顧問弁護士の費用・顧問料相場|内訳と顧問料を安く抑えて良い弁護士を選ぶには

専門家監修記事
法令を遵守し、経営を適切に行うために「顧問弁護士」を雇うという選択があります。契約書の作成時や裁判時など、顧問弁護士がいれば安心です。ここでは、顧問弁護士にかかる費用相場のほか、依頼できる業務、顧問契約のメリットなどについてもご紹介します。
富士パートナーズ法律事務所
福本直哉
監修記事
顧問・セカンド顧問

顧問弁護士を検討している方の中には、契約した際にいくら費用が発生するのか不安な方もいるでしょう。特に中小企業の方は、顧問弁護士費用に対し、必要性がどのくらいあるのかも疑問かと思います。

中小企業に対する顧問弁護士の月額費用は、3~5万円が相場です。では、この費用の範囲で、顧問弁護士はどのくらい対応してくれるのでしょうか。

この記事では、顧問弁護士の費用や依頼内容ごとの相場を中心に、顧問弁護士と契約するメリットをご紹介します。

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顧問弁護士の費用相場

顧問弁護士の費用や、料金体系についてご紹介します。

月額顧問料|3〜5万円

日本弁護士連合会が実施したアンケート調査によると、中小企業に対する顧問料の一般的な相場は月額3〜5万円です。月額料金内で対応できる業務の範囲は事務所により異なりますので、あらかじめ事務所に対応範囲を確認しましょう。

月額顧問料で対応できる業務範囲

日本弁護士連合会のアンケートによると、半数以上の事務所が、相談手段・調査の要否に関わらず月3時間程度の法律相談が顧問料金の範囲と回答しています。

(参考:中小企業のための弁護士報酬の目安)

顧問料を範囲の業務に対する費用についても、あらかじめ確認しておく必要があります。

月額顧問料のポイント

タイムチャージが含まれる

タイムチャージとは、法律相談や事件処理などの作業時間や拘束時間にかかる、時間制報酬のことをいいます。一般には、時間あたりの単価があらかじめ設定されていて、時間数に応じて報酬を算出します。

月額顧問料を設定している場合には、数時間の相談業務まで顧問料に含まれることが一般的です。ただし、弁護士との契約内容によっては、数時間の相談業務だけでも月額顧問料に加えて、タイムチャージが必要になることもあります。

簡易な法律相談に費用の請求はない

顧問料の範囲内に含まれるような簡易な法律相談については、別途費用が発生しません。一般的には、月3時間程度の相談や、調査を要せずすぐに回答できるものが顧問料の範囲内です。

もっとも、個々の弁護士の方針によって異なる部分ですので、弁護士と顧問契約を結ぶ際は、月々の顧問料にどこまでの業務が含まれるかをあらかじめ確認しておくことが大切です。

月額顧問料以外に発生する費用|個別事件の着手金や報酬金

着手金とは、弁護士に事件を依頼した段階で支払う費用をいい、報酬金とは、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で支払う費用をいいます。通常、顧問契約をしていると、顧問契約をしていない場合と比べて、着手金・報酬金は安くなる場合が多いです。

依頼内容ごとの顧問弁護士費用相場

一般的に月額顧問料に含まれない依頼に対しては、別途費用が発生します。ただし、顧問契約をしていることで、費用が安くなるなどの優遇を受けることができます。

ここでは、日本弁護士連合会が行ったアンケート結果を参考に、依頼内容ごとの費用相場を顧問契約がある場合と顧問契約がない場合で比較しまとめました。

契約書の作成の費用

契約書作成にかかる費用はその契約の内容や規模によって変わります。では以下のような相談の場合、費用相場はいくらくらいでしょうか。

製造メーカーである中小企業が卸売業者との商品の継続的取引のための基本売買契約書を作成する。年間の取引予想額は3000万円程度。代金支払に手形決済の予定あり。物的担保はないが、卸売業者の代表者が連帯保証人になる予定。契約書の作成に2〜3時間が予想される。この場合の手数料はいくらか。

参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(4 契約書の作成)|日本弁護士連合会

顧問契約がない場合

手数料は10万円前後と回答したのが43.8%で最多となっています。

顧問契約がある場合

最多の49.0%が手数料は5万円前後と回答しています。したがって、顧問契約がある場合には、手数料が通常よりも安くなります。

また、同調査において、上記ケースでの契約書作成は顧問料の範囲内で対応しているとの回答が11.2%あったことも、注目すべきポイントとなります。

労働事件への対応

労働事件への対応は、事案の複雑さや金額の規模などによって着手金・報酬金が異なってきます。日本弁護士連合会が実施した、次のケースにおける、着手金・報酬金についてアンケートの結果を参考に説明していきます。
 

【10年間勤務し、30万円の月給を支払っていた労働者を懲戒解雇したところ、労働者が会社(中小企業)を相手方として、懲戒解雇無効を理由に労働仮処分手続の申立てをした。 その結果、会社は、懲戒解雇を撤回したうえで、労働者は任意退職し、会社都合を理由とする退職金200万円と解決金200万円を支払った。会社の代理人であった場合の着手金および報酬金はいくらか。】
参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(8―1 労働仮処分手続の着手金と報酬金)|日本弁護士連合会

顧問契約がない場合

着手金については、30万円前後とした回答が46.1%で最多となっています。また全体を見ても、20万円前後から50万円前後までに回答の大部分が集中していました。報酬金については、50万円前後との回答が33.2%、30万円前後との回答が25%となっています。

顧問契約がある場合

着手金については、20万円前後と答えた割合及び30万円前後と答えた割合がそれぞれ31%台となり、全体の60%以上を占めています。報酬金については、20万円前後が31.9%と最も多く、次いで30万円前後が28.6%を占めています。

これらを見ると、着手金・報酬金のいずれについても、顧問契約がある場合は顧問契約がない場合よりも安くなる傾向があります。

債権回収への対応

債権回収への対応は、請求あるいは回収した金額や、事案の複雑さ、要した時間などによって着手金・報酬金が異なってきます。
ここでも、日本弁護士連合会が実施したアンケート調査を参考に見ていきます。
 

【製造メーカーである中小企業者が販売先に商品を納入したところ、販売先が商品の品質にクレームをつけて代金2000万円を支払わないが、品質に問題はないので、回収したい。訴訟を提起し、その結果、勝訴して任意で全額を回収できた。 この場合の着手金および報酬金はいくらか。】

参考:アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(5 売掛金の回収)|日本弁護士連合会

顧問契約がない場合

着手金は50万円前後から100万円前後に回答が集中し、報酬金は200万円前後とした回答が最多の58.2%と半数以上となっています。

顧問契約がある場合

着手金は50万円前後が最多で53.3%となっており、報酬金は100万円前後から200万円前後までの間に回答が多くなっています。

以上より、顧問契約がある場合の方が着手金・報酬金ともに、安くなる傾向にあります。

顧問料の高さと弁護士の実力はイコールなのか

弁護士によっては顧問料が月額10万円を超えることもありますが、顧問料の高さと実力はイコールなのでしょうか。

これについては、一概にYESともNOともいえません

一般に、顧問料は需要と供給の関係に影響しています。優秀で多くの企業と顧問契約を結んでいる弁護士であれば、業務への拘束時間は長いため、新規契約に対しては顧問料を高めに設定する可能性があります。反対に顧問契約の少ない弁護士は顧問料を低く設定するかもしれません。

もっとも、優秀で顧問契約の数が多い弁護士であっても、安い顧問料で量をこなす人もいます。したがって、顧問料の高さが実力とイコールであるとは必ずしも限らないのです。

顧問弁護士に依頼できる業務とメリット

顧問弁護士には、契約書作成をはじめとして、様々な業務を依頼することができます。また、緊急のトラブルだけでなく、トラブルの事前防止やコンプライアンス対策についても相談やサポートを求めることができます。

秘密保持契約(NDA)などの契約書作成

企業活動において、自ら保有する営業秘密を他者に開示することが有益な場合があります。例えば、

  1. 業務提携の可能性を検討するにあたって自社の事業内容を相手方に開示するとき
  2. 共同研究を始めるにあたって自社の情報をパートナーに開示するとき
  3. 自社の事業部門の一部の売却を検討するにあたって自社の財務情報・契約書等を買い手候補者に開示するとき等

さまざまな場面が想定されます。

このように、企業が保有する営業秘密を他者に開示する場合に、他者が開示を受ける営業秘密の秘密保持を約束する契約書が、秘密保持契約書(NDA)です。

顧問弁護士に依頼すれば、具体的な取引内容や、開示する情報の内容、情報漏洩のリスクの程度などを考慮し、実状に合った契約書を作成することができます。

社内における急な法的トラブルへの対応相談

顧問契約をしていれば、緊急の法的トラブルについても、電話やメールで相談することができます。 また、顧問弁護士は、普段から企業についての事情を詳細に理解しているため、迅速かつ的確な対応を取ることができます。

コンプライアンスへの対応相談(社内整備等)

近年では、企業のコンプライアンス重視の傾向が色濃くなってきています。

企業の危機管理として、コンプライアンス遵守の意思を企業内外に明確に示すことが大切です。 顧問弁護士には、コンプライアンス強化の一環として、社内規定の作成や運用、コンプライアンス関連文書の管理、コンプライアンス教育の計画と実施を依頼することができます。

また、各業務や各部署における違反リスクと、そのマネジメントについても相談できます。

法的トラブルへの事前予防

企業が活動する際に、法令違反などの不祥事が起こってしまうと、経営責任の追及や損害賠償、企業イメージの悪化といった損失を被ることとなります。

こうした損失は、企業の命運を左右する影響を与えかねません。近年、コンプライアンスへの対応や危機管理は、企業にとって非常に重要なものとなっています。

社内法務部設立よりコストダウンが図れる

社内に法務部を新設するのは、それなりの費用が必要とされます。法律的知識を持った人材の確保には、採用費、教育費、人件費など、多くのコストが必要です。

2020年2月に『日本組織内弁護士協会(JILA)』で実施された【企業内弁護士に関するアンケート調査集計結果】によれば、一般従業員として企業内弁護士(インハウスローヤー)にいる方のうち、最も多かった年収の回答は500万円~750万円未満(37.9%)。ほぼ差がない状態で続くのが、750万円~100万円未満(35.2%)となっています。

参考:企業内弁護士に関するアンケート調査集計結果(2020年2月実施)

弁護士も正社員として雇用する場合、給与以外にも雇用保険や社会保険等の費用を負担する必要があるため、従業員を雇用する際に企業が負担する費用は年収の約1.5~2倍になります。法務部を設立し、年収700万円〜800万円前後の企業内弁護士を1人雇用した際、年間1000万円~1600万円程度の費用がかかるというわけです。

これに対して、顧問弁護士の相場は月額5万円が相場です。年間で見てもわずか60万円。突発的な法律業務を依頼したとしても、着手金:30万円前後、報酬金:100万円前後から200万円前後です。コスト面でも、一般的には1人の法務部員を採用するよりも安いコストで、会社の法務を任せることができるでしょう。

企業の代理人となって交渉を行う

企業が取引相手と交渉する際には、法的な判断が必要となったり、弁護士に任せることが適切であったりすることがあります。とりわけ契約交渉にあたっては、ビジネスの中身が適切に反映され、かつ、過大なリスクの発生を防ぐことのできる契約内容でなければなりません。

顧問弁護士に交渉を依頼することで、経験と法的知識を活かした、適切な契約書を作成することができます。また、企業への理解があるため、実状に沿った契約書を作成することができます。

顧問弁護士の費用を抑える2つの方法

顧問契約をしたいと思っても、顧問料を毎月払い続けるのは容易なことではありません。ここでは顧問弁護士の費用を抑える方法をいくつか紹介します。

利用頻度が少ない場合はタイムチャージ制の利用

弁護士との顧問契約の内容については、月額の顧問料ではなく、タイムチャージ制がとられる場合もあります。タイムチャージ制は、時間あたりの単価から時間数に応じて報酬を算出するため、顧問弁護士を利用する頻度が少ない場合には、タイムチャージ制の方が安く済むことになります。

顧問料積立制度の利用

顧問料積立制度とは、顧問弁護士を利用しなかった月の顧問料を積み立てておき、後で法律トラブルが発生したときの弁護士費用に振り替えることができる制度です。顧問弁護士をあまり頻繁に利用しない企業は、顧問料の積立を行っている弁護士事務所へ依頼することで、顧問料を有効に活用することができます。

ただし、これらの方法は、弁護士事務所が用意している顧問契約の内容によっても異なりますので、詳しい内容は弁護士に確認するとよいでしょう。

費用に見合った顧問弁護士を選ぶ方法

顧問料を払うのであれば、それに見合う弁護士と顧問契約を結びたいものです。ここでは、自社に見合った弁護士を探す方法を紹介します。

同業他社から紹介してもらう

同業他社から顧問料弁護士を紹介してもらう最大のメリットは、自社が行っている業種に精通した弁護士である可能性が高い点です。弁護士が自社の業務等について理解していれば、アドバイスや問題解決もより迅速かつ的確なものになることでしょう。

自社の業務分野に注力している弁護士に依頼する

弁護士であっても、普段取り扱っていない法律分野があることは珍しくありません。弁護士の扱う業務は、一般民事から刑事事件、企業法務など多種多様です。また、企業法務といっても、契約書作成・チェック、会社設立、株主総会・取締役会、M&A、コンプライアンス・危機管理、労務管理、事業再生・倒産、債権回収などさまざまな業務があります。

権利関係・M&Aは弁護士との会話で決めよう

例えば、知的財産権やM&Aに関する問題は、非常に専門的な知識が必要となることも多いです。そのため、この分野を取り扱っていない弁護士もいます。 弁護士の注力分野と相談したい分野がミスマッチしているために、法律相談がうまく進まないこともあります。

顧問契約を考える際には、弁護士の注力分野を確認することで、自社にあった弁護士を見つけることができるでしょう。

まとめ

顧問契約の最大のメリットは、自社の経営や業務内容を知る弁護士に、万が一の事態や緊急のトラブルが生じた場合であっても、会社の実状にあった適切な対応をしてもらえる点にあります。

企業が安心して経営を進めていくためには、自社のビジネスモデルや業種にあった弁護士と、納得のいく費用で顧問契約を結ぶことが重要になります。会社が向き合うさまざまなリスクに対応するためにも、まずは自社にあった弁護士探しからはじめてみてはいかがでしょうか?

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