすめです。
全国各都道府県には原則として地方裁判所の管轄ごとに弁護士会が設置されており、地域の弁護士は必ずどこかの弁護士会に所属しています。
弁護士会では住民からのさまざまな相談に対応しており、たとえば「医療関係に強い弁護士を紹介して欲しい」などの問い合わせに対して、地域の弁護士・法律事務所を紹介してくれる場合があります。
また、各弁護士会でも法律相談の機会が用意されており、クリニック関係の法律トラブルについて相談することが可能です。
ただし、法律相談の予約方法や実施のタイミング、相談料などの諸条件は弁護士会ごとに異なります。
以下のホームページからお住まいの地域の弁護士会の連絡先を確認のうえ、直接弁護士会まで問い合わせてください。
【参考記事】日本弁護士連合会:全国の弁護士会の法律相談センター
3.商工会・商工会議所|必要に応じて弁護士が相談に乗ってくれることがある
各地域の商工会・商工会議所では、事業者が抱えるさまざまな経営課題の解決をサポートするため、定期的に経営相談会を実施しています。
事業経験豊かな経営指導員だけではなく、中小企業診断士、社労士、弁護士、税理士、弁理士、IT専門家などによる相談を受けることが可能です。
近くの商工会議所で弁護士による相談会が実施される場合には、利用してみるのも選択肢のひとつでしょう。
【参考記事】商工会議所検索|日本商工会議所
クリニック経営者が弁護士に法律相談をするときの5つのポイント
クリニック経営者が弁護士に相談するときに押さえるべきポイントは、以下のとおりです。
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それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.できる限り早い段階で相談をする
弁護士への相談を少しでも考えているなら、できるだけ早い段階で弁護士とコンタクトをとるようにしてください。
なぜなら、弁護士に相談するタイミングが早いほど、有利な解決を期待できるからです。
裏を返せば、弁護士に相談するタイミングが遅れた結果、状況が悪化して選択肢が狭まり、不利な解決結果を強いられるケースは少なくありません。
たとえば、SNSでクリニックの利用者に事実無根の虚偽情報を投稿された場合について考えてみましょう。
まず、虚偽情報を発見してすぐに弁護士に相談すれば、早期に削除請求を実施することによって、風評被害のリスクを軽減できます。
そして、迅速な開示請求などによって投稿者の身元を特定し、スムーズに損害賠償請求をすることも可能です。
しかし、弁護士へ相談するタイミングが遅れると、SNSに投稿された虚偽情報がまるで真実かのように拡散されて炎上し、クリニックが迷惑行為などの被害に悩まされるリスクが生じます。
このようなリスクを踏まえると、クリニック経営に関して法律トラブルの懸念が生じたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をして、今後の対応策などについてアドバイスをもらうべきだと考えられます。
2.相談したいことを明確にしておく
法律相談を受けるときには、弁護士に面談する前に相談したい内容を明確にしておきましょう。
弁護士の法律相談には多くの場合、30分〜1時間の制限時間が設けられています。
クリニック経営者側が抱えている問題を説明したり聞きたい内容を伝えたりするのに手間取ってしまうと、限られた時間内で十分なアドバイスをもらえないリスクが高まります。
クリニック経営者によくある相談内容は以下のとおりです。自身のクリニックで抱えている相談内容を整理する際に参考にしてください。
【クリニック経営者によくある相談内容】
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3.証拠や事実関係をまとめたメモを持参する
弁護士の法律相談を受けるときには、相談内容に関係あると思われる証拠や事実関係をまとめたメモなどはできるだけ全て持参してください。
「この書類や関係なさそうだから弁護士に見せる必要はないか」というように、相談者側の独断で証拠などを選別するのは厳禁です。
というのも、法律の素人にとっては無関係に思える書類などであったとしても、法律トラブルの解決に役立つ場合があるからです。
クリニック経営者が法律相談の際に持参するべき書類として以下のものが挙げられます。
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なお、法律事務所に持参するべき書類などがわからないときには、相談予約をするタイミングで法律事務所に直接確認するといいでしょう。
電話口で相談内容の概要を確認したうえで、何を用意するべきかについても指示をしてくれるはずです。
4.不利な事実についても正直に話すようにする
法律トラブルについて弁護士に相談するときには、クリニック側にとって有利な事情だけではなく、不利な事実関係についても素直に伝えるようにしてください。
なぜなら、有利・不利にかかわらず、トラブルの全ての事実関係がはっきりしていなければ、弁護士が紛争解決に適した対策を検討できないからです。
たとえば、クリニックで雇っている事務員から民事訴訟を提起されてパワハラを理由に損害賠償請求されたケースについて考えてみます。
仮に「パワハラ問題が表沙汰になると困るので、弁護士の力を借りて、ハラスメントトラブルは一切起こっていなかったことにしよう」と考えて、弁護士にハラスメントの事実を全て隠して、事務員からの請求には根拠がないという説明をしたとしましょう。
弁護士は依頼者からの説明を前提に防御策を決定するので、相手方から提出された訴状の内容を否認する旨の答弁書を裁判所に提出します。
ところが、口頭弁論期日で相手方からパワハラを立証するための証拠が提出されると、答弁書の内容にまったく根拠がなかったことになります。
これでは、答弁書を用意するまでの準備活動が無駄になるだけではなく、証拠と相反する主張をする悪質な紛争当事者だと裁判官に認識されて不利な判決が下されかねません。
さらに、依頼者が嘘をついていたと判明すると、裁判手続きの途中であったとしても、弁護士側から委任契約を解除されるリスクも生じます。
そもそも、弁護士は依頼者の利益を最大化することを職責としており、依頼者の代理人として味方になってくれる唯一の存在です。
依頼者にとって不利な事情であったとしても正直に伝えて、弁護士に存分に力を発揮してもらったうえで、最終的に有利な状況を作り出してもらいましょう。
5.可能であれば複数の弁護士に相談をしてみる
可能であれば、正式に委任契約を締結する前に、複数の弁護士と法律相談の機会を設けることをおすすめします。
複数の弁護士と実際に会うことで、どの人なら信頼できるか、どの弁護士との相性がいいかを判断しやすくなるからです。
また、弁護士によって弁護方針や提案内容が異なることも多く、複数の弁護士の話を聞くことで、納得感のある内容を提案してくれる弁護士を選びやすくなります。
弁護士によって人柄や熱意、話しやすさ、キャリア、提案内容などに違いがある以上、どのタイプの弁護士との相性がいいかは、実際に会ってみなければわからないでしょう。
クリニック経営者が弁護士と相談したあとに依頼するかどうかの判断基準
実際に弁護士に業務を任せるには、法律相談をしたあとに、委任契約を締結する必要があります。
ここでは、クリニックの経営者が弁護士に依頼するべきかを判断するときの基準・チェック項目について解説します。
1.医療業界と相談内容について詳しいか
弁護士に依頼すべきかどうかを判断する際は、その弁護士が医療業界や相談したい内容について詳しいかどうかを確認しましょう。
日本には数多くの弁護士が存在しますが、弁護士によって得意とする分野は異なります。
たとえば、患者から医療過誤を指摘されたケースなら、医師免許を保有している弁護士や、過去に医療過誤事案の取り扱い実績がある弁護士が適しているでしょう。
医療の現場に詳しくない弁護士に依頼をしても、診療行為などが適切であったことを根拠付ける説得的な主張立証活動を期待できません。
また、懲戒解雇処分を下した従業員から解雇処分の無効確認訴訟を提起されたケースなら、労使紛争の対応実績がある弁護士、企業法務を得意とする弁護士が適任です。
医療業界に詳しい弁護士であったとしても、労使紛争の対応経験がないのなら、このタイプの事件を依頼するべきではないでしょう。
このように、実際に委任契約を締結するかどうかを決めるときには、弁護士が医療業界の実情に精通しているか、相談内容の解決実績があるかを事前に確認してください。
2.相性がよくて、話しやすいと感じるか
委任契約を締結する弁護士を選ぶときには、相性の良さも考慮しましょう。
どれだけ法律家として優れた知識・ノウハウを有していたとしても、依頼者と人間的な相性が合わなければ、依頼者が抱えている不安や疑問を伝えることはできません。
たとえば、弁護士が複雑な法律問題をわかりやすい言葉で噛み砕いて説明してくれるか、熱心に依頼者の話を聞いてくれるかなどをチェックしてください。
3.弁護士に対して信頼できると思ったか
委任契約を締結するときにもっとも重要なポイントは、その弁護士を信頼できると感じたかどうかです。
過去の取り扱い実績、話しやすさ、熱意、提案された弁護方針などを総合的に考慮して、安心感のある弁護士を選任すれば、納得のいくリーガルサポートを期待できるでしょう。
クリニック経営者が弁護士との法律相談を受ける際の3つの注意点
ここでは、弁護士の法律相談を受けるときの注意点として以下3つを紹介します。
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それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
1.相談料が有料となっている場合がある
法律相談にかかる費用は法律事務所によって異なります。
たとえば、「初回の法律相談無料」のようなサービスを提供している弁護士もいれば、全ての法律相談について相談料が発生する場合もあります。
具体的な相談料は事務所により異なりますが、30分あたり5,500円〜11,000円(税込)が相場です。
相談料について不安がある方は、法律相談を予約する際に、直接弁護士まで確認してください。
また、できるだけ費用を抑えたい場合は、初回相談無料のサービスを提供している法律事務所を優先的に選ぶといいでしょう。
2.書類作成や交渉などの対応はしてもらえない
法律相談のタイミングでできるのは、抱えているトラブルに対する解決策や弁護方針について説明を受けることだけです。
内容証明や契約書を作成してもらったり、紛争の相手方に連絡をしてもらったりすることはできません。
実際に弁護士に業務を依頼するには委任契約を締結する必要があるので、スピーディーな対応を希望するなら、速やかに複数の弁護士にアポをとって委任先を選別する作業をスタートしてください。
3.原則として飛び込みでの相談は受け付けていない
法律事務所によって対応は異なりますが、基本的には、予約なしでの法律相談は受け付けてもらえません。
弁護士は常に複数の案件を抱えており、多忙は日々を過ごしています。
そのため、裁判所などに出かけていて不在の場合もありますし、法律事務所にいても別案件の処理に追われていることも少なくないです。
スムーズに弁護士の法律相談を受けたいなら、事前に法律事務所に問い合わせをして、法律相談の日時をしっかりと予約しましょう。
クリニック経営者が弁護士と顧問契約を締結するメリット
弁護士との間の契約類型は、スポット契約と顧問契約の2つに分類されます。
スポット契約とは、法律トラブルが生じたタイミングでその紛争を解決するために弁護士との間で締結する委任契約の類型です。
一方顧問契約は、毎月弁護士に顧問料を支払うことでさまざまなリーガルサービスを受ける委任契約を意味します。
クリニック経営者が弁護士との間で顧問契約を締結すれば、以下のメリットを得られます。
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クリニックは利用者に医療サービスなどを提供する場である以上、一般事業企業と同等もしくはそれ以上の経営的安定性が求められます。
紛争発生時に弁護士を頼るというのも選択肢のひとつですが、顧問契約締結によって普段からリーガルチェックを受けて紛争発生リスクを減らしておくほうが経営判断として合理的だといえるでしょう。
さいごに|クリニック関連の法律トラブルは医療法務が得意な弁護士に相談しよう!
クリニックを経営していると、さまざまな法律問題に直面する可能性があります。
たとえば、患者や利用者との間で生じた診察や治療に関するトラブルだけではなく、インターネット上の誹謗中傷への法的措置、従業員との間の労使紛争など、多岐にわたります。
これらのリスクをできるだけ予防し、また、紛争発生時に迅速な対応をとるには、弁護士との間で顧問契約を締結するなどして、日常的に法律の専門家とコミュニケーションをとることが重要です。
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弁護士に相談するタイミングが遅れるほど事態が不利になるので、クリニック経営について少しでも不安があるなら、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士までお問い合わせください。
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