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ROIC

読み: ろいっく  英語名: Return On Invested Capital 

ROICは、企業の収益性を評価するための重要な指標として用いられ、特に株主や銀行から調達した資金に対する利益率を測定します。一般的に、ROICが7%以上であれば、企業の経営力が良好とされます。

 

ROICの主なメリットは、資本の効率的な運用を評価できる点にあります。これは、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)といった他の指標の問題点を補完するものとしても評価されています。ROICは、企業の成長トレンドを把握するための指標としても有用です。

ROICが注目される背景

ROIC(投下資本利益率)が注目される背景には、以下のような要因があります。

投資家の利益率重視

近年、投資家は企業の「利益額」ではなく「利益率」の向上を求める傾向が強まっています。ROICは、企業が投入した資本に対してどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標であり、投資家にとって企業の成長性や収益性をより正確に判断するための材料となります。

 

このため、多くの投資家がROICを参考にし、投資に値する企業かどうかを評価する際に重要視しています。

経営指標としての再評価

ROICは、企業の経営指標として再評価されています。特に、PL(損益計算書)重視の経営が見直される中で、ROE(自己資本利益率)に代わる指標として注目されています。ROICは、資本構成の影響を受けにくく、企業の収益性をより正確に評価できるため、経営者にとっても有用な指標です。

経営管理の手法としての普及

ROICを基にした経営管理手法、いわゆる「ROIC経営」が広く普及しています。これは、ROICを用いて企業価値を創造するための目標を設定し、その達成に向けた具体的なアクションプランを策定する手法です。

 

ROIC経営は、運転資本や固定資産の有効活用に焦点を当てることができ、企業の効率的な資本運用を促進します。これらの要因により、ROICは投資家や経営者にとって重要な指標として再び注目を集めています。ROICの利用は、企業の資本効率を高め、長期的な成長を支えるための有効な手段とされています。

ROE・ROAとの違い

ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)は、企業の収益性を評価するための重要な指標ですが、それぞれ異なる視点から企業の経営効率を測ります。以下にその違いを詳しく解説します。

ROE(自己資本利益率)

ROEは、企業が株主から預かった自己資本をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す指標です。計算式は、当期純利益を自己資本で割ったものです。ROEが高いほど、企業は自己資本をうまく活用して利益を生み出していると評価されます。これは株主にとって重要な指標であり、株主の投資に対するリターンを直接的に示します。ROEの改善には、利益の増加や自己資本の効率的な活用が求められます。

ROA(総資産利益率)

ROAは、企業が所有する全ての資産をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す指標です。計算式は、当期純利益を総資産で割ったものです。ROAは、自己資本だけでなく、借入金などの他人資本も含めた総資産に対する収益力を示します。これは、経営者や全ての利害関係者にとって重要な指標であり、企業全体の経営効率を評価するために用いられます。ROAは、資産の効率的な活用を通じて収益性を測ります。

主な違い

視点の違い: ROEは自己資本に対する収益性を示し、主に株主の視点から企業のパフォーマンスを評価します。一方、ROAは総資産に対する収益性を示し、経営者を含む全ての利害関係者の視点から企業の効率性を評価します。

 

計算の基準: ROEは自己資本を基準とするため、自己資本の変動に敏感であり、財務レバレッジの影響を受けやすいです。ROAは総資産を基準とするため、資産全体の効率性を反映します。

 

活用の目的: ROEは主に投資家が企業の投資価値を判断する際に用いられ、ROAは企業の経営効率を測るための指標として用いられます。これらの違いを理解することで、企業の収益性や効率性をより総合的に評価することが可能になります。

 

ROICのメリット

ROEやROAの問題を解決できる

ROICは、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)の問題を解決する指標として注目されています。ROEは自己資本を基に算出されるため、自己資本の変動によって数値が操作されやすいという欠点があります。

 

また、ROAは総資本を基に算出され、買掛金の支払いを遅らせることで数値が変動する可能性があります。ROICは、税引後営業利益を投下資本で割るため、これらの問題を解決し、資本構成の影響を受けずに企業の収益性を正確に評価できます。

事業ごとに管理できる

ROICは、異なる事業セグメントごとに資本運用を評価することが可能です。これにより、経営者は限られた資金をどの事業に投入すべきかを判断しやすくなります。中長期的に利益率が低い事業を特定し、資金投下の優先順位を決める際の重要な判断材料となります。ROICは特定の期間に依存せず、長期的な視点での経営判断をサポートします。

資金調達が容易になる

ROICは、企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを明確に示すため、投資家や金融機関からの信頼を得やすくなります。ROICが高い企業は、資金調達がしやすく、さらなる成長のための資金を得る機会が増えます。これは、事業規模に関係なく、企業の「稼ぐ力」を表す指標としてのROICの特性によるものです。

ROICのデメリット

計算が複雑で理解が難しい

ROICは、計算式が複雑で、現場での理解が難しいというデメリットがあります。投下資本や税引後営業利益といった概念が馴染みのない場合、計算式の意味を理解するのに時間がかかることがあります。特に、歴史ある製造業などでは、損益計算書のみで管理している企業も多く、ROICの浸透には時間と労力が必要です。

業種や企業のフェーズによって有効性が変動

ROICの有効性は、業界や企業の状況に大きく左右されます。特に、サービス業では投下資本をあまり使用せずに事業拡大を行うケースが多く、ROICによる評価が最適とは限りません。また、企業のライフサイクルにおいても、創業期や衰退期にはROICが低くなりがちで、他の指標を重視する必要がある場合があります。

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