知的財産の悩みは弁護士に相談|メリットや弁護士の選び方・費用を解説

専門家監修記事
商品や技術などの知的財産は、知的財産制度によって保護されています。しかし、もし侵害行為があった場合は、弁護士に相談するなどして、法的手続きを進めることをおすすめします。この記事では、知的財産の悩みを弁護士に相談するメリットや、弁護士の選び方などを解説します。
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
知的財産

商品技術などの知的財産は、知的財産制度によって保護されています。しかし、もし侵害行為があった場合は、弁護士に相談するなどして、速やかに対応する必要があるでしょう。

この記事では、知的財産について弁護士に相談するメリットや、弁護士の選び方などを解説します。

知的財産について弁護士に相談するメリット

この項目では、知的財産について弁護士に相談するメリットを解説します。

すでにトラブルが発生している場合

すでにトラブルが発生している場合は、いくつかの対応手段が考えられます。
 

本当に知的財産権を侵害しているかどうかの判断

『知的財産権を侵害しているか否か』を判断する際は、技術的な知識に加えて法律的な知識も求められます。弁護士に相談することで、過去の判例などを参考にしつつ、特許法や商標法などの法的視点から意見をもらうことができます。
 

侵害行為の中止請求

まずは、警告書を送付し、自主的に侵害行為をやめさせるという手段があります。製品の製造中止を求めたり、相手からの意見・返答を求めたりするなど、記載内容はケースによって異なります。 どのような内容を記載するのが適切かについてサポートが欲しい場合には、弁護士に相談することでアドバイスが期待できます。
 

差止請求

警告書を送付しても侵害行為をやめない場合や、一刻も早く侵害行為をやめさせたい場合などは、差止請求権の行使が考えられます。差止請求権を行使することで、現在の侵害行為の停止だけでなく、今後も侵害行為を行わないよう停止措置を講じることができます。

ただし、特に特許権などでは技術的な範囲からみて、請求対象が知的財産権を侵害していると判断できるかという点がポイントとなります。
 

損害賠償請求

侵害行為によって損害が発生している場合などは、損害賠償請求も選択肢の1つとして考えられます。こちらも差止請求権の行使と同様に、弁護士に相談することで『請求対象が知的財産権を侵害していると判断できるか』について、法的視点から意見をもらうことができます。

侵害行為の追及に伴うリスクを軽減できる

特に、製品の製造を行っている企業同士によるトラブルの場合は、こちらが訴訟手続きなどを行った際に、『逆に相手側から特許に関する訴訟を起こされる』という、カウンター特許による反撃を受ける可能性もゼロではありません。

その場合、こちら側が製品を製造中止したり、廃棄したりしなければならなくなるケースも考えられます。 弁護士に相談することで、『侵害行為について追及するべきか』について、リスクマネジメントの視点からのサポートが期待できるため、訴訟手続きに関するリスクの軽減につながることもあるかもしれません。

手続きにかかる手間・時間が短縮できる

知的財産のトラブル解決のためには、警告書の作成鑑定書の作成訴訟手続きなどを行う必要があります。

特に、初めて手続きを行うような場合には、思わぬ手間・時間がかかることも考えられます。知識・経験のある弁護士に相談することで、手続きにかかる手間・時間を短縮することができます。

『自社が侵害しているものはないか』の調査

新製品の開発を行う場合などは、製品や技術について、他社の知的財産権を侵害してしまっている可能性もあります。他社の特許状況などについて、あらかじめ調査しておくことで、今後のトラブル回避にもつながるでしょう。

ただし、膨大にある過去の登録情報から、1つ1つ抵触していないか確認するのは現実的とはいえません。そこで、弁護士に相談することで、『他社の権利を侵害していないか』について、調査を依頼することができます。

知的財産に関する相談先は弁護士?弁理士?

知的財産に関する相談先としては、弁護士のほかに弁理士もあります。

それぞれの違いとして、弁護士が『訴訟手続き』を担当しているのに対し、弁理士は『知的財産権を取得するための手続き』を担当しています。

知的財産に関する、出願手続きを済ませたいという場合などには弁理士知的財産に関する、トラブルを解決したいという場合などには弁護士に相談するべきでしょう。

ただし、特許を侵害している場合などは、裁判所での手続きに加えて、特許庁でも特許の無効・訂正などの手続きが必要になるケースもあります。その場合は、弁護士と弁理士それぞれの力を借りて手続きを進めるのが適切かもしれません。

知的財産の侵害事例(裁判)

この項目では、実際に知的財産が侵害された実例をご紹介します。

特許権の判例(2011年9月知財高裁の判決)

A社が特許として持っている『餅がきれいに焼ける技術』について、B社が侵害しているとして、A社がB社に対して14億8,500万円の損害賠償を請求した事件です。

A社では『餅の側面』に切り込みを入れているのに対し、B社では『餅の上下面と側面』に切り込みを入れており、この点がどのように判断されるのか話題となりました。

一審では「それぞれの技術は、別の内容のものと考えられるため、知的財産の侵害とはいえない」と判断されたものの、控訴審では「知的財産の侵害にあたると判断できる」と一転。B社に対して損害賠償として7億8,300万円の支払いと、関連5商品の製造・販売差止などを命じました。

裁判年月日 平成23年 9月 7日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 中間判決 事件番号 平23(ネ)10002号 事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件 〔「切り餅」特許侵害差止請求事件・中間判決〕 裁判結果 認容 上訴等 上告棄却、確定 参考元:文献番号2011WLJPCA09079001

商標権の判例(2018年2月東京地裁の判決)

A社が権利を持つ商標について、被告が模造し、さらにそれを貼り付けた製品をインターネット上で販売したとして、A社が被告に対して、該当商品の譲渡等の禁止や50万円の損害賠償を請求した事件です。

裁判所は「被告が商標権を侵害していることは明らか」として、被告に対して、該当商品の譲渡等の差止や廃棄、損害賠償として10万円の支払いなどを命じました。

裁判年月日 平成30年 2月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平29(ワ)39594号 事件名 商標権侵害差止等請求事件 裁判結果 一部認容 参考元:文献番号 2018WLJPCA02289001

意匠権の判例(2012年3月大阪地裁の判決)

被告が製造・販売するタイルカーペットについて、A社が持つ意匠権の侵害にあたるとして、被告に対して747万5,000円の損害賠償を請求した事件です。

裁判所は「意匠の構成要部が類似していると判断できる」として、被告に対して、該当商品の販売停止や廃棄、損害賠償として367万7,428円の支払いなどを命じました。

裁判年月日 平成24年 3月15日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 判決 事件番号 平22(ワ)805号 事件名 意匠権侵害差止等請求事件 裁判結果 一部認容 参考元:文献番号2012WLJPCA03159001

著作権の判例(2005年10月知財高裁の判決)

A社が管理するHPの掲載記事について、B社が見出しを不正に使用したとして、A社がB社に対して6,825万円の損害賠償を請求した事件です。

裁判所は「B社の行為は不法行為と判断できるものの、A社記事の独自性は薄く、侵害の程度は深刻ではない」として、B社に対して損害賠償として約23万7,741円の支払いを命じました。

裁判年月日 平成17年10月 6日 裁判所名 知財高裁 裁判区分 判決 事件番号 平17(ネ)10049号 事件名 著作権侵害差止等請求控訴事件 〔ヨミウリ・オンライン事件・控訴審〕 裁判結果 原判決一部変更 参考元:文献番号2005WLJPCA10069001

知的財産について相談する場合の弁護士の選び方

この項目では、知的財産について相談する場合の弁護士の選び方について解説します。

企業法務・知的財産に注力している

『弁護士であればどこに相談しても同じ』というわけではなく、弁護士によって注力している分野は異なります。知的財産について相談する際は、企業法務の中でも知的財産に注力している弁護士を選ぶとよいでしょう。

また、一口に知的財産といっても、分野はさらに細分化されます。 特許法に関する相談解決に注力している弁護士や、商標法に関する相談解決に注力している弁護士などがいるため、相談内容によって細かく探してみる必要があるでしょう。

企業法務・知的財産に関する相談解決実績がある

弁護士を選ぶ際は、これまでどのような相談解決実績があるかという点も判断材料の1つになります。 具体的な解決実績については、各HPに掲載しているところが多いため、実際に相談する際はその点も確認しておくとよいでしょう。

技術・理系分野への理解が深い

特に、特許を侵害している場合などは、技術面についての理解が求められるケースもあります。弁護士を選ぶ際は、技術・理系分野に関する理解が深いところを選ぶとよいでしょう。

知的財産について相談する場合の弁護士費用

知的財産については、ケースによって相談費用の幅はとても広いといえます。

相談料5,000円/30分警告書作成10万円鑑定書作成15万円という料金設定のところもあるようですが、相談内容や事務所によって料金体系は異なります。費用について気になる場合は、実際に確認を取ることをおすすめします。

また、訴訟する場合は、着手金・報酬金・実費(交通費や印紙代)などを支払う必要があります。訴訟費用の料金体系も相談内容によってさまざまですが、特に経済的利益がどれほどであるかという点がポイントとなるようです。これも実際に確認を取るとよいでしょう。

まとめ

知的財産のトラブルを解決するための手段としては、警告書の送付差止請求権の行使などが考えられます。 その際は、法的知識が必要になることも考えられるため、弁護士に相談することで、スムーズに手続きを進めることが期待できます。

また、知財分野は法律分野の中でも専門性が強い分野であるため、弁護士に相談する際は、知的財産に関する相談解決実績があるところや、技術・理系分野に関する理解が深いところを選ぶとよいでしょう。

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