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弁護士監修記事
人事・労務

解雇の条件とは?認められる2要件と違法にならない進め方を解説

2026.9.29
本記事では、解雇が認められる基本条件から、理由別・雇用形態別の判断基準、違法にならないための進め方などを解説します。
監修弁護士
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フリューゲル法律事務所
弁護士 豊田 雄一郎
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  • 「問題のある社員を解雇したいが、あとで訴えられないか」
  • 「そもそも、うちのケースで解雇は認められるのか」

解雇に踏み切る前に、まず押さえておきたいのが解雇の条件です。

解雇は、判断を誤ると不当解雇として無効になり、復職やバックペイなど大きな代償を招きかねません。

慎重な対応が求められる場面です。

解雇が有効と認められるには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性という2つの条件が欠かせません。

さらに、普通・懲戒・整理という解雇の種類ごと、雇用形態ごと、理由ごとに、それぞれ判断のポイントがあります。

本記事では、解雇が認められる基本条件から、理由別・雇用形態別の判断基準、違法にならないための進め方などを解説します。

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目次

解雇には正当な理由が必要|退職・雇止めとの違い

解雇とは、使用者(会社)が一方的な意思表示で労働契約を解約する行為を指します。

会社が自由におこなえるものではなく、正当な理由がなければ無効です。

まず押さえたいのが、解雇とそれ以外の契約終了との区別です。

次のものは、いずれも解雇とは法的性質が異なります。

  • 自己都合退職:労働者が自ら辞めること
  • 合意退職:会社と労働者が話し合い、合意のうえで辞めること
  • 雇止め:有期契約を更新せず、期間満了で終了すること

自社がおこなおうとしているのが本当に解雇なのか、まず見極めておく必要があります。

種類 内容 解雇との違い
解雇 会社からの一方的な契約解除 ―
自己都合退職 労働者からの申し出による退職 会社側の理由は不要
合意退職 会社と労働者の合意による退職 一方的でなく合意がある
雇止め 有期契約の期間満了時に更新を拒否すること 契約の「解除」でなく「満了」

解雇が認められる基本条件2つ

解雇が有効と認められるには、労働契約法16条が定める次の2つの条件を、どちらも満たさなければなりません。

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法 | e-Gov 法令検索

以上の条件は、後述する普通解雇・懲戒解雇・整理解雇のいずれにも共通する大前提です。

どちらか一方でも欠ければ、その解雇は「解雇権の濫用」として無効(不当解雇)になります。

裁判所は解雇権濫用法理を厳格に運用しており、会社に解雇権があっても無制限に行使できるわけではありません。

以下で2つの条件をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

①客観的に合理的な理由があること

1つ目の条件は、客観的に合理的な理由があることです。

第三者が見ても「これなら解雇もやむを得ない」と納得できる、事実に基づいた明確な理由を指します。

判断のよりどころになるのが就業規則です。

就業規則には解雇事由の記載が法律上義務付けられており(労働基準法89条)、解雇は原則として、就業規則に定めた解雇事由のいずれかに該当する場合に認められます。

普通解雇でも懲戒解雇でも、今回の解雇理由が自社の就業規則のどの事由にあたるのかを、まず確認しましょう。

具体的にどのような理由が認められやすく、あるいは認められにくいのかは、次のとおりです。

合理的な理由 具体例
認められやすい例 横領などの犯罪行為、長期の無断欠勤、重大な経歴詐称
認められにくい例 一度の軽微なミス、社長との相性不良、指導不足による能力不足

なお、理由があると主張するだけでは足りません。

主張を裏づける、指導記録やメール、勤怠データなどの客観的な証拠が不可欠です。

証拠の残し方は後述します。

②社会通念上相当と認められること

2つ目の条件は、社会通念上の相当性です。

たとえ解雇の理由が存在しても、解雇という最も重い処分がその行為に対して重すぎないか、バランスが取れているかが問われます。

均衡を欠くと判断されれば、理由があっても解雇は無効です。

相当性は、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。

相当性の判断要素 内容
解雇回避努力 注意指導や配置転換など、解雇を避ける手を尽くしたか
処分の均衡・公平性 行為に対して重すぎないか、ほかの社員と同じ基準か
改善の機会 複数回の指導をおこない、改善の猶予を与えたか
労働者側の事情 これまでの勤務態度や、反省・改善の姿勢があるか

たとえば同程度の問題行動でも、一方は注意で済ませ他方を解雇するといった不均衡な扱いは、相当性を欠くと判断されやすくなります。

なかでも特に重視されるのが、会社が解雇回避の努力(注意指導や配置転換など)を尽くしたかという点です。

いきなり解雇せず、段階を踏んで改善を促したかが裁判では厳しく問われます。

法律で解雇が禁止・制限されているケース

前章の2つの条件を満たしていても、以下のケースに該当する場合は、法律によって解雇そのものが禁止・制限されており、解雇は無効・違法となります。

本ケースは、解雇権濫用法理(客観的合理性・社会的相当性)とは別に定められた規制です。

どんなに正当な理由があっても、該当する状況・目的での解雇はできません。

見落とすと理由の有無にかかわらず無効・違法になるため、解雇の前に必ず確認してください。

①療養中・産前産後の休業期間中の解雇

労働基準法19条は、次の期間中の解雇を禁止しています。

  • 業務上の負傷・疾病による療養のために休業する期間およびその後30日間
  • 産前産後の女性が休業する期間およびその後30日間

つまり、仕事が原因のけがや病気(労災)で休んでいる従業員や、産休中の従業員は、ほかに解雇したい事情があっても、この期間中は解雇できません。

ただし、次の場合には例外的に解雇が認められます。

  • 使用者が打切補償(労働基準法81条)を支払った場合
  • 天災事変その他やむを得ない事由で、事業の継続が不可能になった場合(行政官庁の認定が必要)

なお、仕事が原因ではない私傷病(業務外のけが・病気やメンタルヘルス不調)による就業不能の扱いは、労災とは異なります。

②妊娠・出産・育児休業・介護休業を理由とする解雇

妊娠・出産や、育児休業・介護休業などの取得を理由とする解雇は、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法によって禁止されています。

注意したいのは、対象が育児休業だけではない点です。

育児・介護休業法は、介護休業や介護休暇の取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いも、同様に禁止しています。

また、妊娠中および出産後1年以内の女性に対する解雇は、会社が「妊娠・出産を理由とする解雇ではない」と証明できない限り無効となります。

妊娠・出産・育休中の解雇は、原則として認められないと考えておくべきです。

なお、これらを理由とする不利益な取扱いの禁止は、解雇だけでなく、降格・減給・不利益な配置転換などにも及びます。

③組合活動・公益通報・差別を理由とする解雇

次のような理由による解雇も、法律で禁止されています。

  • 労働組合の結成・加入・活動を理由とする解雇:労働組合法7条が禁じる「不当労働行為」にあたり、無効となる
  • 公益通報を理由とする解雇:会社の法令違反などを通報したことを理由とする解雇は、公益通報者保護法により無効とされる
  • 国籍・信条・性別などを理由とする差別的解雇:労働基準法3条の均等待遇や男女雇用機会均等法6条により禁止されている

以上はいずれも、該当した時点で解雇が無効・違法となる性質のものです。

表向き別の理由を掲げていても、実質的にこれらが動機だと判断されれば認められません。

解雇理由として持ち出す判断自体が危険だと理解しておいてください。

解雇の種類3つと有効となる要件

解雇には、大きく分けて「普通解雇・懲戒解雇・整理解雇」の3種類があります。

それぞれ性質・根拠・必要な手続きと要件が異なるため、自社がおこなおうとする解雇がどの種類にあたるのかを、まず正確に見極める必要があります。

解雇の種類 性質 主な事由 法的ハードル
普通解雇 労働契約の債務不履行 能力不足・勤怠不良・私傷病など 高い
懲戒解雇 企業秩序違反への制裁罰 横領などの犯罪・重大なハラスメント 極めて高い
整理解雇 経営上の理由による人員削減 業績悪化・事業縮小など 非常に高い

たとえば「懲戒解雇は普通解雇より厳しいのだから、懲戒解雇の要件さえ満たしていれば普通解雇の要件も当然クリアできる」という考え方は、当てはまりません。

普通解雇には普通解雇の手続きがあり、それを踏んでいなければ有効にはならないためです。

懲戒解雇として争って無効になっても、自動的に普通解雇に切り替わって有効になるわけではありません。

各種類の要件を、以下で順に解説します。

普通解雇の要件と適用ケース

普通解雇とは、労働者が労働契約上の義務を果たせないこと(債務不履行)を理由とする解雇です。

能力不足、私傷病による就業不能・協調性の欠如・勤怠不良などが典型例にあたります。

それぞれの詳しい条件は後述します。

有効となるには、次の要件を満たす必要があります。

  • 共通の2要件(客観的合理性・社会通念上の相当性)を満たすこと
  • 就業規則に定められた解雇事由に該当すること
  • 注意・指導を重ねても改善の見込みがないこと

手続き面では、原則として30日前の解雇予告、または解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法20条)。

いきなり解雇するのではなく、段階的な指導を経たかどうかが、有効性を分けるポイントになります。

懲戒解雇の要件と適用ケース

懲戒解雇とは、企業秩序を著しく乱した労働者に対する制裁罰のうち、最も重い処分です。

横領などの犯罪行為・重大なハラスメント・長期の無断欠勤などが該当します。

制裁としての性質を持つため、普通解雇よりも要件が厳格です。

有効となるには、共通の2要件に加えて、次を全て満たす必要があります。

  • 就業規則に懲戒事由と懲戒の種類が定められ、労働者に周知されていること
  • 規定された懲戒事由に、実際に該当すること
  • 処分の重さが行為に見合っていること(過去の類似事案との公平性を含む)
  • 処分の前に、本人へ弁明の機会を与えていること(適正手続)

特に見落とされやすいのが、就業規則上の根拠と弁明の機会です。

根拠と弁明の2つを欠くと、解雇理由そのものが正当でも、手続きの不備を理由に無効と判断されやすくなります。

また、就業規則の定めによっては、退職金が不支給・減額になることがあります。

ただし、後に懲戒解雇が無効と判断されれば、その退職金の不支給も違法となりうる点に注意が必要です。

【関連記事】懲戒解雇を検討すべき6つの理由|解雇する際の注意点

整理解雇の要件と適用ケース

整理解雇とは、経営の悪化などを理由に、人員削減のためにおこなう解雇です。

普通解雇の一類型ですが、労働者側に落ち度がない点が特徴で、そのぶん判例で確立された整理解雇の4要素を満たすかが厳しく判断されます。

  • 人員削減の必要性:経営上、人員を削減しなければならない客観的な必要があること
  • 解雇回避努力:新規採用の停止・希望退職の募集・配置転換など、解雇を避ける努力を尽くしたこと
  • 人選の合理性:解雇対象者を、客観的で合理的な基準にもとづいて選んでいること
  • 手続の妥当性:労働組合や従業員に対し、十分な説明と協議をおこなったこと

人員削減が必要だとしながら新規採用をおこなうなど矛盾した行動があると、必要性が否定される場合があります。

労使間の十分な協議も欠かせません。

以上の4要素は、ひとつでも欠けると無効と判断されやすく、実務上は非常にハードルの高い解雇です。

【関連記事】整理解雇とは?整理解雇の4要件と解雇との違いを解説

【理由別】解雇が認められる条件・認められない条件

解雇の理由は、大きく次の3つに分けられ、それぞれ解雇の種類に対応します。

解雇理由の分類 該当番号 対応する解雇の種類
能力・適性の欠如(能力不足・勤怠不良など) ①〜④ 普通解雇
規律違反(犯罪行為・ハラスメントなど) ⑤〜⑦ 懲戒解雇(程度により普通解雇)
経営上の必要(業績悪化など) ― 整理解雇

ここでは、実務で問題になりやすい理由を個別に取り上げ、正当と認められる条件と不当解雇になりやすいケースをセットで整理します。

なお、どの理由であっても、次の4点は共通して確認が必要です。

  • 就業規則への記載があるか
  • 段階的な指導をおこなったか
  • 改善の見込みがないか
  • 客観的な証拠があるか

それでは、各条件をみていきましょう。

①能力不足・成績不良

会社が求める標準的な能力を著しく下回り、指導や教育をおこなっても改善しない場合に、解雇が認められる可能性があります。

ただし、求められるハードルは採用の経緯によって異なります。

  • 新卒者・未経験者:必要な指導や、適性を見るための配置転換をおこなってもなお成績が不良であること
  • 専門性を重視して採用した中途者:採用時に前提としていた専門能力が欠けていることが明らかで、改善の余地がないこと

いずれの場合も、客観的な評価基準が存在し、具体的な指導記録が証拠として残っていることが不可欠です。

就業規則では「勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがないとき」などと定めるのが一般的です。

不当解雇になりやすいケース

  • 入社2〜3ヵ月の新卒に、OJTもマニュアル整備もないまま「期待した成果が出ない」と解雇する
  • 営業成績が下位というだけで、指導履歴も改善目標の提示もなく「成績不良」と判断する
  • 評価者の主観(やる気が感じられないなど)だけで能力不足と決めつけ、数値や記録の裏づけがない
  • 中途採用者に対し、採用時に求めた専門能力の内容をあいまいにしたまま「期待外れ」として解雇する

②私傷病・メンタルヘルス不調による就業不能

業務外のけがや病気、メンタルヘルス不調で働けなくなった場合でも、すぐに解雇できるわけではありません。

就業規則に休職制度があれば、まず休職を適用するのが前提です。

そのうえで問題になるのが、休職期間が満了しても復職できないケースです。

軽易な業務への配置転換などの配慮をしても就労の見込みがないと判断される場合に、はじめて解雇が視野に入ります。

逆に、軽い業務なら働けるケースや、医師が復職可能と判断しているケースで解雇すると、無効となるリスクが高くなります。

就業規則では「精神または身体の障害により業務に堪えられないとき」などと定めるのが一般的です。

不当解雇になりやすいケース

  • 数ヵ月の療養で回復が見込めるのに、休職制度を使わせず即解雇する
  • 主治医や産業医が「軽作業なら復職可」としているのに、元の業務ができないことだけを理由に解雇する
  • 休職期間の満了時に、復職可否をきちんと判定しないまま自動的に解雇扱いにする

なお、業務が原因の負傷・疾病(労災)による休業や、産前産後の休業については、労働基準法19条で解雇そのものが制限されます。

③協調性の著しい欠如

協調性の欠如を理由に解雇が認められるには、単なる性格の不一致では足りません。

ほかの従業員との協調が業務に不可欠であるにもかかわらず、協調性を欠くために業務に重大な支障が生じている状態が必要です。

そのうえで、本人への再三の注意・面談や、相性のよい部署への配置転換を試みても改善が見られず、その経過が記録に残っている状態が求められます。

本人がハラスメントの加害者になっているケースでは、被害の状況もあわせて確認する必要があります。

不当解雇になりやすいケース

  • 性格や価値観の違いを「協調性がない」と言い換えるだけで、業務にどんな支障が出たかを具体的に示せない
  • 指導や注意を口頭で済ませ、面談記録や改善指示の履歴を残していない
  • 特定の上司との相性が悪いだけなのに、配置転換を検討せず解雇する

④頻繁な遅刻・無断欠勤

正当な理由のない遅刻・欠勤が繰り返され、会社が指導した後も改まらない場合に、解雇が認められる可能性があります。

無断欠勤については、就業規則で「正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じないとき」などと定めて目安とする例が一般的です。

前提として、会社が出勤の督促や連絡、懲戒処分といった適切な対応をとり、その証拠を残しておく必要があります。

また、遅刻・欠勤の背景に精神疾患などがある場合は、まず休職を検討すべきで、それを見落として解雇すると違法と判断されるリスクがあります。

不当解雇になりやすいケース

  • 遅刻・欠勤に対して注意も督促もせず、いきなり解雇する
  • 数回の遅刻や1〜2日の欠勤など、程度が重大といえないのに解雇する
  • 連絡が取れない社員に、督促の記録を残さないまま「無断欠勤」と決めつける
  • 欠勤の背景に体調不良やメンタル不調がうかがえるのに、休職を検討せず解雇する

⑤横領・着服など業務上の犯罪行為

業務上の地位を利用して会社の金品を横領・着服する行為は、原則として懲戒解雇の対象となります。

金額の多寡にかかわらず、会社との信頼関係を根本から破壊する行為として厳しく判断されます。

ただし、懲戒解雇として有効にするには、次の3点が欠かせません。

  • 横領・着服の事実が客観的な証拠で立証されている
  • 本人に弁明の機会を与えている
  • 就業規則に「刑法その他刑罰法規に違反する行為をおこなったとき」などの懲戒事由を定め、周知している

一方で、次のようなケースは、たとえ疑いが濃くても解雇が無効と判断されやすくなります。

  • 証拠が「疑わしい」段階にとどまり、事実として確定していない
  • 本人の説明を聞かず、一方的に処分を決めてしまう
  • ごく少額の一度きりの流用など、懲戒解雇では重すぎると評価される

なお、横領は業務上横領罪にあたるため、刑事告訴と並行するケースでは、事実調査や証拠保全に実務上の注意が必要です。

⑥セクハラ・パワハラなどのハラスメント

職場環境を著しく悪化させるセクハラ・パワハラなどのハラスメントは、その悪質性に応じて懲戒解雇の対象となります。

処分が有効と認められるポイントは、行為の悪質性・反復性・被害の重大性です。

無理やり体に触れる、性的関係を強要するといった重大なケースでは、重い処分が認められやすくなります。

一方、比較的軽微な言動については、一度懲戒処分を受けても改まらない場合に、はじめて解雇が認められるのが一般的です。

ハラスメントは事実認定が難しく、判断を誤って解雇すると、今度は加害者とされた側から「不当解雇だ」と訴えられるおそれもあります。

次のようなケースは、無効と判断されやすくなります。

不当解雇になりやすいケース

  • 一方の申告だけで事実と断定し、メールや録音などの裏づけを確認しない
  • 加害者とされた本人に弁明の機会を与えず、処分を決めてしまう
  • 軽い叱責や指導の範囲といえる言動を、いきなり懲戒解雇の理由にする
  • 過去に同種の言動を黙認していたのに、特定の社員だけを重く処分する

⑦業務命令違反・私生活上の犯罪・その他の規律違反

これまで挙げた以外の規律違反も、程度によっては解雇の対象となります。

代表的な3つについて、認められる条件と、不当解雇になりやすいケースを整理しました。

規律違反 認められる条件 不当解雇になりやすいケース
業務命令違反 命令自体が正当で、本人が従わず改善も見込めない 違法・不合理な命令への違反を理由に解雇する
私生活上の犯罪 報道などで会社の名誉・信用を著しく損なった 私生活の範囲内で影響も軽微なのに解雇する
機密情報の漏えい 機密として管理された情報で、会社に損害が生じた 誰でも知り得る情報の漏えいを重大視して解雇する

実際、深夜の住居侵入で罰金刑を受けた従業員の懲戒解雇が、私生活の範囲内の行為で刑も軽微だったとして無効とされた事例もあります(横浜ゴム事件・最高裁昭45.7.28)。

いずれの場合も、就業規則の懲戒事由への該当と、それを裏づける証拠が前提になります。

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【雇用形態別】正社員・契約社員・パートで異なる解雇条件

正社員、契約社員、パート・アルバイト、試用期間中の従業員では、解雇の法的なハードルや適用されるルールが異なります。

まず前提として、「アルバイトなら簡単に解雇できる」という認識は誤りです。

雇用形態を問わず、労働者はいずれも労働契約法・労働基準法の保護対象であり、合理的な理由のない解雇は違法になります。

特に有期雇用の期間途中の解雇には、正社員以上に厳しい要件が課されます。

各雇用形態の条件を、以下で見ていきましょう。

正社員(無期雇用)の解雇条件

期間の定めのない正社員は、日本の労働法制のなかでも手厚く保護された雇用形態です。

長期雇用が前提となるため、客観的合理性と社会的相当性が、とりわけ厳格に求められます。

能力不足や協調性不足を理由とする解雇は、裁判で無効と判断されやすい傾向があります。

そのため実務では、いきなり解雇するのではなく、退職勧奨によって合意退職を目指すのが基本的な進め方です。

なお、有期契約から無期契約に転換した「無期転換社員」も、期間の定めがなくなった以上、有期時代の雇止め法理ではなく解雇権濫用法理が適用されます。

正社員と同様に解雇のハードルが上がる点に注意が必要です。

【関連記事】【弁護士解説】問題社員を辞めさせる際に注意すべき点は?|手段選択において留意すべき法的リスクや実務上のポイント

契約社員(有期雇用)の解雇条件

有期雇用の契約社員を契約期間の途中で解雇するには、「やむを得ない事由」が必要です(労働契約法17条)。

これは倒産寸前といった重大な事態に限られ、正社員の普通解雇よりもさらにハードルが高くなります。

そのため実務では、期間途中の解雇ではなく、契約満了時に契約を更新しない「雇止め」を選ぶのが一般的です。

ただし、契約が反復更新されて実質的に無期契約と変わらない状態になっている場合などには雇止め法理が適用され、雇止めであっても自由にはできません。

合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点に注意が必要です。

パート・アルバイトの解雇条件

パートやアルバイトにも、労働契約法・労働基準法が適用されます。

したがって、合理的な理由のない解雇は違法です。

実務では、次の点に注意が必要です。

  • 「シフトを大幅に減らして実質的に辞めさせる」「明日から来なくていいと言い渡す」といった対応は、不当解雇にあたるリスクがある
  • 即日で解雇する場合でも、正社員と同様に、原則として解雇予告手当の支払いが必要
  • 請求があれば、解雇理由証明書を交付する義務がある

なお、有期契約のアルバイトか無期契約のアルバイトかによって、適用される条件(期間途中の解雇か雇止めか)が異なる点にも留意が必要です。

【関連記事】アルバイトは解雇できる?正当な理由・解雇の流れ・不当解雇になるケースを解説

試用期間中の解雇条件

試用期間は、法的には「解約権留保付労働契約」と位置づけられます。

本採用後に比べれば解雇の要件はやや緩やかですが、それでも自由に解雇できるわけではなく、客観的で合理的な理由が必要です。

具体的には、採用時には知り得なかった、経歴詐称や著しい勤怠不良などの重大な事実が発覚した場合に限られます。

指導不足による能力不足は解雇理由として認められにくいため、試用期間中こそ丁寧な教育と記録が求められます。

手続き面では、入社から14日以内であれば解雇予告や解雇予告手当は不要ですが、解雇の理由そのものは必要です(労働基準法21条)。

14日を超えると、通常の解雇と同様に予告または予告手当が必要になります。

適法に解雇を進めるための流れ4ステップ

解雇が有効と認められるかどうかは、解雇に至るまでの進め方次第です。

正しい手順を踏む姿勢自体が、そのまま企業防衛につながります。

逆に、何の前触れもなく解雇を通告する不意打ち解雇は、裁判でほぼ確実に不当解雇と判断されます。

解雇はあくまで最終手段と位置づけ、そこに至るまでに回避努力を尽くした証拠を残しておきましょう。

実務で踏むべき4つのステップを、順に解説します。

①段階的に注意・指導し記録を残す

まず、問題行動や能力不足に対して、書面やメールで継続的に注意・指導をおこない、改善の機会を与えます。

そのうえで、経過を証拠として残しておく点が重要です。

口頭での注意だけでは、後に言った・言わないの争いになり、証拠としての価値が低くなります。

指導書・始末書・面談の議事録などを書面で残すほか、特に有効なのが、下記のような項目を時系列で記録した注意指導記録です。

注意指導記録シートの項目 内容例
日時・場所 〇月〇日 14:00〜 会議室A
指導内容 頻繁な遅刻について、就業規則に基づき改善を求めた
本人の反応 「体調不良だった」と釈明し、改善の約束には至らなかった
指導者 直属の上司(〇〇部長)

問題となる言動や口頭での指導内容については、録音も有効です。

本人の同意を得ずに録音した音声でも、収集の方法が著しく不当でない限り、裁判で証拠として使えるのが一般的です。

また、能力不足を示す評価データや、トラブルに関する第三者の証言なども証拠になります。

②配置転換や退職勧奨で解雇を回避する

次に、解雇を避けるための努力を尽くします。

他部署への配置転換で本人が活躍できる余地がないかを探り、あわせて、合意による退職を促す退職勧奨を試みましょう。

退職勧奨はあくまで本人の合意に基づく退職なので、一方的な解雇に比べてトラブルのリスクが低い点がメリットです。

合意退職を促す際には、上乗せの退職金(解決金)の提示が有効な場合があり、結果的に企業のコストを抑えられるケースもあります。

ただし、退職勧奨が執拗になると、違法な退職強要とみなされる危険があります。

面談の回数や時間、言葉選びには十分注意しましょう。

合意に至った場合は、退職合意書を作成して双方の合意を明確にしておきます。

【関連記事】退職勧奨(退職勧告)とは?違法にならない進め方や言い方・流れ・注意点を解説

③解雇予告をするか解雇予告手当を支払う

解雇を決定したら、労働基準法20条にもとづき、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。

予告をしない(または30日に満たない)場合は、その不足日数分の解雇予告手当(平均賃金)を支払います。

即日解雇をするには、原則として30日分以上の平均賃金の支払いが必要です。

ただし、次のいずれかの場合は、例外として予告・予告手当なしの解雇が認められます。

  • 労働者の責めに帰すべき事由について、労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受けたとき(しかし実務上、この認定を受けるハードルは非常に高く、認定が出ないまま即日解雇を行うとリスクが残ります。)
  • 天災事変その他やむを得ない事由で、事業の継続が不可能になったとき

なお、除外認定を得ずに予告手当なしで即日解雇すると、無効となるおそれがあります。

証拠をそろえ、正しい手続きを踏みましょう。

あわせて、予告期間中に本人を出勤させるか自宅待機とするかといった実務上の判断も検討しておきましょう。

④解雇通知書・解雇理由証明書を交付する

最後に、解雇の事実と理由を書面で明確にします。

口頭での解雇は、言った・言わないの争いになりやすいため、解雇通知書を内容証明郵便などで交付するのが確実です。

労働者から請求があった場合は、解雇理由証明書を遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)。

これを怠ると罰則の対象になりえます。

作成にあたっては、次の2点に注意してください。

  • 請求されていない事項は書かない:労働者が「解雇の事実のみ」の記載を求めた場合、解雇理由を書いてはいけません
  • 記載した理由は後から追加できない:後付けの理由は、解雇の有効性を基礎づけるものと認められにくくなります。

    解雇の時点で理由をもれなく整理し、就業規則の解雇事由に該当するかを確認したうえで交付しましょう

解雇に踏み切る前に知っておくべきリスク

不当解雇と判断されて解雇が無効になると、企業は金銭・人事・信用の各面で大きなダメージを負います。

1,000万円を超える支払いを命じられるケースもあり、労働審判や訴訟が長期化すれば時間とコストも消耗します。

主なリスクを詳しく見ていきましょう。

①解雇した従業員が職場に復帰する

解雇が無効になれば、労働契約は今も続いている(労働者の地位が失われていない)という扱いになります。

その結果、問題があって解雇したはずの従業員が、職場に復帰し、次のような問題が生じます。

  • 解雇したはずの従業員が職場に戻り、社内の士気が低下する
  • ほかの従業員との関係が悪化する
  • 会社が復職を拒みたくても、就労させる義務(あるいは賃金を支払う義務)を負う

もっとも現実には、解決金を支払って退職してもらう和解で決着するケースが多く見られます。

ただしその場合でも、解決金の支払いは避けにくい点に注意が必要です。

②未払い賃金(バックペイ)の支払いが発生する

解雇が無効になると、解雇した日から無効が確定するまでの期間の賃金を、さかのぼって全額支払う義務が生じます。

これをバックペイといいます。

裁判が長期化して解決までに1〜2年かかれば、その間の賃金が積み上がり、数百万円単位の支払いになるケースも珍しくありません。

労働者が実際には働いていなかった期間であっても、就労できなかったのは会社の責任である以上、支払いは免れません。

バックペイの金額シミュレーション 金額例
月給30万円の従業員が1年後に勝訴 30万円 × 12ヵ月 = 360万円の支払い
月給40万円の従業員が2年後に勝訴 40万円 × 24ヵ月 = 960万円の支払い

さらに遅延損害金も加算されるため、企業の財務に深刻なダメージを与えます。

③慰謝料を請求され企業イメージも低下する

解雇のやり方が特に悪質だった場合には、バックペイとは別に、精神的苦痛に対する慰謝料の請求を受けるおそれがあります。

名誉を傷つけるような見せしめ的な解雇や、違法な退職強要をともなうと、高額の請求につながりかねません。

金銭面だけではありません。

不当解雇の事実がSNSや口コミサイトに書き込まれれば、企業の評判が低下し、採用活動や既存従業員の信頼にも悪影響が及びます。

加えて、訴訟対応にかかる弁護士費用や、経営陣が費やす時間も大きな損失です。

④助成金が受けられなくなる場合がある

会社都合の離職者を出すと、一部の助成金で不支給・受給不可となる場合があります。

雇用関係の助成金には、「一定期間内(たとえば6ヵ月以内に会社都合による離職者がいないこと」を支給要件とするものが多いためです。

これは、解雇が適法であったとしても、会社都合離職である以上は生じうるリスクです。

解雇に踏み切る前に、自社が受給中・申請予定の助成金の要件を確認しておきましょう。

解雇の判断に迷ったら弁護士に相談を

解雇を検討し始めたら、初期の段階で労働問題に強い弁護士へ相談するのがおすすめです。

解雇は法的なハードルが高く、自己判断で進めると無効リスクが大きいためです。

早い段階で相談すれば、次のような支援が受けられます。

  • 過去の判例や法令に照らし、自社の解雇が法的に通用するかを客観的に診断してもらえる
  • 解雇が難しい場合でも、配置転換や退職勧奨など、より安全な代替案の提案を受けられる
  • 証拠集めや書面作成、退職勧奨を弁護士の指導のもとで進め、手続きミスによる無効リスクを抑えられる
  • 労働審判・訴訟や団体交渉に発展しても、代理人として対応してもらえる

加えて、平時から就業規則の解雇・懲戒事由を整え、人事評価制度を客観的なものにしておく備えも重要です。

こうした体制整備も弁護士に相談しておけば、いざというとき解雇の判断が通りやすくなります。

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解雇の条件に関するよくある質問

解雇の条件について、経営者や人事担当者から特によく寄せられる疑問にお答えします。

本文で解説した内容のおさらいとして、トラブル防止に役立ててください。

Q. 解雇予告なしで即日解雇できる条件はありますか?

できるのは、次のいずれかにあたり、かつ労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合に限られます(労働基準法20条但書)。

  • 労働者の責めに帰すべき事由(重大な規律違反や犯罪行為など)がある場合
  • 天災事変その他やむを得ない事由で、事業の継続が不可能になった場合

認定を受けずに即日解雇すると、違法・無効となるリスクがあります。

原則は30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要です。

Q. 解雇と自然退職・雇止めは何が違いますか?

いずれも労働契約の終わり方ですが、法的性質が異なります。

  • 解雇:使用者による一方的な労働契約の解約
  • 自然退職:定年、休職期間の満了、本人の死亡など一定の事由による自動的な終了
  • 雇止め:有期契約を更新せず、期間満了で終了すること

なお雇止めは、契約が反復更新されている場合などには雇止め法理により、自由におこなえない場合があります。

Q. 解雇理由証明書と退職証明書は何が違いますか?

目的と場面が異なります。

解雇理由証明書は解雇の理由を明らかにする書類、退職証明書は退職の事実などを証明する書類です。

  • 解雇理由証明書:解雇された(される)労働者が、解雇理由の明示を求めて請求する
  • 退職証明書:退職者が、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由などについて請求する

どちらも労働者から請求があれば交付義務があり(労働基準法22条)、記載できるのは労働者が請求した範囲に限られます。

Q. 解雇理由証明書は必ず発行しないといけませんか?

労働者から請求があった場合は、遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)。

応じなければ罰則の対象になりえます。

なお、証明書に記載した解雇理由は後から追加できないため、内容を整理したうえで発行しましょう。

まとめ

解雇を有効におこなうには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性という2つの条件が大前提です。

そのうえで、解雇の種類・雇用形態・理由ごとに満たすべき条件は異なり、法律で解雇そのものが禁止されるケースもあります。

このように解雇の条件は複雑で、判断を誤って不当解雇とされれば、復職やバックペイなど大きな代償を負いかねません。

解雇に迷ったときは自己判断で進めず、早めに労働問題に強い弁護士へ相談しましょう。

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