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試用期間は、履歴書や面接だけでは判断できない労働者の能力・適性・勤務態度を、実際の業務を通じて見極めるための大切な期間です。労働者にとっても、職場環境との相性を確認する機会となるでしょう。
しかし、雇用契約書や就業規則への記載の不備が原因で、労使間で試用期間中の条件を巡るトラブルが生じるケースも少なくありません。試用期間を設ける場合は、書面で明文化するのが適切です。
本記事では、雇用契約書に試用期間を記載する必要性・明記すべき項目・条項の記載例・注意点を解説します。トラブルを未然に防ぐ雇用契約書を作成する際の参考にしてください。
雇用契約書における試用期間の記載要否は、就業規則の定めと同じ内容にするかどうかで判断が分かれます。就業規則と異なる期間や条件を設ける場合は、雇用契約書への記載が必要です。就業規則どおりの内容であれば、雇用契約書への記載を省略できます。
就業規則の記載と異なる試用期間の条件を定める場合は、雇用契約書に明記するのが適切です。試用期間は、事業主の判断によって任意に設けられる制度です。そのため、試用期間の日数や延長の有無などの具体的内容を、就業規則で定める必要があります。
事業場ごとの従業員数が常時10人未満で就業規則がない場合は、雇用契約書に試用期間の定めを記載すべきです。試用期間を短く設定するなど就業規則の記載より労働者に有利な条件を設定する場合も、雇用契約書に明記しておけば、労働者に安心感を与えられます。
なお、労働者との個々の雇用契約で、就業規則を下回る労働条件は設定できません。就業規則で定めた期間よりも長い試用期間を労働者との合意により設定しても、当該合意は無効となります。
就業規則の記載と同じ定めをする場合は、雇用契約書への記載は必須ではありません。合理的な労働条件が書かれた就業規則を労働者に周知していれば、就業規則のルールが実際の労働契約の内容になるためです。
ただし、就業規則を十分に確認しないまま入社する労働者もいるでしょう。就業規則の内容が複雑でわかりにくかったり、抽象的で読み手によって解釈が異なったりすれば、労使間のトラブルが生じる場合もあります。
トラブルを防ぐためには、試用期間の定めを就業規則と雇用契約書の両方に明記し、労働者にわかりやすく説明したほうがよいでしょう。
【関連記事】雇用契約書とは?なくても違法ではない?概要と労働条件通知書との違い
雇用契約書に試用期間に関する事項を記載しないと、試用期間の条件を巡って労働者とトラブルが生じる可能性があります。試用期間中の解雇や本採用拒否のハードルも一層高くなります。
雇用契約書に試用期間の条件を記載しないと、労働者との間でトラブルが生じやすくなります。試用期間中の賃金や期間の長さ・延長の可否などが曖昧なままでは、労働者が想定していた条件と食い違いが生じるためです。
たとえば、試用期間中の賃金を本採用後より低く設定する場合を考えてみましょう。書面による明示がなければ、労働者から差額を請求されるおそれがあります。
試用期間の条件を明記していないと、試用期間中の解雇や本採用拒否のハードルがより一層高くなります。
試用期間を設定している場合も、事業主が自由に本採用を拒否することは許されないとされています。本採用の拒否が認められるのは、採用時に知り得なかったような事情が判明し、雇用が適当でないと判断するのが客観的に相当な場合のみです。
試用期間中の解雇は、通常の解雇に比べて広く認められる余地があるとしても、解雇権を濫用するような解雇は許されません。トラブルを防ぐためには、上記のような基本的な考え方を踏まえた適切な内容を、雇用契約書や就業規則に規定しておくのが重要です。
【関連記事】雇用契約書がない場合のトラブル事例4つと企業のリスク
雇用契約書に明記しておきたい試用期間の項目は、以下のとおりです。
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それぞれの項目を具体的に定めておくと、労働者との認識のズレを防げます。
試用期間の長さと延長の可能性の有無を記載しましょう。試用期間の長さは、特段の事情がない限り、6ヵ月以内におさめるのが妥当です。長すぎる試用期間の設定は、公序良俗に反し無効と判断されるおそれがあります。
試用期間を延長する可能性がある場合は、延長の事由や上限も記載しましょう。延長には合理的な理由が必要であるため、延長の事由は、以下の範囲にとどめるのが適切です。
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なお、就業規則に試用期間の延長の規定を設けていない場合、労働契約法第12条を理由に延長が一切認められない判断も十分にあり得ます。そのため、就業規則でも試用期間の延長について規定しておくことが必要です。
試用期間中の賃金が本採用後と異なる場合は、金額や条件を明確に記載する必要があります。
試用期間中の給料については、都道府県別に決められている最低賃金を下回らない範囲であれば、原則として会社が自由に決められます。ただし、労働条件通知書や就業規則または雇用契約書に明記し、労働者の同意を得るのが前提です。
試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。
雇用契約書には、試用期間中の評価によって本採用しない可能性がある旨を明記しておきましょう。本採用しない可能性を記載していないと、労働者が試用期間の性質を正しく理解できません。試用期間満了前に解雇する可能性がある場合も、その旨を明記しましょう。
もっとも、試用期間中の解雇や本採用拒否には、一定の制限があります。後日、労働者から解雇や本採用拒否の無効を主張され、紛争に発展するケースも少なくありません。
トラブルを回避しつつ円満に解決するためには、可能な限り一方的な意思表示による解雇・本採用拒否は避けるべきです。労働者との協議により、合意による雇用契約の解消を目指すのが理想です。
本採用後の勤務形態や配属先が試用期間中と異なる場合は、変更内容を具体的に明記しておきましょう。労働条件通知書や雇用契約書には、就業場所や業務内容を明示する義務があります。就業場所や業務内容が変更される範囲についても、明示が必要です。
試用期間中はパートタイム勤務とし、本採用後に正社員として配属する場合を例に考えてみましょう。勤務形態が変わるケースでは、特に明確な記載が求められます。勤務形態や配属先の記載を怠ると、本採用後の労働条件をめぐって認識のズレが生じかねません。
試用期間を勤続年数に通算するかどうかも、雇用契約書に明記しておきましょう。試用期間は、実態として期間の定めのない労働契約の初期段階にあたるため、勤続年数に通算するのが一般的な扱いです。
試用期間を勤続年数に含めるかどうかは、主に年次有給休暇の付与日数・退職金の算定・私傷病休職の期間決定の場面で問題になります。試用期間を通算しない特別な取り扱いをする場合は、通算しない旨と理由を明確に記載しておきましょう。
試用期間の条項は、期間・延長の可能性・本採用しない場合がある旨をまとめて記載するのが基本形です。以下は、雇用契約書に試用期間を定める場合の条項例です。
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第〇条(試用期間) |
条項例はあくまで一般的なひな形であり、業種や職種の実情に応じて調整する必要があります。就業規則にも同様の条項がある場合は、内容に食い違いが生じないよう表現をそろえておきましょう。
本章では、試用期間を雇用契約書に記載する際の注意点を解説します。
試用期間だからといって、最低賃金を下回る賃金設定は、原則としてできません。試用期間中の賃金にも、都道府県ごとの最低賃金が適用されます。労働基準監督署長の許可を得た場合に限り、最長6ヵ月の範囲で最低賃金の減額特例を適用できます(最低賃金法7条)。
減額特例の許可を得ずに最低賃金を下回る賃金を支払うと、差額の支払い義務や罰則の対象となるおそれがあります。減額特例を利用する予定がある場合は、事前に労働基準監督署への申請が必要です。
試用期間中の労働者も、社会保険への加入ルールは通常の労働者と同じです。加入要件を満たす場合は、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)に加入させる必要があります。
社会保険の適用除外要件のひとつに、2ヵ月以内の期間を定めて使用される者が規定されています。しかし、同規定は2ヵ月以内に雇用関係が終了するのが明白な、あくまで臨時的に雇い入れる労働者が対象です。
試用期間を2ヵ月以内に定めた場合であっても、入社日から社会保険に加入させる義務が生じます。意図的に加入を妨げたり、社員の意思を汲んで加入させなかったりすると、6ヵ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
試用期間を延長する場合は、就業規則や雇用契約書に延長の可能性や事由が明記されている必要があります。就業規則や雇用契約書に延長の規定がない場合は、従業員の同意が必要です。
また、実際に試用期間を延長する場面では、事業主が延長を決定するだけでは足りません。対象労働者に延長を通知することが必要です。延長する際は、延長の理由と期間を書面で伝え、労働者から同意を得たうえで手続きを進めましょう。
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個別の業種や職種の実情を踏まえた条項の作成は、自社の対応だけでは判断が難しい場面も少なくありません。労務トラブルを未然に防ぐ雇用契約書を整備したい場合は、「企業法務弁護士ナビ」で自社に合う弁護士を探してみましょう。
本章では、雇用契約書への試用期間の記載に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。
アルバイトやパート従業員も、試用期間を設ける場合は雇用契約書への記載をおすすめします。試用期間は雇用形態にかかわらず設定できるため、正社員に限った制度ではありません。
有期契約のアルバイトやパートに試用期間を設ける場合は、契約期間と試用期間の関係を明記しましょう。なお、紹介予定派遣により雇い入れた労働者は、直接雇用後に試用期間を設けることはできません(労働者派遣事業関係業務取扱要領)。
【参考元】労働者派遣事業関係業務取扱要領「第7 派遣先の講ずべき措置等」|厚生労働省
試用期間の長さについて、法令上の上限は定められていません。ただし、労働者の地位を不安定にする長期間の試用期間の設定は、公序良俗に反し無効と判断される可能性があります。
過去の裁判例を踏まえると、一般的に妥当とされる試用期間は3〜6ヵ月程度であり、長くても1年が限度と考えておくとよいでしょう。
試用目的で有期契約を用いた場合、期間満了により当然に終了する旨の明確な合意がなければ、雇止めは無効と判断される可能性が高いです。
期間を定めた契約でも、当該期間が労働者の適性を評価・判断するための期間であれば、特段の事情がない限り、試用期間と解されます。期間満了により契約が当然に終了する旨の明確な合意があると認められれば、雇止めが有効となる余地はあるでしょう。
一方、雇用期間の始期・終期を契約書へ具体的に明記していても、従業員に対して「試用期間」と説明していれば、無効となる可能性があります。
【関連記事】雇い止めとは?解雇や契約満了との違い、無効になる基準や会社都合の条件を解説
雇用契約書への試用期間の記載は、就業規則と異なる条件を設ける場合に欠かせません。記載を怠ると、賃金や本採用拒否を巡って労働者とのトラブルが生じやすくなります。
明記すべき項目は、期間の長さと延長の可能性・試用期間中の賃金・本採用しない可能性など多岐にわたります。勤務形態や配属先の変更、勤続年数への通算についても記載が必要です。
試用期間中も、最低賃金や社会保険の加入ルールは通常の労働者と同じです。延長する場合は、労働者の同意も欠かせません。自社の実情に合った試用期間の条項を整備したい場合は、「企業法務弁護士ナビ」で弁護士を探してみましょう。
編集部
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