国際取引とは|国内取引との違いと取引の種類まとめ

専門家監修記事
国際取引とは、国境を超えた異なる法律や商習慣を持つ相手に、商品の売買や投資などをする取引のことです。国際取引は国内取引とはルールや契約内容が大きく異なるので、事前にその内容について把握しておく必要があります。この記事では、国際取引の概要をご紹介します。
ベンチャーラボ法律事務所
淵邊 善彦
監修記事
国際取引

国際取引(こくさいとりひき)とは、異なる法律や商習慣を持つ国を相手との取引行為を意味します。国境を超えた取引は、国内取引と比べてルールや契約内容が大きく異なります。取引する際には、相手となる国の法律や起こりうるリスクについて把握して、事前に備えておく必要があります。

 

この記事では、国際取引とはどのようなものなのかをご紹介します。取引の種類や注意点なども解説していますので、国際取引の概要を確認したい場合は、参考にしてみてください。

 

この記事に記載の情報は2021年05月24日時点のものです
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国際取引と国内取引の違い

国際取引と国内取引の違いは、その言葉の通り、取引が国境をまたいでいるかどうかです。

 

取引相手の国とは、法制度、商習慣、決済手段等が異なるので、取引前には各国の法律や金融・貿易に詳しい専門家のアドバイスを取り入れる必要があるでしょう。

 

国際取引の流れ

国際取引(輸出入の貿易の場合)の大まかな流れは、以下の通りです。

 

国際取引の流れ

市場調査

海外の法制度の把握と取引先候補の絞り込み

信用調査

取引先候補がどこまで信用できる相手か調査

契約条件の交渉

取引の価格や決済方法、取引期限など契約条件の交渉

契約の締結・実行

輸出入の運搬手配や保険付与、代金決済などを行う

 

国際取引で生じるトラブルの多くが、①〜④の手続きを厳密に行わなかったことが原因です。国際取引では、取引前の事前準備と事後の管理が重要になります。

 

国際取引の5つの種類

国際取引は物品の売買というイメージがありますが、その目的が必ずしも商品の輸出入になるとは限りません。ここでは、5種類の国際取引についてご紹介します。

 

国際取引の種類

貿易取引

サービス取引

プラント輸出

国際技術移転

電子商取引

貿易取引

貿易取引とは、外国との間で物を売ったり買ったりする取引で、最も一般的な国際取引といえるでしょう。インターコムズ2020や信用状規則など貿易取引に特有のルールを理解することが大切です。

サービス取引

サービス取引とは、保険や情報の提供、システムの開発業務、営業や宣伝などを請け負う役務(サービス)に関する国際取引です。例えば、日本から海外アーティストのライブに参加した場合、国外消費をしたとして、消費サービス取引に該当します。そのように企業間だけでなく、個人の身近な生活内でも多く見られる取引といえます。

プラント輸出

プラント輸出とは、大規模工場施設等を海外に建設するための国際取引です。ブラント輸出の契約内容は、以下の2種類に分類されます。投資金額が大きく、多くの当事者が関係する複雑かつ専門的な契約になります。

 

プラント輸出の契約内容

ターン・キー契約

工場の建設から稼働できる状態にするまでを請け負う契約

フル・ターン・キー契約

工場の建設から試運転開始後、そこに従事する者の指導や養成も請け負う契約

国際技術移転

国際技術移転とは、国内で保持している技術を海外に移転する契約に関する国際取引です。移転される技術は、人的能力、機械設備、生産流通体系など、技能も含めて取引の対象となっています。主に発展途上国の経済発展の目的として、先進国から発展途上国へ技術移転がなされるケースが多くなります。ライセンス契約や共同開発契約が締結されます。各国の知的財産権制度やロイヤルティに関する国際税務の理解が重要です。

電子商取引

電子商取引とは、インターネットを介して行う国際取引です。例えば、海外のネット通販やオークションを利用して商品を輸入する状況も、この電子商取引に該当します。個人情報の扱いや電子決済についての知識も必要になります。インターネットが普及し、電子商取引は年々拡大傾向にあります。その環境変化の勢いが急速であるため、取引の実務や国際的なルールは、変化に応じて改訂されることになるでしょう。

 【詳細】「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(2020年8月28日)

 

国際取引を行う上での注意点4つ

国際取引(輸出入の貿易の場合)を行う上での主な注意点を5つご紹介します。

 

国際取引の注意点

国による法制度の違い

英文契約のリスク

政治体制の変更による取引停止

為替変動のリスク

海上運送中のリスク

国による法制度の違い

輸出をする場合には取引相手の国の輸入に関する取引規制、輸入をする場合には取引相手の国の輸出に関する取引規制を把握しておく必要があります。国によっては取引商品の輸入に資格が必要であったり、販売するために許可が必要であったりなど、日本では問題ないことでも、取引が滞るケースもあるので要注意です。通関制度や国際税務についても留意すべきです。

英文契約のリスク

多くの国際取引においては英文契約書が締結されます。英語の能力に加え、英文契約特有の条項や用語を理解し、自社に不利に働かないかをよく検討すべきです。相手方が作成したドラフトは、相手方に一方的に有利になっていることが多く、そのままサインすることは大変危険です。

 

また、契約の準拠法(紛争解決の基準になる法律)と管轄(紛争解決地と解決機関)を何にするかも慎重な検討が必要です。国際取引においては、強制執行の容易さや手続の柔軟性の観点から、一般に裁判ではなく国際仲裁が使われています。

政治体制の変更による取引停止

戦争や内乱などの影響により、取引先の国の政治体制が変わってしまうと、輸出入や為替送金が認められなくなるケースもあり得ます。特に発展途上国との取引では、そのようなトラブルが生じる可能性が高く、そのような事態を回避するためには、取引先の国の政治情勢や社会動向をきちんと把握しておく必要があるでしょう。

為替変動のリスク

外国為替の相場は日々変動するため、取引時に相場の変動が激しい状態だと、売買の利益がなくなってしまう可能性もあります。対策としては、自国の通貨での取引とする、為替予約(事前に決めた価格で外国通貨と交換できる契約)をするなどが挙げられます。

海上運送中のリスク

国際取引では、商品の発送から受け取りまでの運送に時間がかかるため、運送中の事故や商品の破損のリスクが高くなります。そのため、国際取引をする際には、貨物海上保険(貨物の海上輸送中の危険を担保する保険)を契約し、そのようなリスクに備えておかなければいけません。

 

これらの注意点を考慮に入れて、可能な限り自社のリスクを減らすべく契約交渉すべきです。国内取引と違って、意図的に支払いを免れようとする海外企業もありえます。国をまたいだ裁判や仲裁は、膨大な時間や費用が掛かるため、契約上有利だからと言って安心はできません。一旦回収不能が生じてしまうと、法的手段で回収することは、費用対効果を考えるとほぼ不可能です。

 

取引相手の信用をよく見極めたうえで、自社に有利なビジネスモデルを考えることが大切です。

 

 

まとめ

国際取引では、取引先の国によって、輸出入のルールや発生するリスクが変わります。取引をする際には、入念な準備が必要不可欠でしょう。法律のプロである弁護士や、金融・貿易のプロのアドバイスを参考にしつつ、慎重に取引をするよう心がけてください。

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