
国際取引法(こくさいとりひきほう)とは、国際取引に関する法規制を全体として扱う法律科目です。国際取引に関わる法律の総称なので、国際取引法という法律が存在するわけではありません。
国際取引には貿易のルールや国際裁判の進め方など、さまざまな法律の知識が必要になります。その範囲は非常に多岐にわたります。
この記事では、国際取引法の大まかな概要をご紹介します。国際取引法はどんな分野なのかイメージだけでも掴みたいという場合には、参考にしてみてください。
国際取引法の定義
冒頭でも述べた通り、国際取引法とは、国際取引に関する法律を学ぶ科目の総称です。
しかし、どこまでの範囲を国際取引に関する分野と見なすかによって解釈は変わるので、厳密な定義は専門家でもまちまちです。
ただ、国際取引契約後に発生する紛争問題の解決における部分に重点が置かれることが多いようです。基本的には、国際取引をスムーズに進められるようになる目的で学ぶ科目といえるでしょう。
国際取引の紛争解決に関わる法律
国際取引の紛争で代表例として挙げられる、代金の未払い問題を通じて、どの場面でそのような法律が関わってくるのかをご紹介します。
<代金の未払い問題の図>
国際取引でトラブルが生じた場合、裁判で問題を解決する法的処理の流れは以下の通りです。
- どこの裁判所で問題を扱うかの判断
- どの法律で判決を下すかの判断
どこの裁判所で問題を扱うかの判断
国際取引で買い手から代金を支払ってもらえないトラブルが発生した場合、売り手は裁判を通じて買い手に代金を請求する必要があるでしょう。
ただ、その際に問題になるのが、売り手と買い手、どちらの国の裁判所に提訴するかです。同じトラブルでも国によって異なる判決が出る場合もあるので、それぞれの国の法知識が必要になります。
また、提訴したとしても、その国際取引が裁判所の裁判管轄権を有していないと、その国での裁判は認められません。このようにどちらの国で提訴できるかを判断するのにも、各国の法律知識が必要不可欠です。
どの法律で判決を下すかの判断
提訴する裁判所が決定したら、その国の法律に従って判決が下されることになります。
どのような判決が下されるかを推測するためには、その国にはどんな法律があり、どの状況でどの法律が適用されるのかを把握しておく必要があるでしょう。
国際取引の紛争問題では、裁判が開かれるのは必ずしも日本とは限りません。そのため、取引先になる可能性のある国の国内法(日本でいう民事訴訟法)についても理解を深めておく必要があります。
※国際裁判でよくあるトラブル
国際取引のトラブルでは、必ずしも自国の裁判所に提訴する必要はないので、自分に有利な法廷地を選ぶ傾向が強くなります。
例えば、買い手の国での訴訟に対して、売り手が対抗して自国で訴訟すること(対抗訴訟)も可能です。しかし、そこで異なる判決が確定してしまうと、その紛争の解決は困難になるでしょう。
そのような事態を回避するためには、各国の国際取引で適用される可能性が高い法律や、国際裁判の詳しい実務についても把握しておく必要があります。
国際取引において重要な法律
国際取引で特に重要な法律は法の適用に関する通則法です。
これは日本の会社が国際取引を行う上で適用される法(準拠法)を定めた法律です。契約書に準拠法が明記されていればよいですが、日本の場合は当該定めがない場合この法律に基づいて適用法令を判断します。
まとめ
国際取引法とは、国際取引に関与する法律の総称です。その内容は広義で人によって定義が変わる場合もありますが、国際取引契約後のトラブル発生に関する法律問題に重点が置かれるケースが多いようです。
国際取引法を理解するには、各国の国際取引に関与する可能性が高い法律を把握しなければなりません。
大まかな概要になりましたが、国際取引法とは何かを知る参考になれば幸いです。
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