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ネット通販や訪問販売、電話勧誘販売などの事業者には、特定商取引法によるさまざまなルールが課されています。もし表記に漏れがあったり、事実と異なる説明で勧誘したりすると、業務停止命令などの行政処分や刑事罰の対象になります。
また、近年は法改正が続いており、以前は適法だった運用が現在は違反にあたる場合もあるため、定期的な見直しが欠かせません。
本記事では、特定商取引法の対象となる7つの取引類型と主な5つの規制、違反した場合の行政処分・刑事罰などをわかりやすく解説。あわせて、2022年と2023年に施行された改正点も紹介します。自社の表記や販売方法に違反がないかを見直すための参考にしてください。
特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘を防ぎ、消費者の利益を守るための法律です。正式名称は「特定商取引に関する法律」で、略して「特商法」とも呼ばれます。
訪問販売やネット通販などの取引では、強引な勧誘や事実と異なる説明によって、消費者が損害を受ける事態がたびたび起きてきました。そこで、トラブルが起きがちな特定の商取引にルールを設けるため、特定商取引法が制定されました。
特定商取引法への対応で最初に押さえたいのは、「自社の取引が対象になるか」と「対象になる場合に何を守るべきか」の2点です。対象となる7種類の取引類型と主な5つの規制を順番に確認しましょう。
特定商取引法の対象となる取引は、以下の7種類です。
| 取引類型 | 内容 |
|---|---|
| 訪問販売 | 消費者の自宅などを訪問し、商品やサービスを販売する取引 |
| 通信販売 | 新聞やインターネットなどで広告し、郵便やインターネットなどで申込みを受ける取引 |
| 電話勧誘販売 | 電話で勧誘し、申込みを受ける取引 |
| 連鎖販売取引(マルチ商法) | 販売員に次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に広げる取引 |
| 特定継続的役務提供 | エステや語学教室など長期・継続的なサービスを高額な対価で提供する取引 |
| 業務提供誘引販売取引 | 「仕事で収入が得られる」と誘い、仕事に必要だとして商品を買わせる取引 |
| 訪問購入 | 消費者の自宅などを訪問し、物品を買い取る取引 |
たとえば、自社サイトで商品を販売していれば、通信販売として規制の対象です。電話をかけて商品をすすめ、そのまま申込みを受ける営業は電話勧誘販売にあたります。
自社の販売方法がどの類型にあたるのか、確認してみてください。
特定商取引法の対象となる取引には、主に以下5つの規制が課されます。
| 規制 | 内容 |
|---|---|
| 氏名などの明示義務 | 勧誘の前に事業者名や勧誘目的を消費者に告げる義務 |
| 不当な勧誘行為の禁止 | 価格などの虚偽説明・故意の不告知・威迫して困惑させる勧誘の禁止 |
| 広告の規制 | 広告への重要事項の表示義務と虚偽・誇大広告の禁止 |
| 書面の交付義務 | 契約締結時に重要事項を記載した書面を渡す義務 |
| 損害賠償等の額の制限 | 契約解除の際に事業者が請求できる損害賠償額の制限 |
ただし、取引類型によって適用される規制の内容は異なります。
たとえば書面の交付義務は、訪問販売や電話勧誘販売には適用されますが、通信販売には適用されません。一方、通信販売の広告には、価格や返品条件などの表示が細かく義務づけられています。

特定商取引法は2021年に改正され、2022年から2023年にかけて段階的に施行されました。改正内容を知らないまま営業を続けると違反につながるので、注意してください。
ここでは、事業者への影響が大きい3つの改正点を解説します。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 最終確認画面の表示に関する義務はなかった | 最終確認画面への6事項の表示が義務化された |
詐欺的な定期購入商法の増加に伴い、2022年6月1日より通信販売への規制が強化されました。法改正により、全ての事業者は、消費者が注文を確定する直前の画面(最終確認画面)で、以下の事項を表示する義務を負います。
|
あわせて、有償の申込みだとわかりにくい表示や、上記の事項について消費者に誤認を与える表示も禁止されました。誤認して申し込んだ消費者は、申込みを取り消せる場合があります。
また、契約の解除を妨げるために、事実と異なることを告げる行為(不実告知)も禁止されています。たとえば「定期コースは途中解約できません」と偽って解約を断る場合です。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| はがきなどの書面による通知が原則だった | 電子メールなどの電磁的記録による通知も認められた |
2022年6月1日の法改正により、消費者はクーリングオフの通知を電子メールやWebサイトの専用フォームなどで送れるようになりました。
法改正を受けて、事業者は無理のない範囲で、電子メールやFAXなどの通知を受けられる体制を整える必要があります。
たとえば「クーリングオフは以下のアドレスへお送りください」と契約書面に宛先を明記しておきましょう。受付の窓口を整理でき、消費者も通知先に迷いません。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 申込書面や契約書面は紙での交付に限られていた | 消費者の承諾があれば電子データでの提供も認められた |
2023年6月1日の法改正により、事業者は消費者に渡す契約書面などを電子メールなどで提供できるようになりました。
対象となるのは、訪問販売などで交付が義務づけられている書面です。契約手続きをオンラインで完結させたい場合は、電子交付の導入を検討してみてください。
ただし、電子化には消費者本人の明確な承諾が必要です。承諾の取り方は細かく定められており、手順を誤ると書面を交付していないと扱われます。

特定商取引法に違反すると、行政処分と刑事罰の対象です。
ここでは、それぞれの内容を詳しく解説します。どのような行為が処分につながるのかを知り、違反の予防に努めましょう。
特定商取引法に違反すると、消費者庁または都道府県から行政処分を受けます。行政処分には、指示・業務停止命令・業務禁止命令の3種類があります。
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 指示 | 違反状態を改めるよう求める処分。「事実と異なる説明の中止」「書面の交付」など、具体的な対応を命じられる。 |
| 業務停止命令 | 期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命じる処分。指示を守らない場合や、違反が悪質な場合に出される。 |
| 業務禁止命令 | 業務停止命令を受けた法人の役員などに対し、別の会社を使って同じ事業を続けることを禁じる処分。 |
業務停止命令を受けると、一定期間は勧誘や申込みの受付ができません。
また、指示・業務停止命令・業務禁止命令のいずれの処分でも、事業者名・違反内容・処分内容が消費者庁や都道府県のWebサイトなどで公表されます。一度会社名が公表されると、取引先や顧客からの信用回復は容易ではありません。
悪質な違反には、主に以下の刑事罰が科されます。
| 対象行為 | 個人の刑事罰 | 法人の刑事罰 |
|---|---|---|
| 不実告知・故意の不告知・威迫 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 業務停止命令・業務禁止命令違反 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 3億円以下の罰金 |
| 書面の交付義務違反・指示違反 | 6ヵ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 100万円以下の罰金 |
| 誇大広告・表示義務違反・承諾のない相手へのメール広告 | 100万円以下の罰金 | 100万円以下の罰金 |
両罰規定があるため、担当者の違反行為でも会社が罰金を科されるリスクがあります。広告や表記の作成を現場任せにせず、社内でチェックする体制を整えましょう。
自社の表示や勧誘方法に不安が残る場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
弁護士には、通信販売の最終確認画面に必要事項が抜けていないか、契約書面の記載に不足がないかなどを専門家の視点で確認してもらえます。
行政処分や刑事罰を受けたあとに修正するよりも、事前に不備をなくすほうが対応の手間もコストも小さく済むでしょう。
とくに顧問弁護士がいない中小企業では、必要なときだけ相談できる弁護士を確保しておくメリットが大きくなります。トラブルが起きる前に、相談先を決めておきましょう。
「企業法務弁護士ナビ」では、特定商取引法への対応を得意とする弁護士を、地域や相談内容から検索できます。
対応できる分野やエリアを絞って検索できるため、自社の状況に合った弁護士を短時間で見つけられます。顧問契約を結ばなくても、必要なときだけスポットで相談できるのが特徴です。
掲載されている事務所の多くはオンライン相談にも対応しており、地方の企業でも都市部の弁護士に相談できるほか、地域を指定して地元の弁護士を探すことも可能です。
自社の表記や販売方法に法律違反がないか確認したい場合は、まずは無料相談を利用して、弁護士に現状を見てもらいましょう。初回相談で疑問点を整理できれば、その後の対応方針も立てやすくなります。
さいごに、特定商取引法に関するよくある質問に回答します。
ネット通販では、「特定商取引法に基づく表記」として以下の事項をサイトに表示する必要があります。
|
表示に漏れがあると、行政処分の対象になります。ネットショップの開設前に加えて、送料や返品条件を変更したときにも、表記の更新を忘れないようにしましょう。
キャッチセールスは、訪問販売として特定商取引法の規制対象になります。
キャッチセールスとは、路上で消費者を呼び止めて営業所などに連れて行き契約させる販売方法です。
契約の場所が営業所であっても、勧誘のきっかけが不意打ちである点は自宅訪問と変わらないため、訪問販売として扱われます。
アポイントメントセールスも、訪問販売として特定商取引法の規制対象になります。
アポイントメントセールスとは、「プレゼントが当たった」などと電話やメールで消費者を呼び出し、営業所などで契約させる販売方法です。
呼び出しに応じただけの消費者は、契約を迫られる心構えができていません。不意打ちの度合いが自宅訪問と変わらないため、営業所で契約しても訪問販売として扱われます。
特定商取引法は、ネット通販や訪問販売など7種類の取引を対象に、事業者が守るべきルールを定めた法律です。
違反すると行政処分や刑事罰を受けるおそれがあります。処分を受ければ事業者名も公表されるので、取引先や顧客からの信用を失う事態になりかねません。
自社の表記や販売方法に不安がある場合は、あらかじめ特定商取引法が得意な弁護士に確認してもらうと安心です。「企業法務弁護士ナビ」では、特定商取引法が得意な弁護士を、地域や相談内容から探せます。
行政処分を受けてからでは、失った信用を取り戻すために多くの時間がかかります。問題が起きる前に、まずは相談できる弁護士を探してみてください。
編集部
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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