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試用期間中の社員に能力不足や勤怠の問題が見つかり、対応に迷っていませんか。「試用期間中なら簡単にクビにできるのではないか」と考える経営者・人事労務担当者の方も多いでしょう。
しかし、試用期間中でも会社が自由に辞めさせられるわけではなく、解雇が有効かどうかは通常の解雇と同じ基準で判断されます。客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性(処分の重さが事情に見合っていること)を欠く解雇は無効です。
本記事では企業(使用者)側の視点から、解雇が認められる理由や不当解雇と判断される線引き、通告までの手続き、解雇以外の選択肢を解説します。
本章では、試用期間の基礎知識を解説します。「そもそも試用期間とは?」と疑問を感じている方は参考にしてください。
試用期間は、採用の時点では判断しきれない適格性を、実際の勤務を通じて見極めるために設ける期間です。
採用当初は、資質・性格・能力といった適格性を判定する資料を十分に集められません。そこで、後日の調査や観察に基づいて最終的な決定をするまで、会社が判断を留保する仕組みとされています。
期間の長さに法律上の上限はありませんが、3ヵ月〜6ヵ月程度で設定するケースが少なくありません。
なお、試用期間中でも雇用契約は正式に成立しているため、社員を辞めさせる場合は「不採用」ではなく「解雇」になります。解雇である以上、会社の一存では決められず、法律上の制限を受けます。
試用期間を設けるなら、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書に定めておくのが前提です。
書面に定めがなければ試用期間の存在や内容をあとから立証できないため、入社初日から通常の社員と同じ扱いを受ける恐れがあります。解雇の可否を検討する前に、試用期間の定めが書面にあるかを確認してください。
【関連記事】雇用契約書における試用期間の記載事項と条項例・注意点を解説
試用期間中でも解雇はできますが、通常の解雇と同じく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ無効になります。本章では、解雇できる法的な根拠、試用期間の途中で解雇するときの注意点、雇用形態による違いを解説します。
解約権留保付労働契約とは、会社が一定の場合に契約を解約できる権利(解約権)を残したまま成立している労働契約です。
試用期間中の解雇は、留保された解約権を会社が行使する行為です。解約権の行使が認められるのは、採用時には知り得なかった事実が試用期間中に判明し、雇用を続けるのが適当でないと客観的に判断できる場合に限られます。たとえば、業務に必須の資格を持っていないと入社後にわかった場合です。
採用の内定を出す前であれば、会社は応募者の採用を自由に見送れます。しかし、入社して試用期間に入った時点からは、辞めてもらう判断は解雇として扱われ、次で解説する解雇権濫用法理の制限を受けます。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効になります(労働契約法第16条)。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
解約権を行使できるのは、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認される場合に限られます。

試用期間の満了を待って本採用を拒否する場合も、法的には解雇にあたります。満了を待たずに途中で解雇する場合は、本採用拒否よりさらに厳しく判断される点に注意してください。
試用期間は、会社が適格性を見極めると同時に、社員が改善を示すための期間でもあります。満了前に解雇すれば、社員から改善の機会を奪ったと受け取られるためです。
途中解雇が認められやすいのは、観察を続けても評価が変わる見込みがない、下記のような場合に限られます。
|
一方、能力不足を理由に試用期間の途中で解雇する進め方は危険です。指導と改善の機会をどれだけ与えたかが厳しく問われるため、能力不足を理由にするなら満了時の本採用拒否として整理するほうが、指導の経過を示しやすくなります。
試用期間中の解雇が認められやすいケースは後述します。
正社員でなければ解雇しやすくなる、という理解は誤りです。契約社員やパート・アルバイトでも解雇権濫用法理の適用は変わらず、契約期間の定めがある場合はむしろ制限が強くなります。
雇用形態ごとの扱いは、下記の表のとおりです。
| 雇用形態 | 試用期間中の解雇の扱い | 注意点 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 正社員(期間の定めなし) | 客観的合理性と社会通念上の相当性が必要 | 満了時の本採用拒否も解雇として扱われる | 労働契約法第16条 |
| 契約社員(期間の定めあり) | やむを得ない事由がなければ期間の途中で解雇できない | 期間の定めのない契約より解雇の要件が厳しい | 労働契約法第17条第1項 |
| パート・アルバイト | 無期:正社員と同じ 有期:契約社員と同じ | 解雇予告・解雇理由証明書の義務は正社員と同じ | 無期なら労働契約法第16条 有期なら労働契約法第17条第1項 |
期間の定めがある労働契約では、やむを得ない事由がなければ、契約期間が終わるまで解雇できません(労働契約法第17条第1項)。
有期契約の社員に適性の不安がある場合は、期間途中で解雇するより、契約期間の満了時に更新しない判断を検討するほうが現実的です。ただし、更新を期待させる言動があった場合などは、雇止め(契約を更新しないこと)も制限されます(労働契約法第19条)。


試用期間中に解雇した社員が不当解雇だと争った場合、労働審判や裁判で解雇を認めるかどうかが判断されます。裁判所が解約権の行使を認めやすいのは、採用の時点では知り得なかった事情が判明した場合に限られ、認められなければ解雇は無効です。
本章では、試用期間中の解雇が認められやすい理由を5つ解説します。
経歴詐称は、虚偽がなければ採用しなかったといえるほど重大で、業務に直接支障が出る場合に解雇理由として認められやすくなります。典型例は、業務上必要な資格を持っていると偽っていた場合や、過去の重大な懲戒解雇歴を隠していた場合です。
一方、職歴の軽い誇張や在職期間が数ヵ月ずれていた程度では、採用の判断を左右したとはいえず、解雇の理由として足りません。詐称を立証するには、本人が何を申告したかを示す応募書類と面接記録が欠かせないため、試用期間が満了するまで保管しておいてください。
能力不足を理由にするには、業務に不可欠な能力が著しく欠けており、教育をしても向上の見込みがないと客観的に判断できる必要があります。期待より低いという程度では、解雇の理由として認められません。
裁判所が試用期間中の解雇を認めるかどうかで重視するのは、成績の良し悪しそのものより、会社がどう教育・指導し、本人がどう応えたかという経過です。
求められる水準は採用区分でも変わり、即戦力として高い賃金で中途採用した専門職なら、水準に届かない点が解雇理由として認められやすくなります。しかし新卒や未経験者の採用は、会社の育成責任が重く見られるため、同じ成果でも解雇の理由としては弱くなります。

正当な理由のない遅刻・欠勤・早退を繰り返し、注意や指導を重ねても改善しない場合は、試用期間中の解雇の理由になりえます。とはいえ、1回や2回の遅刻で即座に解雇すると、処分として重すぎるとして無効と判断される恐れがあります。
有効性を分けるのは、注意や指導を重ねた経過を客観的に示せるかどうかです。口頭の注意だけで済ませず、指導した日付と内容を書面に残しておきましょう。
あわせてそろえたいのが、遅刻や欠勤の日付と回数を示す勤怠システムの打刻データです。本人が署名した顛末書(てんまつしょ:本人が問題の経緯を説明して提出する書面)があれば、本人が事実を認めた証拠にもなります。
書面で指導するときの記載項目は後述します。
病気やけがで業務を続けられない場合も解雇の理由になりえますが、すぐに解雇へ進めるケースは多くありません。業務上の負傷・疾病であれば、療養のために休業する期間と、休業が終わってから30日間は解雇できないためです(労働基準法第19条第1項)。
業務外の私傷病であっても、まずは休職制度の適用や、負担の少ない業務への配置転換を検討してください。手を尽くしても回復の見込みが立たない場合に初めて、解雇や退職勧奨を検討する段階に進みます。

社内での暴力行為や横領、ハラスメント、機密情報の漏えいなどの企業秩序を根本から損なう行為は、試用期間の途中でも解雇が認められる可能性があります。社外での行為でも、企業の信用を著しく傷つける場合は理由になりえますが、私生活上の行為は業務との関連性が問われます。
懲戒解雇として処分するなら、就業規則に該当する懲戒事由が定められていなければなりません。定めのない行為を理由に懲戒処分は科せないため、まず自社の規定を確認してください。
急ぐ場面ほど省かれやすいのが、事実関係の調査と本人に言い分を述べさせる弁明の機会です。手順を飛ばした処分は懲戒権の濫用として無効になる恐れがあるため、重大な事案でも本人からの聴取は必ず実施してください。
試用期間中の解雇は、会社が正当な理由があると考えていても、裏づけや進め方に不備があれば、裁判所に不当解雇と判断されて無効になります。
本章では、不当解雇と判断されやすい4つのパターンを解説します。1つでも当てはまるなら通告の前に進め方を見直してください。
不当解雇と判断されやすい典型が、問題の日時や内容を具体的に示せないまま解雇を通告するケースです。「いつ、どこで、何があったか」を特定できなければ、会社の主張は上司の印象にすぎないと受け取られる恐れがあります。
反対に、同じ問題でも日付と事実を特定できていれば、裏付けのある主張として扱われます。通告の前に、解雇理由ごとに日付・内容・証拠を一覧にし、足りない事実がないかを確認してください。

指導や改善の機会を与えないまま解雇すると、理由があっても無効と判断されやすくなります。試用期間は、会社が適格性を見極めるだけでなく、社員を育成する期間でもあると考えられているためです。
自社の運用は、下記3つの観点で点検できます。
| 観点 | 見るべきところ |
|---|---|
| 指導の不徹底 | 問題に気づきながら注意を先送りしていなかったか など |
| 改善期間の不足 | 指摘してから結果を判断するまでの期間が短すぎなかったか など |
| 教育体制の不備 | 研修やOJTの担当者を用意していたか など |
試用期間を3ヵ月と短く設定している会社では、改善期間の不足が特に問題になりやすい傾向があります。指導と改善の機会が足りなかったと評価されれば解雇は無効になるため、期間が短いほど初日から指導を始めて記録を残しましょう。
解雇の理由に一定の合理性があっても、いきなり解雇すると、処分として重すぎると見なされて無効と判断される恐れがあります。懲戒処分は、訓戒や譴責(けんせき:始末書を提出させて将来を戒める処分)といった軽いものから段階を踏むのが原則です。
裁判所は、配置転換で適性に合う業務を任せられなかったか、再教育で改善を図れなかったかといった、より軽い手段を検討したかどうかも確認します。検討した記録が残っていれば、解雇を最終手段として選んだ経過を説明できます。
業績の悪化を理由に試用期間中の社員を辞めさせる場合、本採用拒否という形をとっても、実質は整理解雇として扱われます。整理解雇とは、会社の経営上の理由で人員を削減するためにおこなう解雇で、有効性は下記の4つの要素で判断されます。
| 要素 | 具体例 |
|---|---|
| 人員削減の必要性 | 経営不振などにより、人員を減らす十分な必要性があるか |
| 解雇回避の努力 | 配置転換や希望退職者の募集など、ほかの手段で解雇を避ける努力をしたか |
| 人選の合理性 | 対象者を選ぶ基準が客観的・合理的で、運用も公正か |
| 手続きの妥当性 | 労働組合や労働者に、解雇の必要性や時期・規模・方法を説明して納得を得る努力をしたか |
試用期間中の社員を優先して対象にしても、人選の合理性は認められる余地があります。ただし、人員削減の必要性を示せなかったり、役員報酬の削減や希望退職の募集といった回避努力を尽くしていなかったりすれば、整理解雇は無効です。


本章では、試用期間中の解雇が無効になった場合の会社が負う4つのリスクを順に解説します。
解雇が裁判などで無効と判断されると、社員は解雇された日からずっと会社に在籍していた扱いになります。社員が働けなかった原因は会社による解雇にあるため、会社は働けなかった期間の給料も支払わなければなりません(民法第536条第2項)。
争いが長引くほど、支払う給料は増えていきます。たとえば解決までに1年かかれば、働いていない1年分の給料をまとめて支払わなければなりません。
ただし、社員が解雇されていた間に他の会社で働いて収入を得ていた場合は、支払う額から一部を差し引ける場合もあります。支払額は給料の額や争いが続いた期間で変わるため、一律の目安はありません。
解雇をめぐる争いは、裁判だけでなく労働審判という手続きで話し合われる場合もあります。労働審判とは、裁判官と労働問題の専門家が間に入り、原則として3回以内の期日で解決を目指す手続きです(労働審判法第15条第2項)。
労働審判の多くは、社員が会社を辞める代わりに、会社が解決金を支払う形で終わります。解決金の額は、勤続期間や賃金、事案の内容によって変わるため、一律には決まりません。
なお、労働審判の結論に納得できない当事者が異議を申し立てると、自動的に裁判へ移ります(労働審判法第21条・第22条)。
会社が従業員を解雇するときは、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金にあたる解雇予告手当を支払うのが法律上のルールです(労働基準法第20条)。
予告も手当もないまま即日解雇すると、解雇の理由が正当でも法律違反になります。違反した会社は、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金を科される可能性があります(労働基準法第119条第1号)。
さらに従業員が裁判で求めれば、裁判所は予告手当に加えて、同じ額の付加金の支払いを命じることが可能です(労働基準法第114条)。付加金はペナルティとして上乗せされるお金で、命じられると支払額は最大で2倍になります。

解雇をめぐる争いが表に出ると、金銭以外の損失も生じます。口コミサイトや転職サイトへの書き込みという形で、社外から見える状態になる場合があるためです。
影響が出やすいのは採用活動です。入社前に口コミサイトで評判を確認する応募者も少なくないため、解雇をめぐるトラブルの情報は応募の減少につながりかねません。
人手不足が続く業界では、採用単価の上昇という形で負担が跳ね返る点も見込んでおいてください。取引先からも、労務管理に不安がある会社と受け止められる可能性があります。


本章では、試用期間中に解雇するときの手続きを5つのステップにわけて解説します。
最初に、解雇の理由が就業規則に書かれた解雇事由のどれかに当てはまるかを確認します。就業規則にない理由での解雇は、根拠を欠くとして不当解雇と判断される恐れが高いためです。
解雇理由とは別に、試用期間中の本採用拒否についての条項を設けている会社もあります。どちらの条項を根拠にするかを決めておかないと、解雇通知書に書く条項も決まりません。
規定があいまいだとわかった場合でも、今回の事案に合わせて就業規則を書き換えるのは避けてください。問題の社員に当てはめるための変更と受け取られかねないため、改定は今後の採用に向けて別に進めましょう。
【関連記事】法務担当者が知っておくべき就業規則の作成で事前に気をつけるべきこと
解雇が有効と認められるかは、会社が「いつ・誰が・何について・どう指導したか」を示せるかで大きく変わります。口頭の注意だけではあとから証明しにくいため、指導した内容は書面に残しておく必要があります。
指導の記録とあわせて、勤怠システムの打刻データや業務の成果物、指示や報告のメールも保管しておきましょう。遅刻の回数やミスの件数、会社の指示に本人がどう応じたかを、客観的に示せます。
記録として最低限そろえたい書式は、面談記録・指導書・改善計画の3つです。面談記録で日々の指導を残し、指導書で改善を求めた事実を明確にし、改善計画で到達目標を示してください。
資料をそろえたら、解雇予告または解雇予告手当を用意しましょう。
解雇するときは、原則として少なくとも30日前までに予告するか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
予告と手当は組み合わせられ、予告した日数の分だけ手当を減らせます。たとえば解雇日の10日前に予告した場合は、足りない20日分の平均賃金を手当として支払えば問題ありません。
予告も手当もない解雇は、原則として認められません。例外は、天災事変などで事業の継続ができなくなった場合と、労働者の責めに帰すべき事由で解雇する場合の2つです。
いずれも労働基準監督署長の除外認定を受ければ、予告も手当も不要になります。除外認定は重大または悪質な事由に限られ、会社の判断だけでは予告を省けない点に注意してください。
なお、入社から14日以内であれば予告は不要です。
解雇は口頭で済ませず、書面を交付して伝えてください。「本日をもって解雇する」という一文だけでは、どの事実を理由としたのかを特定できず、あとから理由を追加したと見られる可能性があります。
通告は、他の社員の目に触れない別室で、上司と人事担当者など2名以上が同席しておこなうのがおすすめです。口頭で解雇の事実と理由を伝えたうえで通知書を手渡せば、伝えた内容と書面の記載がずれにくくなります。
解雇通知書には、下記の4点を記載しましょう。
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理由を書く際は、日付と件数を特定した具体的な表現にしてください。「勤務態度が不良である」ではなく、「◯月◯日から◯月◯日までに無断欠勤が◯回あった」のように記載しましょう。
退職後の事務手続きにも期限があります。雇用保険の資格喪失届は退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ、健康保険・厚生年金の資格喪失届は退職日から5日以内に年金事務所へ提出してください。
雇用保険の資格喪失届と一緒に、離職証明書もハローワークへ提出します。離職証明書は、社員が失業手当の手続きに使う離職票のもとになる書類です。
解雇による退職は、原則として会社都合として扱われます。ただし、横領や重大な規律違反など、本人に重大な落ち度がある解雇(重責解雇)は、会社都合とは別の扱いになります。
入社から14日以内の社員を解雇する場合は、解雇予告が不要になるという例外があります。ただし、免除されるのは予告の手続きだけで、理由なく即日解雇できるわけではありません。
本章では、14日ルールで免除される範囲、14日以内でも必要な解雇の理由、14日を超えた場合の解雇予告手当を解説します。
試用期間中の社員を入社から14日以内に解雇する場合は、解雇予告も解雇予告手当も必要ありません(労働基準法第21条第4号)。法律上、試用期間中の社員は、引き続き雇われた期間が14日を超えるまで、予告の規定の対象外とされているためです。
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
(中略)
四 試の使用期間中の者
14日は、出勤日ではなく暦日(カレンダー上の日数)で数えます。土日や祝日、会社の休日も含むため、週5日勤務なら出勤が10日ほどでも14日を超えている場合があります。
基準になるのは、試用期間の長さではなく入社からの日数です。試用期間を6ヵ月と定めていても、入社15日目以降に解雇するなら、30日前の予告か解雇予告手当が必要になります。
入社から14日以内であっても解雇権濫用法理は適用され、理由を欠く解雇は無効です。入社10日目の通告であっても、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、解雇は無効と判断されます。
さらに、14日という短い期間で、解雇の理由を裏づける材料をそろえるのは簡単ではありません。入社直後の数日で能力不足を理由にすると、指導や改善の機会を与えていないと判断されやすくなります。
14日以内の解雇が認められる可能性が高いのは、経歴詐称の発覚や重大な規律違反など、観察を続ける意味がなくなった場合に限られます。能力不足が理由なら、試用期間の満了まで指導を続けてから判断するほうが安全です。
入社15日目以降は、ほかの社員と同じく30日以上前の予告か、足りない日数分の解雇予告手当が必要です。予告と手当は組み合わせられるため、いつ通告するかによって支払う手当の額が変わります。
予告をせずに即日解雇する場合は、解雇を伝える時点で解雇予告手当を支払う必要があります。次の給料日にまとめて支払おうとすると、支払いが遅れた扱いになりかねない点に注意してください。
解雇予告手当は、平均賃金に「30日から予告した日数を引いた日数」を掛けて計算します。平均賃金は、原則として解雇を伝えた日の直前3ヵ月間に支払った給料の総額を、3ヵ月間の暦日数で割った1日あたりの金額です(労働基準法第12条第1項)。
ただし、入社から3ヵ月たっていない社員は、入社してからの期間で計算します(同条第6項)。試用期間中の社員の多くが当てはまるため、計算する期間を間違えないよう注意してください。
給料の締め日がある会社は、直前の締め日からさかのぼって数えます(同条第2項)。日給制や時給制の場合は、給料の総額を実際に働いた日数で割った額の60%を下回らないという最低保障もあります(同条第1項ただし書)。
通告から解雇日までの日数ごとの必要額は、下記の表のとおりです。
| 通告から解雇日までの日数 | 必要な予告手当の日数 | 計算例(平均賃金1万円の場合) |
|---|---|---|
| 即日 | 30日分 | 30万円 |
| 10日前 | 20日分 | 20万円 |
| 20日前 | 10日分 | 10万円 |
| 30日前 | 不要 | 0円 |
計算のもとになる給料には、基本給だけでなく通勤手当や役職手当も含まれます。一方、賞与(ボーナス)のように3ヵ月を超える期間ごとに支払われるものは含めません(労働基準法第12条第4項)。


能力不足や勤怠不良を理由に解雇するなら、会社が指導してきた経過を記録で示す必要があります。本章では、残しておきたい3つの記録(面談記録・指導書・改善計画)の書き方を解説します。
記録は後からまとめて作っても信用されにくいため、試用期間の初日から作り始めましょう。
業務指導記録(面談シート)とは、上司が社員と面談して指導した内容を、面談ごとに書き残す記録を指します。週1回から隔週程度の頻度で面談を設け、日時や指摘した事実、求めた改善、本人の発言を残します。
面談シートの記載例は、下記の表のとおりです。
| 記載項目 | 記載の例 |
|---|---|
| 日時・場所・同席者 | 2026年5月12日 14時 第2会議室 営業部長、本人 |
| 指摘した事実 | 4月の見積書に計算誤りが3件あり、うち1件は取引先へ送付済み |
| 求めた改善行動 | 見積書送付前に上長の確認を受ける運用へ変更する |
| 本人の弁明・発言 | 確認の手順を把握していなかった、今後は必ず確認を受ける |
| 次回までの期限 | 5月末までの見積書について誤りをゼロにする |
指摘した事実は、「4月の見積書に計算誤りが3件」のように日付や件数を明確に書きます。「意欲がない」「注意力に欠ける」といった感想だけでは、あとから第三者が確かめられないためです。

面談で注意しても改善が見られない場合は、口頭の注意から書面での指導に切り替えます。業務改善指導書(警告書)とは、改善してほしい点と期限を書いて本人に渡す書面のことです。
渡すタイミングの目安は、試用期間の中盤です。3ヵ月の試用期間であれば、1ヵ月半を過ぎたあたりで改善の見込みを評価し、必要なら書面での指導に移ります。期間満了の直前に書面を渡しても、改善する時間が残っていないと判断されかねません。
また、書面を渡したら、本人の受領印か受領書で受け取った事実を残しましょう。本人が受け取りを拒む場合は、交付しようとした日時と状況を記録し、郵送などの方法に切り替えます。文面には、改善が見られない場合は本採用をおこなわないことがある旨を明記しておきましょう。
本採用の拒否が指導の経過と連続した判断であると示せるため、通告の段階で説明が食い違いにくくなります。
試用期間中の解雇で、理由を能力不足にする場合、どこまで改善すればよいのかを事前に示しておく必要があります。改善計画(PIP)とは、足りない能力・改善の期限・目指す目標・会社が用意する支援などを1枚にまとめ、本人と共有する書面です。
目標は「入力ミスを月3件以下にする」のように、達成したかどうかを数字で確かめられる形にしてください。「積極的に業務へ取り組む」のような目標では、達成したかの判断が上司の印象に左右されます。


試用期間中の社員に問題があっても、解雇だけが選択肢ではありません。本章では、解雇以外に検討できる4つの選択肢を解説します。
退職勧奨とは、会社が社員に退職を勧め、本人の意思で辞めてもらうよう働きかけることです。応じるかどうかは本人が自由に決められるため、会社が一方的に雇用を終わらせる解雇とは異なります。
本人が納得して退職届を出せば合意による退職になり、解雇の有効性を争われる心配は大きく減ります。ただし、辞めるよう強く迫ると、退職強要として違法と判断される恐れがある点に注意してください。
たとえば、長時間の面談や、本人が断っているのに何度も面談を繰り返す対応は避けましょう。退職しなければ不利益があるとほのめかす言動も、損害賠償を請求される原因になりかねません。

【関連記事】退職勧奨(退職勧告)とは?違法にならない進め方や言い方・流れ・注意点を解説
今の業務で成果が出ていなくても、別の部署や業務であれば力を発揮できる場合があります。配置転換を試したうえでの判断であれば、解雇を避ける努力をした経過として説明できる点がメリットです。
ただし、配置転換には業務上の必要性が求められ、退職に追い込む目的の異動は権利の濫用として無効になる恐れがあります。遠方への転勤など、本人の生活に大きな不利益が出ないかもあわせて確認してください。
なお、職種や勤務地を限定して採用した社員は、本人の同意がなければ限定の範囲外へ異動させられない点に注意しましょう。
判断材料が足りない場合は、試用期間を延長して見極めを続ける方法もあります。延長するには、就業規則や雇用契約書に「延長することがある」旨と延長する期間が書かれている必要があります。
規定がない場合は、本人の同意を個別に得なければなりません。会社が一方的に延長を通知しただけでは効力がなく、当初の期間が終わった時点で本採用したものと扱われる恐れがあります。
理由を示さずに何度も試用期間を延長するのも避けてください。本採用されるかわからない不安定な立場を長引かせるとして、延長自体が認められない可能性があります。
延長する際は、延長の理由と延長期間中に何ができれば本採用とするのかを書面で伝えましょう。基準を共有しておけば、延長後の判断をめぐって本人ともめにくくなります。
雇用を続けたまま改善を目指すなら、再教育や研修をおこなう方法があります。改善計画に沿って研修やOJTを実施すれば、会社が改善の機会を与えた記録にもなります。
研修の前に教育の内容と期間を決め、「誰が・いつ・何を教えたか」を記録しておきましょう。本人が研修に応じなかった場合は、応じなかった事実も本採用を判断する材料になります。
4つの手段のどれを選ぶかは、雇用を終えたいのか、続けたいのかによって異なります。早く関係を整理したいなら退職勧奨、適性を見極め直したいなら配置転換や試用期間の延長、育つ見込みがあるなら再教育が良いでしょう。
どれを選ぶべきか迷う場合は、事実関係を整理したうえで弁護士に相談してみるのがおすすめです。
弁護士への相談は、トラブルが起きてからではなく、解雇を通告する前の段階でこそ価値があります。本章では、弁護士への相談によって得られる4つのメリットを解説します。
事実関係と手元の資料をもとに、解雇や本採用拒否が有効と判断される見込みを、通告の前に評価してもらえます。どの事実が解雇理由として機能し、どの事実が足りないのかを事前に把握できる点が利点です。
自社だけで判断すると、解雇が有効と認められる見込みを楽観的に見積もる傾向があります。日々の不満が積み重なっているため問題行動を重大に感じやすく、指導の不足には気づきにくいためです。
弁護士の視点を入れれば、裁判所の判断に近い水準で見込みを測れます。見込みが低いとわかった場合は、退職勧奨など別の手段へ切り替える判断も可能です。

書面の不備は、解雇が無効と判断される典型的な原因です。弁護士に相談すれば、記載するべき事実の粒度や、就業規則の条項の引き方を整えられます。
あとから理由を追加したと見られる余地を減らせるだけでなく、解雇理由証明書への備えも同時に進められる点がメリットです。
もう一つの効果が、不足している証拠の洗い出しです。どの事実について裏づけが足りないのかを指摘してもらえれば、試用期間の満了までに面談記録や指導書を補強できます。
なお、書面のひな型を手を加えずに流用するのは避けてください。自社の事案に合わせて記載を調整しなければ、証拠としての意味をもちません。
弁護士に相談すれば、退職勧奨を違法な退職強要と判断されない進め方で組み立ててもらえます。退職勧奨は本人の自由な意思で辞めてもらうのが前提で、どこからが強要にあたるかを自社だけで見極めるのは簡単ではないためです。
たとえば、弁護士は事案に合わせて、面談の回数や時間、伝え方、提示する退職条件の出し方を助言してくれます。面談の記録に何を残すべきかも事前にわかるため、後から強要だと主張されても会社の対応を説明しやすくなります。
合意に至った後の退職合意書の作成や確認も、弁護士に任せられるのが強みです。清算条項や秘密保持の定めを適切に入れておけば、退職後に別の請求を蒸し返される事態を防ぎやすくなります。

労働審判や訴訟に発展しても、弁護士に依頼すれば会社の代理人として手続きを任せられます。労働審判は、原則として申立てから40日以内に第1回の期日が指定されるため、特に短い期間で会社の言い分と証拠をまとめなければなりません。
弁護士は、指導記録や勤怠データのなかから、会社の主張を裏づける証拠を選んで整理してくれます。手続きの見通しを踏まえて書面を作成してもらえるため、限られた準備期間でも反論の準備を整えやすい点が強みです。
期日への出席や相手方とのやり取りも任せられるため、経営者や人事担当者は通常の業務に集中できます。一方で、依頼には弁護士費用がかかり、弁護士に任せたからといって解雇が有効になるわけではありません。
費用と勝ち目の見込みを弁護士と確認したうえで、争うのか、解決金を提示して早めに決着させるのかを判断しましょう。
試用期間中の解雇を相談する弁護士を探すなら「企業法務弁護士ナビ」を活用するのがおすすめです。
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最後に、試用期間中の解雇についてよくある質問とその回答を紹介します。
残念ながら、いつでも解雇できるわけではありません。試用期間中の労働契約は会社が解約権を留保した状態にあるものの、解約権の行使にも解雇権濫用法理が適用されます。
客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇は、無効と判断される可能性があります。
期待した水準に達していないという程度では、能力不足を理由に解雇するのは難しいでしょう。業務に不可欠な能力が著しく欠けており、教育をしても向上の見込みがないと客観的に判断できる場合に限られます。
指導記録が残っていないと、改善の機会を与えた事実を示せず、認められにくくなる点に注意してください。即戦力として中途採用した場合と未経験で採用した場合とでは、求められる水準も変わります。
ミスの回数、業務への影響の大きさ、指導の有無によって判断が変わります。1回や2回のミスで解雇すれば、処分として重すぎるとして相当性を欠くと判断される可能性が高いといえます。
ミスの件数と内容を記録し、改善を求めた経過を残したうえで判断してください。
試用期間は期間の定めのある契約とは異なるため、「更新しない」という形では処理できません。満了時に本採用を拒否する場合も、法的には解雇として扱われます。
期間を設けた目的が適性の判断にあるなら、期間満了で契約が当然に終わる明確な合意などがない限り、試用期間と判断するのが通常です。
合理的な範囲であれば可能です。ただし、就業規則や雇用契約書に明記しておく必要があり、原則として最低賃金を下回る額にはできません。
試用期間中の社員は、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、最低賃金の減額の特例を利用できます(最低賃金法第7条第2号)。試用期間中の賃金は解雇予告手当の算定基礎にもなるため、支払う手当の額にも影響します。
試用期間中でも解雇はできますが、通常の解雇と同じく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ無効です。入社14日以内でも免除されるのは解雇予告だけで、指導記録を残し、解雇以外の選択肢も検討する必要があります。
解雇を通告してから無効とわかれば、さかのぼって給料を支払う恐れもあるため、事前に弁護士へ相談しておきましょう。
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編集部
本記事は企業法務弁護士ナビを運営する株式会社アシロ編集部が企画・執筆いたしました。
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