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解雇に踏み切る前に、まず押さえておきたいのが解雇の条件です。
解雇は、判断を誤ると不当解雇として無効になり、復職やバックペイなど大きな代償を招きかねません。
慎重な対応が求められる場面です。
解雇が有効と認められるには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性という2つの条件が欠かせません。
さらに、普通・懲戒・整理という解雇の種類ごと、雇用形態ごと、理由ごとに、それぞれ判断のポイントがあります。
本記事では、解雇が認められる基本条件から、理由別・雇用形態別の判断基準、違法にならないための進め方などを解説します。
解雇とは、使用者(会社)が一方的な意思表示で労働契約を解約する行為を指します。
会社が自由におこなえるものではなく、正当な理由がなければ無効です。
まず押さえたいのが、解雇とそれ以外の契約終了との区別です。
次のものは、いずれも解雇とは法的性質が異なります。
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自社がおこなおうとしているのが本当に解雇なのか、まず見極めておく必要があります。
| 種類 | 内容 | 解雇との違い |
|---|---|---|
| 解雇 | 会社からの一方的な契約解除 | ― |
| 自己都合退職 | 労働者からの申し出による退職 | 会社側の理由は不要 |
| 合意退職 | 会社と労働者の合意による退職 | 一方的でなく合意がある |
| 雇止め | 有期契約の期間満了時に更新を拒否すること | 契約の「解除」でなく「満了」 |
解雇が有効と認められるには、労働契約法16条が定める次の2つの条件を、どちらも満たさなければなりません。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
以上の条件は、後述する普通解雇・懲戒解雇・整理解雇のいずれにも共通する大前提です。
どちらか一方でも欠ければ、その解雇は「解雇権の濫用」として無効(不当解雇)になります。
裁判所は解雇権濫用法理を厳格に運用しており、会社に解雇権があっても無制限に行使できるわけではありません。
以下で2つの条件をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
1つ目の条件は、客観的に合理的な理由があることです。
第三者が見ても「これなら解雇もやむを得ない」と納得できる、事実に基づいた明確な理由を指します。
判断のよりどころになるのが就業規則です。
就業規則には解雇事由の記載が法律上義務付けられており(労働基準法89条)、解雇は原則として、就業規則に定めた解雇事由のいずれかに該当する場合に認められます。
普通解雇でも懲戒解雇でも、今回の解雇理由が自社の就業規則のどの事由にあたるのかを、まず確認しましょう。
具体的にどのような理由が認められやすく、あるいは認められにくいのかは、次のとおりです。
| 合理的な理由 | 具体例 |
|---|---|
| 認められやすい例 | 横領などの犯罪行為、長期の無断欠勤、重大な経歴詐称 |
| 認められにくい例 | 一度の軽微なミス、社長との相性不良、指導不足による能力不足 |
なお、理由があると主張するだけでは足りません。
主張を裏づける、指導記録やメール、勤怠データなどの客観的な証拠が不可欠です。
証拠の残し方は後述します。
2つ目の条件は、社会通念上の相当性です。
たとえ解雇の理由が存在しても、解雇という最も重い処分がその行為に対して重すぎないか、バランスが取れているかが問われます。
均衡を欠くと判断されれば、理由があっても解雇は無効です。
相当性は、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。
| 相当性の判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 解雇回避努力 | 注意指導や配置転換など、解雇を避ける手を尽くしたか |
| 処分の均衡・公平性 | 行為に対して重すぎないか、ほかの社員と同じ基準か |
| 改善の機会 | 複数回の指導をおこない、改善の猶予を与えたか |
| 労働者側の事情 | これまでの勤務態度や、反省・改善の姿勢があるか |
たとえば同程度の問題行動でも、一方は注意で済ませ他方を解雇するといった不均衡な扱いは、相当性を欠くと判断されやすくなります。
なかでも特に重視されるのが、会社が解雇回避の努力(注意指導や配置転換など)を尽くしたかという点です。
いきなり解雇せず、段階を踏んで改善を促したかが裁判では厳しく問われます。
前章の2つの条件を満たしていても、以下のケースに該当する場合は、法律によって解雇そのものが禁止・制限されており、解雇は無効・違法となります。
本ケースは、解雇権濫用法理(客観的合理性・社会的相当性)とは別に定められた規制です。
どんなに正当な理由があっても、該当する状況・目的での解雇はできません。
見落とすと理由の有無にかかわらず無効・違法になるため、解雇の前に必ず確認してください。
労働基準法19条は、次の期間中の解雇を禁止しています。
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つまり、仕事が原因のけがや病気(労災)で休んでいる従業員や、産休中の従業員は、ほかに解雇したい事情があっても、この期間中は解雇できません。
ただし、次の場合には例外的に解雇が認められます。
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なお、仕事が原因ではない私傷病(業務外のけが・病気やメンタルヘルス不調)による就業不能の扱いは、労災とは異なります。
妊娠・出産や、育児休業・介護休業などの取得を理由とする解雇は、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法によって禁止されています。
注意したいのは、対象が育児休業だけではない点です。
育児・介護休業法は、介護休業や介護休暇の取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いも、同様に禁止しています。
また、妊娠中および出産後1年以内の女性に対する解雇は、会社が「妊娠・出産を理由とする解雇ではない」と証明できない限り無効となります。
妊娠・出産・育休中の解雇は、原則として認められないと考えておくべきです。
なお、これらを理由とする不利益な取扱いの禁止は、解雇だけでなく、降格・減給・不利益な配置転換などにも及びます。
次のような理由による解雇も、法律で禁止されています。
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以上はいずれも、該当した時点で解雇が無効・違法となる性質のものです。
表向き別の理由を掲げていても、実質的にこれらが動機だと判断されれば認められません。
解雇理由として持ち出す判断自体が危険だと理解しておいてください。
解雇には、大きく分けて「普通解雇・懲戒解雇・整理解雇」の3種類があります。
それぞれ性質・根拠・必要な手続きと要件が異なるため、自社がおこなおうとする解雇がどの種類にあたるのかを、まず正確に見極める必要があります。
| 解雇の種類 | 性質 | 主な事由 | 法的ハードル |
|---|---|---|---|
| 普通解雇 | 労働契約の債務不履行 | 能力不足・勤怠不良・私傷病など | 高い |
| 懲戒解雇 | 企業秩序違反への制裁罰 | 横領などの犯罪・重大なハラスメント | 極めて高い |
| 整理解雇 | 経営上の理由による人員削減 | 業績悪化・事業縮小など | 非常に高い |
たとえば「懲戒解雇は普通解雇より厳しいのだから、懲戒解雇の要件さえ満たしていれば普通解雇の要件も当然クリアできる」という考え方は、当てはまりません。
普通解雇には普通解雇の手続きがあり、それを踏んでいなければ有効にはならないためです。
懲戒解雇として争って無効になっても、自動的に普通解雇に切り替わって有効になるわけではありません。
各種類の要件を、以下で順に解説します。
普通解雇とは、労働者が労働契約上の義務を果たせないこと(債務不履行)を理由とする解雇です。
能力不足、私傷病による就業不能・協調性の欠如・勤怠不良などが典型例にあたります。
それぞれの詳しい条件は後述します。
有効となるには、次の要件を満たす必要があります。
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手続き面では、原則として30日前の解雇予告、または解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法20条)。
いきなり解雇するのではなく、段階的な指導を経たかどうかが、有効性を分けるポイントになります。
懲戒解雇とは、企業秩序を著しく乱した労働者に対する制裁罰のうち、最も重い処分です。
横領などの犯罪行為・重大なハラスメント・長期の無断欠勤などが該当します。
制裁としての性質を持つため、普通解雇よりも要件が厳格です。
有効となるには、共通の2要件に加えて、次を全て満たす必要があります。
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特に見落とされやすいのが、就業規則上の根拠と弁明の機会です。
根拠と弁明の2つを欠くと、解雇理由そのものが正当でも、手続きの不備を理由に無効と判断されやすくなります。
また、就業規則の定めによっては、退職金が不支給・減額になることがあります。
ただし、後に懲戒解雇が無効と判断されれば、その退職金の不支給も違法となりうる点に注意が必要です。
【関連記事】懲戒解雇を検討すべき6つの理由|解雇する際の注意点
整理解雇とは、経営の悪化などを理由に、人員削減のためにおこなう解雇です。
普通解雇の一類型ですが、労働者側に落ち度がない点が特徴で、そのぶん判例で確立された整理解雇の4要素を満たすかが厳しく判断されます。
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人員削減が必要だとしながら新規採用をおこなうなど矛盾した行動があると、必要性が否定される場合があります。
労使間の十分な協議も欠かせません。
以上の4要素は、ひとつでも欠けると無効と判断されやすく、実務上は非常にハードルの高い解雇です。
【関連記事】整理解雇とは?整理解雇の4要件と解雇との違いを解説
解雇の理由は、大きく次の3つに分けられ、それぞれ解雇の種類に対応します。
| 解雇理由の分類 | 該当番号 | 対応する解雇の種類 |
|---|---|---|
| 能力・適性の欠如(能力不足・勤怠不良など) | ①〜④ | 普通解雇 |
| 規律違反(犯罪行為・ハラスメントなど) | ⑤〜⑦ | 懲戒解雇(程度により普通解雇) |
| 経営上の必要(業績悪化など) | ― | 整理解雇 |
ここでは、実務で問題になりやすい理由を個別に取り上げ、正当と認められる条件と不当解雇になりやすいケースをセットで整理します。
なお、どの理由であっても、次の4点は共通して確認が必要です。
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それでは、各条件をみていきましょう。
会社が求める標準的な能力を著しく下回り、指導や教育をおこなっても改善しない場合に、解雇が認められる可能性があります。
ただし、求められるハードルは採用の経緯によって異なります。
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いずれの場合も、客観的な評価基準が存在し、具体的な指導記録が証拠として残っていることが不可欠です。
就業規則では「勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがないとき」などと定めるのが一般的です。
不当解雇になりやすいケース
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業務外のけがや病気、メンタルヘルス不調で働けなくなった場合でも、すぐに解雇できるわけではありません。
就業規則に休職制度があれば、まず休職を適用するのが前提です。
そのうえで問題になるのが、休職期間が満了しても復職できないケースです。
軽易な業務への配置転換などの配慮をしても就労の見込みがないと判断される場合に、はじめて解雇が視野に入ります。
逆に、軽い業務なら働けるケースや、医師が復職可能と判断しているケースで解雇すると、無効となるリスクが高くなります。
就業規則では「精神または身体の障害により業務に堪えられないとき」などと定めるのが一般的です。
不当解雇になりやすいケース
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なお、業務が原因の負傷・疾病(労災)による休業や、産前産後の休業については、労働基準法19条で解雇そのものが制限されます。
協調性の欠如を理由に解雇が認められるには、単なる性格の不一致では足りません。
ほかの従業員との協調が業務に不可欠であるにもかかわらず、協調性を欠くために業務に重大な支障が生じている状態が必要です。
そのうえで、本人への再三の注意・面談や、相性のよい部署への配置転換を試みても改善が見られず、その経過が記録に残っている状態が求められます。
本人がハラスメントの加害者になっているケースでは、被害の状況もあわせて確認する必要があります。
不当解雇になりやすいケース
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正当な理由のない遅刻・欠勤が繰り返され、会社が指導した後も改まらない場合に、解雇が認められる可能性があります。
無断欠勤については、就業規則で「正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じないとき」などと定めて目安とする例が一般的です。
前提として、会社が出勤の督促や連絡、懲戒処分といった適切な対応をとり、その証拠を残しておく必要があります。
また、遅刻・欠勤の背景に精神疾患などがある場合は、まず休職を検討すべきで、それを見落として解雇すると違法と判断されるリスクがあります。
不当解雇になりやすいケース
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業務上の地位を利用して会社の金品を横領・着服する行為は、原則として懲戒解雇の対象となります。
金額の多寡にかかわらず、会社との信頼関係を根本から破壊する行為として厳しく判断されます。
ただし、懲戒解雇として有効にするには、次の3点が欠かせません。
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一方で、次のようなケースは、たとえ疑いが濃くても解雇が無効と判断されやすくなります。
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なお、横領は業務上横領罪にあたるため、刑事告訴と並行するケースでは、事実調査や証拠保全に実務上の注意が必要です。
職場環境を著しく悪化させるセクハラ・パワハラなどのハラスメントは、その悪質性に応じて懲戒解雇の対象となります。
処分が有効と認められるポイントは、行為の悪質性・反復性・被害の重大性です。
無理やり体に触れる、性的関係を強要するといった重大なケースでは、重い処分が認められやすくなります。
一方、比較的軽微な言動については、一度懲戒処分を受けても改まらない場合に、はじめて解雇が認められるのが一般的です。
ハラスメントは事実認定が難しく、判断を誤って解雇すると、今度は加害者とされた側から「不当解雇だ」と訴えられるおそれもあります。
次のようなケースは、無効と判断されやすくなります。
不当解雇になりやすいケース
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これまで挙げた以外の規律違反も、程度によっては解雇の対象となります。
代表的な3つについて、認められる条件と、不当解雇になりやすいケースを整理しました。
| 規律違反 | 認められる条件 | 不当解雇になりやすいケース |
|---|---|---|
| 業務命令違反 | 命令自体が正当で、本人が従わず改善も見込めない | 違法・不合理な命令への違反を理由に解雇する |
| 私生活上の犯罪 | 報道などで会社の名誉・信用を著しく損なった | 私生活の範囲内で影響も軽微なのに解雇する |
| 機密情報の漏えい | 機密として管理された情報で、会社に損害が生じた | 誰でも知り得る情報の漏えいを重大視して解雇する |
実際、深夜の住居侵入で罰金刑を受けた従業員の懲戒解雇が、私生活の範囲内の行為で刑も軽微だったとして無効とされた事例もあります(横浜ゴム事件・最高裁昭45.7.28)。
いずれの場合も、就業規則の懲戒事由への該当と、それを裏づける証拠が前提になります。
正社員、契約社員、パート・アルバイト、試用期間中の従業員では、解雇の法的なハードルや適用されるルールが異なります。
まず前提として、「アルバイトなら簡単に解雇できる」という認識は誤りです。
雇用形態を問わず、労働者はいずれも労働契約法・労働基準法の保護対象であり、合理的な理由のない解雇は違法になります。
特に有期雇用の期間途中の解雇には、正社員以上に厳しい要件が課されます。
各雇用形態の条件を、以下で見ていきましょう。
期間の定めのない正社員は、日本の労働法制のなかでも手厚く保護された雇用形態です。
長期雇用が前提となるため、客観的合理性と社会的相当性が、とりわけ厳格に求められます。
能力不足や協調性不足を理由とする解雇は、裁判で無効と判断されやすい傾向があります。
そのため実務では、いきなり解雇するのではなく、退職勧奨によって合意退職を目指すのが基本的な進め方です。
なお、有期契約から無期契約に転換した「無期転換社員」も、期間の定めがなくなった以上、有期時代の雇止め法理ではなく解雇権濫用法理が適用されます。
正社員と同様に解雇のハードルが上がる点に注意が必要です。
【関連記事】【弁護士解説】問題社員を辞めさせる際に注意すべき点は?|手段選択において留意すべき法的リスクや実務上のポイント
有期雇用の契約社員を契約期間の途中で解雇するには、「やむを得ない事由」が必要です(労働契約法17条)。
これは倒産寸前といった重大な事態に限られ、正社員の普通解雇よりもさらにハードルが高くなります。
そのため実務では、期間途中の解雇ではなく、契約満了時に契約を更新しない「雇止め」を選ぶのが一般的です。
ただし、契約が反復更新されて実質的に無期契約と変わらない状態になっている場合などには雇止め法理が適用され、雇止めであっても自由にはできません。
合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点に注意が必要です。
パートやアルバイトにも、労働契約法・労働基準法が適用されます。
したがって、合理的な理由のない解雇は違法です。
実務では、次の点に注意が必要です。
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なお、有期契約のアルバイトか無期契約のアルバイトかによって、適用される条件(期間途中の解雇か雇止めか)が異なる点にも留意が必要です。
【関連記事】アルバイトは解雇できる?正当な理由・解雇の流れ・不当解雇になるケースを解説
試用期間は、法的には「解約権留保付労働契約」と位置づけられます。
本採用後に比べれば解雇の要件はやや緩やかですが、それでも自由に解雇できるわけではなく、客観的で合理的な理由が必要です。
具体的には、採用時には知り得なかった、経歴詐称や著しい勤怠不良などの重大な事実が発覚した場合に限られます。
指導不足による能力不足は解雇理由として認められにくいため、試用期間中こそ丁寧な教育と記録が求められます。
手続き面では、入社から14日以内であれば解雇予告や解雇予告手当は不要ですが、解雇の理由そのものは必要です(労働基準法21条)。
14日を超えると、通常の解雇と同様に予告または予告手当が必要になります。
解雇が有効と認められるかどうかは、解雇に至るまでの進め方次第です。
正しい手順を踏む姿勢自体が、そのまま企業防衛につながります。
逆に、何の前触れもなく解雇を通告する不意打ち解雇は、裁判でほぼ確実に不当解雇と判断されます。
解雇はあくまで最終手段と位置づけ、そこに至るまでに回避努力を尽くした証拠を残しておきましょう。
実務で踏むべき4つのステップを、順に解説します。
まず、問題行動や能力不足に対して、書面やメールで継続的に注意・指導をおこない、改善の機会を与えます。
そのうえで、経過を証拠として残しておく点が重要です。
口頭での注意だけでは、後に言った・言わないの争いになり、証拠としての価値が低くなります。
指導書・始末書・面談の議事録などを書面で残すほか、特に有効なのが、下記のような項目を時系列で記録した注意指導記録です。
| 注意指導記録シートの項目 | 内容例 |
|---|---|
| 日時・場所 | 〇月〇日 14:00〜 会議室A |
| 指導内容 | 頻繁な遅刻について、就業規則に基づき改善を求めた |
| 本人の反応 | 「体調不良だった」と釈明し、改善の約束には至らなかった |
| 指導者 | 直属の上司(〇〇部長) |
問題となる言動や口頭での指導内容については、録音も有効です。
本人の同意を得ずに録音した音声でも、収集の方法が著しく不当でない限り、裁判で証拠として使えるのが一般的です。
また、能力不足を示す評価データや、トラブルに関する第三者の証言なども証拠になります。
次に、解雇を避けるための努力を尽くします。
他部署への配置転換で本人が活躍できる余地がないかを探り、あわせて、合意による退職を促す退職勧奨を試みましょう。
退職勧奨はあくまで本人の合意に基づく退職なので、一方的な解雇に比べてトラブルのリスクが低い点がメリットです。
合意退職を促す際には、上乗せの退職金(解決金)の提示が有効な場合があり、結果的に企業のコストを抑えられるケースもあります。
ただし、退職勧奨が執拗になると、違法な退職強要とみなされる危険があります。
面談の回数や時間、言葉選びには十分注意しましょう。
合意に至った場合は、退職合意書を作成して双方の合意を明確にしておきます。
【関連記事】退職勧奨(退職勧告)とは?違法にならない進め方や言い方・流れ・注意点を解説
解雇を決定したら、労働基準法20条にもとづき、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。
予告をしない(または30日に満たない)場合は、その不足日数分の解雇予告手当(平均賃金)を支払います。
即日解雇をするには、原則として30日分以上の平均賃金の支払いが必要です。
ただし、次のいずれかの場合は、例外として予告・予告手当なしの解雇が認められます。
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なお、除外認定を得ずに予告手当なしで即日解雇すると、無効となるおそれがあります。
証拠をそろえ、正しい手続きを踏みましょう。
あわせて、予告期間中に本人を出勤させるか自宅待機とするかといった実務上の判断も検討しておきましょう。
最後に、解雇の事実と理由を書面で明確にします。
口頭での解雇は、言った・言わないの争いになりやすいため、解雇通知書を内容証明郵便などで交付するのが確実です。
労働者から請求があった場合は、解雇理由証明書を遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)。
これを怠ると罰則の対象になりえます。
作成にあたっては、次の2点に注意してください。
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不当解雇と判断されて解雇が無効になると、企業は金銭・人事・信用の各面で大きなダメージを負います。
1,000万円を超える支払いを命じられるケースもあり、労働審判や訴訟が長期化すれば時間とコストも消耗します。
主なリスクを詳しく見ていきましょう。
解雇が無効になれば、労働契約は今も続いている(労働者の地位が失われていない)という扱いになります。
その結果、問題があって解雇したはずの従業員が、職場に復帰し、次のような問題が生じます。
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もっとも現実には、解決金を支払って退職してもらう和解で決着するケースが多く見られます。
ただしその場合でも、解決金の支払いは避けにくい点に注意が必要です。
解雇が無効になると、解雇した日から無効が確定するまでの期間の賃金を、さかのぼって全額支払う義務が生じます。
これをバックペイといいます。
裁判が長期化して解決までに1〜2年かかれば、その間の賃金が積み上がり、数百万円単位の支払いになるケースも珍しくありません。
労働者が実際には働いていなかった期間であっても、就労できなかったのは会社の責任である以上、支払いは免れません。
| バックペイの金額シミュレーション | 金額例 |
|---|---|
| 月給30万円の従業員が1年後に勝訴 | 30万円 × 12ヵ月 = 360万円の支払い |
| 月給40万円の従業員が2年後に勝訴 | 40万円 × 24ヵ月 = 960万円の支払い |
さらに遅延損害金も加算されるため、企業の財務に深刻なダメージを与えます。
解雇のやり方が特に悪質だった場合には、バックペイとは別に、精神的苦痛に対する慰謝料の請求を受けるおそれがあります。
名誉を傷つけるような見せしめ的な解雇や、違法な退職強要をともなうと、高額の請求につながりかねません。
金銭面だけではありません。
不当解雇の事実がSNSや口コミサイトに書き込まれれば、企業の評判が低下し、採用活動や既存従業員の信頼にも悪影響が及びます。
加えて、訴訟対応にかかる弁護士費用や、経営陣が費やす時間も大きな損失です。
会社都合の離職者を出すと、一部の助成金で不支給・受給不可となる場合があります。
雇用関係の助成金には、「一定期間内(たとえば6ヵ月以内に会社都合による離職者がいないこと」を支給要件とするものが多いためです。
これは、解雇が適法であったとしても、会社都合離職である以上は生じうるリスクです。
解雇に踏み切る前に、自社が受給中・申請予定の助成金の要件を確認しておきましょう。
解雇を検討し始めたら、初期の段階で労働問題に強い弁護士へ相談するのがおすすめです。
解雇は法的なハードルが高く、自己判断で進めると無効リスクが大きいためです。
早い段階で相談すれば、次のような支援が受けられます。
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加えて、平時から就業規則の解雇・懲戒事由を整え、人事評価制度を客観的なものにしておく備えも重要です。
こうした体制整備も弁護士に相談しておけば、いざというとき解雇の判断が通りやすくなります。
【関連記事】全国対応で社員の解雇・退職勧奨に強い弁護士・法律事務所一覧
「この解雇は法的に通用するのか」「不当解雇だと訴えられないか」。
解雇をめぐる判断は、調べるほど複雑で迷いがちです。
とはいえ、どの弁護士に相談すればいいかわからない方も多いはずです。
そこで役立つのが、企業法務に注力する弁護士を探せるポータルサイト「企業法務弁護士ナビ」です。
地域と相談内容を選ぶだけで、解雇や労働問題を取り扱う弁護士を簡単に探せます。
さらに、次のような条件で絞り込めます。
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解雇が法的に通用するかの診断、証拠集めや手続きの進め方、退職勧奨のサポート、労働審判・訴訟に発展したときの代理対応まで、幅広く相談できます。
解雇に踏み切る前の段階から、気軽に相談してみましょう
解雇の条件について、経営者や人事担当者から特によく寄せられる疑問にお答えします。
本文で解説した内容のおさらいとして、トラブル防止に役立ててください。
できるのは、次のいずれかにあたり、かつ労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合に限られます(労働基準法20条但書)。
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認定を受けずに即日解雇すると、違法・無効となるリスクがあります。
原則は30日前の予告か解雇予告手当の支払いが必要です。
いずれも労働契約の終わり方ですが、法的性質が異なります。
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なお雇止めは、契約が反復更新されている場合などには雇止め法理により、自由におこなえない場合があります。
目的と場面が異なります。
解雇理由証明書は解雇の理由を明らかにする書類、退職証明書は退職の事実などを証明する書類です。
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どちらも労働者から請求があれば交付義務があり(労働基準法22条)、記載できるのは労働者が請求した範囲に限られます。
労働者から請求があった場合は、遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条)。
応じなければ罰則の対象になりえます。
なお、証明書に記載した解雇理由は後から追加できないため、内容を整理したうえで発行しましょう。
解雇を有効におこなうには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性という2つの条件が大前提です。
そのうえで、解雇の種類・雇用形態・理由ごとに満たすべき条件は異なり、法律で解雇そのものが禁止されるケースもあります。
このように解雇の条件は複雑で、判断を誤って不当解雇とされれば、復職やバックペイなど大きな代償を負いかねません。
解雇に迷ったときは自己判断で進めず、早めに労働問題に強い弁護士へ相談しましょう。
編集部
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
※企業法務弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
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